2024年4月2日火曜日

2024年3月

新型コロナ感染症に苦しんだ3月でしたが、小説が19冊、それ以外が3冊、計22冊という結果になりました。

先月も書きましたが、療養期間中はあまり読む気にならなくて、皆さんの想像からはちょっと遠かったのではないでしょうか。

かわせみシリーズが4冊もありますが、今月はそれ以上に面白いシリーズを見つけてしまいました。

第二次大戦直後でまだまだ戦争の傷跡が残るロンドン市内を舞台にしたアリスン・モントクレアさんの『ロンドン謎解き結婚相談所』シリーズがそれで、主人公をはじめとする登場人物がとても魅力的で、ストーリーも面白く、結構分厚い小説でしたが、一気に3冊読み切ってしまいました。続編の翻訳が待ち遠しい。お薦めのミステリ小説です。

あとは医師である知念さんの本を2冊読みましたが、そのうちの『十字架のカルテ』が良かったです。精神鑑定の現場を描いた小説は例が少ないように思うのですが、さらにそれを現役の医者が描いたというのは本当に稀だと思います。ミステリとしてもよくできていたと思います。

小説以外では、『京都を壊した天皇、護った武士』が良かったです。一般には意外かもしれないですが、私が持っている天皇、公家に対するイメージを補完してくれる良い資料でした。面白かったですよ。

3月はなかなか暖かくなりませんでしたが、4月に入って嘘のように暖かくなり、近年では珍しく、これから桜の見ごろを迎えます。私にとっては、桜より本を片手に外出できることがうれしくて、カフェや公園のベンチで本を広げる機会も増えてきました。あんまりお仲間はいませんがね。

お天気が続いたらいいな。

 

001/040

時の呪縛 凍結事案捜査班」麻見和史

警察小説の名手による新しいシリーズです。楽しみに読んだのですが、主人公がも一つ魅力に欠けるなど登場人物のキャラクター設定に納得感が少ない。どうもなぁ。(3/1)

 

002/041

ヨモツイグサ」知念実希人

なんでこんな小説書いちゃったんだろう。医療ミステリだと面白いのに、途中からいったいどこへ行くんだろうと不安になってしまう。(3/1)

 

003/042

ぼんぼん彩句」宮部みゆき

お仲間の俳句サークルの方々による一句からひねり出された短編小説集。ストレートな小説はほぼなく、ひねりが効いたいやミスのような作品群で、彼女らしくない作品が並んでいます。試みとしては面白い。(3/2)

 

004/043

鬼の面 御宿かわせみ13」平岩弓枝

シリーズは前半のヤマ場へ。いよいよ主人公たちは結ばれるのか。(3/3)

 

005/044

夜果つるところ」恩田陸

同じ作者による『鈍色幻視行』という作品の中で核となる作品だそうで、同作中で作者とされている(らしい)方の本の上に恩田さんのカバーが掛かっている不思議な装丁になっている。この作品だけ読んでも面白さは伝わらないのか?どちらを先に読むべきだったのか。悩む。(3/9)

 

006/045

神かくし 御宿かわせみ14」平岩弓枝

主人公たちは未だ結ばれない。そしてかわせみはどうなるのか。(3/10)

 

007/046

京都を壊した天皇、護った武士 『1200年の都』の謎を解く」桃崎有一郎

『平安京はいらなかった』という衝撃的なタイトルの本を書かれた方の書籍で、時代は下がって鎌倉から室町にかけての京都について書かれています。この時期、その後秀吉によって、ほぼ現在の街並みに近い京都が作られるまで、京都の町は大きく変化しております。この本では、その京都の町が天皇によって壊され、時の武家政権によって再建された様子が、資料を基に検証されています。要は、自分の金ではなく人の金で作ってもらった街なので、愛着も何もなく、気に入らなければ壊してまた作ってもらったらいいや、という連中のおもちゃにされていた感じですね。住んでいる人たちにはたまらんですね。(3/11)

 

008/047

約束」石田衣良

とある小学校の襲撃事件にインスパイヤされて書かれた表題作などを収めた短編集です。大きな不幸に見舞われながらも、立ち上がり再び歩き出そうとする人々を描いた物語ばかりで、読んでいても気持ちの良い本でした。彼の小説はあまり読んだことがないのですが、とても良い小説集でした。全部良かったですが、個人的には最後の『ハートストーン』がとても気に入りました。(3/12)

 

009/048

ロンドン謎解き結婚相談所」アリスン・モントクレア

久しぶりに面白い翻訳ミステリに出会いました。舞台は第二次世界大戦直後のロンドン。そこで結婚相談所を営む二人の若い女性が主人公です。一人は大戦中にスパイの訓練を受けていたようで、そのスキルが十分い活かされます。またもう一人の女性は、上流階級で育ち結婚したものの、大戦で夫を喪い、失意の中立ち直りつつり、さっそうと立ち上がる。相談所を訪れた女性が殺され、紹介した相手の男性が容疑者として逮捕されます。その容疑を晴らすために奮闘する二人。作品はシリーズになっており、今は3冊が邦訳されていますが、すでに短編集を含めて7冊出ているようで、今後の出版が楽しみです。面白かったです。(3/13)

 

