2008年3月30日日曜日

信長の棺 ; 加藤 廣

室町時代の末期から、徳川家康が実質的に天下を平定した大阪の陣までの間は、綺羅星のごとく、傑物が現れては消えていく、非常に興味深い時代である。また、人によって、好みの人物がはっきりと分かれてしまうのも、なかなかにおもしろい。その時代を舞台にした小説も数限りなく、最終決着は分かっているにもかかわらず、好みの人物が主題になっていれば、つい手をのばして読んでみたくなるものが多い。

そんなわけで手にした本であるが、これは出版されたときに、時の小泉首相が絶賛したことでよく知られていたが、時を経て最近ようやく読んだものである。
小説のテーマは、信長の生涯よりもその死に関わる謎解きが中心で、いわば歴史ミステリーというものに当たる。現在でも、なぜ明智光秀が無謀(とも思えるよう)な謀反に走ったのかは、歴史の大きなミステリーと言われており、彼の早すぎる死が無ければ、その後の歴史は全く違ったものになったに違いない。
よく「信長が搗いて、秀吉がこねた餅を、家康が食べた。」と言われるが、3者の政治理念は全く違っており、信長→秀吉、秀吉→家康の政権交代は、革命に近いものであったと思っている。

ここまで書けば良くお解りの通り、私自身は信長の大ファンで、いくつかの本を手にしたが、最初に読んだ「国盗り物語;司馬遼太郎」を越えるものは出てこないなぁ、というのが正直な感想である。
ただ、この本では、安土城の隠された目的や信長が少数で本能寺に向かった理由などが、著者なりの解釈で書かれており、信長ファンとしては、心和む思いである。

2008年3月29日土曜日

丹精で繁盛 ; 瀬戸山 玄

最近は、毎週のように新しい新書が刊行されて、新書バブルといってもよいくらいです。
タイトルのつけ方が煽情的で、読んでみると「なんやこれ!全然ちゃうやんか!!」と思うような例も多々あります。

ところで、この本ですが、思ったより丁寧に書かれていて非常に良いです。
瀬戸山さん自身は、もともと映像製作が御専門であったらしく、随所に自分に見えているであろう光景を描写した部分が出てきます。また、自然をこよなく愛していられるのだろうということも想像できます。

とはいえ、この本の主人公は著者本人ではなく、日本各地でものづくりに携わる5名の企業家たちである。それぞれ、幾多の艱難辛苦を乗り越え、いまではそれなりの成功を収めている方たちであるが、そのものづくりに対する姿勢に共通するのが「丹精」というキーワードである。

冒頭で「丹精」という言葉とは対のような概念で説明される「こだわり」という言葉がある。
現在では、非常に一般的な流行語で、だれもが気軽に口にするが、そこには顧客の視点は一切なく、むしろ自分の価値観を相手に押し付ける傲慢さ、自己中心主義が見て取れるのである。

「店主こだわりの逸品」って、いかにも胡散臭い。旨くないのは、こっちの所為か?
これまで、漠然と感じていたことが説明されていて心地よい。

ところでこの本は、私が大好きな伝統工芸産業がもう一度元気になるようなヒントはないかと、いろいろ読み漁っているうちに見つけたものです。
職人さんたちには、使う人への思いをこめて作ってほしい。そして世の中の人たちには、その職人さんたちが丹精こめて作ったものを、もっと身近に見てほしい、使ってほしい。
心からそうと思っています。

2008年3月20日木曜日

藍色のベンチャー ; 幸田真音

幸田さんの小説は大変おもしろくて、頑張って読んでおります。
「日本国債」や「日銀券」など、もっぱら専門の金融分野の小説が多いのですが、その中でこの本は異色の存在です。しかも、大変おもしろい!!
あとがきのなかで、この本を書くために作家になった、とまで言われている意気込みが伝わってきます。


