2019年10月6日日曜日

2019年9月


9月は計13冊とほぼ平均的なペースで、うち小説が3冊、その他が10冊という結果でしたが、小説の割合が少なく、さらに新書も1冊だけと、かなり偏った形になりました。

3冊の小説のうち2冊は、移動のお供に最適なシリーズ物のミステリで、残りの1冊は、彼らしくないスポ根もので意表を突かれた感じがいたしました。

一方それ以外の分野の本は、いずれの作品もそれなりにお薦めできる、かなりの豊作揃いでした。

まず第一は、かなり古い本ですがハーメルンの笛吹き男が秀逸でした。結構時間がかかりましたが、非常に興味深く読みました。昔、ドイツに住んでいたときに、ハーメルンへも行ったことがありまして、あの童話が恐らく事実に基づいていることをそのとき初めて知りました。そのとき何があったのか、古い資料を丹念に読み解く様は、歴史探偵のようなのですが、それ以上に素晴らしいのは、当時の庶民の暮らしぶりを様々な断片的な資料を基に読み解いているところはゾクゾクしてきます。これはかなりのお薦めです。

ノンフィクション系では未和が、お薦めです。世間を大きく騒がす事件となった電通過労死事件の少し前に起こっていた過労死事件にも関わらず、大きく報道されることもなく問題視もされていませんでした。足下で起こっていた事件であるにも関わらず、報道機関であるはずのNHKの無関心ぶりにも驚かされます。この本自体は、亡くなった方の側から書かれているので、すべてがそのとおりなのかどうかは分かりませんが、書かせまいとする力が働いたのは事実のようですね。労働環境の問題、報道機関のあり方の問題など、いろんな側面から読むことができるお薦めの一作です。

ぶっ飛んだ企画を書籍として実現させた『罪と罰』を読まないもなかなかに面白かったです。書名は知っているけど読んだことがない名作ってたくさんありますよね。その内容を断片的な情報だけを頼りに推理しようという無謀な取り組みです。それぞれの推理過程が文字に起こされて書籍となっているのですが、なんと言っても三浦さんの想像、妄想には度肝を抜かれます。この妄想力こそが彼女の作品の面白さに繋がっているのだと改めて再認識させられます。『罪と罰』を読みたくなりますよ。

あとは、文明探偵の冒険もしも宇宙に行くのならは、どちらも、こうすべきだというような答えが書かれている啓蒙書ではなく、私たちが物事を考えるときに、どう考えるべきなのか、ある種の思考訓練の教科書となるような本でした。あまり手が伸びそうなタイトルではないかもしれませんが、たまにはこんな一冊も良いかと思います。

最後はビジネス関連の本では、少し古い本になりますが、マーケティングの未来と日本宅配がなくなる日が良かったです。特に後者は話題になった本なので、改めて無駄な説明はいたしませんが、お薦めの一冊です。コトラー氏が行政祖機について書かれた書籍も購入しましたので、いずれ御紹介できることと思います。

10月に入っても、日中は30度超えの真夏日が続きますが、朝夕は少しずつ涼しくなって、本を読むにも良い季節になってきました。上には挙げませんでしたが、日本語に関する本も好きなので、過去に出されたシリーズ物を読んでいこうと思っています。

こうやって、自分が考えていることや感じたことを伝える際には、書き言葉で伝えると言うことが基本かと思うのですが、最近はそうでもなくなってきています。それを否定するつもりは全くなくて、それもまた日本語であることは間違いありません。日本語の変遷をたどることで、将来の日本語の変わりようも想像できるのではないかと考えることも面白いとは思いませんか。

そんなことを妄想しながら、過ごしております。

001/112
文明探偵の冒険 今は時代の節目なのか」【講談社現代新書】神里達博
先月の終わりから往復の電車の車中で読み始めた本です。これもどこかの書評で勧められていて、図書館で借りたものでした。勧められポイントが何処だったのかさっぱり憶えていないもんで、目的を見失いながら読んだのですが、話題が繋がりながらも、あちらこちらへ自由に展開していって飽きさることなく読める本でした。60年近く生きていると、あの時、時代は確かに変化した、と思える瞬間に一度ならず出会っているもので、それは人によって様々だったりするのかもしれません。面白かったですよ。(9/6)