010/049

『男女格差後進国』の衝撃 無意識のジェンダー・バイアスを克服する」治部れんげ

私が働いていた公務員の世界では、比較的男女の格差が少なかったように感じています。あくまで『比較的』ですが。今思い出すだけでも、公務員生活の半分は、直属の上司が女性だったように記憶しています。そんなこともあって、『仕事の上では』女性だからと言って特別な目で見ることはなかったと思いたい。しかしながら、ひとたび仕事を離れるとそうはいかず、『男だから』『女だから』という染み付いた概念はなかなかはがすことができないものです。常に意識していないと、ひょいと顔を出してしまうものになっています。この本の最後の方に触れられているのですが、娘を持った父親にとっては、この課題は現実問題として時に実感を持って捉えられる傾向にあるようで、二人の娘の父である私にとっても、とても重要な課題です。娘たちにとって生きやすい社会にするため、私たちがやるべきことは多い。(3/14)

 

011/050

新古事記」村田喜代子

『古事記』と銘打たれていますが、神々は出てきません。ましてや日本が舞台でさえありません。物語の舞台は、太平洋戦争真っ只中のニューメキシコ、ロスアラモス。主人公はそこで働く科学者の婚約者(のちに結婚)。今年のアカデミー賞では、『オッペンハイマー』が作品賞を受賞しましたが、この物語にも彼が登場します。全米から集められた優秀な科学者たちが、極秘の研究に従事している一方で、その家族やペットの犬たちも基地内で共同生活を送っている。その姿は平和な日常その物。淡々と描かれるその風景が何やら不気味に感じられる。不思議な作品でした。(3/17)

 

012/051

恋文心中 御宿かわせみ15」平岩弓枝

長い物語の折り返し近くになって、ようやく主人公の二人が夫婦となることができました。何やら感動的です。気が付けば時代は幕末のきな臭さがプンプン漂ってくるころで、どうやら主人公たちもこの大きな渦の中に巻き込まれていきそうな予感がしています。(3/17)

 

013/052

王女に捧ぐ身辺調査 ロンドン謎解き結婚相談所2」アリスン・モントクレア

先日第一巻を読んで、とても気に入って続編を借りてまいりました。今回は英国王室に絡んだ物語で、最後はド派手な大団円を迎えます。この直前の時代のロンドンを舞台にしたスーザン・マクニールのスパイものの翻訳が少し途切れている中、とてもありがたく思っています。でもこちらも既訳はあと一冊。いずれも続編が待ち遠しい。(3/21)

 

014/053

超・殺人事件」東野圭吾

彼の十八番のブラック・短編ミステリ集。一応ミステリとしても成立しています。でもあんまり好みではない。

(3/23)

 

015/054

いまこそガーシュウィン」中山七里

天才ピアニスト岬洋介が探偵役として活躍するシリーズなのだが、今作では趣をがらりと変えてある。まず、物語が始まってもなかなか事件が起きない。そんな中で、事件を起こす人物の心理描写が続けられる。そして何より、前のアメリカ大統領がアメリカ社会に持ち込んだ分断と排除、それに抗う人々をテーマとして描いている。ちょっと珍しい小説でしたが、どうしてこのシリーズの一策として描いたのかは謎。(3/23)

 

016/055

777」伊坂幸太郎

彼の作品を読んだのは久しぶり。東京のホテルを舞台に繰り広げられる怪しい人物満載のドタバタ劇。登場人物のキャラクター設定と言い、せりふ回しとし言い、まさに伊坂ワールド全開の物語です。(3/24)

 

017/056

教室が、ひとりになるまで」浅倉秋成

今度映画化されるミステリの原作者として注目されている作家さんの旧作です。いろんな賞を受賞したそうで、よくできたストリーになっています。単なるミステリではなく、特殊能力ものと呼ばれる分野の物語で、その能力がミステリの謎を解くカギになっています。仕方ない終わり方かなとは思いますが、若干のフラストレーションが残ります。(3/26)

 

018/057

八丁堀の湯屋 御宿かわせみ16」平岩弓枝

お気に入りシリーズです。変わらず面白いです。(3/27)

 

019/058

疑惑の入会者 ロンドン謎解き結婚相談所」アリスン・モントクレア

今月見つけたお気に入りシリーズの三作目であり、最後の邦訳です。主人公二人の相談所業務は好調で、事務所も拡大されます。初めてアフリカ系の人物からの入会申し込みがあり、この人物と主人公の一人の舅が絡んで大きな事件が起きます。巣人口たちの捜査も慣れたもので、この後の翻訳が待たれます。(3/29)

 

020/059

シャーロック・ホームズたちの新冒険」田中啓文

シャーロックホームズや明智小五郎といった名探偵に正岡子規が主人公となって謎を解く短編集。彼らへのオマージュとなっています。最後のホームズが探偵をしていない世界を描いた作品は面白かったです。(3/30)

 

021/060

ユー。ジャニーズの性加害を告発して」カウアン・オカモト

昨年の社会を大騒ぎさせたジャニーズ性加害事件の被害者の一人が著した手記です。稀代の天才プロデューサーでありながら極悪非道な犯罪者である加害者。何が一体彼にそうさせたのか。周りのみんなは知っていたにも関わらず、どうして止められなかったのか。20数年前の裁判で実態が明らかにされたにも関わらず、その後も繰り返されていたのはなぜか。そして先日明らかになりましたが、彼以外にも性加害を加えていた社員が複数名存在していた。想像を絶する世界です。(3/30)

