2020年8月16日日曜日

2020年7月

 

コロナ禍の影響で、stayhome with book の月となった7月ですが、25冊もいったのは久しぶりですね。うち小説が14冊、そのほかが11冊という内訳でしたが、上下巻という組み合わせが2組あって、それなりにたくさん読めた月でした。

 

そんな中でのお薦めですが、小説では結構面白い本が多くて、お薦め小説がたくさんあります。

読んだ順にいきますと、まずは朝井まかてさんのグッドバイ

幕末に活躍した商人を描いた傑作です。私は全く知らない人だったんですが、長崎の歴史の中では重要な役割を果たした有名人だったんですね。ググってみたらいろんな情報がありました。小説もとても面白かったです。

 

風神の手は、連作の短編が全体として一つの小説になっているのですが、思わぬ展開にうなったり、あちらこちらに張り巡らされた伏線が、最後には見事に回収されたりと、なかなか楽しませてくれる小説でした。悲劇的な事件が描かれる場面もあるが、最後はハッピーエンドになっているという魔法のようなお話です。結構お薦めです。

 

ムゲンのiも良かったです。専ら医療ミステリを書いている作者ですが、最近は医療分野ではないミステリも多数書いておられます。残念ながら医療以外のミステリは、私の好みではないのですが、本作のようなSFものもいくつか書いておられます。最後に明かされたどんでん返しが、なかなか秀逸でした。見事に瞞されました。良かったです。

 

黒武御神火御殿は、宮部さんの人気シリーズなのですが、今作から主人公が交替いたしまして、それがどう響くかとおそるおそる読んでみたのですが、さすが彼女の手に掛かると全く何の違和感もなく入り込みました。一方で、これまでの、霊や物の怪より最も恐ろしいのは人だというストーリー展開から、若干外れてしまったのが少し残念でした。でも彼女らしい小説で面白かったです。お薦めです。

 

イマジン?は、有川さんのお仕事小説で、映像制作会社の最前線で働く青年の物語です。彼女らしく取材もしっかりされているようで、とても興味深く読みました。働く人に勇気を与えてくれる小説は好きです。

 

清明はお気に入りのシリーズ物なんですが、主人公が警視庁のライバルである神奈川県警に異動して、新たな局面を迎えました。そんな場所でも筋を通す主人公にスカッとする、お約束ですが安心小説です。

 

二流小説家は、何年か前の翻訳物ミステリで国内の各賞を取った秀作です。最近、ハヤカワポケットミステリに嵌まっておりまして、その一環で読んだのですが、噂どおり面白い一冊でした。過去の事件をトレースしていたはずが、新たな類似事件が発生し、命を狙われ、最後に待ち受けるどんでん返し。後半は一気に読み進められる面白い小説でした。これがデビュー作なんですね。

 

希望の海は、宮城県の海沿いにある都市の2011年3月9日から10日の風景を映描いた小説で、明日も明後日も普通の日々が、続くと信じている人たちの小さな事件が綴られます。今はまた普通ではない日々が続いていますが、普通であることがとても尊いことだと気づかせてくれる、とても切ない物語です。今月最もお薦めの一作です。

 

以上、一気にレビューしましたが、小説以外の本も、当たりが多かったです。

結局、ウナギは食べていいのか問題追いつめられる海は、岩波の化科学ライブラリーの書籍なのですが、ワンテーマで分かりやすく書かれているので、最近気に入って拾い読みしています。いずれも海がテーマで、科学的な問題を取り上げつつも、解決には政治的なセンスが必要という内容です。そういう所が文系の私にも読みやすい所なんだと思います。いずれもとてもためになる内容でした。お薦めです。

 

平城京に暮らすは、著者が別の本で書かれていたことがとても斬新で面白かったので、図書館で探し出して読んだものです。私たちが歴史の勉強をする上で、すっ飛ばしてしまっていた事を、こうやって地道に研究されている方がいるんだと思っただけで感動的なのですが、そこに敢えて思い切った視点で想像の羽を広げていく姿勢が大好きです。

 

僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルーは、ベストセラーにもなりましたし、読まれた方も多いと思いますが、比較文化論の教科書にもなるとても素晴らしい書籍です。面白かったです。お薦めです。

 

“Think clearly”も、ベストセラーの一冊ですね。いわゆる自己啓発本の一種なのですが、従来の努力せよ!式の書籍とは一線を引く内容がアメリカ的ではないように思われます。ひょっとするとそれが目新しくて、愛された理由なのでしょうか。なかなか面白かったです。