誰もが知ってるグリム童話ハーメルンの笛吹き男は、実話を基にしていると言われており、この本はそれを前提に、事件の当時と最初に書物として記された15世紀の世相を丁寧に考察し、事件があったとされる1284年6月26日にいったい何があったのか、突然いなくなったとされた130名の子ども達は何処へ行ったのかという謎に迫ります。もちろん真相は分からないわけですが、多くは資料が残されていない中世の庶民の暮らしを様々な文献の中から拾い上げておられます。おかげで、私たちにもおぼろげながらその実態が創造できるという優れた研究になっています。難解と言えば難解ですが、とても興味深い一冊でした。(9/7)

003/114
私たちにとって宇宙とはいったいどういう存在なのか。私たちが子どもの頃、月面に人類が始めた降り立った瞬間を目撃し、同時に地球を征服しにやって来る●●星人が住んでいる世界に思いをはせたり、爆発的に増加する地球人の未来を救うフロンティアを夢見てワクワクしました。いつの間にか、宇宙開発競争はなりを潜め、あまり話題にも上らなくなりました。まぁ、元々は兵器の開発競争だったわけで、その性能を競うポイントがIT技術になってしまった時点で、各国ともその熱が冷めてしまったわけですがね。そんな中で、太陽系外の宇宙を本気で目指すなら考えておかなければならない課題を提示しながら、論考を深めていきます。題材として、古典的なSF作品が多数引用されていて、それまた大きな萌えポイントでもありました。久しぶりに読みたくなってきた。(9/7)

004/115
安定の面白さを誇る医学ミステリです。今作では、遺体の瞬間移動に挑む師弟コンビです。よく練られていて、冒頭から結末までストーリーとしてもしっかり書かれているのでとても好きなのですが、最後の謎解きに至るまでの伏線として書かれていることが、本筋とはかけ離れているので、それを読んだとたんに、これは最後にキーになるんだと創造できてしまう。こうやって、最後にすべての伏線が回収されていくことを賞賛する向きもあるようですが、私は必ずしもそうは思わなくて、一見最後に意味を持ってきそうなエピソードが、実は何の関係もなかったというのも結構好きです。(9/8)

005/116
スポーツをテーマにした小説集。扱われているのは卓球競歩ブラインドサッカーと、比較的マイナーと言われるスポーツばかり。卓球などは、0コンマ何秒という短時間にボールが行き交い、その瞬間に相手方の攻撃方法を読み合う心理戦の連続であることを、この本で始めて知った。来年の東京オリパラまで一年を切りました。ここ数年のような酷暑と言われるような暑さにならないことを祈りつつ、すべての出場選手がベストを尽くされることを願います。(9/14)

006/117
『罪と罰』を読まない」岸本佐知子、吉田篤弘、三浦しをん、吉田浩美
これはなかなか大胆な書籍です。この4名が、たまたま名作罪と罰を読んだことがないと言うことが分かったことから、作品中の数ページをばらばらに拾い読みしただけで、そのあらすじを推理しようという大胆かつ無謀な挑戦を書籍にしたものです。中でも三浦さんが2,3ページを読んだだけで、登場人物の性格や主人公との関係などを推理し妄想していく様は圧倒的で、この妄想力があの数々の素晴らしい作品を生み出しているのかと改めて感じ入りました。かくいう私が初めて罪と罰を読んだのは、中学か高校時代だったと記憶しています。小学校時代の先生がこの本とレミゼラブルは、必ず読むべきだと言われたのが記憶に残っていて、岩波文庫版で読みました。それから2,3度は読み返した記憶があるのですが、最後に読んだのは就職してすぐくらいの頃でした。今回、改めてあらすじを読み返してみましたが、うっすらとしか憶えておらず、死ぬまでにはぜひもう一度読みたいものだと決意を新たにいたしました。(9/19)

007/118
裁判官が答える裁判のギモン」日本裁判官ネットワーク
岩波ブックレットの一冊で、初学者に裁判の疑問について専門家が答えていくという本です。私自身、大学で法律を勉強しましたが、裁判所の法廷に入るということはなかなか経験できることではないですが、大学時代に授業の一環で裁判を傍聴したこと。仕事の関係であった裁判を傍聴したこと。そして恥ずかしながら、大学時代に起こした交通事故で簡易裁判所に出頭したこと。など思い返すと結構な数が挙げられます。ただ私も、いわゆる訴訟法についてはほとんど勉強したことがないので、裁判での手続きについては疎いところがあります。数年間から、一般人が裁判に参加する裁判員制度が導入されました。国の責任を放棄するものだという批判の声もあるそうですが、私は全面的に賛成の考えを持っています。アメリカでは18歳になると、誰もが陪審員に指名されるかもしれないと言うことで、高校生の間に授業で裁判のイロハについて学ぶそうです。社会のあらゆる仕組みについて、若いときから当事者意識を持って考える機会があるというのは素晴らしいことだと思うのですが、どうでしょうか。(9/22)

