2021年3月11日木曜日

2021年2月

 28日しかない2月の読書はぴったり20冊、うち小説が11冊でそれ以外が9冊という結果でした。2月は、週末には度々お出かけもしていたのですが、国民の祝日が2日もありましたので、結構読めましたね。

 

そんな中でのお薦め本ですが。

小説では、直木賞候補にもなったインビジブルが良かったです。舞台は敗戦後すぐの大阪なのですが、戦中の負の遺産が招いた犯罪を戦後の民主化された自治体警察が解決するという骨太な設定で、読み応えもありました。お薦めです。

最近はまっている海外ミステリですが、マギー・ホープシリーズは安定の面白さで良かったです。

 

次いで小説以外の分野ですが、これはなかなか良い本が続きました。

ざっとあげていきますと、ビジネス・社会分野では、“ブルシット・ジョブ”、 “シャーデンフロイデ”、“最後の秘境東京藝大”、“失われた報道の自由”、 “マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る”、歴史分野では、“旅する神々”、“オランダ商館の見た江戸の災害”、いずれもとても面白くてお薦めです。詳しくは、下記をご参照ください。

 

小説については、最近はほとんどがミステリ小説ばかりで、歴史小説が全く姿を消してしまいましたね。とはいえ、ミステリ小説も現代ミステリというのがほとんど無くて、少し前の時代設定の小説が多くなりました。最近は、街中に監視カメラがあって、一般人の行動はスマホのGPS機能ですべて追跡されているし、現金をやりとりする機会も極端に少なくなってきてしまいました。そんな時代にミステリを書くのは本当に難しいと思います。そのせいもあってか、最近のミステリでは、刑事などの警察官が主人公となって、内部との軋轢を吹き飛ばしながら、事件を解決に導くというような仕立てが多くなってきましたような気がします。

携帯電話もなかった頃の小説はとても面白かったですが、それだと今の若い人たちにはピンとこないんでしょうね。難しいですね。

 

3月に入ると少しずつ暖かくもなり、緊急事態宣言も解除されたので、少しずつ県境をまたぐ散歩を再開しようかなと思っています。その際には、好きな本を抱え、三密をしっかり避け、感染対策をしっかり取って、ぷらぷらと参ります。

 

 

001/024

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」デヴィッド・グレーバー

昨年、コロナ禍のさなか、働き方が大きく注目され、エッセンシャル・ワークに焦点が当てられていた時期に出版され、大いに注目された書籍です。この本の中で、ブルシット・ジョブについて、“雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取り繕わなければならないように感じている。”仕事と定義されており、“取り巻き”“脅し屋”“尻ぬぐい”“書類穴埋め人”“タスクマスター”という5つの類型を示しています。人の役に立っている必要な仕事の報酬が低く、誰の役にも立っていない冬なしごとの報酬が高い。不思議な現象です。最後に、この書籍では解決策を提示しないと宣言されていますが、ベーシックインカムについては、少し書かれています。コロナ禍で、“働き方”の改革が急ピッチで進むだろうと考えられます。その中では、ブルシット・ジョブは少しずつ消え去っていくのではないかと期待しています。(2/3)

 

002/025

ランダ商館長の見た 江戸の災害」フレデリック・クレインス

著者は、国際日本文化研究センターの研究者で、近世前のヨーロッパ人が日本を紹介した文書を研究しており、この書籍は、江戸時代に長崎の出島にあったオランダ商館のトップを務めた人物が、本国に報告するために書き綴った日誌を元に、江戸時代にあった災害が、彼らの目にどのように映ったかを紹介している。取り上げられている災害は、江戸の大火、地震、京都の大火、雲仙普賢岳の噴火などである。最初の江戸の大火では、明暦の大火に遭遇したワーヘナールによる臨場感あふれるレポートが残されており、非常に興味深い。いわゆる流言飛語のたぐいも記録されているのだが、それ以上に彼らの目には、災害に対して“仕方がない”と折り合いをつけている日本人の気風がなかなか理解できないようで、それも非常に興味深いところです。いやぁ、面白い本でした。磯田先生の解説も理解の助けとなり、良かったです。(2/5)

 

