2022年5月21日土曜日

2022年4月

2022年4月は17冊。うち小説が12冊、その他が5冊という結果でした。 

この月は、37年にわたる公務員生活最後の一月で、あまり難しいことを考えなくても良いような軽めの小説が多かったですね。

特に、麻見さんが4冊。これは一月に同一作家で読んだ最多かもしれません。そして今村さんが2冊と、同じ作家さんの本が続いた月でした。

そんな中でのお薦めですが、小説では麻見さんは以前にもお薦めしたような気がするので除外すると、やっぱり今村さんの本は二冊ともお薦めですね。

“じんかん”は、よく知られた登場人物ではありますが、彼らのキャラクターを独自に解釈して創出したところに新しさを感じます。

“火喰鳥”は、この後もシリーズ化されていくのですが、続編を読みたくなるように、その一作目としての役割を十分果たしています。挫折から蘇る主人公はなかなか格好良く描かれています。

小説以外は少なかったのですが、“最悪の予感”は良かったです。本文にも書きましたが、あらゆることが記録され検索可能な状態になっているアメリカという国ならではのノンフィクションですね。これが、記録しない、さらに記録を隠蔽、改ざんすることが普通に行われる国だと成立しない分野です。改めてアメリカという国のすごさを感じます。読み物としても面白くお薦めです。

もう一冊、これは教科書として書かれた“日本商業史”は、とても面白かったです。図書館でたまたま見かけて借りてきたのですが、明治維新以降の日本の商業史を丁寧にたどった名著です。読み物としてもとても面白い。マニアの方にはお薦めです。

冒頭にも書きましたが、4月末で退職し、5月は一月の間、モラトリアムを謳歌しています。その割に読書量は増えていないのが少し不思議。人間って時間がありすぎると、まさに“持て余してしまう”ものだと実感しています。時間は貴重であればあるほど、有意義に使おうとするのですね。

 

001/049

ドミノ倒し」貫井徳郎

本格推理かと思いきや、真逆のユーモアミステリでした。若干合うトーリーが荒っぽく感じたのですが、気のせいでしょうか。ある事件の調査依頼を受けた私立探偵が、調査の中で、次から次へと死体を見つけていきとんでもない陰謀に巻き込まれるという荒唐無稽な物語です。終わり方がちょっとね。(4/1)

 

002/050

聖徳太子の密使」平岩弓枝

この方は、こんな小説も書かれていたのですね。ちょっと驚きです。聖徳太子の娘が男装をして、理想郷を求めて西の国へ旅をする。お供をするのは猫が人間に化けた三人(匹?)武人。それなりに面白かったですが、なんか別の作家さんが書いた本のよう。昔、彼女の“お宿かわせみ”シリーズが、テレビドラマになっていまして、母が楽しみに見ていたのを思い出したのですが、ついその隣にあったこの本を借りてきました。次は予定どおり“かわせみ”シリーズを借りてきます。(4/2)

 

003/051

骸の鍵」麻見和史

今や乗りに乗っている警察小説の騎手の作品で、これは珍しいノンシリーズ。ノンシリーズはキャラを理解するまでが大変。(4/3)

 

004/052

フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ」笹原和俊

最近よく見る思い込み”“予断に関する解説書です。フェイクという言葉は、前の米国大統領が多用したおかげで、すっかり耳なじみのある言葉となりました。自分の都合の悪い事実にはフェイクだ!と攻撃することでごまかす手法は、我が国の指導者にもすっかり定着しました。この本の中では、現実の世の中に溢れているフェイクニュースがどのように拡散されていくのかを説いた本です。これって放っておくと、100年後には事実として記憶されているかもしれないと言うことを考えると、恐ろしいことです。(4/6)

 

005/053

水葬の迷宮 警視庁捜7 」麻見和史

お気に入りの作家さんの人気シリーズです。テレビドラマにもなったのかな?猟奇的な殺人事件が過去の事件とつながるのですが、登場人物のキャラも立っていてなかなか面白かったです。最初はシリーズ化される予定ではなく、単発ものとして書かれたようです。続編も読みます。(4/7)

 

006/054

時限捜査」堂場瞬一

彼も警察小説の旗手ですね。かなり前に書かれた本ですが、登場人物が重複する作品群の中の一冊です。別にそれぞれにつながりがないので、シリーズとは言えないかもしれませんが、彼らの信頼がその後も続いていることを実感させられる展開になっています。もちろん単体で読んでも楽しめます。(4/7)