 

022/061

十字架のカルテ」知念美希人

ある個人的な理由から精神鑑定医を目指す若い医師が、経験を積み、個人で抱えていたトラウマを克服していく物語。鑑定医が行う面談の様子がとても具体的で、眼に浮かぶようです。さすがです。やっぱり彼は医療現場を舞台にした物語が上手い。面白かったです。(3/31)

2024年3月15日金曜日

2024年2月

遅くなりましたが、先月は小説が18冊、それ以外が3冊、合計21冊という結果でした。

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、今月初めに新型コロナ感染症にり患いたしまして、およそ一週間自宅に籠っておりました。皆さんには、その間は読書し放題ですねと言われたのですが、巷間よく言われているように、発症後は倦怠感と集中力不足がなかなか取れず、今も若干のしんどさが続いています。

てなことで、今月のお薦めですが、まずは直木賞受賞作でもある『木挽町のあだ討ち』は意外な結末で面白かったです。途中までは、いったい何をダラダラと読まされているんだろうと思っていたのですが、最後のどんでん返しには驚かされました。あんまり煽ってしまってはいけないとは思いますが、よかったです。

続いて、安定の面白さは朝井まかてさんの作品です。実話をもとにしたフィクションではあるのですが、思い切ったせってにされたなぁと感服します。同じテーマで松井今朝子さんも書かれているそうなので、ぜひ読み比べてみたい。

小説以外では、『吠えない犬』が良かったです。決して無条件にアメリカを礼賛するわけではありませんが、権力と対峙するジャーナリズムの矜持が感じられます。それに引き換え我が国にはジャーナリズムの存在は全く実感できません。甘い飴をもらってしっぽを振りまくっているバカ犬ばかり。情けないったらありゃしない。

最初に書いたとおり、ここのところは本を読むのも一苦労で、以前のように読み進めることが叶いません。ちょっとスピードもダウンしそうです。しばらくは仕方がないのかな、暖かくなってくれば少しは好転するんだろうか。

 

 

001/019

日本の歪み」養老孟司、茂木健一郎、東浩紀

なんか、自分たちは頭がいいけど、一般人は頭良くないよね、という言葉が行間に埋め込まれているようで、読んでいても愉快にはなれない。(2/1)

 

002/020

よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続」宮部みゆき

人気シリーズの八作目なのですが、以前は怪異現象を扱うことは少なかったのに、今作ではこれでもかというくらい出てきます。本当は「人」こそが、この世で一番恐ろしいというがこの本のテーマであったように思うのですが、それが変わってしまったようで、ちょっと残念です。(2/3)

 

003/021

獣の奏者探究編」上橋菜穂子

一度終わらせてしまった作品を再び動かすというのは、とても難しいことだと思いますが、うまく滑り出せたように思います。いよいよ次は完結編。(2/4)

 

004/022

マインドエラー」永山千紗

初めて手にした作家さん。ミステリ小説なのですが、謎解きの要素は少なく、ある種の社会はミステリの様相。東日本大震災のエピソードが挿入されているのですが、果たしてそれは必要だったのか。若干の取ってつけた感。(2/5) 

 

005/023

あの日、松の廊下で」白蔵盈太

「本作品は歴史上の事件を題材にしたフィクションです。」と巻末に書かれており、かの忠臣蔵の発端となった江戸城松の廊下での刃傷事件からさかのぼること3か月から書き起こされた物語は、結果的に浅野内匠頭による凶行を羽交い絞めにして抑え込んだ梶川与惣兵衛の一人語りとして語られる。物語では、吉良も浅野も非常に真面目で高潔な人物であるにもかかわらず、いつの間にか両者の間に齟齬が生じて、大事件が起こったとされている。なかなか新しい視点で、ちょっと面白かったです。(2/6)

 

006/024

刑事の枷」堂場瞬一

彼の警察小説は久しぶりに読みましたが、相変わらずトーンが暗いです。あまりに暗すぎて、せっかく事件解決しても爽快とはいかないのが残念です。(2/8)

 

007/025

悪玉伝」朝井まかて

徳川吉宗、大岡越前守が活躍した時代に実際にあった上方の商家の相続争いを描いた物語。他にも同じ題材で書かれた小説もあるようですが、本作はがらりと趣を変えて書かれているそうです。当時の裁判制度の知識が貧困なもので、展開にはついていけない部分もあったのですが、最後に明かされた秘密が、なかなか刺激的で、創作だから書けた結末だなぁと感嘆いたしました。面白かったです。(2/9)

 

008/026

木挽町のあだ討ち」永井紗耶子

昨年の直木賞受賞作ですね。あるあだ討事件について、その周りにいた複数人に語らせるという趣向の物語です。これで、いったい最後は何処にもっていこうとしているのかと気をもんでいると最後は何とも意外な結末。途中があまりに淡々と進むのでどうなのかと心配していましたが、そう来たかと、驚きました。面白かったです。(2/11)

 