 

最後は出る杭は打たれるという少し古い文庫本です。今から四十年ほど前に日本の中小企業のものづくりの現場で布教活動をしていたフランス人が、当時の労働の状況を記録したもので、とても興味深く読みました。ちょうど私が働き始めた頃なのですが、こんな横暴がまかり通っていたと言うことが驚きですが、ひょっとするとそのうちの一部は今もなお続いているのではないかと想像しています。面白い本でした。

 

以上、お薦め本を拾っただけで膨大な量になってしまいましたが、7月の読書生活はかなり充実していました。本来なれば、ここに別格の国盗り物語が入るのですが、これを語り出すと長くなるので、これは除外いたしました。

 

八月に入り、コロナ禍の収束時期はなかなか見通せず、お家で読書という日々が続いています。まぁ、それも又良し、と言うところでしょうが、皆さんはお家時間をどのように過ごしておられるのでしょうか。

  

 

001/095

グッドバイ」朝井まかて

江戸時代末期から明治に掛けて、長崎からの茶葉の輸出で莫大な富を築き、長崎三女傑の一人と言われた大浦慶を主人公にした歴史小説です。この本を読むまで、この方の存在すら知らなかったのですが、竜馬と中心とした亀山社中、海援隊などを金銭面でも支えたと言われています。明治維新がなったから支えたと言われますが、この小説の中で描かれる姿は、ほとんどゆすりたかりと変わりません。後年は、手ひどい詐欺に遭って全財産を喪います。波乱万丈の人生を送った女性だったようです。彼女の描く歴史小説はお気に入りで、この作品も良かったです。(7/2)

 

002/096

国盗り物語(前)道三篇(後)信長」司馬遼太郎

5月の連休明けくらいからぽちぽちと読んでいた長編小説がこちらでして、学生時代に私が初めて読んだ司馬遼で、彼の本の中で一番お気に入りの小説でもあります。あれから何度か読み返しましたが、最後の読んだのはいつだったか、思い出せません。今年、NHKの大河ドラマで明智光秀が取り上げられたことから、久しぶりに読み返そうと思った次第です。この小説は、道三を主人公にした小説だった物が、好評につき後編が追加されたそうで、実は前編のほうが圧倒的に面白い。斎藤道三については出自がよく分かっていない事もあって、自由に想像の羽を伸ばして書かれていることから、ワクワクするような物語になっています。打って変わって後編は、信長篇とされていますが、主人公は斎藤道三の薫陶を受けた信長、光秀の二人と言って良く、破滅へ向かう対照的な2人の姿が描かれています。改めて読み返してみると、記憶以上に司馬遼臭さが漂う小説でしたが、やはり面白かった。司馬遼太郎を読むなら、まずこれだと思います。(7/4)

 

003/097

風神の手」道尾秀介

海辺の街を舞台にした連作小説集。全く無関係だった登場人物達が、実は複雑に関わり合っていたというある種のミステリー小説の様になっています。実は3編の小説のうち、2つ目の小説だけは、どこかで読んだ記憶があるのですが、どこで読んだかさっぱり憶えていない。実際その掌編だけが、先行して発表されていて、それを補うように他の小説が書かれ、全体として三世代にわたる大河小説になっています。いろんな所に伏線が張られていて、面白い小説でした。(7/5)

 

004/098

ムゲンのi(上)(下)」知念実希人

上下巻の小説でしたが、図書館で借りていたので、2ヶ月くらい間が空いてしまいました。おかげで、あらすじを思い出すのが大変でした。いつもの医療ミステリかと思っていたのですが、そこにSF的な要素が加味されていて、なかなか読み応えがありました。途中から結末が予想できたのですが、そこからの思わぬ展開で、見事にしてやられました。なかなか面白かったです。(7/6)

 

005/099

交通誘導員ヨレヨレ日記―当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます」柏耕一

これは、仕事の実態を紹介する書籍として、どこかの書評で紹介されていた物で、長い間待たされた後に図書館で借りてきました。雨の日も雪の日も外で立っているお仕事なので、相当に厳しいことは想像できます。ご多分に漏れず人不足で、高齢者や就業が難しい方々が多いようです。なかなかヘビーでした。面白かったです。(7/7)

 

