2022年12月10日土曜日

2022年11月

先月11月は計23冊で、うち小説が9冊とその他が14冊という内訳でした。

小説が若干少なめで、しかもこれという本も少なかったです。

そんな中で、“あえて”お薦めを選ぶなら、

まずは安心の宮部みゆきさんでしょうか。新たにシリーズとして描き始められたもので、主人公の背景も未だほとんど描かれていませんので、結構長いシリーズになるのではないかと期待しています。そういえば、最近は女性が主人公の小説って書かれてませんね。なぜなんだろう。

あとは“競争の番人”も面白かったです。とても地味な職業にスポットを当てて書かれているのですが、巨悪を退治するというより、比較的淡々とk主人公たちの日常も描かれていてとても好感が持てます。続編も出ているので、また読もうと思っています。

続いて小説以外では、民主主義や政治に関することがマイブームとなっていたので、かなり多くなっています。いずれも面白かったので、詳しくは本文を読んで頂ければと思います。

この夏、凶弾に倒れた元首相については、賛美される方が多いのは重々承知していますが、私自身は、日本の政治にあった民主主義というものを破壊してしまった、とんでもない人だと認識しています。そういう意味では彼が亡くなってしまったのは本当に痛恨の極みで、本来ならもっとちゃんと真っ当に評価を受けるべきだと思います。それは亡くなられた後でもできることなので、私たちはしっかり取り組まなければいけない。この状態を続けて言ってはいけないと考えています。

さて、これで194冊となって、年間200超えることは確実かなと思います。なんとか月15冊のペースは守ることができました。最近は、図書館で借りてきても、全く読めずに返却するという本が多くて、借りるときにもっと吟味しなければいけないと考えています。本来なら、部屋に積み上がっている本から手をつけなければいけないことも重々承知しています。

今年ももうあとわずか。来年からは、心を入れ替えます。

 

001/172

善意という暴力」堀内進之介

この先生の肩書きは、政治社会学者さんなんですね。ちょっと想像と違いました。結構期待しながら読んだんですが、彼は結局何を主張したかったのかよく理解できませんでした。明らかに読み手の力量不足で、手軽な新書と舐めていたようです。(11/2)

 

002/173

子宝船」宮部みゆき

宮部さんの新しいシリーズもので、お得意の時代物です。過去の人気シリーズとも少しずつ重なる部分があり、とあるキャラクターも再登場しています。今後はさらに描き続けていかれる予定だそうで、二人の主人公のうちの一人の過去が徐々に明らかにされています。どうも謎はかなり深いようです。今後が楽しみです。(11/3)

 

003/174

祈りのカルテ」知念実希人

研修医の物語で、今テレビドラマで放送されているようです。病院内で起きる小さな事件の謎を主人公の研修医が解いて行くのですが、医者である著者の医学知識もしっかりと散りばめられていて、安心して読める作品です。続篇も出ていますので、読んで見ようと思います。(11/3)

 

004/175

知らないと後悔する 日本が侵攻される日」佐藤正久

たまにはこういうトンデモ本も良いかなと思って読んでみました。著者は、ひげの隊長として有名になった元自衛官で、現在はその知名度を活かして参議院議員の中でも外交と防衛の専門家として活動されています。今から150年以上前に、外国からの力を背景にした外交に屈した日本は、強力な軍事力が背景にないと外国との交渉力がないと刷り込まれています。今ウクライナで起きている事象を鑑みると、現実の世界では、全く間違いであるとは言い切れないようにも思えてしまいますが、実際の交渉の最前線に立つ政治家が、そのように考えてしまったらおしまいだと考えています。外交の妙とはその先にあるのではないでしょうか。それにしても我が国の外交力のなさにはがっかりしますね。(11/4)

 

