2023年12月17日日曜日

2023年11月

読書の秋の最終月(?)11月は、小説が16冊、それ以外が7冊、計23冊という結果になりました。

最近、京都市の電子書籍図書館というやつにはまりまして、気に入った本があれば即借りて読むことができます。スマホでも読めるので、満員の車内でも関係なく読めるので、軽めの物語を中心に往復の通勤車内のお供にドはまりしています。これは、お薦めです。

さて、そんな中での小説のお薦めですが、どうしてもお気に入りの作家さんが多くて悩ましいところで、いまさらこれほどのベストセラーを挙げるのは恥ずかしいのですが、平岩弓枝さんの『御宿かわせみ』は、めちゃくちゃ面白かったです。34巻もの超大作になるまで愛され続けたというのもよく分かります。本文にも書いてますが、旅宿を舞台にした人情物かと思っていたのですが、いわゆる捕物帖で、いい意味で予想が裏切られ、なおかつどんどん先を読みたくなる筆致は本当にお見事で、はまってしまいました。これは今後34巻まで完走したいと思います。

小説以外では、農業消滅がとても興味深く考えさせられる本でした。自分も田舎を捨て、農業を放棄した身の上なので、恥ずかしくて堪らないのですが、国内での食糧生産をどうするのか、いい加減確りとした対策を考えないと、次の世代の人たちは食糧不足で大変なことになりそうです。当然のことながら政府には全くその気はないようなので、危機感を感じている我々が自衛のために何か考えないといけないということではないか。最近、そのように考えるようになりました。田舎で遊んでいる田んぼや畑をどうしようか。真剣に考えています。

電子書籍図書館は、簡単に借りられて、1~2ページ読んで気に入らなければ、親指操作で簡単に返却できます。おかげで、これまで名前を知らなかったような作家さんの本にもいくつか出会えました。京都市図書館の貸出カードをお持ちの方ならだれでも利用可能なので、是非ともお薦めです。

11月が終わって179冊。このペースだと年間では200冊を若干下回るくらいかなと思いますが、今読んでいる本も面白いです。残り一か月も楽しみます。

 

001/156

邪神の天秤 警視庁公安分析班」麻見和史

お気に入りのシリーズの続編となるシリーズ。全シリーズで警視庁刑事課のエースだった主人公が、公安課へ異動となって、全く違う操作手法に戸惑いつつも、逆に刑事課時代の捜査手法を持ち込むことで、事件捜査に貢献していきます。このシリーズは、全体で大きな流れを作っているようで、順番に読まないと訳わからなくなりそうです。(11/2)

 

002/157

激安ニッポン」谷本真由美

世界の中で、とびぬけて物価が安い日本について書かれたものです。円安と低い物価が正義だと思い込んでいる政府、日銀のとんでもない政策のおかげで、この有様です。どうも奴らは、日本という国を誰かに売っ払いたいようですね。賢い人、要領の良い人は、どんどん海外へ逃げていく。一体全体どうしたいんだ?(11/3)

 

003/158

現代の奴隷 身近にひそむ人身取引ビジネスの真実とわたしたちにできること」モニーク・ヴィラ

図書館でたまたま見かけて借りてきた本だったのですが、思った以上に面白いというか興味深くて考えさせられる書物でした。身内や恋人など身近な人たちから犯罪組織や闇ルートを通じて、知らぬ間に人身売買され、奴隷契約の下、性搾取や労働搾取にとらわれている人々が、全世界で5000万人以上存在すると言われているそうです。この本は、そんな状況から逃げ出し、立ち直ったサバイバーといわれる人たちの経験談を通じて、その実態を明らかにしたルポルタージュです。外国の出来事と高をくくっていると、コロンビアから性奴隷として強制的に働かせられた舞台として日本の東京が出てきます。まさに極身近にひそんでいることがよく分かります。よく知られているように、技能研修制度も奴隷契約の温床としての側面を持っており、脱走者も多数出てきていますが、日本の入管制度では、その被害者が犯罪者として裁かれる仕組みになっています。また、今朝の新聞では、カンボジアで特殊詐欺グループの一員として強制労働を強いられていた日本人が逮捕されたというニュースも報道されました。こうした罠に落ちないための仕組み、罠に落ちてしまった人たちを救う仕組みを早急に作ることが望まれています。多くの気づきを与えてくれた素晴らしい書籍でした。皆さんにもお薦めします。

(11/9)

 

004/159

偽神の審判 警視庁公安分析班」麻見和史

先日読んだシリーズの続編で、この二冊でとりあえず最初の大きな事件は片が付いたという感じです。実は、どれから読んでも大丈夫だろうと、この本を先に読み始めたのですが、冒頭からこれはダメだと気付き、慌てて最初の一冊を読んでからこの本に着手しました。シリーズ物は順番に読め。鉄則ですね。 (11/17)

 

005/160

農業消滅 農政の失敗がまねく国家存亡の危機」鈴木宣弘

元農林水産省の官僚ということで、若干眉に唾つけながら読んでおりましたが、その予測を裏切る面白さでした。自分の生家が農業をやっていたこともあって、農業政策には少なからず興味を持っておりました。我が家のような小規模農家では、農業だけで生計を立てるのは不可能で、父も普段は国鉄で働いて、休日に農業をやるといういわゆる兼業農家でした。周りの家もほぼ同様で、専業農家というのは数えるほどだったと記憶しています。自分も、本当は地元の市役所に努めながら農業を続けていこうと思っていたのですが、どこで間違ったのか、今のような羽目に陥ってしまいました。今や日本の農業は絶滅の危機に瀕しています。食の安全保障などということがまことしやかに叫ばれますが、エネルギーも資料も農薬もすべて輸入に頼り切った現状ではお寒い限りです。座して死を待つのみか。どうにも明るい未来が思い描けません。(11/14)