006/100

結局、ウナギは食べていいのか問題」海部健三

ウナギの生態というのはよく分かっていなくて、私たちが養殖ウナギとして食べているウナギは、幼魚であるシラスウナギを成体化した物で、このシラスウナギを卵からふ化させることは成功していません。で、このシラスウナギをどうやって入手しているかと言うのが大きな問題になっています。いわゆるニホンウナギは、普通は川や湖で生活しているのですが、産卵期になると川から海へ出て南下し、遠くマリアナ海嶺付近で産卵することが分かったそうです。そしてそこから成長するに従い、海流に乗って内海たどり着き、そこで成長すると言う環になっているそうです。ところが、やはり日本人が大量に食べることによって、絶滅の危機にあると言われています。本書では、そもそも科学的な調査・統計すら取られて居らず、資源としての実態が不明であること。さらに驚くことに、日本国内で流通しているウナギも、源をたどれば、その約7割は密漁、密売、密輸という三密の不正な手段へ流通しているという凄まじい実態があるようです。たかがウナギかもしれませんが、おそらく多くの水産資源に共通する課題なのではないかと思われます。なかなか興味深い一冊でした。(7/11)

 

007/101

平城京に暮らす 天平びとの泣き笑い」馬場基

この方私より一世代若い古代史の研究者の方で、なかなか面白い視点で文章を書かれるので、注目しています。この本は、平城京跡地の土中から数多く見つかっている木簡に書かれた文から当時の貴族達のくらしを想像してみようという面白い内容になっています。そこから見えてくるのは、下級貴族達の暮らしっぷりで、当時の宮仕えも今とそんなに変わらないなぁと頬が緩んでしまいます。中でも興味深かったのが、無断欠勤の多さで、お役所から欠勤者へ出勤を促すために出された木簡が数多く見つかっています。どうやら、当時の下級貴族達は、宮仕えと同時に、国元でサイドビジネスにも関わっていたようで、そちら忙しくて役所をサボっていたのではないかと、想像を巡らせています。いずれにせよ、当時の庶民や下級貴族の生活は、ほとんど文章として残されていません。こういった断片を繋ぐことによって、垣間見えてくることがあるようです。面白かったです。(7/11)

 

008/102

追いつめられる海」井田徹治

生命のふるさとである広大な海に、いったいなのが起こっているのか。地球の歴史の中で初めて、地球上に棲む生物の行動が、海の環境に大きな影響を与えています。本書では、それを温暖化、酸性化、プラスチックごみ、低酸素、資源乱獲、という5つの分野で取り上げ、その仕組みを詳説しています。プラスチックごみについては、最近特に話題になっていますが、1万メートルを超える深海底からも見つかっていると言うからとても深刻ですし、特に日本から海洋に投棄されるプラスチックゴミの量は群を抜いているんではないでしょうか。最近ようやく、プラスチック袋の使用が制限されるようになってきましたが、遅きに失したという感は否めません。もっと真剣に考えましょう。(7/11)

 

009/103

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」ブレイディみかこ

著者が雑誌に連載している人気のエッセイらしく、この本もベストセラーになっています。著者曰く元最底辺校と言われるロンドン郊外の公立中学校に通う息子さんと、小さい頃からの憧れの職業であるダンプの運転手をしている配偶者、保育士の資格を持ちながら文筆業を営む著者の三人家族の日常を綴ったものですが、特に息子さんの学校生活が中心に描かれており、彼我の違いや、最近イギリスで問題になっている階級間格差の実態がとても興味深く記されています。ベストセラーになったのもよく分かります。めっちゃ面白いです。(7/12)

 

010/104

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法」ロルフ・ドベリ

より良い人生を送るための72の思考法。従来のこの手の本は、困難と思えることをポジティブにアグレッシブに乗り越えることを基本に書かれていたような気がしますが、この本に関しては、どちらかというと脱力系。困難には無理して立ち向かわず、自分の能力の限界を知り、その範囲外のことは、切り捨てるべきであるとタイトルどおり明快に提言します。ある意味画期的?(7/15)

 

011/105

武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続」宮部みゆき

人気シリーズの主人公が交替し、新たな局面に入った新シリーズ第一弾です。主人公が変わったことによって、面白さが無くなったらイヤだなと思いながら読んだのですが、新主人公もなかなか良いキャラをしており、魅力が無くなることはありませんでした。ただ今回の表題作では、怨霊や妖しが跋扈する内容となっていて、従来の普通の人の心の奥底に潜む醜い心根が悪さをするような内容でないのが少し残念。でもこのシリーズは面白い。続きが楽しみです。(7/19)