009/027

機械仕掛けの太陽」知念実希人

2020年初頭に始まった新型コロナウイルス感染症によるパンデミック下の社会を医療従事者の視点から描いたフィクションです。著者自身もお医者さんなので、かなりの部分が実話に基づいているのだろうなと想像します。作中ではさらりと書かれているのですが、都会からの旅行者に対する差別や嫌がらせ、医療従事者の家族、特に子供への差別は、相当陰湿だったと報道されていましたね。今は、のど元過ぎて、すっかり忘却の彼方へ無理やり追いやっている人たちが、特に政治家の皆さん方に多数いるように思えますが、次を起こさないためにも、今回のパンデミックを正確に記録し、将来検証できるようにしておかないといけないですね。(2/12)

 

010/028

二十六夜待の殺人 御宿かわせみ11」平岩弓枝

これで、全体の3分の1となりました。ますます絶好調です。(2/14)

 

011/029

流れる星をつかまえに」吉川トリコ

何気ない高校生たちの日常を描きながら、若者の貧困、シングルマザー、性的マイノリティ、在日韓国朝鮮人、さらには新型コロナウイルス感染症によるパンデミックなど、実際にすぐ近くにある出来事がテーマとして取り上げられています。その描写の仕方がお見事で、嫌みなく読み進められます。それほど期待していなかったのですが、結構面白かったです。(2/15)

 

012/030

獣の奏者 完結編」上橋菜穂子

いったん終わった物語をどうやって再度終わらせるのだろうかと興味津々で読みましたが、最初の巻で書かれていた部分から、あたかも予定されていたかのように伏線として回収していく様はお見事でした。ただ、完結させようと思うと、このように結ばざるを得ないんだろうなとは思っていましたが、やっぱりこうなるよね。仕方ないけど寂しかった。(2/18)

 

013/031

鍵のない夢を見る」辻村深月

今や超売れっ子で、書けばベストセラーとなる著者の直木賞受賞作ですが、これ以前にも何回か候補になったはずが、どうしてこの作品だったのだろう。女性を主人公にした作品を集めた短編集なのだが、彼女らがどうにもイタい女性ばかりで、彼女の作品にはかなり珍しいのではないかと思います。ただ、最後の一遍だけは少し毛色が違って、結末は早くから想像がついていたにも拘らず、最後まで一気に引きずられていくような心理描写はお見事でした。(2/19)

 

014/032

<洗う>文化史 『きれい』とは何か」国立歴史民俗博物館・花王株式会社編

ちょっと面白い分野の生活史です。掃除とか洗濯という仕事については、もともと生活に密着した事柄であるだけに歴史的な文献として残されているケースがほとんどない。この本では、『清潔』を守るための入浴、手洗い、歯磨きなどの生活習慣について限りある資料からその断片を見せてくれます。一方で、心理的な清潔感については、祓や禊といった言葉に代表されるように宮中行事や法令として残されていることが多く、それらが捻じ曲がって『穢れ』という概念を生み出し、先般のコロナ禍でも散見された忌むべき差別を生み出しました。なかなかに面白かったです。(2/21)

 

015/033

平成古書奇談」横田順彌

ハチャメチャSFの対価として知られる著者のもう一つの顔である古書収集家としての知識が存分に発揮されたオムニバスストーリーです。21世紀とは思えない古風な言い回しはご愛敬でしょうか。SF黎明期の小説を紹介する大著も興味深く、初巻を途中まで読んで放ってあります。また再開しようかな。(2/21)

 

016/034

夜鴉おきん 御宿かわせみ12」平岩弓枝

シリーズ12巻です。主人公の幼馴染についに二世が誕生しました。血なまぐさい事件とは無縁ですが、とある大名の姫君の掌話は、ほのぼのと切なくよかったです。(2/21)

 

017/035

妖怪姫、婿をとる 妖怪の子預かります5」廣嶋玲子

これもシリーズもので、久々に読みました。遊び人の男が本物の恋をして結ばれ、心を入れ替えて真っ当に生きる。ただ、ちょっと他と違うのは、そのお相手が。(2/21)

 

018/036

三年長屋」梶よう子

この方も時代小説の名手ですね。長屋、人情物はこうでなきゃいけないという手本のような作品でした。(2/26)

 

019/037

吠えない犬 安倍政権7年8ヶ月とメディア・コントロール」マーティン・ファクラー

マスコミの最大の役割は権力の監視である。それがこの10年位の間にすっかり牙を抜かれ、見る影もなくなってしまった。著者はニューヨークタイムスの東京支局長を務めたジャーナリストで、トランプ政権下のアメリカの状況と安部政権下での日本の状況を対比しつつ、その問題点について冷静にレポートしている。詳細は読んでいただくのが一番なのですが、吠えないどころか、盗人から餌をもらい、しっぽ降って媚びるさまはあまりに見苦しい。我が邦にマスメディアは多数あれどジャーナリズムは存在しない。悲しいことです。(2/26)

 

020/038

獣の奏者外伝 刹那」上橋菜穂子

全四巻からなる大作のスピンオフ。主人公の母親、夫、師にフォーカスを当てた物語。(2/27)

 

021/039

ラスプーチンの庭」中山七里

あまりに多作な作家さんであるためか、ちょっといただけない作品でした。初めて読んだ頃はとても面白くて、外れが多いこのミス大賞受賞作家の中では数少ない期待が大きな作家さんであるためか、チョっと残念でした。しばらくお休みしようかな。(2/28)