 

006/161

琥珀の闇 警視庁文書捜査官」麻見和史

文書、文字を手掛かりに事件の謎を解く。これもお気に入りのシリーズ最新刊です。主人公に思わぬライバルが出現するのですが、それが吉と出るか凶と出るか、興味深いです。(11/18)

 

007/162

ワカタケル」池澤夏樹

主人公は雄略天皇。兄である安康天皇の死後、ほかの兄弟やライバルたちを次々と葬り去り、皇位を勝ち取る。その後も暴虐な衝動を抑えきれない姿がありありと描かれる。日本書紀に書かれた事跡を基礎に物語にされています。稲荷山古墳から出土した鉄剣のエピソードが描かれるなど、歴史的にも興味深い物語となっています。(11/18)

 

008/163

フォトミステリー」道尾秀介

一枚の写真をもとに書かれた数行の短いストーリーを集めたもの。短編集と呼ぶにもあまりにも短いストーリーたち。中には、「?」と思うものもいくつかありましたが、思わずうならせられるような深い作品もありました。(11/18)

 

009/164

パリ警視庁迷宮捜査班」ソフィー・エナフ

パリ警視庁のはみ出し者、問題児ばかりを集めた特別な部署が作られる。癖が強すぎるメンバーではあるが、決して無能であるというわけでもなさそうだ。ただし予算はない。本当に大丈夫なのか。(11/18)

 

010/165

神様の用心棒1 うさぎは闇を駆け抜ける」霜月りつ

ついネットで見つけて、思わず一気読みをしてしまいました。シリーズものです。幕末、兄の後を追って敗走する新選組に従い、北海道の五稜郭で命を落とした主人公が、なぜか十年の後、函館山に集まった怪のものから、人々の暮らしを守るため神様の使いとしてよみがえる。なかなかおもしろかったです。(11/20)

 

011/166

神様の用心棒 2 うさぎは玄夜に跳ねる 」霜月りつ

シリーズ2作目。

(11/21)

 

012/167

ブラック・スワンの箴言 合理的思考の罠を嗤う392の言葉」ナシーム・ニコラス・タレブ

ベストセラーとなった『ブラック・スワン』の作者による箴言を集めたもの。それっぽいことが、まことしやかに書かれているですが、所詮はそれだけの事。特に座右の銘にしようとか、心に刻んでおこうかというような気にはならない。箴言ってそういうものだと思っています。(11/22)

 

013/168

JK」松岡圭祐

作者の描くスーパー女子高生の新シリーズです。当たり前のことを貫こうとしただけで、やくざまがいの不良たちに両親を惨殺され、自らも身も心も殺されてしまった主人公が復讐に立ち上がります。冒頭の残虐な描写はかなりきついです。面白いけどお薦めはできないレベルです。(11/23)

 

014/169

御宿かわせみ」平岩弓枝

全部で34巻にも及ぶ長大シリーズの一作目です。その昔NHKのドラマになっていたものを亡くなった母が大好きで、毎週楽しみに視ていました。当時は全く興味もなかったのですが、最近改めてどのような物語だったのか読んでみようと思い立ち、読み始めました。で、今まで全く知らなかったのですが、いわゆる捕物帖といいますか、時代劇ミステリだったんですね。旅館が舞台ということで、人情ものかと漠然と思っておりましたが、そこがちょっと驚きでした。結果、とても面白かったです。とりあえず全34巻にチャレンジします。(11/23)

 

015/170

トッカン 徴収ロワイヤル」高殿円

これもテレビドラマにもなりました税務署の徴収官として活躍する主人公を描いたシリーズものですね。今作は短編集ですが、徴収の現場だけでなく、税務大学校での研修の様子も描かれるという特異な作品となっています。結構面白かったです。(11/25)

 

016/171

JK」松岡圭佑

正体がばれそうになった主人公が、暴力団の犯罪計画の端緒をつかみ、それを妨害するため、彼らに挑みます。こちらもかなりハードです。(11/26)

 

016/172

宇宙大密室」都築道夫

この作者はミステリ作家という認識だったのですが、元は編集者であったり翻訳家であったりといろんな顔を持っておられたのですね。この作品集は、その中でもSF小説を集めた作品集になっています。実は、彼の小説を読むのはこれが初めて。こんなお話を書かれる方だったのですね。(11/27)

 

017/173

神様の用心棒3 うさぎは梅香に酔う」霜月りつ

シリーズ3作目。

(11/27) 

 

018/174

神様の用心棒 4 うさぎは桜と夢を見る」霜月りつ

シリーズ4作目、おそらく完結編です。(11/28)

 

019/175

―幽霊絵師火狂- 筆のみが知る」近藤史恵

主人公は、何かが見える風変りな絵師。料理屋の二階に居候しながら描く絵は、怪しげな怖い絵ばかり。料理屋の娘が見る悪夢から解放し、厄介ごとを解決したことから信頼を得、娘を助手代わりに持ち込まれた謎や事件を解いていきます。この作者がこんな作品も書かれるのかと驚きました。(11/28)

 