 

012/106

出る杭は打たれる フランス人労働司祭の日本人論」アンドレ・レノレ

労働司祭という存在を初めて知りました。労働者の世界にキリスト教を広めるため、フランスで始まったらしく、この著者もフランス人の司祭で、1980年代に来日しおよそ20年にわたり、日本の中小企業で、肉体労働をしながら布教と労働運動に身を捧げます。ちょうど私が働き始めたのと同時期の日本の労働事情が細かく記録されており、

(7/19)

 

013/107

オーロラの日本史 古典籍・古文書にみる記録」岩橋清美、片岡龍峰

過去に日本国内で赤気あるいは白気と呼ばれたオーロラが観測された記録があるということを、どこかで聞いたことがあったところ、偶々図書館でこの本を見つけ、これは面白そうと思い借りてきました。オーロラは大きな磁石である地球の周りを囲む磁力線が作り出す光の造形なのですが、ご存じのように、磁極と地軸の極とは一致せず、磁極は大きく変動することが知られています。日本のような低緯度の地域でオーロラが観測されたのは、磁極が今より低緯度地域にあった時期のようです。近いところでは安政六年に観測されているのですが、世界的にも低緯度の地域で観測されています。この年は、太陽表面に肉眼でも観測できるくらい多数の黒点ができ、記録上最大の太陽嵐が発生したそうです。ほかにも本居宣長の明月記の明和七年の記録の中にも、オーロラとおぼしき記述が残されているそうです。いやぁ、面白いですねぇ。(7/19)

 

014/108

イマジン?」有川ひろ

映像制作会社が舞台のお仕事小説です。作者のお得意とする分野で、主人公の新入り君が、新しい現場でもまれながら成長していく様がいきいきと描かれています。小説の中には、著者の作品である空飛ぶ広報室植物図鑑を彷彿させる現場が出てきます。私的には、罪に罰という架空の作品がお気に入りだったので、是非とも本当の物語にしてほしいなと思いながら読んでおりました。著者にとっては、非常に久しぶりの単行本でしたが、とても面白かったです。(7/19)

 

015/109

清明 隠蔽捜査8」今野敏

こちらも人気シリーズの最新作です。主人公は、警察キャリアでありながら家族の不祥事で、都内の警察署長に飛ばされ、様々な事件を解決に導くなど活躍をするのですが、今作から神奈川県警の刑事部長に転出し、シリーズは新たなステージに移りました。神奈川県警と言えばお隣の警視庁とは犬猿の仲と言われるほどですが、今作では都県境付近で殺人事件が発生し、県警と警視庁の合同捜査本部が設置されます。結果的には主人公のリーダーシップで難しい事件が解決されるというおきまりのパターンなのですが、最も官僚的と言われる警察組織を官僚的ではない基準で一刀両断する主人公が気持ちよく、いつも水戸黄門的な気分で楽しみに読んでいます。面白かったです。(7/21)

 

016/110

日本の橋 その物語・意匠・技術 シリーズ・ニッポン再発見5」五十畑弘

京都府の宇治橋は、日本で最も古い橋の一つと言われています。この本の中には日本だけでなく世界の珍しい橋も出てくるのですが、近世以前の両者の最大の違いは、日本は木橋がほとんどで、西欧では石橋が主力だったと言うことです。もちろん、原材料となる木材が豊富だったと言うこともあろうかと思いますが、城の石垣に見えるように、高度な石積み技術を持っていたにもかかわらず、架橋には活かされませんでした。指摘されると、本当に不思議なのですが、著者は、古来日本では橋は恒久的な構造物ではなく、ある種消耗品のように考えられていたのではないかと指摘しています。別に記録があるわけではないので定かではないですが、面白い考え方ですね。この本には出てきませんが、府内には流れ橋という珍しい橋もあります。なかなか面白本でした。(7/23)

 

017/111

コイコワレ」乾ルカ

中央公論新社が昨年実施した螺旋プロジェクトの中の一作。古代から繰り返される海族山族の戦いを8名の作家が書き繋ぐ壮大なプロジェクトです。本作では、太平洋戦争末期に東京から地方へ疎開した少女と、疎開先で巡り会った少女の出会いから別れまでを描きます。最後まで定められた宿命から逃れることはできませんでしたが、その中でもぎりぎりの心の交流の物語となっており、とても切ないお話です。(7/24)