2024年2月1日木曜日

2024年1月

年が明けて2024年の最初の月は、小説が15冊、それ以外が3冊で、計18冊となりました。小説の割合が高いですが、まずは順調な立ち上がりというところでしょうか。

昨年からの続きで、『御宿かわせみシリーズ』は今年中に読み切りたいと思っていります。また、新たに『ローマ人の物語シリーズ』も読んでいこうかなと思っています。

そんなこんなで、今月のお薦めですが、

まずは、『極楽征夷大将軍』です。主人公がお気に入りという面もあるのですが、それを置いても、超人ではなくとても魅力的な人物に描かれており、好感が持てます。かなりの長編ですが、読む価値ありと思います。尊氏にはアレルギーをお持ちの方にもお薦めします。

次の『成瀬は天下を取りに行く』ですが、ややコミュニケーションに難がある主人公ですが、彼女を理解してくれる周りの仲間にも助けられ、生きにくさを感じずに暮らせているようです。そんな大切な親友とも大学進学を機に別れの時がやってきそうです。最近、続編も出たそうなので、是非とも読みたいと思います。

三つ目は『獣の奏者』シリーズです。まずはと読んでみましたが、おっさんの私が読んでもワクワクする物語で、続きを読むのが楽しみです。平和とは何か、争うとはどういうことか。とても考えさせられる物語でした。いったんはこれで前半部分が完結しましたが、おっつけ後編となるを読もうと思っています。

最後は『余命10年』です。本文にも書きましたが、難病との闘病の末、38歳という若さで亡くなった著者が、その命の糸をつむぐように編んだ物語で、その心象風景や闘病の姿などの描写は大きく胸を打つものがあります。単に感動的というだけではない素晴らしい物語でした。

ほかにも小説には良いものがありましたが、小説以外の3冊は、ちょっとお薦めするのがためらわれる内容でした。最近は

小説に偏って、それ以外の本で面白い本に出会うことが本当に少なくなってきました。とても残念でたまりません。そういえば、最近は歴史、哲学、科学系の本を読んでいませんね。気を付けよう。

ということで、今年もダラダラと綴っていきますので、どうぞよろしくお願いします。

 

001/001

極楽征夷大将軍」垣根涼介

2024年最初の一冊は、昨年の直木賞受賞作であるこの本を選びました。室町幕府をひらいた足利尊氏を主人公においた物語で、弟の足利直義、家宰の高師直が交互に語り部となって物語が進みます。戦前は天皇に弓引いた極悪人とされていた尊氏なので、歴史愛好家の中でもあまり人気がない武将ともいわれています。過去に大河ドラマの主人公になったのは一度だけだったと記憶しています。私の高校時代の日本史の先生が尊氏のファンでして、私も大学生の頃尊氏を主人公にした吉川英治さんの『私本太平記』を読んで、とても魅力的な人物だなと思っていました。とても長い小説で、一週間もかかってしまいましたが、内容的にはとても面白かったです。お薦めです。(1/7)

 

002/002

成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈

これも、昨年とても話題になった本で、読まれた方も多いかと思います。滋賀県大津市に住む女子高校生が主人公で、無くなってしまった西武大津店をはじめとする大津市内の地名や場所が次々に出てきます。何よりも主人公が魅力的で、もっと続きが読みたくなってしまいました。お薦めの一冊です。(1/7)

 

003/003

コロナ漂流録」海堂尊

Covid-19に翻弄された3年間を戯画的に描いた三部作の最終巻です。専門家の意見を無視し、自らの保身だけにまい進する政治家や官僚たちの姿が描かれています。もちろんフィクションなので、事実がこのとおりだったとは思っていませんが、ひょっとしたらと思わせるような迷走ぶりでしたね。そして、これがほんとに残念なのですが、細かな経過や内部事情の記録は残されていないので、決してこの経験は次に生かされないことが約束されています。こういう政治を作ったあの方の責任はとても重いです。(1/8)

 

004/004

狐の嫁入り 御宿かわせみ6」平岩弓枝

今年も読みます。表題作では珍しく殺人事件は起きません。ハートフルな人情劇に仕上がっています。(1/9)

 

005/005

酸漿は殺しの口笛  御宿かわせみ7」平岩弓枝

『酸漿』って、何と読むかお分かりになりますか?私は全く知りませんでしたが、これで『ほおずき』と読むそうです。朱色の実がなるあれですね。この巻では、事件が起きない作品が多くなってきました。一方で、幕末の不穏な空気を映し出すようなテロ準備行為の気配が伺えたり、今後主人公たちの人生に大きくかかわってきそうな物騒な人たちも登場してきました。また面白くなってきました。(1/11)

 

006/006

白萩屋敷の月 御宿かわせみ8」平岩弓枝

これで、全体のおよそ四分の一になりました。個々の話もにそれぞれ特徴があって、全体としてメリハリのついた流れになっています。この巻の表題作は、シリーズ全体で200作を超える作品のうち、読者投票で断トツのトップに推された作品だそうで、まさに秀逸と呼べる作品でした。(1/13)

 