020/176

東アジアと日本  シリーズ地域の古代日本」吉村武彦、川尻秋生、松木武彦編

特定の地域にスポットを当てながら、古代日本を検証しなおす新シリーズの一冊目で、東アジアという世界史の中での日本の古代について概観していきます。まさに概観で、興味があったら参考図書に挙げた専門書を読んでねという内容になっています。中に『災害』や『ジェンダー』といった切り口で書かれた章もあって楽しみにしていたのですが、ちょっと肩透かしでした。史料がないのは承知の上ですが、せめても少し踏み込んでほしかった。(11/29)

 

021/177

ドキュメント通貨失政 戦後最悪のインフレはなぜ起きた」西野智彦

面白かったです。今からおよそ50年前に起こった『ニクソンショック』から『オイルショック』『狂乱物価』と続いた2~3年を、当時の回想録や新聞記事などから多角的に検証しながらまとめられた大作で、当時の日本銀行や政府内部の様子が手に取るように描かれています。いずれも(自分の都合の良いように修正されたであろう)誰かの記憶をもとに描かれていることから、どこまで信頼のおけるものかは判らないのですが、少なくとも全体最適を考え責任をもって決断できるリーダーがいなかったということは確かなようです。すでに退任した前日銀総裁や元首相が進めた異次元緩和も全く功をなさなかった現在のかじ取りにも通じるようで、暗澹たる気持ちになります。歴史には決して学ばないというのは、伝統芸なのでしょうか。(11/30)

 

022/178

不安に克つ思考   賢人たちの処方箋」クーリエ・ジャポン編

2020年から始まったパンデミックの時期に集中的に発刊されたシリーズのうちの一冊です。19名の賢人と呼ばれる方々が、この状況下でどんなことを考え発信したかまとめられています。例によって日本人は一人もいません。パンデミックで大きく変わったこともあれば、変わったように見えてたけれど、結局元通りということもありました。しかしながら、ものの見方は明らかに変わったように思えます。(11/30) 

 

023/179

神の豚」溝渕久美子

12回創元SF短編賞優秀賞受賞作だそうです。これも京都市の電子書籍図書館を眺めていて見つけました。最新の科学が、翌日には陳腐なものになっている今という時代は『SF=空想科学小説』という分野の物語を書くのがとても難しい時代になってきたのではないかと思っています。そんな中で、SF小説を書こうとすると、どうしても如何に不条理な世界を描くかということがポイントになってくるように思われます。この物語は、突然兄が豚になってしまった、驚愕の世界を描いています。それを加味したとしても、これってSF小説なのか?若干違和感を覚えます。(11/30)

2023年11月8日水曜日

2023年10月

読書の秋10月は、小説が12冊、その他が4冊、合計16冊という結果になりました。

秋とは名ばかりで、気温の高い日が続いており、体調の管理が難しいですが、週末はボチボチ出かける機会も増えてきて、まとめ読みもままならない有様でした。

てなことで、今月のお薦めですが、小説では次の二冊です。

まずは、『口訳古事記』です。これは小説に含めてよいのかどうかわかりませんが、物語性が強いということでこちらに分類いたしました。読みにくい古語で書かれている古事記を河内弁に翻訳するという快挙で、スピード感もあって一気にその世界にはまり込み、とても面白く読破しました。考えてみれば、古事記が書かれていた頃は、大和・河内政権の全盛期ですから、この言葉の選択も間違いではないような気がします。古事記に書かれている誰もが知っているエピソードもこうやって読むと新鮮で面白い。ぜひお薦めです。

二冊目は、古典ミステリの名作『幻の女』です。20世紀最高のミステリにも挙げられている名作ですが、今回初めて読みました。噂にたがわぬ面白さで、設定といい、クライマックスに至るまでの運びといい、ほぼ完ぺきなミステリです。近年の読者を試すような謎解きや複雑な人間関係もなkう、純粋に物語として楽しめるお薦めの作品でした。

翻って小説以外の本は、今回は4冊だけでしたので、これがお薦めという感じではないのですが、『子供の貧困』については、胸につまされるものがあり、今も最も力を入れて解決しなければならない課題だと再認識しました。失われた30年、格差の拡大、弱者の切り捨て。この間に執られたすべての政策の末路がこの現実です。かかわったすべての政治家は恥を知るべきです。彼らを選んだ私たちは大いに恥じるべきです。ただそれでは何も変わらないので、反省して行動を起こさないといけないのではない。そんな感想を持ちました。

つい、先週末まで虎のアレで、この春から長く楽しい季節を送らせてもらいました。

ようやく落ち着いて好きな本が読める日々が返ってくるなぁと思いながらも、こうやってインプットするだけでなく、アウトプットもしっかり考えないといけないなぁと思っています。

役所を離れ、ある程度自由な身となったので、これからいろいろと考えていきたいと思っていますので、書物だけでなく、いろんな人との出会いも楽しんでまいります。

ということで、来月も乞う御期待。

 

001/140

泥棒はスプーンを数える」ローレンス・ブロック

大好きなシリーズのおそらく最新巻。出版形態も変わっています。主人公と相棒のいつもながらの軽妙な会話とスマートな盗み口に胸がすく思いです。もっと読みたい。(10/3)

 

002/141

クロイドン発12時30 FW・クロフツ

全く知らない作家さんだったのですが、いわゆる倒叙ミステリの先駆けという紹介を受け、読んでみました。まだまだ、ミステリという分野が確立されていない頃の作品でもあり、かなり隙だらけという感じでしたが、罪を犯した犯人が、自らの罪が暴露されるのではないかと、おびえながら送る日々の心理描写は、真に迫るような書きっぷりで、それだけでも読む価値があったように思われます。(10/5)

 