003/026

レフトハンド・ブラザーフッド」知念実希人

2年ほど前に書かれた医療ミステリではない普通のミステリです。事故で亡くなってしまった双子の弟お魂が左手に宿り、自分と会話ができる。そんな状況下で殺人事件に巻き込まれていく。その背景には違法薬物を扱う半グレ集団の暗躍があるようで、、、という物語。冒頭から、主人公が、あり得ない行動をとり続け、自らを窮地へ追い込んでいきます。ちょっとその展開があまりの強引で、前半部を読むのは結構しんどかったです。後半は勢いに任せて読み切りましたが、この作者が書くこの時期の医療ミステリ以外のミステリは、ちょっと私にはしんどいかなとの思いを強くした一冊でした。(2/5)

 

004/027

ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係」真梨幸子

なんか不思議な小説でした。別に警察がストーカー事件の解決に向けて活躍するというような物語ではなく、SNS、アイドルなどいろんな切り口から起こったストーカー事件を物語として綴っているという感じ。(2/6)

 

005/028

小説あります」門井慶喜

徳丸敬生という作家の記念館が閉館されることになり、主人公がそれを止めるため知恵を巡らすというところから物語が始まります。そこに若干のミステリ要素を絡めつつ、大企業経営者の椅子を巡る兄弟の確執などが枝葉にあって、途中では“人はなぜ小説を読むのか”というたいそうなテーマについて語るという壮大な物語になっています。(2/6)

 

006/029

最後の秘境東京藝大 天才たちのカオスな日常」二宮敦人

数年前に出版されたとき話題になった本でしたが、先日たまたま図書館で見かけたので借りて読みましたが、これは面白かったです。著者は本来小説家さんなのですが、奥様が現役の藝大生だそうで、そこから藝大に興味を抱き、学生にインタビューを重ねながら、彼らの不思議な日常を浮かび上がらせています。ほとんどが実名で書かれており、おそらく誇張はないものを思うのですが、なかなかに凄い学生生活を送っておられるようです。言葉で説明するのは難しいので、是非とも読んでいただきたいと思います。とても面白いですしお薦めです。(2/7)

 

007/030

死神の棋譜」奥泉光

一応は将棋ミステリなのですが、途中からややオカルトチックな様相を帯びてきて、謎解きとの要素は少なくなります。戦前に北海道で生まれたとされる棋道会という謎の組織。妖しげな宗教団体と一体化し、普通の将棋ではない、別種の将棋を標榜します。この作者の作品は初めてなのですが、目につくタイトルが多いので、一度は読んでみたいと思っていました。謎解きミステリ小説だと期待して読むと、裏切られるかもしれませんが、そうでなければ、面白いと思います。(2/9)

 

008/031

繊細な真実」ジョン・ル・カレ

これまで全く縁が無く、名前も知らない作家さんだったのですが、昨年末の新聞で死亡記事(確か一面に)を見て、これは読んでみなければいけないと思い、借りてきました。イギリスでスパイ小説を主に書かれている作家なのですが、この作品を80代で書かれていることに驚きました。かつてのスパイ小説では、個人の能力であったり、当時は夢物語であった技術を使って活躍する主人公がえがかれていましたが、今やそういった技術がことごとく現実のものとなっており、我々のような素人でも使用することができます。そういった時代にも追いついているというのは凄いですね。(2/11)

 

 

009/032

失われた報道の自由」マーク・R・レヴィン

アメリカのジャーナリズムの実態について書かれた本です。本国では前の大統領選挙が始まる直前2019年に出版され、日本では昨年秋に翻訳出版されました。原題は、“Unfreedom of Journalism”であり、そのほうが本書の内容を的確に表していると思います。ざっくり内容を紹介しますと、合衆国憲法に保障されているはずの“報道の自由”は、同国の歴史の中で、常に政府の監視の下にあり、決して自由ではなかった。特に最近のマスコミは民主党お一心同体となっており、真実を報道していない。ここ数年のトランプ大統領に対する報道は常軌を逸していた。彼は決して、ロシアとの共謀、権力乱用もしていないし、人格攻撃も根拠がない。と異様なことが書かれています。そのため、過去の民主党政権が犯した罪の数々を取り上げています。昨年の大統領選挙の結果に疑問を抱いている皆さんにとっては、とても興味深い内容なのではないかと思います。所詮、人は自分の信じたいことだけを信じる生き物ですから、マスコミに対して客観的な真実を報道することなんて誰も期待していないのではないでしょうか。それを取り上げて“偏向している”と糾弾することの空しさよ。自分で考えよう。(2/14)