005/176

『人権』がわからない政治家たち」小林節

凶弾に倒れた安部元総理が進めようとしていた憲法の改定について、それに反対する立場からその根拠を述べられています。実は、自民党は早くから憲法の改定を党是としており、党としての改正案を纏めておられます。私も昔大学時代に読んだ記憶があるのですが、その内容は殆ど覚えていないので、この際もう一度しっかり読んでみようかなと思っているのですが、憲法の本来の役割である主権者である国民が、国家権力に制限を掛けるものという性質のベクトルを真逆にして、国家権力が、国民に対して権利を与えるものという方向に舵を切ったものとなっていた記憶があります。著者は、それを称してこの歩のタイトルを決められたのではないか。主権者である私たちは、もっとしっかり自分たちの幸せ、特に後世の幸せを考えなければいけないと痛切に感じました。後悔先に立たず。(11/5)

 

006/177

女副署長 緊急配備」松嶋智左

シリーズの二作目です。地方警察署の内部を描いた前作が面白かったので、続けて読んでみました。今作でも、主人公の女性副署長が赴任した地方の警察署で、赴任早々に殺人事件が発生します。いろんな事件が輻輳して発生するなど、前作同様若干のやり過ぎ感は漂うのですが、まぁ許せる範囲かな。(11/5)

 

007/178

誰のための排除アート?不寛容と自己責任論」五十嵐太郎

排除アートというのは耳慣れない言葉で、私もこの本で初めて知りました。ていうか、私はどこでこの本のことを知って予約したのでしょうか?全く記憶にない。この本では、公共の場所に設置されている椅子やベンチなどが、横になれないように作られているその背景などについて紹介されています。これは、いわゆるホームレス対策で行われているらしく、横長のベンチに肘掛けや一人分の区切りが付加された物が紹介されています。さらに、アート性が高いデザインで作られた物どは、通常でも使いにくく作られている物まで出てきていますが、これを単に不寛容とひとくくりにしているのも気になるところです。(11/7)

 

008/179

死ぬまでにしたい10のこと 初めて人生を愛することを知って女性の感動の物語」ナンシー・キンケイド

元々は、短編集に収められたうち一作だった物を、映画化を機に、一冊の本として出版されました。私は映画を見ていないのですが、たしか最近日本版もリメイクされたのではなかったでしょうか。皆さんなら、何をしたいと思われますか?私なら、もう一度ドイツを訪ねたい。バンジージャンプという物を体験したい。自分の入る墓を作っておく。田舎の田畑山林を整理しておく。。10個も浮かばないですね。(11/7)

 

009/180

新失敗学 正解をつくる技術」畑村洋太郎

失敗学の権威として知られる著者による集大成なのですが、従前から言われていることを改めて収載したような感じです。新型コロナ対策への失敗も取り上げられていますが、現状はまだしっかり検証できる段階にないというのが実態かなと思います。著者は、正解を見つけだす時代から正解がない、正解を作り出す時代へのフェーズが変化しており、そんな時代にはたくさん失敗して検証するという一連の流れが重要だと説いています。しかしながら、そんな時代にあっても、失敗からは立ち直れない社会、失敗者の再挑戦を認めない社会であることに変化はなく、むしろ増強されている感すらします。どうしたらいいんでしょうね。突破口は一体全体どこにあるんでしょうか。(11/9)

 

010/181

名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必須講義」葉石かおり

皆さんご存じのとおり、お酒が大好きでして、今では毎夜の晩酌が欠かせない体になってしまっております。酒は百薬の長という呑兵衛には大変都合の良いことわざを錦の御旗にし、飲み続けているのですが、少量のお酒は体に良いという都市伝説に信頼できる根拠がないことなどが、しっかりと書かれています。どうしても止められないなら、少しずつ減らしていきましょうという警告に従い、平素はできるだけ減らしていこうと心に決めました。そのために飲酒記録用のアプリもインストールしました。頑張ります。(11/11)

 