007/007

自民党 『一強』の実像」中北浩爾

初版は2017年、その後2021年に第4版として出版された物でした。内容としては、公表された資料、報道を基に書かれたもので、実像に迫ったものではありません。例えば、自民党の最大の特徴として派閥の存在について割かれた章があるのですが、財務基盤が弱体化し、閣僚任命などへの影響力も低下しているといった表面的なことが書かれているだけで、この時すでにシステムとして完成していたパーティー券の裏金化については、一切取材された形跡がありません。また、党を支援する外部団体として、よく知られている霊友会や神社本庁といった宗教団体に軽く触れられているだけで、執筆当時すでに政策の内容にまで大きな影響を及ぼしていた旧統一教会についても全く触れられていません。自民党の実像を知るには程遠い内容でした。これらのことは、いずれも党が積極的に隠ぺいしていたことばかりです。如何に私たちには見えていないか、よく理解できます。(1/15)

 

008/008

獣の奏者 Ⅰ闘蛇編 」上野菜穂子

この方の小説をいつか読みたいと思っていたのですが、なかなか機会がなく今作が初めてとなります。すでに世界的にも評価されている作家さんなので、今さら申し上げることはありませんが、独特の世界観に思わず引き込まれ、ページをめくる手が止まらず、眠る前に少しだけ読もうという読み方には向いていません。めちゃくちゃ面白いです。一巻では母を失った主人公の少女が、自らの居場所を見つけるまでの数年間が描かれています。全体で4巻+外伝1巻という構成ですが、それぞれに書名がついているので、別の本としてカウントしています。(1/18)

 

009/009

硝子の塔の殺人」知念実希人

知念さんが本格推理小説に挑んだ作品で、マニアの方にはたまらないのかもしれませんが、そうでない私にはとにかく読みづらい。綾辻さんの「館シリーズ」へのオマージュのような小説ですが、どこまで成功しているのか、私には判断できかねます。ICTが進んだ現代を舞台にした本格推理は難しいのではないかと思います。(1/20)

 

010/010

獣の奏者 Ⅱ王獣編」上野菜穂子

第2巻ですが、内容的にはいったん完結しています。長さ的にもちょうどいいくらい。面白かったです。 (1/21)

 

011/011

ぼっちママ探偵」南口綾瀬

作者は、本来「描く人」だそうで、初めて「書いた」ものだそうです。主人公は、小学生の娘を持つシンママ。元夫と別れた後は、Webデザイナーなどをしながら、一人娘を育てているのですが、とにかく他人とコミュニケーションをとるのが苦手で、ママ友を作ることを避けて、ぼっちママとして暮らしていくのですが、持ち前の洞察力で、周りに起きる小さな謎を解き明かしていきます。そして、最後の一行で明かされる主人公の意外な素顔。それまでの伏線が、見事にこの一行で回収されます。作者は、まずこの最終行を思いついて、そこから物語を膨らませたと書いておられますが、これはお見事でした。面白かったです。(1/22)

 

012/012

配達あかずきん 威風堂書店事件メモ」大崎梢

この本も、日常の謎を解き明かす書店員を主人公にしたお仕事小説で、作者にとってのデビュー作です。元書店員だそうで、リアリティがあります。続編も出ているようなので、機会があれば読もうかなと思います。(1/24)

 

013/013

一両二分の女  御宿かわせみ9」平岩弓枝

表題作の少し前の作品で、『一両二分』について軽く語られところがあったので、てっきりそれかと思って読み進めていたところ、全く違う意味で登場して、ちょっと驚きました。(1/25)

 

014/014

ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生

言わずと知れた塩野さんの晩年の名著です。1992年から毎年一冊のペースで出版され、15巻をもって完結しました。今年の年頭に、このシリーズの読破を目標に挙げておりまして、その一冊目を読了しました。出版当初から、歴史書か文学書かという論争があったようですが、とりあえずエンタメものとして読もうかと思っています。第一巻では、小さな都市国家として生まれたローマが、イタリア南部を傘下に収めるまでの5世紀が扱われています。カタカナの名前は覚えにくくて辟易しますが、物語としては面白いです。(1/25)

 

015/015

閻魔まいり 御宿かわせみ10」平岩弓枝

シリーズ10作目にして、主人公の長年の友人がついに妻帯します。それも、かなり強引に。主人公たちが正式に結ばれるのは、まだ先のようです。(1/27)

 

016/016

ペニー・レイン 東京バンドワゴン」小路幸也

シリーズ18作目なんですね。毎年一作の出版なのですが、途中に何巻か番外編の短編集があるので、実世界より2~3年遅れているそうで、コロナ禍は未だやってきていません。人と人との繋がりを軸とした小説なのであの異常な世界をどのように描かれるのか、とても興味があります。今作では、少しずつ人の移動があったりして、これは次作への伏線かなと邪推しています。(1/28)

 

017/017

余命10年」小坂流加

最近映画にもなった作品だそうですが、まったくその背景を知りませんでした。作者自身が、主人公同様難病に罹り、この小説を書き上げたのち、文庫版のための改訂で闘病中の描写を加えた直後に他界されたそうで、おそらく著者自身のリアルな思いや葛藤が反映された作品になっているのだと思います。小説としても素晴らしい作品でした。お冥福をお祈りします。(1/29)

 

018/018

未来のドリル コロナが見せた日本の弱点」河合雅司

最近のベストセラーである未来の年表シリーズの中の一冊です。一貫して『少子高齢化』と『人口減少』が日本の弱点と主張されています。それは間違いが何ところなんですが、じゃあどうすればよいのか。現実的な解決方法が思い浮かばないことが残念でなりません。(1/30)