003/142

水底図書館 -ダ・ヴィンチの手稿-」金子ユミ

これまた初めての作家さんです。設定があまりにぶっ飛びすぎていて、???が連発です。たとえありえないような設定であったとしても、物語として成立していればいいのですが、そうでもなさそうで、あちらこちらに小さな綻びが見え隠れします。難しいなあ。(10/6)

 

004/143

まんが訳 酒呑童子絵巻」大塚英志 監修 、山本忠宏 編

たまたまWebで見かけました。酒呑童子絵巻をはじめとする3つの絵巻物を漫画風に編集したものです。漫画の描き方には一定のルールがあるようで、世の中の漫画はほぼそのルールに則って描かれています。当然そうじゃないと読むコマの順番がわからないですよね。さらに俯瞰やクローズアップなどの描き方も重要です。この本では、一つの絵に描かれた複数のメッセージを細かなコマに割ってつなげることで、あたかも一つの漫画作品のように提示してくれています。なかなか面白取り組みでした。(10/6) 

 

005/144

口訳古事記」町田康

めちゃくちゃおもろいです。『口訳』となっていますが、実態は『河内語訳』。ほとんどの登場人物(神様)が、河内弁をしゃべってます。天孫降臨から出雲の国譲り、神功皇后、大和武尊と古事記の内容を忠実に踏まえながらの大長編です。神々がいかに横暴かつ残酷だったのかということもよく分かります。長いけどページをめくる手が止まらないので、最後まで楽しく読めます。(10/8)

 

006/145

呪い人形」望月諒子

最近人気があるのですが、初めて読んだ作家さんで、重いけど結構面白い。全く知らなかったのですが、いわゆるシリーズものなんですね。でもそんなこと関係なしに読めるので良かったです。人が人を恨む姿が醜悪なまでに描かれていて、かなりヘビーです。読み進めるには結構体力を使う、そんな本でした。(10/9)

 

007/146

鍋奉行犯科帳 お奉行さまのフカ退治」田中啓文

いつものシリーズです。安心の面白さ。(10/12)

 

008/147

魔女と過ごした七日間」東野圭吾

ラプラスの魔女からの続々編です。時代は若干進んで、AIが幅を利かせています。自動運転も当たり前で、遺伝子情報からとんでもないものが予測できてしまう技術まで開発されています。そういった時代におけるミステリってどうなるのかという一つのケースを提示しています。なかなか面白い発想ですね。ただ彼の作品にしては若干の物足りなさが残る一冊でした。(10/14)

 

009/148

増補版 子どもと貧困」朝日新聞取材班

数年前、まだこの世に『ヤングケアラー』という言葉が認知されていなかった頃に朝日新聞で連載されていたものに、さらに取材を重ね増補して出版されてものです。子供の6~7人に一人は貧困状態にあると言われていますから、他人ごとではないはずなのですが、なかなか具体的にイメージできないところもあります。ところが最近、知り合いが子供の頃、この本に描かれているような厳しい環境に育っていたということが判り、改めて実感として問題の根深さに気づきました。よく貧困の再生産、連鎖ということが言われますが、その鎖を断ち切ることはとても難しいことで、誰かの手助けが必要です。残念ながら、私たちが住まう日本という国には『政治』というものが確立されておらず、この状況を何とかしようという方向に社会は向かっていきません。愚かな政治を招いてしまった私たちの責任は重い。(10/14)

 

010/149

名探偵のままでいて」小西マサテル

このミス大賞の受賞作なんですね。評判の小説なので読んでみました。認知症のお祖父さんが、時折鋭い推理力を働かせて、日常に潜む謎を解くという物語です。あまり深みを感じないミステリでした。(10/15)

 

011/150

絶望の裁判所」瀬木比呂志

元裁判官の内部告発書です。一読しただけでは実態をつかみにくく、想像の部分もかなりあるのですが、元公務員としては何となく理解できる部分が多かったです。裁判所に限らず、多様性に乏しく異端を認めない組織は、まっしぐらに崩壊に向かっていきます。今の日本という国がそうであるように。(10/23)

 

012/151

戦後日本の国家保守主義 内務・自治官僚の軌跡」中野晃一

タイトルに惹かれて読んだのですが、内容はかなりがっかりで、全編内務省から自治省にかけての官僚トップたちの天下りの歴史書でした。個人個人にはそれなりの国家観や正義感もあったのだろうけど、それが組織防衛に直結すると愚かな行動しかとりえないという典型でしょうか。ああ、情けない。(10/27)

 

013/152

幻の女」ウイリアム・アイリッシュ

およそ80年前に書かれた超有名な古典的名ミステリで、お読みなった方も多いと思いますが、初めて読みました。文句なしに面白かったです。妻とけんかして、行きずりの名前も住所も知らない女性と数時間食事とショウを見て、自宅に帰ると妻が殺されていた。容疑者として逮捕され、アリバイを証明してくれるはずのその女性が、どれほど手を尽くしても見つからない。そうしている間に裁判で死刑が宣告され、死刑執行のカウントダウンが始まる。その窮地を救うために現れた無二の親友。彼の必死の捜査は間に合うのか。手に汗握る展開で、とても面白かったです。お薦めです。(10/27)

 

014/153

ラブカは静かに弓を持つ」安壇美緒

今年の本屋大賞の第二位だったそうですが、どうなんだろうか。音楽業界の中でも著作権という特殊な分野を扱った物語で、専門的な知識に乏しい身としては、実感をつかみにくい小説でもありました。また、主人公のキャラクターをかなり複雑にしてしまったため、他の登場人物との落差がありすぎて、戸惑いもありました。(10/28)

 