011/182

吾妻鏡の謎」奥富敬之

大河ドラマで話題の吾妻鏡という書物には、たくさんの謎があると言われていますが、その最たる物が、誰が何のために書いたのかということです。おそらくは、源氏政権を滅ぼし、執権制を確立した北条氏がその正当性を主張するために書かれた物と水生されているのですが、では誰に向けて書かれたのでしょうか。謎は提示されただけで、いまだ解決編が見つかっていません。吾妻鏡研究の第一人者であった著者は、原稿作成後、時をおかずに亡くなり、絶筆となりました。十分い校正がされなかったせいか、文章として中途半端と感じられる箇所も散見されますが、読みやすく興味深い本でした。(11/12)

 

012/183

凪の司祭」石持浅海

一人の若い女性が、アルバイト先の喫茶店の常連客たちの支援を受けて史上最大規模のテロを実行するという物語。スピード感があって面白かったのですが、彼女がその大量殺人を決意した理由、動機というのが、あり得ない。(11/13)

 

013/184

神のいない世界の歩き方 『科学的思考』入門」リチャード・ドーキンス

歴史的な名著利己的な遺伝子の著者が表した科学的思考の入門書です。まずは、この夜に神は存在しないという至極当たり前ではあるが、ついつい忘れがちなことを改めて論じています。その上で、現在の科学では解明できない事柄を全て神の御技や他の大いなる力のたまものと考えるのではなく、いずれは科学的に解明することができると信じることが重要と説きます。一見あり得ないだろうと思えるようなことを真剣に検討し証明する勇気こそが科学的思考に求められる唯一のもの。面白かったです。

(11/14)

 

015/185

大分断 教育がもたらす新たな階級化社会」エマニュエル・トッド

フランスの歴史人類学者である著者が様々な媒体で語った内容を纏めたものです。なぜだか彼は日本に対して非常に好意的で、大国である隣国に対抗するためにも核武装することを進めていることから、日本のある層には受けが良いように思われます。一方で、フランス人らしく隣国のドイツには非常に懐疑的で、日本に対する態度とは正反対です。そういう意味では、かなりバイアスが掛かっていると思いますが、それ以外の国、英米中露に対する分析は当を得ているようです。(11/16)

 

016/186

邪教の子」澤村伊智

この夏に起こった大事件を契機に、『宗教と政治』に注目が集まっていますが、同時に『宗教2世』という存在がクローズアップされています。その文脈の中で、推薦図書として上がっていたものと記憶していますが、なかなか手がつけられず、借りては読まずに返却という件を3度ほど繰り返していました。内容的には、期待したほどではなかったのですが、その存在にフォーカスを当てた小説としては出色だと思います。(11/19)

 

017/188

この国の危機管理の失敗の本質 ドキュメンタリー・ケーススタディ」柳田邦男

この作者の書くノンフィクションは大好きで、高校生の頃から就職したての頃まで、何冊か文庫を買って読んでいました。もとNHKの記者さんで、特に航空機事故や医療に関する作品を数多く書かれています。この本は、東日本大震災から1〜2年後に雑誌に書かれたものをまとめられてものですが、震災とその後の原発事故について、私たちは“いかに間違えたのか”という視点で書き綴られており、とても興味いです。“マッハの恐怖”、“空白の天気図”、“マリコ”は特にお薦めです。また久しぶりに読もうかな。(11/20)

 

018/189

新装版 長い家の殺人」歌野晶午

著者のデビュー作です。同世代の本格推理小説作家さんですが、物語そのものは、ご本人も触れておられるように必ずしも素晴らしい出来とはいえませんが、彼を見出した島田荘司さんの解説が興味深い。ぜひ文庫版で読んでみてください。(11/20)

 

019/190

日本を寿ぐ 九つの講演」ドナルド・キーン

著者が過去に日本文化に関して行った講演を再録した物です。京都国際センターで行った京都に関する講演も収録されています。彼自身は、日本に対して非常に好意的でもあったので、ちょっと言いすぎではないかと思われるところもありますので、若干割り引いて読んだ方が良いのかもしれませんね。(11/22)