2024年1月3日水曜日

2023年12月

2023年最後の一月は、小説が24冊、それ以外が2冊、合計26冊ととてつもなく偏った結果となりました。そして、2023年一年間としては、205冊となり、昨年より若干数を減らしましたが、4年連続で200超えとなりました。

先月来電子書籍図書館にはまったことが一つの要因かと思いますが、目についたものは一気に読んでしまったので、今後の活用をどうするか考えています

てなところでお薦めの本ですが、まず小説以外の2冊はいずれもいまいちで、お薦めするまでもないかと。

でもって、小説についてですが、まず結構評判も高かった『アリアドネの声』は期待通り面白かったです。作者自らが結構手足を縛ったうえで、非常に困難なミッションに取る組んだという気がします。賞賛に値すると評価しています。とても面白かったです、お薦めします。

ほかには初めて読んだ作家さんが多かったのですが、その中で新名智さんの二冊はどちらもとても面白かったです。一応ホラー小説賞の受賞作なのですが、いわゆる心霊現象的な事象が起こるようなホラーではないところが読みやすかったです。いずれの作品もお薦めです。

あとは、常連となりましたが伊坂幸太郎さん、澤田瞳子さんの本も期待を裏切らない習作でした。いずれもお薦めです。

最後は、怒涛の寄りで200冊を超えましたが、今年はどうなるのか。

昨年出会った『御宿かわせみシリーズ』は、残り30巻ほどですが、何とか今年中には読み切りたいと思っています。また、それ以外にもいくつか手を付けたいと思っている本もあります。

また、それ以外にもどんな新しい本との出会いが待っているのか。

楽しみは尽きません。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

001/180

日本史でたどるニッポン」本郷和人

何気に借りて読みましたが、かなりの入門編。焦点はもひとつよくわかりません。

(12/1)

 

002/181

無垢の傷痕」麻見和史

この作家のミステリ小説は、はずれがなくて好きなんですが、このシリーズはちょっと期待外れ。超絶に運の悪い男性刑事と看護師から転職した女性刑事によるコンビ物の警察ミステリなんですが、短編であるせいか強引さが目立つ気がして、ちょっと気が合いそうにありません。続編はしばらくよしておきます。(12/1)

 

003/182

妖怪の子預かります」廣嶋玲子

京都市の電子図書館でたまたま見つけた妖怪シリーズで、通勤時の往復の車内で手軽に読めることから借りてみました。

(12/5) 

 

004/183

評決の代償」グレアム・ムーア

10年前に起きた死体なき殺人事件で起訴された容疑者を評決で無罪にした陪審員たちが、再び集められ、そこで殺人事件が発生する。本来ではありえないことだが、最初の評決時から陪審員たちの素性が明らかにされ、世間から大バッシングを受ける。その後、弁護士になった女性が主人公となって物語が進む。こういった法廷ミステリは、裁判制度の違いもあってなかなか理解するのが難しいのだが、本作は結構良かったです。(12/6)

 

005/184

うそつきの娘  妖怪の子預かります2」 廣嶋玲子

お手軽シリーズ第二弾。(12/6)

 

006/185

京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ」円居挽

京都を舞台にした小説をいくつか書いておられる京大ミステリ研究会出身の作家さんですが、初めて読みました。一浪して京都大学に入った男子学生が主人公。京都大学構内にひっそりと営業しているバーがあるらしく、解きたい謎を抱えているときにしかたどり着けない不思議な場所。京都人にはなじみ深い場所が出てきて、それだけでもとっつきやすい。(12/6)

 

007/186

開ける男 鍵屋・圭介の解けない日常」本田久作

これまた初めて手にした作家さんです。略歴を見る限り、小説を本業にされているわけではなさそうです。「開かないカギはない」から自宅にも鍵をしないという変わり者の鍵屋が主人公。持ち込まれる鍵がらみの謎を軽妙に解読していきます。結構面白かったです。(12/6) 

 

008/187

妖たちの四季  妖怪の子預かります3」廣嶋玲子

シリーズ第三弾。(12/7)

 

009/188

半妖の子  妖怪の子預かります4」廣嶋玲子

シリーズ第四弾。(12/7)

 

010/189

きみはサイコロを振らない」新名智

これまた初めての作家さんです。中学時代の友人の死というトラウマから抜け出せない男子高校生が、遊ぶと死ぬという謎のゲームを探しているうちに、その呪いに罹ってしまい、仲間の手を借りて、呪いを解き、トラウマを克服していく物語。まだ若い作家さんで、話もお上手。(12/8)

 

011/190

江戸の子守唄 御宿かわせみ2」平岩弓枝

相変わらず面白いです。捕物帳であり主人公たちの恋物語であり。全く読み飽きません。(12/9)

 

012/191

ペッパーズ・ゴースト」伊坂幸太郎

伊坂さんの本は久しぶりに読んだような気がします。人に言えない不思議な能力を持った中学教師が主人公、なぜかテロ事件に巻き込まれるが、教え子の書いた小説の登場人物たちが現出し、彼らとともに事件を未然に防ごうと行動する。伊坂さんらしく、物語の結末がどこへ向かうのかドキドキさせられながら読むことになりました。(12/10)

 