015/154

ムシカ 鎮虫譜」井上真偽

ある種のパニック小説なのですが、こういった物語にありがちな、まず有り得ないような突拍子もないトラブルメーカーが次々に騒ぎを起こしていきます。ただ、そのおかげで事件の真相が解明されるというのもお約束。突っ込みどころは満載です。(10/29)

 

016/155

差別の日本史」塩見鮮一郎

最近もゾンビのように復活してきた同和地区問題ですが、いまだにこんなことを穿り返して、喜んでいる奴らの気が知れない。理解不能。著者はよく研究もされているようですが、研究者というよりノンフィクション作家で、私が見ても分かるような誤りもいくつか散見されました。難しい問題ですが、解決しなければならない大事な問題です。(10/30)

 

2023年10月15日日曜日

2023年9月

史上まれな残暑に襲われた令和5年9月でしたが、小説が7冊、それ以外が6冊で計13冊という結果になりました。

あまりに暑くて、出歩く気にもなれず、読書三昧っといきたかったのですが、本を読む気にもならず、グダグダで過ごした月でした。

また、とても落ち着いて読書をしている場合ではないような18年ぶりの出来事もあって、空いた時間はほとんどそちらに取られてしまいました。

そんな中でのお薦め本ですが、残念ながら小説では、これという本には出会えませんでした。次月に期待。

小説以外の本では、まず「日本水商売協会」は、新たな気付きを与えてくれtあ本でした。偏見は眼を曇らせるということを改めて認識いたしました。先入観なしで読んでいただければ嬉しいなと思います。

次は、「民主主義の死に方」。5年位前に書かれた本なので、現状を反映しているわけではありませんが、『あの頃は、まだましだったんだなぁ』と思ってしまいます。そう、ここで書かれている以上に、現在の民主主義は危機に瀕しています。目覚めましょう。

最後の一冊は、「ペットと葬式」です。ペット葬と伝統産業界の連携を考えていまして、その参考になればと思い読んだ本だったんですが、想定以上に勉強になりました。知らなかった仏教の世界観、日本独特の死生観、そんなことを改めて考えるきっかけとなりました。結構お薦めです。

最近、書店の店頭にはとても面白そうな本が山積みになっていて、一冊づつでも読んでいきたいなと思うのですが、その度に自宅に山のように積まれている数百冊の未読本に思いを馳せてしまいます。

いつかちゃんと読めるのだろうか。

 

001/127

半分世界」石川宗生

SF部門で賞を取られた作品を含む短編集。初めて読む作家さんです。小・中学生の頃はSF小説が大好きで、児童向けの翻訳シリーズや国内では星新一、筒井康隆などといった小説を狂ったように読んでいました。その後、読書の嗜好が変わって、SFを読むことがめっきり少なくなってきました。そんな数十年の空白の間に、この分野は大きく変わったようで、ほとんどが知らない作家さんばかりです。本作は、タイトルにひかれて電子図書館で借りてみたのですが、評価が難しい。全く普通の世界の中に、突如破綻が生じるものの、それは継続せず、淡々と通常の時が流れていく。その中で起きる混乱を描いた小説なのですが、時折おいていかれそうになってしまう。年を取ったせいなのかなぁ。(9/1)

 

002/128

日本水商売協会 コロナ禍の『夜の街』を支えて」甲賀香織

タイトルは際物っぽいですが、いたって真面目な書物です。著者は、『水商売』という言葉で一括りにされ、職業的な差別を受けているこの業界に光を当て、真っ当なサービス業の一分野として社会に認知されることを目的に設立された一般社団法人の代表者です。先のコロナ禍でも『夜の街関連』という言葉で目の敵にされ、あらゆる支援策からも排除されたことは記憶に新しいところです。ただ、著者も触れておられるとおり、順法精神もモラルもない事業者が跋扈していることも事実です。AIには代替できない分野でもあると考えられますので、そういった事業者を排除し、真っ当な事業を営んでいる人たちが報われるような社会であってほしいものです。(9/1)

 

003/129

スタンフォード式疲れない体」山田知生

スタンフォード大学というところは本当にすごいところです。著者は同大学スポーツ医局アソシエイトディレクター、同大学アスレチックトレーナーとして活躍され、スポーツ選手がその能力を最大限発揮できるための手法を研究し、実践されています。その中で『疲労』が、パフォーマンスの阻害要因になっていることに気づき、疲労をためない方法、早期に回復される方法などについて、実践されています。この本は、その『疲労』について、一般人向けに書かれた本で、非常に論理的で分かりやすく、取り組みやすく書かれています。かなり前に書かれた本で、ベストセラーになるのも頷けます。奇しくも、日本を代表する総合大学の運動部で大スキャンダルが発生しました。スポーツだけができて、人間として成長させることを放棄したような大学の体質が問われています。彼我の差は気が遠くなるくらい広い。(9/5)

 

004/130

名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件」白井智之

昨年のミステリ各賞で上位に輝いた作品で、初めて名前を見る作家さんでした。舞台は、世間から隔絶された環境で集団生活を営む宗教団体内部で、調査のために乗り込んだ調査団が次々と殺されるという中身です。いわゆる本格推理物なのですが、探偵役によって途中で何度も論理的な『謎解き』がされ、そのたびごとに上書きされていきます。ちょっと説明しづらいですが、これまで出会ったことのないスタイルで、若干の戸惑いました。それが評価されての各賞だったと思うのですが、私にとってはくどかった。最後は、『またか、、、』という感じなってしまいました。申し訳ないです。(9/5)

 

