2022年3月22日火曜日

2022年2月

2022年2月は計14冊で、小説が7冊それ以外が7冊という内訳でした。

最近は読書以外に時間を費やすことが多くて、ご覧のようにややペースダウンしております。

そんな数少ない中でのお薦めです。

 まず小説では、澤田さんの与楽の飯が面白かったです。時代背景から言うと、かなり強引な筆運びだったかとも思いますが、大仏建立現場の喧噪が目に浮かぶような描写はには引き込まれました。結構お薦めです。

そして小説以外では、結構興味深い本もありました。

まずは、幕末三舟伝。先月読んだある本で、髙橋泥舟という人の存在を初めて知り、この本が関連本としてあげられていたことから、読んでみました。これまた、ある一面から見た幕末の真相です。とても面白かったですが、話半分として読んだ方が良いかもしれません。

 次は、ヤングケアラーです。今では大きな問題として認識されてきつつありますが、この問題を大きく世に問うた毎日新聞の連載を基にしています。私も最近ようやく新聞紙面などで目にするようになり、問題として認識するようになりましたが、この本を読むと、相当に根の深い問題であることがよく分かります。

結構超大作でしたが、忘却のしかた、記憶のしかたもめちゃくちゃも面白かったです。是間、以前読んだ本の中で参考図書としてあげられていたもので、是非読んでみたいと思い読んでみました。いわゆる歴史修正主義について書かれたものですが、この本では、特にアメリカの第二次大戦での成功体験が、その後のベトナム、イラクに繋がっていったという雲石はとても興味深く、こういった視点で歴史を取らえ直すことができることが素晴らしいと思います。特に今、ロシアの(というよりプーチンの)愚行が世界から非難を浴びていますが、彼の頭の中は、きっと私たちが知っているのとは違う歴史が刻み込まれているのでしょうね。未来社会の有り様を考える上でも、とても興味深い一冊でした。

実は、今月3月もいろいろあって読書時間が不足気味で、やや悶々としています。本当なら、公務員生活を終えた後の新しい人生も見えている時期なのですが、まだそれも定かではありません。

残り少ない人生、有意義に過ごしたいと思っています。

 

001/021

理想だらけの戦時下日本」井上寿一

時代は太平洋戦争前。日中戦争の進行とともに国民精神総動員運動が始まった頃、その運動を推し進めるために取られた様々な仕掛けについて解説した本です。まだ、当時は政府が躍起になって推し進めたにもかかわらず、笛吹けど踊らず状態だったようで、政府の理想どおりには進まなかった様子がよく分かります。しかしながら、その後太平洋戦争の開戦とともに、強権的な思想統制が進み、暗黒時代に突入していきました。(2/4)

 

002/022

幕末三舟伝」頭山満

勝海舟、山岡鉄舟、髙橋泥舟という明治維新の際、幕府側の代表する人物として活躍した三人に関する評伝です。とはいえ書かれたのは明治も末の頃で、既に伝説として脚色された物語も多数あるように思われます。お話としてはとても面白い読み物でしたが、話半分くらいで考えた方が良いかも。(2/7)

 

003/023

グレート・ギャツビー」フィツジェラルド

映画にもなった名作ですが、映画を視たことも読んだこともがなかったので、どんな物語だったのかとの興味から読んでみました。舞台は第一次大戦後のアメリカ。混沌とした社会と享楽的な主人公の生活風景が、ある種の無常を感じてしまいました。作者自身が若くして作家として大成功し、華やかな人生を送りつつも、若くして亡くなったそうで、この主人公と重なる部分があることも、この小説が愛された理由でしょうか。(2/12)

 

004/024

定年後の作法」林望

作家であり研究者でもある著者が考える定年後の過ごし方指南書。まもなく定年退職を迎える身として、冷やかしがてらに読んでみました。これからは誰かの生き方をまねしながら生きていくのではなく、自分自身の考えで生きていきたいと考えています。公務員であるからできたこともありましたが、公務員だからできなかったこともたくさんありました。完全リタイアするまでには、もう数年掛けなければいけないのですが、完全リタイアしたときに、途方に暮れることのないよう、今後は生きていきたいと思っています。(2/13)

 

