2023年3月23日木曜日

2023年2月

激動の2月は、小説が8冊、それ以外の本が4冊で、合計12冊という結果になりました。

悲しい別れがあったり、精神的に落ち着かない日々が続き、かつてないくらい本を読む気にならない日が続くという珍しい経験をしました。

お薦め本を探すのも憚られる感じですが、意を決して申し上げますと、

“#真相をお話しします”は、想像していた以上に面白かったです。短編集ながら、全ての作品がよく練られていて、最後には必ずどんでん返しがあって、とても楽しく読めました。お薦めです。ただ、個人的には最後にどんでん返しがないといけないような風潮はあまり好きではありません。

“服従”は、何かの書評で見かけたのか、誰かの書籍の中で推薦されていたのか思い出せませんが、その時に図書館に予約しましたが、すっかり忘れていました。宗教をめぐる諍いは際限がなく、現在も世界のあちこちで続いています。日本国内でも、キリスト教の弾圧や明治維新後の新宗教弾圧などの歴史がありますが、圧倒的多数が少数者を抑え込むという形なので、宗教戦争という形にはなりませんでした。今の世界の趨勢を見てみると、三大宗教と呼ばれる中では、イスラム教徒が人口的には最も多数を占めるんではないでしょうか。そんなことを考えながら読んでいたわけはないのですが、結構面白くて一気に読んでしまいました。意外とお薦めです。

小説以外では、“思いがけず利他”がよかったですね。改めて“誰かにために”というロジックについて深く考えました。“あなたのために”“お前たちのために”という言葉ほど利己的な言葉はないと思ってこれまで生きてきました。結局それで自分に酔いしれてるだけじゃん、と。結局誰もが、“自分のために”しか生きられないだから、それで良いんじゃないかと。それが結果的に“誰かにために”なることがあったとしても。それはあくまで受け手側の問題であって、送り手側がそれをコントロールすることはできない。腑に落ちる一冊でした。お薦めします。

父に死後の後始末の為、3月も色々と考えることが多く、本にもあまり手が伸びません。今後の生活にも結構変化が起きそうで、そちらにも注力しなければなりません。しばらくは忙しくなりそうです。

 

 

001/021

進歩 人類の未来が明るい10の理由」ヨハン・ノルベリ

世界はどんどん良くなっている。ベストセラーとなった“Factfulness”の二番煎じですが、もとに出版は、どちらが先だったのでしょうか?事実はこうだと言われても、凝り固まった既成概念はなかなか解きほぐすことはできないものです。ただ私自身は、グロスの数字だけでなく、少数派と言われて切り捨てられている部分にこそ、真実が隠されているのではないかと思っています。(2/4)

 

002/022

栞と嘘の季節」米澤穂信

シリーズものの二作目です。決して嫌いじゃないのですが、だんだん面倒くさくなってきています。面白いんですがね。(2/5)

 

003/023

#真相をお話しします」結城真一郎

新進の作家さんで、この本もえらく売れているようです。書店の店頭にも平積みされてましたね。短編集なのですがとても面白い本でした。ちゃんとどんでん返しもあって、人気が出るのがとてもよくわかります。まだ著書は少ないですが、他の本も読んでみたいと思います。(2/5)

 

004/024

最後の鑑定人」岩井圭也

科捜研を辞めて、民間の研究所を設立した凄腕鑑定人の物語です。設定として、こんなことがあり得るのかという疑問が最後まで付き纏って、すっきりした読後とはなりませんでした。(2/9)

 

005/025

すごい神話 現代人のための神話学53講」沖田瑞穂

世界のあらゆる神話に見られるいくつかのパターンを解説するエッセイに近い本で、読みやすく面白い本でした。最後の方は著者の専門分野であるインドの神話に深入りしてくるのですが、流石に馴染みがないもので、ちょっとしんどかったです。(2/9)

 

006/026

ゴーストハント4  死霊遊戯」小野不由美

何度もご紹介していますが、お気に入りのシリーズです。また新しいキャラクターが増えてきました。主人公の潜在能力も徐々に顕在化してきました。次も楽しみです。(2/10)

 

007/027

航空自衛隊副官玲於奈」数多久遠

航空自衛隊の内部事情を描いたお仕事小説です。本当にこんな感じなのか、ない事情に詳しい方に聞いてみたいような。純粋にお仕事小説としても面白かったです。(2/10)

 

008/028

天才までの距離」門井慶喜

確かこの小説の前日譚も読んだ記憶があるのですが、ほとんど内容を覚えていません。一応続編のはずです。彼の小説は好きなのですが、歴史的な人物や出来事に焦点を当てて書かれたものと芸術や書物に関する豊富な知識をもとに書かれた完全な創作ものの大きく二つの系統に分かれていて、この本は後者に属します。どちらかというと、前者の方が面白い。(2/12)

 

009/029

カルロ・ロヴェッリの科学とは何か」カルロ・ロヴェッリ

“時間は存在しない”で注目を集めた著者の化学エッセイです。私は全く知らなかったアナクシマンドロスという古代ギリシャの哲学者を中心とした科学の歩みを概観したものです。科学の本質とは何か。それは批判的な精神だと看破します。先人の知恵を敬いつつ、常に批判的であって、修正することを厭わない。そうやって科学は進歩していく。面白かったです。(2/20)

 

010/030

東京、はじまる」門井慶喜

前にも書きましたが、彼の小説の二系統のうちの前者。明治時代に活躍した建築家辰野金吾の物語です。決して完璧な人間として描くのではなく、若干破綻したような人物として描かれています。実像はどうだったのか知り得ませんが、まずまず面白かったです。(2/25)

 

011/031

服従」ミシェル・ウエルベック

2015年頃に書かれた小説のようなのですが、2022年の大統領選挙でイスラム系の候補者が大統領に選出されたフランスを舞台に描かれた近未来小説です。かなり問題のある表現も多いですが、大きな状況の変化があってにしても、それを従容として受け入れる社会が淡々と描かれています。後半は、一気読みでした。(2/26)

 

012/032

思いがけず利他」中島岳史

この手の本にしてはよく売れている本だそうで、図書館でも人気の一冊です。“利他”ということの意味を180度変えてくれる衝撃的な一冊でした。“人の為の行為”と“お節介な行為”は紙一重で、その境界線は人それぞれです。著者なりの答えも書かれていて、それには大いに納得させられます。面白かったですよ。お薦めです。(2/28)