005/131

香港警察東京分室」月村了衛

この本も昨年のミステリ界で上位に挙げられていた作品です。香港警察と警察庁が合同で設置した架空の組織が活躍するバイオレンス系の物語です。銃撃戦やド派手なアクションシーンが続くのですが。あまりにも人が死にすぎ。ちょっとやりすぎかと思います。(9/9)

 

006/132

鍋奉行犯科帳 京へ上った鍋奉行」田中啓文

例によって食いしん坊の大坂町奉行が、今作では皇室も巻き込んだ大事件に遭遇します。相変わらず安心して読める作品です。(9/10)

 

007/133

民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道」スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット

2016年の米国大統領選挙の後に発売された書籍です。後半は、ほとんど当時の大統領批判に終始し、民主主義の危機を協調しています。4年の任期が過ぎて再選されなかったものの、その選挙結果を認めず、新大統領の就任式には暴動を呼び掛ける始末です。来年には次の大統領選挙が予定されていて、その御仁は共和党の最有力候補だと言われています。長年にわたり米国は民主主義国家のお手本と呼ばれてきましたが、今では見る影もありません。我々はどこまで愚かになれるのでしょう。(9/11)

 

008/134

学園の魔王様と村人Aの事件簿」織守きょうや

初めて読んだ作家さんです。学園ものの日常ミステリです。ほのぼの系でした。(9/19)

 

009/135

カレーライスの誕生」小菅桂子

万人に愛されるカレーライス。もとはインド料理でしたが日本に伝わり完成されました。あのお料理は、海外では日本食レストランでないと食せません。そんな彼の歴史を読みやすく書かれた本です。ただ惜しむらくは、軍隊とカレーの歴史に触れたところで、海軍とカレーの密接な関わりに一切触れておられず、とても残念な思いがいたしました。実は、この本は前に読んだかなと思いながら読んでいたのですが、最後まで確信が持てませんでした。(9/24)

 

010/136

鍋奉行犯科帳 お奉行さまの土俵入り」田中啓文

お気に入りのシリーズものです。主人公というか主役のお奉行さまに若干のキャラぶれがあるように見受けられるのは気のせいでしょうか。でも面白いです。(9/26)

 

011/137

ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる」鵜飼秀徳

いろいろとこのペット葬業界について調べていて、そもそもペット供養、動物供養ということについて書かれたこの本を見つけました。仏教には六道という考え方があって、人間界と動物界は全く違う次元として扱われていて、動物が極楽往生することがるのかということについて、宗派間で論争があるということも初めて知りました。このペット葬業界については、ガチで取り組んでいきたいと考えています。(9/27)

 

012/138

祈り」伊岡瞬

ちょっと意表を突かれるようなテーマでした。気弱で孤独な男性二人が主人公で、全く交わることのない二人が、偶然に出会い人生に転機が訪れます。びっくりするような転機です。(9/27)

 

013/139

長期腐敗体制」白井聡

今の政治は腐りきっている。誰もが気がついていますが、自分たちのせいであることには誰も気づいていません。私たちが望んで今の腐りきった政治体制を作ってしまったのです。少なくとも私にはその自覚があります。奴らに騙されないように、もっと賢くなるべきだった。もっと考えるべきだった。これからの時代を生きなければならない娘たちのために、今から何ができるだろうか。(9/29)

 

 

2023年9月5日火曜日

2023年8月

灼熱の8月は小説14冊、それ以外が4冊、計18冊となりました。

18のうち、上下巻物が一組、4巻物が一組ありましたので、実質はもう少し多かったかなという感じでした。

今月も、小説が目立ちます。また初めて読んだ作家さんも結構ありました。

そんな中でのお薦めですが、小説では。

『大誘拐』は、およそ半世紀前の作品ですが、着想といい、物語の運びといい、トリックといい古さを全く感じさせない作品でした。かなり長い小説ですが、一気に読めます。さすがに20世紀の最高ミステリに選ばれただけのことはあります。

『あの子とQ』も万城目ワールド全開で面白かったです。前半はコミカルなタッチで軽妙なお話になるのかと思いきや、あるシーンを境に一気に重厚な物語に転換します。この切り替えが見事で、後半はある種の冒険小説として楽しめます。キャラクターも魅力的に描かれていて良です。

『光のとこにいてね』は、初めて手にした作家さんで、BL小説や漫画の原作を主に手掛けておられるらしい。十数年おきに邂逅する二人の女性が主人公で、お互いがお互いを必要とし合っているようで、そうではないようで、読んだことはないですがBL 小説の筋運びがこんな感じなのかなと想像します。本文にも書きましたが、結末の次のページが気になる、そんな小説でした。

『ほうき星』も一人の女性の前半生を描いた大河小説です。ほうき星の下に生まれた主人公が、周りの人々に愛され慕われているさまが胸を打ちます。とんでもない不幸にも見舞われますが、それを跳ね返す強さ。とても素敵な三代の女性が描かれます。お薦めです。

ここまでは、すべて女性が主人公。

そして最後は、夢枕獏さんの『沙門空海~~』。今考えるとスーパーマンとしか考えられない弘法大師空海を主人公にした超大作で、その持てる知恵で中国を舞台に国家的な危機から国を救います。十数年をかけて書かれたにも関わらず、芯がぶれていないことが素晴らしい。かなり有名な本なので読まれた方も多いと思いますが、ワクワクしながら読みました。お薦めです。