005/025

ヤングケアラー 介護する子どもたち」毎日新聞取材班

今では普通の言葉として使われることになったヤングケアラーという言葉を、有名にしたのが毎日新聞の特集だったといわれています。この本は、その取材を通して記者たちが出会った人たちについて、さらに掘り下げ、顕在化された問題を、国民皆の課題としてとらえていくような素材として提示されています。子どもたちの学習機会が脅かされることで、いわゆる貧困の連鎖に巻き込まれてしまうことは容易に想像できます。社会的保護が必要とされる人たちへのいわれ無き差別と偏見が、格差の拡大を助長しているとも言われます。速やかな解決は無理だとしても、快方に向かいつつあるという実感が持てる社会であって欲しい。(2/14)

 

006/026

「仇討 傑作時代小説集」直木三十五

名前はめちゃくちゃ有名だけれど、どんな小説を書いた人なのか、はたまたどんな作家だったのか全く知らない、そんな作家の代表格です。どうやら時代小説を得意とされていたようで、そんな中でも、仇討ちをテーマに書かれた短編を編んだものです。なるほどこんな本を書く人だったのね、というのが率直な感想。さらに筆名の由来も初めて知りました。(2/14)

 

007/027

ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機」濱口桂一郎

ジョブ型雇用という言葉を日本に紹介したのは俺だ、と書かれていたので、官僚上がりの自己陶酔型の解説書なのかと高をくくっていたのですが、なかなか読み応えのある本でした。失礼いたしました。今、国が進める働き方改革の中で、ジョブ型雇用の導入も検討されているようですが、この本を読むと、本格的な導入は100%不可能で、雇用者側にとって都合の良い部分だけをつまみ食いしようとしているのだろうと想像できます。しっかり勉強しないと危ないですね。(2/17)

 

008/028

はやく名探偵になりたい」東川篤哉

著者の書くシリーズものの一冊です。たまたま見かけて借りてきました。気軽に読めて、それなりに面白いので、読み疲れたときの箸休め(失礼!)に最適です。結構好きです。(2/19)

 

009/029

ドキュメント」湊かなえ

著者には珍しい、高校の放送部が舞台の学園もの小説です。そういえば、デビュー作の舞台も高校でしたね。交通事故で陸上選手の道をあきらめざるを得なかった主人公の屈託と周囲の支援、なんか青春ですなぁ。ミステリ要素はほとんどありませんが、これはこれでありかなと思います。面白かったです。(2/19)

 

010/030

忘却のしかた、記憶のしかた 日本・アメリカ・戦争」ジョン・W・ダワー

戦争に至るまでの過程、戦いの最中、そして戦後処理。その一連の流れは、歴史として記憶されているはずなのですが、いつのまにか、自分にとって都合の良い事だけが記憶されていきます。いわゆる歴史修正主義とも言われるヤツです。この本は、アメリカが主体となって書かれており、太平洋戦争の良かった記憶が、その後のベトナム戦争、イラク戦争へと繋がっていると喝破しています。記憶というものは、主観的なもので、同じ出来事に関する記憶も、人によって全く違うのが普通です。従って、歴史はある意味相対的にならざるを得ない性質を持っています。でもそこを踏ん張って、事実を事実として受け止める度量が必要なのでしょう。この本を読んで、E.H.ノーマンという人物を初めて知りました。早速彼の著書を買い求めたので、いつか読みたいと思います。とても面白い本でした。(2/21)

 

011/031

『頭のゴミ』を捨てれば、脳は一瞬で目覚める!」苫米地英人

たまたま、AmazonPrimeで読み放題だったので読みました。それだけです。その後web上で、しつこく著者のセミナーや著書を勧めてくるので、鬱陶しいです。(2/21)

 

012/032

与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記」澤田瞳子

直木賞作家と成られた著者の作品は、結構好きです。この作品は奈良時代全国から大仏造営のために集められた人たちに、食事を提供する料理人にスポットを当てた小説となっています。もちろんフィクションなのですが、想像の羽をめいっぱい広げて書かれており、とても面白い物語になっています。(2/23)

 

013/033

夢巻」田丸雅智

最近では珍しい、ショートショートの作品集です。面白い視点から書かれた物語たちは、一風変わって、とても面白い作品集になっています。良かったです。(2/26)

 

014/034

平凡な革命家の食卓」樋口有介

いちおうミステリ小説。出だしが思わせぶりで、どこへ連れて行かれるの不安になりながら読み始めました。最終的には、普通のミステリ小説として着地したので、ホッとしながら読み終えました。それなりに面白かったです。(2/27)