 

010/033

旅する神々」神崎宣武

とても面白い本でした。著者は岡山県にある神社の神職の方で、他にも著作があり、私も何かを読んだ記憶があるのですが、書名が思い出せない。ひょっとしたら、論文集の中の一編だったかもしれません。本書には、古事記に出てくる5柱の神々が、国内を旅する様が追いかけられてます。これは、大和朝廷の征服の記憶なのかもしれませんね。取り上げられているのは、大国主命、山幸彦、吉備津彦、倭姫命、倭建命、そして最終章にはユネスコの無形文化遺産にも登録された来訪神について書かれています。それぞれ非常に興味深かったですが、特に目を惹いたのが倭姫命。第11代垂仁天皇の皇女で、天照大神を祀る地を求めて伊勢まで旅をし、今の伊勢神宮の礎を築いたとされています。その旅のルートは長大で、30数年に及んだとされています。行く先々に天照大神を祀る神社が残されているようで、それらを訪ね歩くのも面白いかもしれませんね。いやぁ、面白かったです。(2/14)

 

011/034

インビジブル」坂上泉

敗戦後、現在の中央集権的な警察組織になる直前、アメリカ流の自治体警察を目指して作られた大阪市警視庁の末期に起こった殺人事件を巡る物語。戦後の混乱する大阪市内とその後の多くの人々の人生を狂わせた日本政府が中国大陸で行っていた犯罪が、詳細に描かれています。もちろんフィクションなのですが、このミステリを重厚な仕上がりに変えています。直木賞候補にも挙げられたこの作品、かなり面白かったです。(2/15)

 

012/035

シャーデンフロイデ 人の不幸を喜ぶ私たちの闇」リチャード・H・スミス

シャーデンは害、フロイデは喜びを意味するドイツ語で、これらを合わせたシャーデンフロイデと言う言葉が生まれ、そのまま英語にもなっています。感覚的には、人の不幸を喜ぶことを指しています。原著は2013年に書かれ、5年後に翻訳出版されました。当時から話題になっていたようですが、私は全く知らず、最近読んだ本(何だったか忘れた)で紹介されていたので、図書館で借りてきました。自分には関係ないと思われる方も多いかもしれませんが、“妬み”であるとか“おバカタレント”“ユダヤ人差別”、あるいは最近SNSを中心に吹き荒れている“屈折した正義感”などもこの範疇に入るものと思われます。自分の中にも当然こういう感情はあるわけで、改めて自分の醜さにも気がつかされました。なじみのないアメリカのテレビ番組やアニメーションが取り上げられていて、ダイレクトに響かない部分もありましたが、読み出すと止まらないくらい面白く、お薦めの一冊です。(2/17)

 

013/036

国王陛下の新人スパイ」スーザン・イーリア・マクニール

すでに皆さんにはおなじみ(?)の女性工作員マギー・ホープシリーズの第3作目です。今作では、ついにナチスドイツの首都ベルリンへの潜入工作に取りかかります。かつて自分を捨てた母親と対峙するという困難なミッションを何とかこなしていくのですが、いつもながらの手に汗握る展開で、ページをめくる手が止まりません。ミッションを巡るスパイミステリの要素と死んだと思っていた恋人との偶然の邂逅、さらには敵対する母娘の今後の関係など注目すべき読みどころは満載で、早く次作を読みたくなります。(2/20)

 

014/037

Another2001」綾辻行人

昨年出版され話題になった本ですが、1998年を舞台にした前作に続き、今作ではその3年後である2001年を舞台にしています。ある街の中学校で3年3組にだけ訪れる不思議な現象。その恐ろしい現象を止める方法は一つだけ。しかしながらその方法を伝える記憶・記録は時代に継承されていかない。まぁ、とりあえず壮大な設定で、雑誌にも6年間に渡って連載されたという超大作です。面白かったです。(2/21)

 