続いて、小説以外の本なのですが、実は4冊ともとても面白くて、全部お薦めしたいところですが、詳細は本文を読んでいただくとして、簡潔に。

『武器になる哲学』、武器になるかどうかは別にして、実学を含むあらゆる学問の基礎的素養として哲学的な思考方法は必須かと思います。

『民主主義の壊れ方』、壊れないうちに改めてデモクラシーというものについて考えるべきかと思います。壊れてしまわないうちに。その時はすぐそこに来ていると思います。

『ギフトショー』、モノづくりに携わる方々で、新たな販路を開きたいと考えておられる方、マーケティングの基礎を学びたい方に向けた基本書としても読めます。自慢話ばかりが書かれているに違いないとお思いのかもと思います。その傾向が全くないとは言いませんが、わかりやすいのでいいですよ。お薦めです。

『観光と性』、日本人として、沖縄問題に蓋をしてはいけません。しっかりと向き合うためにも差別の歴史を学ぶべきです。アメリカも絡んだ話なので、国連からは問題提起がされないだけに、私たちが自主的に学びに行く姿勢が重要です。

8月は連日猛暑日で、屋外活動が止められたおかげで、結構たくさん読めました。いい本にも数多く出会うことができ充実した読書生活だったと思います。

これで順調に月15冊ペースに戻すこともできましたので、読書の秋を楽しみたいと思います。

 

001/109

大誘拐」天藤真

今から45年前に書かれたミステリ小説で、」20世紀最高の傑作と呼ばれています。ほかにもいくつか小説を書かれているようですが、京都市の電子図書館を使って初めて読みました。紀伊山中の大地主の女性を誘拐して身代金をゆすり取ろうとした3人の小悪人でしたが、その額の少なさに激怒した女性に誘拐事件の主導権を握られ、まんまと100億円をせしめるという痛快エンタメ小説です。携帯電話も監視カメラもない時代だからこそ成り立つ犯罪ですが、ミステリはこうじゃないとね。面白かったです。(8/1)

 

002/110

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50」山口周

彼の書く物は結構好きで、見かけるたびに読むようにしています。この本は哲学の入門書ともいえる本で、人生を生き抜くために役に立つとともに、雑学の友としても有用かと思います。不思議なのは、ここに挙げられている50のキーコンセプトと哲人たちがすべて西洋哲学の方々で、東洋哲学は一切含まれていません。これは行ったどうしてなんだろうと、思ってしまいます。(8/4)

 

003/111

あと15秒で死ぬ」榊林銘

15秒という短い時間にいったい何ができるのか。そこにフォーカスして、様々な突拍子もない状況を設定して作り上げた不思議な短編ミステリ集です。テレビドラマの原作となった作品も含まれているそうです(私は視ていませんが)。ご都合主義との評価もあるようですが、よくこんな状況を考え出したなというのが率直な感想です。(8/5)

 

004/112

江戸一新」門井慶喜

江戸時代初期、知恵伊豆と呼ばれた松平伊豆守信綱を主人公にした歴史小説です。慶安の変や島原の乱を抑え込んだ強権の冷血漢という評価もあるようですが、本作では悩める官僚トップとして描かれています。江戸城の天守閣が焼失した明暦の大火で、焼け野原になった江戸の町を一新するために様々な課題に立ち向かいます。トップは孤独ですね。(8/6)

 

005/113

午前零時のサンドリヨン」相沢沙呼

霊媒探偵シリーズで売れっ子作家になった著者のデビュー作にして鮎川哲也賞受賞作ともなった小説です。主人公はサンドリヨンというマジックバーでアルバイトをする女子高校生。彼女が日常の謎を解いていくというミステリですが、彼女が心理的な葛藤を乗り越えていくという裏テーマがあって、それなりに楽しめる小説でした。ちょっとくどかったけどね。(8/11)

 

006/114

爆弾」呉勝浩

昨年のミステリ各賞を総なめにした作品です。犯人が先に逮捕されていて、取調室で犯人と警察が謎解き合戦をするという小説なのですが、登場人物のキャラが少しずつずれているというか、むず痒いというか、そんな設定必要?と思うような箇所もいくつかあったように思います。でもこれが今の流行なのかなぁ。(8/11)

 

007/115

教誨」柚月裕子

幼女二人を殺害し、死刑になった遠縁の女性の遺骨を引き取ることになったことから、その事件の真相を追いかける女性を主人公にした物語です。犯罪の動機が不明で、それを探し求める旅なのですが、最後に明かされる秘密にちょっとがっかり。彼女の小説は好きで新刊が出ると必ず読むのですが、作者の自信作といわれた割には少し残念。(8/12)

 

008/116

民主主義の壊れ方 クーデタ・大惨事・テクノロジー」デイヴィッド・ランシマン

アメリカでとんでもない大統領が選出されて間もなくに出版された物ですが、その2016年の大統領選挙に費やされたページは少なく、民主主義が危機に陥る三つの事象について考察されています。でもおそらくですが、民主主義の崩壊はもっと静かに気付かないところで緩やかに進んでいるように思えてなりません。今の日本のように。2016年の選挙結果についてはある民主主義にとっての『危機』が懸念されていました。全米の有権者による得票数では圧倒していた民主党の候補が選挙結果を受け入れず、共和党への政権移譲を暴力的に拒むようなことがあうのではないかと。実際4年度にその懸念は現実となりました。それも大統領が扇動するって。(8/12)

 

009/117

あの子とQ」万城目学

主人公は人間社会でフツーの学園生活を送る吸血鬼、ある日目前に控えた十七歳の誕生日で迎える儀式のための監視が突如現れる。その監視者を巡るドタバタ劇で始まるのですが、途中で大事件が発生し、事態は思わぬ展開を見せます。万城目ワールド全開の楽しい小説です。とても面白かった。お薦めです。(8/12)