013/192

虚魚」新名智

先日読んで気になった作家さんです。第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作にしてデビュー作です。体験したら死んでしまうという怪談を探すうちにある魚を釣り上げたら死ぬという怪談が、とある川沿いに遡るように残されていることからそのルーツをたどる主人公。思わぬトラブルに巻き込まれます。新人とは思えない筆致でぐんぐん引き込まれます。面白かったです。(12/11)

 

014/193

水郷から来た女 御宿かわせみ3」平岩弓枝

実質の夫婦でありながら大っぴらにはできない主人公。時折切なくなります。(12/11)

 

015/194

ショパンの心臓 」青谷真未

これまた初めての作家さんです。美術ミステリの体をしているのだが、あまり好きではない謎解きがされている。タイトルもしっくりとは来てなくて、ちょっと残念な気がします。(12/11)

 

016/195

100万回生きたきみ」七月隆文

切ないようなSF恋愛小説の名手かと思います。100万回転生を繰り返している主人公。人間であったり、微生物であったり。しかも記憶はずっと継続されている。不思議な設定です。普通であれば、「出会えたことが軌跡」のはずが、何度転生しても必ず出会ってしまう主人公。でもなぜか永遠に結ばれることはない。素敵な結末でした。(12/11)

 

017/196

幻月と探偵」伊吹亜門

この方も京都ゆかりの若手ミステリ作家さんです。京都を舞台にした著作が多い中で、今作は満州が舞台です。満州派遣の官僚と関東軍が関わるスケールの大きなミステリです。設定からみて読みづらいかなと覚悟していたのですが、豈はからんや、読みやすくページは進みました。(12/14)

 

018/197

タカラヅカの謎 300万人を魅了する歌劇団の真実」森下信雄

話題のタカラヅカなのだが、残念ながら昨今の報道を見ている限り、この本に真実は書かれていないようだ。作者は、この間話題になった阪急電車からの出向組で公演のプロデューサーを務める人物。略歴を見てびっくり、同じ大学の一年後輩でした。それにしてもこの組織は、膿を出し切る覚悟が全くないように見受けられますね。残念です。(12/14)

 

019/198

アリアドネの声」井上真偽

彼の小説は結構面白いのですが、この作品も新聞広告を見たときからとても気になっていたところ、期待に違わぬ面白さでした。地震により地下深くに取り残された一人の女性。彼女をドローンを使って地上まで誘導しなければならないのだが、彼女は、眼が見えず耳も聞こえない。さらに話すこともできないという絶体絶命の状況。アッと驚く結末まで見事でした。面白かったです。(12/16)

 

020/199

七まちの刃 -堺庖丁ものがたり-」遠原嘉乃

大阪を代表する伝統的工芸品である堺打刃物の包丁研ぎ師の孫娘が主人公。祖父が病気で入院している間、店番をしながら様々な事件に出会い、人としても研ぎ師としても成長していく物語。堺打刃物の歴史や特徴がよく理解できます。また、美味しそうな食べ物や趣のある街の風景が随所に描かれ、堺のPR小説としても上手く仕上がっています。私もこの本を読むまで、堺打刃物は、鍛冶と研ぎの完全分業制であることを初めて知りました。勉強になります。どうやら1月からJRと共同で堺を巡るキャンペーンが始まるようで、2月後半から堺打刃物伝統工芸士の展示会もあるようです。楽しみです。(12/19)

 

021/200

暗闇にひと突き マット・スカダー・シリーズ」ローレンス・ブロック

軽妙な会話が魅力的な「殺し屋シリーズ」「泥棒バーニィシリーズ」の作者であるブロックのもう一つの人気シリーズの一冊。最初の作品は、なかなか見つけられず、本作はシリーズ2作目のようです。予想に反して、いたって硬派な主人公、物語も非常に硬く進みます。かなり意外でした。もう何作か読んでみよう。(12/23)

 

022/201

東京ダモイ」鏑木蓮

京都生まれのミステリ作家さんの江戸川乱歩賞受賞作にしてデビュー作。シベリア抑留時の事件が、現代の殺人事件に繋がる壮大な物語です。途中で多数の人物が登場するあまり混乱してしまい、見失いかけましたが、何とか最後までたどり着きました。物語の舞台が舞鶴の港であったり、京都市内であったりとなじみの深いところばかりだったので、それも助けになったかもしれません。(12/24)

 

023/202

山茶花は見た 御宿かわせみ4」平岩弓枝

シリーズ4作目。山茶花は何を見ていたのでしょうか。

(12/25)

 

024/203

幽霊殺し 御宿かわせみ5」平岩弓枝

シリーズ5作目。幽霊ってすでに死んでるのでは。

(12/27)

 

025/204

鍋奉行犯科帳 猫と忍者と太閤さん」田中啓文

このシリーズ久しぶりに読みました。相変わらず面白いです。そしてさらに新キャラクターの登場。(12/29)

 

026/205

弧鷹の天」澤田瞳子

今を時めく直木賞作家さんの記念すべきデビュー作です。時は奈良時代、新しい国づくりにまい進する若者たちの物語。政争に巻き込まれ命を落とす者たちもありつつ、次の世代へ、理想を継承していく熱い姿が描かれます。なかなかこの時代を舞台にした小説は少ないのですが、超大作の力作でした。(12/31)