2018年6月5日火曜日

2018年5月

5月は全部で15冊、うち小説が9冊、その他が6冊という内訳でした。ペースとしてはまずまずですね。

最近はまっている辻村深月さんが2冊あり、そのうちでは家族シアターが面白かったです。なかなかお上手ですね。家族って、一番近しい他人(自分ではない人の意)であって、最初にできあがった関係性は終生変わることはなく、お互いの自我を徹底的にぶつけ合う関係でもある。それをいろんな切り口で捉えるとこのような物語に替えられるという典型例です。どれも良かった。

あと、荻原さんの明日の記憶も良かったです。なんか将来の自分の姿を見るようで少し怖かったですが、ものすごいリアリティのある作品でした。人は必ず老いていくものであり、誰もそれに逆らうことはできません。最近、年配の方の運転ミスによる重大事故の報道が目立つようになりました。今はまだ大丈夫だと、自分では思っているのですが、もし自分に認知症の症状が現れたとして、自分はそれに気づくことができるのだろうか。未然に重大事態を防ぐことができるのだろうか。周りに家族が居るときは注意をしてくれるでしょうが、一人きりになったときはどうなるんだろう。などと考えてしまいました。

その他の本では、“たのしいプロパガンタ”がとても面白かったです。ただ最後に、娯楽の顔をして密かに近づいてくるプロパガンタを見抜くために“思考実験”が重要と書かれているのだけれど、この文脈での“思考実験”って具体的にどんなことを指しているのか、いまいちよく理解できなかった。また最後の方で、最近人気のとある作家について、私と同様の評価をされているところがあって、思わず膝を打ってしまった。理論的に説明するとこういうことだったのね。改めて納得した。

最近の傾向として、どうも読み慣れた作家の小説についつい手を伸ばしてしまいます。本当は、新しい作家さんの本も読んでいきたいのですが、手がかりが少なく、直木賞や本屋大賞などの受賞作に惹かれて読むことが多くなりました。まぁ、おかげで門井さんとか辻村さんのような面白い作家にも出会えたのですがね。

また、面白い作家さんの情報を教えてください。お願いします。


001/053
最近話題の睡眠負債。この本は2010年に出版された物に最新の事実を加味した改訂新版。睡眠について科学的に解説してくれるとても面白本です。途中で出てくる化学物質や生物学的専門用語が難しくて、そこは読み飛ばしてしまいましたが、生物の自然態は睡眠状態で、特別な時に覚醒するよう様々なチャネルで指令が伝達されるという構造が非常に興味深い。御多分に漏れず年とともに、眠りが浅く短くなる傾向にあります。まぁ、体が欲していないので大丈夫かなと思いますが、休日なるとお昼近くまで平気で眠っていられる娘の様子を見ていると、昔は自分もそうだったと思いつつ、うらやましく思ってしまいます。(5/2)

002/054
十四の嘘と真実」ジェフリー・アーチャー
ひょっとすると最近も読んだかなと疑いつつ読んでみました。彼の小説は本当に面白くて、何度でも読める。こうした短編集が多いように思うが、実は長編も面白い。又久しぶりに長編も読んでみようかな。(5/5)

003/055
家族シアター」辻村深月
家族をテーマにした短編小説集。今年の本屋大賞受賞作家と言うことで、いろいろと読んでみようと買ってみました。親子、兄弟、姉妹など切っても切れない関係だけに、却って複雑化する家族関係を興味深い視点で描いた習作ばかり。女性作家でありながら、父や弟の立場で書かれた作品が、結構面白い。いろんなジャンルの本を書いておられるようなので、又いろいろ読んでみよう。(5/5)

004/056
明日の記憶」荻原浩
若年性アルツハイマーを発症した男性を主人公とした小説で、映画化もされたらしい。ばりばりと仕事をしながら、少しずつ記憶を失っていく様が、残酷なまでに丁寧に描かれている。体もしっかりしていて、意識もしっかりあるのに、記憶がどんどん失われていく恐怖。我と我が身を振り返ってみると、ドキッとするような場面もあって、ひょっとすると近い将来の自分の姿かなと思い、怖くなる。(5/6)

005/057
しくじる会社の法則」高嶋健夫
永年にわたる記者生活から導き出された失敗の法則集。こんなことがあったら、それは要注意サインと思われる物を紹介されているが、当然のことながら、全ては後付けなので全てが全て当てはまるわけではないし、“○○ができていないというサインも、できているできていないかは、ある種主観的なものなので、どこまで当てはまると言えるのか怪しいものであるが、全くの的外れというわけではなさそう。まぁ、結局は自分の勘を磨けと言うことに尽きるのかな。(5/9)

006/058
蝦蟇倉市事件2」秋月涼介ほか
架空の都市である蝦蟇倉市を舞台に様々な作家が作品を綴るアンソロジーになっている。作家によって作風は全く違うのだが、建物や町の特徴が共通するのは当然で、共有して登場する人物もある。ところが、作者が違うものだから、そのキャラクターがまちまちで、それを楽しむなら良しとするが、そうでないなら、少し読みづらいかもしれない。ほとんどが知らない作家ばかりなんだけど、ほかの作品も読んでみたいと思わせるような作家は、残念ながら居ませんでした。(5/12)