015/038

サム・ホーソーンの事件簿1」エドワード・D・ホック

初めて手にした作家さんですが、たくさんの短編ミステリを手がけている方のようで、本来医者である主人公の活躍する作品だけでも数十編書かれており、それ以外のシリーを含めるととんでもない数になるようです。舞台は1920年代のボストン近郊の街。モータリゼーション社会が到来する直前のアメリカの風景がうまく描かれています。取り上げられている事件は、いわゆる不可能犯罪ばかり。よくもこれだけネタを考えつくものと関心います。また、時々読んでみようかな。(2/23)

 

016/039

マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る」丸山俊一+NHK「欲望の時代の哲学」制作班

マルクス・ガブリエルが、Webメディアであるクーリエ・ジャポンの企画で、世界の多方面の第一人者と丁々発止の言葉のやりとりをいたします。私自身は全く知らない人ばかりだったのですが、日本文化にも触れられている部分があって、その部分はとても興味深く読みました。残念ながら、すべての対話がコロナ禍前だったので、コロナ禍以後の危機の時代についての対話が読みたかったです。ただ全体的には、私には難解でした。(2/23)

 

017/040

反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー」ジェームズ・C・スコット

原題は“Against to Grain”、最近“人類の歴史”についての書籍を少しずつ読んでおり、その中で参考図書として取り上げられていた本です。昔々の社会科の時間に、人類は、不安定な狩猟生活から穀物を栽培するという安定的な生存方法を獲得することで、土地に定着し、ルールが生まれ、国が誕生した。と漠然と習い、そのとおり記憶してきました。しかしながら最近の研究によると、人類は狩猟生活をしていた時期にすでに定住し、その後千年単位の時を経て、穀物お栽培して収穫するという術を学ぶも、その後の国家形成までには、さらに千年以上の時間を費やしているそうです。さらに、当然の疑問として、狩猟生活で得られる栄養価と、穀物の栽培で得られる栄養価では、前者のほうが多様性に富んでおり、労力も少なくてすみます。なのにどうして人類はそんな難しい道を選んだのか。答えは分かりませんが、とても興味深く読みました。面白かったです。(2/23)

 

018/041

継体天皇と即位の謎」大橋信弥

第26代の天皇なのですが、非常に謎が多い天皇だといわれています。在位は6世紀の初めですから、記紀が編まれる遙か昔です。万世一系と言われる天皇家ですが、記紀の中でも2度その系統が断絶したことが伝えられており、後の方がこの継体天皇で、25代の武烈天皇がみまかった後、後継者がおらず、10代さかのぼる応神天皇(残念ながら実在したか否かは不明です。)の五世孫であった男大迹王が即位したと伝えられています。結構眉唾で、戦後、天皇研究が自由になった頃には、ここで政権交代が起こったという考えが主流になりました。実は私もその説に賛成で、後世の天皇がその正統性を顕示するために記紀の中にその記録をとどめたものと考えています。とはいえ、そんなことを証明する資料が存在するわけではなく、こうやって自由に妄想できることが楽しいですね。(2/24)

 

019/042

本の町の殺人」ローナ・バレット

古書店や専門書店が軒を並べるボストン近郊の小さな町ストーナムで起こった殺人事件を第一発見者でありながら容疑者リストの筆頭にあげられてしまった主人公が、自らの潔白を証明するため真犯人捜しをするという物語。“ブックタウン・ミステリ”としてシリーズ化もされているようで、これはその第一作です。実際、イギリスのウェールズに“ヘイ・オン・ワイ”という書店を中心にした町づくりに成功した町があるそうです。残念ながら、この本では、そんな町の魅力がいまいち伝わってこず、素人探偵のどんくささもあって、読後感としてはもう一つ。期待が大きかっただけに残念。(2/27)

 

020/043

半沢直樹 アルルカンと道化師」池井戸順

ご存じ半沢直樹の最新作ですが、舞台は主人公の大阪勤務時代にさかのぼります。不可思議なM&A案件お回避する作戦を練るうちに、モダンアートの超人気作家の過去が明らかになってくるという物語。いつものように私利私欲だけを考える銀行幹部に半沢直樹が真っ向から勝負を挑みます。お約束の勧善懲悪ですが、すっきりして良いです。半日あれば読めます。(2/28)