 

007/055

真夜中のマオネット」知念実希人

最近売れっ子ですね。医療ミステリを書かれていた頃はとても上質のミステリを書かれていたのですが、普通のミステリを書かれるようになってからは、若干不満を感じていました。今作は、帯の煽りも狙いすぎで、ちょっとどうかなと思っていました。最後の結末は予想されたとおりなのですが、そこに至るまでの描写はそれなりに良かったと思います。(4/9)

 

008/056

変な家」雨穴

ネットで評判になっているらしく、数週間待ちでようやく借りることができて読んだのですが、まさかの大はずれ。私向きではありませんでした。激しく後悔。(4/10)

 

009/057

日本流通史 小売業の近現代」満薗勇

明治以後の焼く150年間の国内流通史の教科書として書かれた本なのですが、とてもわかりやすくて一般書としても、とても面白い一冊です。いわゆる流通革命で、問屋は不要になると誰もが思っていたところ、必ずしもそのような方向には時代は進まなかった。日本独特の商慣習は海外の理論どおりには進まなかったというのがよく分かってとても興味深いです。(4/12

 

010/058

古代の技術を知れば日本書紀』の謎が解ける」長野正孝

土木技術者が書いた歴史考察書です。専門的な知見から導き出される推測は、なかなか興味深いものがあって、神武東征や神功皇后の三韓征伐には史実が含まれていると信じたい向きにはかなり刺激的な内容です。日本書紀は、ときの政権がその正統性を主張するために創作したものですから、史実かそうでないかを議論すること自体がナンセンスだと思います。まぁ、あれだけ壮大な物語を創作した想像力には敬服します。(4/14)

 

011/059

さらば長き眠り」原尞

これもお気に入りのハードボイルド小説です。この作者は寡作で、このシリーズくらいしか知らないのですが、結構好きです。(4/16)

 

012/060

虚空の糸 視庁殺人分析班」麻見和史

これもシリーズものの一冊です。好きで読んでいます。(4/17)

 

013/061

最悪の予感 パンデミクとの戦い」マイケル・ルイス

“マネー・ボール”の著者による最新の“新型コロナ・パンデミック”対策の裏で起きていた事実の記録です。かすかに見えた予兆から将来を正しく予測できた人たちと全く想像すらできなかった人たちの違いって何なんだろう。おそらくどちらにも理はあるんだろうけど、結果はご覧の通り。この本はアメリカでの物語なんですが、情報が厳しく隠蔽されている日本ではなかなか書けない内容だと思います。このパンデミック、早く収まって欲しい。(4/19)

 

014/062

さばの缶づめ、宇宙へ行く 鯖街を宇宙へつなげた高校生たち」小坂康之、林公代

お隣の福井県小浜水産高校の生徒たちが、校の名物であった鯖缶に改良を加え、宇宙食として完成させるまでの長い物語です。こういった物語には熱心な指導者がつきものですが、この場合も、一人の青年が地元では“荒れた”高校に赴任するところから物語が始まります。その後、数代にわたる生徒たちのやる気や地元の人たちの応援、さらにはいくつかの偶然が重なって、大望を成し遂げます。最後は高校統合で、高校の名前が変わってしまうのですが、なかなか感動的なお話でした。(4/20)

 

015/063

かん」今村翔吾

今をときめく今村さんが初めて(?)直木賞候補になったときの作品です。主人公は主殺しで悪名高き松永久秀。室町幕府の最後を支えたもののその後は信長につき、最後はその信長に弓引いて、挙げ句自爆するという波瀾万丈の人生を送った人物です。この本では、その久秀と信長の得も言われぬ信頼関係が描かれていて、なかなか胸熱な物語です。(4/24)

 

016/064

死者の盟約 警視特捜7」麻見和史

シリーズ化された第二作です。一作目では端役だった登場人物が、今作では主要登場人物として、メンバーの一人になっています。この後はどうなっていくんだろう、楽しみです。(4/27)

 

017/065

火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」今村翔吾

今村さんの本が続きましたが、記念すべきデビュー作ですね。江戸時代の火消しを扱った物語で、当時の仕組みがよくわかります。今も続く人気シリーズになったようで、続編も読んでいこうかな。面白かったです。(4/30)