008/119
マーケティングの父と言われているフィリップ・コトラーが、日本人向けに書いた書籍なのだが、中身は過去の著作から少しずつ集めたもののよう。翻訳が良いせいか、いわゆるサクサク読めてしまう本でした。かのドラッカーも企業のマネジメントから非営利組織のマネジメントについて書かれていたが、コトラーにも近年、非営利組織のマーケティングについても著書があります。さらには、寡聞にして知らなかったのですが、行政組織についても書かれているほか、私の知らない本がたくさん紹介されていたので、是非読んでみたいと思います。(9/22)

009/120
佐川、ヤマトといった宅配事業者の間で、ドライバーの過重労働、人手不足が大きな問題となった2017年に書かれた著書で、発刊当時も大きな話題になったと記憶しています。通販市場が爆発的な拡大を見せる中で、不在再配達の増加、配達希望時間の集中など物流特にいわゆるラスト1マイルを担う物流事業者に多大な負担がかかっています。従来の買い物では、売り手と買い手が同じ時間と場所に存在して初めて成り立ちましたが、ITの発達で、買い手は、必要だと思うとき・場所で自由にポチッと注文することができますが、最後にを届ける段になると、対面でないと届けることができないという問題が残されており、この問題をいかに解決するかと言う方向でこの本の前半は進んでいきます。しかしながら、社会のすべてがこうした同時性を解消する方向に進んで良いものなのかと言うことを後半では考察していきます。新たなものを生み出すには、むしろ人と人が出会う集積のメリットを追求する方向に向かい始めるのだと言うのが、この本の結論の様です。人口が減少し、社会が高齢化していく中で、これをどう担保していけば良いのか。難しいですね。(9/25)

010/121
社会を動かし、大きな話題となった電通の過労死事件とほぼ同時期に起こったNHK記者の過労死事件。しかしながら当初は全く報道されることもなく、電通事件のみが大きくクローズアップされるという不思議な状態が長く続きます。電通事件では、会社側から亡くなった個人を中傷する逸話がぼろぼろ出てきましたが、このNHKの事件では、協会の内部でもほとんど知られていなかったそうです。この本は、なかったことにされたこの事件を広く知ってもらうために書かれたもので、亡くなった彼女の人となりがよく分かる力作になっています。報道によると、この事件の後から朝の連続テレビ小説が週6話から5話に減らされたりと、働き方改革が進んできているようです。本当はそれを確実に進めるためにも、検証することが大事だと思うんですけどね。なかなか興味深い一冊でした。(9/28)

011/122
岩波書店が10数年間に出版した日本語に関する書籍のシリーズらしく、タイトルに惹かれて借りてきました。世の中には、非常に規則的にできあがった言語と規則はありそうだけど例外ばかりが多い言語があるそうで、日本語は後者の代表のような言語だと言われています。たとえばドイツ語はかなり規則的な言語であって、書き表すための正書法というものが定まっています(と教えられました)。ところが我が日本語の表記といったら自由闊達、何でもあり。しかしながら、それでも通用してしまう不思議な言語なのです。私は、この日本語という言語にも異様に興味を持っておりまして、この手の本が大好きなのです。できればシリーズ読破したい。(9/28)

012/123
とても考えさせられる良い本です。ここで言う呪いの言葉とは、“●●だから、仕方ないよね“●●なんだから、我慢しなきゃ、などといった、人に制限を加える言葉のことで、今も世間に溢れかえっています。ほとんどの場合こういった言葉は、会社の上司であるとか家庭では夫であるとか親だとか、はたまた学校では教師であるとか、いわゆる権力を持った側が、力を及ぼしたい人たちに向けて発せられています。まぁ、発した側がどれくらい意識的であるのか分かりませんが、ほとんどの場合、それほど知的な人たちが発しているとは思えないので、何の考えもなく脊髄反射的に発しているのではないかと私は想像しているのですが。この本の後半では、もっと大きな存在が発している呪いの言葉について書かれています。とても読みやすく面白い本なので、興味のある方は是非とも読んでください。(9/29)

013/124
シリーズ二作目です。前作が面白かったので読んでみました。主人公は大学教授の化学者で、学内で起こる事件の謎を解くという短編集なのですが、学外に及ぶような大事件ではないので警察の出番もなく、人が死ぬこともない物語なので、電車移動のお供、お酒のお供にぴったりの一冊です。また、そんな機会に次作を読みたいと思います。結構面白いですよ。(9/29)