 

010/118

光のとこにいてね」一穂ミチ

昨年度の各文学賞の候補作となった習作です。二人の女性が主人公で、どちらも『普通』ではない家庭に育ち、小学校入学前に一瞬の邂逅があり、十数年後高校入学時に再会します。しかしながら、その関係も数か月で途絶え、再びそのきずなも切れてしまったかのようです。ところが、主人公も知らないところで細々とつながっていた糸を手繰り寄せる人がいて、十数年後に、『再び、再会』します。大人になった二人はいったいどうなるのか。結末はとても美しく、思わず『がんばれ!』と声をかけたくなります。結末の次のページが読みたい、そんな小説でした。お薦めです。(8/19)

 

011/119

ほうき星(上)(下)」山本一力

江戸時代終盤、空に大きなほうき星が現れたときに生まれた女の子が主人公。幼くして大きな悲しみに襲われますが、家族、縁者、隣人だけでなく初めて会った人たちにも愛され、最後には大きな幸せをつかみ取ります。祖母、母の生きざまが孫に幸せをもたらす、三代にわたる女性の大きな愛の物語かとも思います。長さを全く感じさせない傑作でした。お薦めします。(8/19)

 

012/120

此の世の果ての殺人」荒木あかね

あと数か月で地球に小惑星が衝突し、世界は終わりを告げる。衝突地点と目される九州北部はゴーストタウンと化している。そんな場所で起こった奇妙な殺人事件。意図せぬうちに事件解決に巻き込まれてしまった主人公の女性。極限世界を舞台にしたミステリは、古今東西にたくさんありますが、本作は江戸川乱歩賞の受賞作なんですね。本賞の最近の受賞作ってほとんど読んでいませんが、結構際物にも範囲を広げたんですね。(8/20)

 

013/121

汝、星のごとく」凪良ゆう

彼女にとっては二作目の本屋大賞受賞作ですね。一組の男女の十年にわたる恋愛小説なのですが、ヤングケアラーとか貧困とか現代社会の諸問題をまとめてぶち込んだ感じの小説です。とても面白かったし、主人公の女性には幸せになってほしいですが、男性の方は、私にはどうにもならないクズにしか見えなくて、彼女のためには仕方がないとは思うのですが、ちょっとモヤモヤが残ります。(8/23)

 

014/122

ギフト・ショー 日本最大級の消費財見本市 創造と進化の奇跡」芳賀信享

国内最大の消費財見本市となった『東京ギフトショー』の主催者であるビジネスガイド社の社長が著したもので、ある種の社史でもあります。昔しばらく住んだことがあるドイツは、世界に名だたる見本市王国で、毎日のように国内のどこかで、見本市が開かれています。その分野は多岐にわたり、ベルリンでは性具の見本市も開催されていて、皆さん真面目に新製品の大人のおもちゃを片手に商談されていました。この手の見本市は、いわば問屋の機能を果たしているとされていて、卸問屋業という独特の業態が幅を利かす日本では、見本市というのは成り立ちにくいと言われています。最近は、問屋業を専業にする事業者も減ってきて、製造事業者からの直販というのも広がってきています。私はその物、人に合ったいろいろな流通が準備されているというが理想的と思っているのですが、どうなんでしょう的外れですかね。 (8/24)

 

015/123

観光と『性』 迎合と抵抗の沖縄戦後史」小川実紗

独特の観点からまとめられた沖縄の戦後史です。奇しくもこの文章を書いているとき、辺野古埋立訴訟で沖縄県と国との裁判で、県側の敗訴が確定しました。本書では、戦後の復興で観光が脚光を浴びつつも、いわゆる買春ツアーなどの性観光が主流だったことが取り上げられています。大きな話題になった米兵の幼児暴行事件だけでなく、本土男性の性暴力も歴史の一つです。本土に住む我々は、一貫して沖縄を差別し、アメリカに貢物として差し出すことに何の躊躇もしてきませんでした。日本に駐留する米軍基地の7割が沖縄になることに何の不思議も感じていません。かつて、琉球王国を無理やり併合し、ある種の植民地としてから、沖縄はいつでも切り捨てられる存在であったわけです。おそらく今も。私たちは、このことを恥じるべきです。大きな怒りを覚えながら読破しました。私は自分が恥ずかしい。(8/25)

 

016/124

新謎解きはディナーの後で」東川篤哉

ベストセラーになった小説の最新刊です。初めて読んだときは、結構衝撃をもって読んだのですが、今回はそれほどの感動を覚えませんでした。かんな感じだったっけ。(8/27)

 

017/125

チョウセンアサガオの咲く夏」柚月裕子

この作者にとっては珍しい短編集です。この作者の良さは短編だと伝わりにくいのかなと実感しました。(8/28)

 

018/126

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一巻ノ四」夢枕獏

かなりの大長編ですが、初出も4つの雑誌を渡り歩きながら17年間にわたって連載されたものだそうです。よく同じ調子で描けたものと感心しています。弘法大師空海が密教の奥義を体得するため、遣唐使とともに渡航し、わずか一年で灌頂を受け帰国するまでの一年間に遭遇した事件について描かれています。もちろんフィクションなのですが、楊貴妃や白楽天といった歴史上の人物と交わりながら国を揺るがす大事件を解決に導きます。獏さんお小説は、陰陽師シリーズを何冊か読んだくらいで、あまり馴染みはなかったのですが、思いのほか面白かったです。(8/28)