007/059
ツナグ」辻村深月
死者と生者をツナグ特殊な能力を持つ人。そんな人が居たら自分は誰と会ってみたいと思うか。死者にとっても生者にとっても、そのチャンスは一回限り。最初の数編は、アイドルであったり、親友であったりと様々。そして最終章では、思いも寄らない内容で、ううぅむそうきたかと唸らせるような展開。とてもよくできています。なかなか読ませる作家ですね。(5/13)

008/060
以前から店頭で見かけて気になっていたシリーズなのだが、表紙を見る限りでは今ひとつかなと思っていました。今回はたまたま図書館で見つけたので、借りてみました。結果、面白かったです。売れるのもよく分かる納得です。表紙から受ける印象とは違って、中身はいわゆるメディカルミステリーで、それも素人ながらかなり本格的な物と見受けられます。本作は、シリーズ初の長編で、主人公の二人が出会う場面を描いている。他の作品も読んでみようと思います。(5/15)

009/061
新・日本の階級社会」橋本健二
過去に行われた様々な調査から結果を分析し、現在の新たな階級社会の実態について、非常に分かりやすく書かれている。数年前に発表されたピケティの著作でも明らかにされたように、世界は格差が拡大する方向に進んでいる。問題は、それをどうすべきかと言うことである。当然のことながら、富める人たちは、自己責任論を楯に、所得再分配には否定的であり、アンダークラスであえぐ人たちは、正反対の主張をする。面白いのは、持てる人たちは、自己責任論を主張するのだけれど、相続税制の強化には反対する。結局自己責任っていうのは欺瞞だと言うことがよく分かる。社会が破滅する前に手を打たないといけないですね。(5/19)

010/062
日本核武装」高嶋哲夫
日本のどこかで、核兵器の開発プロジェクトが密かに進められていたところ、ある事故をきっかけにプロジェクトの存在が発覚する。もし明るみにでれば、世界から孤立してしまうことは間違いない。さてこの問題をどう処理するか、という社会小説。同時進行で、中国の南沙諸島、尖閣諸島進出、東京サミット開催と平和を揺るがす事件が連続する。こういった小説を書かせると、この著者は上手い。ただ、登場する政治家に現実感がないのが少し残念だけど。(5/20)

011/063
これからの世界を考える上で、避けて通ることができないテクノロジーについて、私たちはどう対峙すべきかと言うことに焦点を当てて書かれた物。とはいえ、本質的なことはきっと変わらないはず。ただ、自分の常識は世界の常識ではない。今の常識は明日の常識ではない。ひょっとすると、この世に常識なんて物は存在しないのではないか。(5/20)

012/064
探偵さえいなければ」東川篤哉
テレビドラマにもなった烏賊川市シリーズの近刊。謎解きはディナー~~で本屋大賞を獲得し、颯爽と世に出たときは、もっと一気にいけるかなと期待していたのだが、その後は期待したほどではないのが、少し残念。本作も、ちょっとなぁ。(5/27)

013/065
元京大総長の手による地学エッセイ。御自身も俳句をされているようで、有名無名含めた古典の俳句を紹介しながら、四季の移ろいを地学の視点で綴っていく。残念ながら自作の俳句は紹介されていないが、ある種の文理融合でしょうか。ただ、残念ながら、読み流してしまいそうな書きっぷりで、失礼ながら面白みにはちょいと欠けます。(5/28)

014/066
たのしいプロパガンタ」辻田真佐憲
プロパガンタと言う言葉を広辞苑で引くと、宣伝。特に主義・思想の宣伝。と書かれている。その主義・思想を宣伝する際、最大限の効果を上げるためには、如何に楽しく、面白く宣伝するかに係っていると言うのが、本書の内容である。過去のナチスや共産主義国家などのプロパガンタが、まさにそのとおりで、音楽などの芸術やアニメ、などあらゆるメディアを駆使して繰り広げている。本書によると、戦略的にこのような宣伝を繰り広げたのは、ナチスが最初だそうで、如何にそれと分からずに意識にすり込む事で国民の洗脳に成功した。何年か前、ある日本の政治家が自分たちもナチスの手口に学ばないといけないと漏らしたことがあった。正直過ぎて、ちょっとおかしいのかと思うが、まさにそのとおりなんだろうなぁ、それを悟られちゃだめだよ。(5/31)

015/067
クリスマスを探偵と」伊坂幸太郎
伊坂さんの最新作かと思って勇んで予約したが、実態は大学生時代に作った最初の小説に絵を付けた絵本でした。舞台はドイツのローテンブルグ、クリスマスイブの夜に起きた不思議な物語。少し物足りない感じもするが、初めて書いた小説でこのレベルとするとやはり大器と思わざるを得ないだろうな。(5/31)