 

018/112

二流小説家」デイヴィッド・ゴードン

最近読み始めたハヤカワポケットミステリの一冊で、数年前、翻訳ミステリ部門で高い評価を受けた推理小説です。過去に猟奇的な連続殺人事件を起こし、死刑判決を受けた受刑者が、売れない作家に自分の告白本の執筆を持ちかけるところから物語は始まります。平行して起こる新たな猟奇殺人事件。思わぬ真犯人。終わったと思っていたところにさらに追い打ちと、なかなか息をもつかせぬ展開が待っています。長い小説ですが、長さを感じさせない面白さでした。(7/24)

 

019/113

ビゴー日本素描集」清水勲編

明治の初期に日本で活躍した風刺画家ビゴーの画集です。彼の事蹟と年譜がついています。軍人や女中、果ては娼婦の一日を描いた画集には、当時の庶民のくらしが描かれており、貴重な記録となっています。ただ、風刺が効きすぎたためか、発禁処分を食らうなど環境が厳しくなり、日本人の妻と離婚し、子どもを連れて帰国します。ある種の一コマ漫画なので、それを眺めているだけでも楽しい。(7/24)

 

020/114

合唱 岬洋介の帰還」中山七里

検事が殺人犯人を取調中に、その殺人犯が射殺される。取調室には二人きり。容疑者として現行犯逮捕された検事を救うため、欧州の演奏旅行をブッチして、駆けつけた岬洋介が、旧友を助けるため奔走する。いつもながらの鋭い着眼点と冴えです。一気に読める面白さ、続編もまたすぐに出るようなので、とても楽しみです。(7/25)

 

021/115

上流階級 富久丸百貨店外商部」高殿円

阪神間の高級住宅街を商圏とする百貨店の外商部に配属された女性社員の物語。初めて配属された外商部の仕事に右往左往しながら、らしさを武器に困難を打破していく様が痛快です。外商部とは、富裕層を相手に万相談に応じる百貨店の一部門で、売上げの3割以上を稼いでいると言われます。一方で、今や百貨店という商形態が成り立たなくなってきており、大転換が求められてきています。この物語に描かれているのは、喪われつつある原風景なのかもしれません。(7/25)

 

022/116

希望の海 仙河海叙景」熊谷達也

宮城県気仙沼市をモデルにした仙河海市を舞台に、2011年3月9日の風景を何名かの目を通して描きます。そこには、リストラであったり、不倫であったり、いじめであったりと極々普通の生活が送られていました。物語は、3月11日を飛ばして、半年後、1年後へと進みます。亡くなった家族に思いをはせつつ、立ち直ろうとする人々の姿がそこにあります。図書館で偶々に付けたのですが、素晴らしい小説でした。お薦めです。(7/25)

 

023/117

ビタースイートワルツ」小路幸也

東京バンドワゴンシリーズの著者による大河小説で、主人公と彼を取り巻く仲間達がほぼ10年おきに描かれています。本作は2000年代のある日が描かれているのですが、前2作では1980年代、1990年代が描かれているそうですが、それより先にこの本を読んでしまいました。バンドワゴン同様に登場人物の周りで起こった事件を、みんなのチームワークで解決していくのだが、バンドワゴンとは違い、本作では事件性のあるトラブルが発生します。さすがに素人だけでは無理だろうと思うのですが、それを言っちゃぁ野暮というもんなんでしょうね。(7/26)

 

024/118

輪舞曲ロンド」朝井まかて

伊澤蘭奢という人は知らなかったのですが、大正期に活躍した新劇女優さんなんですね。彼女の遺稿を下に評伝も書かれているので、物語としての独創性を出すのは難しかったと思うのですが、彼女を取り巻く4名の男性の目を通して、彼女の人となりを描くという手法を採っています。時代が新しいせいか、これまでの著者の小説とは少しリズムが違うような気がしました。(7/30)

 

025/119

マイ・ディア・ポリスマン」小路幸也

バンドワゴンシリーズがほぼ追いついたので、先日来このシリーズを読んでいます。この小説はお寺の副住職と幼なじみの警察官を取り巻く人たちの物語です。スピード感があって、例によってご都合主義ですが、時間つぶしにはなるかな。続編も借りてきているので、また読もうと思います。(7/31)