時代は、幕末。舞台は彦根。となると、勘の良い方は、井伊直弼の名前が頭に浮かぶでしょう。

タイトルとなった「藍色」は、実は「染付の磁器」の色です。
幕末の一時期、絹屋半兵衛なる呉服商人が、美しい磁器(有田焼)に魅せられ、私財を投げ打ち、「湖東焼」という新たな窯を起業すると言う物語です。
さまざまな障害を乗り越え、事業は無事スタートいたしますが、順調に進んだところで範に召し上げられ、最後は、数奇な運命をたどった藩主と共に、その短い歴史を終えます。

歴史的に短い期間しか製作されなかったため、多くの作品は残されていないようです。彦根の資料館には何点か展示されているようなので、一度見に行きたいと思っています。

日本沈没 第二部 ; 小松左京、谷 甲州

先日、図書館で見つけて借り出してきた本です。

第一部となった「日本沈没」を読んだのは、おそらく中学生の頃ではなかったでしょうか。
当時、大変なブームになり、映画化もされました。もちろん田舎の映画館へ足を運び、しっかりと見に行きました。(最近、リメークされたそうですが、これは見ていません。)

今では、誰でも学校で習う「プレートテクトニクス」も、当時はまだそれほど知られた考え方ではなく、最新の科学に裏づけされた(ようにみえた)映画には、わくわくした思い出があります。

今回読んだ「第二部」は、日本が沈没してから25年後の世界を描いたものです。
時々「???」と思わせる箇所もありますが、今回も、地球温暖化や人口問題、あるいは中国とアメリカの覇権争いなど、なかなかに読ませるエピソードも挿入されています。
ただ、この作品での小松左京氏は、執筆より全体の構想作りに携わったそうで、彼らしさが感じられなかったのは、そのせいかとも思われます。

小松左京さんの作品としては、「日本沈没」のほか「さよならジュピター」、「首都消失」など映画になっている作品が多いのが特徴です。
私的には、「復活の日」がお勧めです。

いずれにせよ長編が多いので、長い時間楽しめるのもありがたいところです。

2008年3月19日水曜日

現代の経営:P.F.ドラッカー

今から半世紀も前に書かれたとは思えないほど、文句なしに秀逸な読み物です。
「マネジメント」と言う言葉を生み出したとされる巨人の代表作。
近年、再刊行されたものを入手し、読破致しました。

まさに、代表作としてふさわしい内容で、経営に携わるあらゆる階層向けに、
上田惇生氏の非常に分かりやすい翻訳で書かれた文章は、読む側に何のストレスもなくスッと入っていく感じがします。

我々のような経営素人にも、それぞれの立場で考えるべきことが書かれており、全く古さを感じることはありません。
原書のタイトルは「The Prectice Of Management」ですから、直訳すれば「経営の実践」となります。すべての理論は実践をともなって始めて意味を持つ、という真理がそこから見えてきます。

これまでの間に、様々な経営指南書、ビジネススキル、自己啓発書を手にしては、片っ端から読んできましたが、いずれも、その著者にとってはベストの手法・考え方であろうと思えるのですが、いざ自分にとっては「行うは難し」と思わせるものばかりでした。

ドラッカーの著書は、いずれも難しいことを要求することはなく、視点を変えることをの大切さを気づかせてくれます。そういうところが、時代を超えて愛されるゆえんでしょうか。

今回の再刊行シリーズは、全15巻で刊行されていく予定です。ようやく5巻を読み終えたところですが、次に読む本が楽しみです。

2008年3月16日日曜日

Start Up

「読書」は、無趣味の代表とよく言われますが、
私の読書歴は幼年時の「アルセーヌルパン全集」から始まります。

それ以来、学校の図書館にあったSF全集などを読み漁りました。
中学、高校では、星新一と松本清張が愛読書。
大学にはいると、吉川英治、司馬遼太郎、城山三郎が加わりました。

今でも、歴史小説はお気に入りで、特に「三国志」「龍馬が行く」は
その後も、何度も読み返すことになります。

今は、仕事柄「経営学」に関する書籍を数多く読むことにしています。
特に、昨年勤務先が変わったことから、往復の電車の中で過ごす
80分ほどを、読書タイムに充てており、毎月20~30冊の
本に巡り会うことができています。

発行時期にはバラツキがありますが、最近読んだ本について
思うところなどを書きつづっていきたいと思います。