 

020/191

殺し屋、続けています」石持浅海

最近読み始めた作家さんの本で、珍しいシリーズものです。といっても2作目なのですが、ビジネスライクに仕事をこなす殺し屋が主人公、今作から同業他社が参入してきます。まだお互いの存在を意識するところまで行っていないのですが、恐らく今後両者が相見える場面が出てくるのではないかと想像しています。(11/24)

 

021/192

競争の番人」新川帆立

最近テレビドラマにもなった公正取引委員会の職員を主人公にしたお仕事小説です。派手な事件が起きるわけではないのですが、地方のホテルを舞台に繰り広げられる談合や下請けいじめとそれに対抗する委員会のやりとりが描かれています。なかなか面白かったです。(11/26)

 

022/193

民主主義って本当に最良のルールなのか、世界をまわって考えた」朝日新聞『カオスの深淵』取材班

以前にも書いたことがありますが、“民主主義”というもの、制度について、とても興味を持って考えています。この本は、約10年前に朝日新聞で長期に渡って連載されていた特集記事をまとめたもので、当時の問題意識が垣間見えます。まだ、安倍政権もトランプ政権も誕生していなかった頃でしたが、結果的に“民主”主義が全く機能しなくなり、崩壊していったのはご存知のとおりです。一個人が世界に向けて考えを述べる手段を持つことができるようになりました。20年前には考えられなかったことです。価値観は多様化せずいくつかの極に集約されてきました。ナショナリズムなどといったイデオロギーではなく、単なるラベルの違いによって他者を排斥することが当然と見做されるようになってきました。今後世界はどうなっていくのでしょうか。恐ろしく不安です。(11/29

 

023/194

日本をダメにした新B層の研究」適菜収

郵政民営化キャンペーンの際に話題になった“B層”と呼ばれるカテゴリーに分類されている人たち。彼らをうまく方向づけすることによって今の混沌を生み出した人たちを気持ち良いくらい糾弾しています。ですからタイトルには新B層が悪者のようにされていますが、正しくは彼らを利用した者達に関する本ですね。中でもこの夏凶弾に倒れた元首相に関しては特に手厳しく、私もこれで全ての悪業に蓋をすることなく、もっと正しく評価すべきだと考えています。あれほど、国会の場で嘘を吐き続け、主権者を馬鹿にした首相を私は知りません。読んでいて気持ちがよかったので、彼の本を遡って読んでみようと思います。(11/30)

 

 

2022年11月7日月曜日

2022年10月

10月は計20冊で、小説が8冊、それ以外が12冊という結果でした。

読書の秋本格突入で、順調に読めた月でした。

周期的にこういうときがやってくるんですが、今は小説以外の本の方に触手が伸びがちで、部屋に積んである本もそんな本ばかりです。なんか面白い小説があれば教えてください。

ということで、お薦めですが、小説では初めて読んだ逸木さんの“風を彩る怪物”がダントツで面白かったです。本文でも書きましたが、本来はミステリ専門の作家さんが、音を言葉で表現するというとても難しい作業に挑んでいます。面白かったです。

もう一冊は、有川ひろさんの猫本も面白かったです。独特の筆致で綴られた心温まるお話が揃った短編集です。お薦めします。

一方で小説以外では、特にこれといった本に巡り会えませんでした。

半藤さんと宮部さんの昭和10大事件は面白かったですが、ちょっとボリューム的に物足りなさを感じました。もっと奔放に語り合ってほしかったなぁ。

後は、安倍政権の闇を描いた本を複数読みましたが、これもかなり不満足。相当に忖度された内容になっているように感じられました。特に、報道関係者が書いたものであるなら、もっとファクトに切り込んで欲しかったなと思います。

11月に入り、京都市内の観光客は爆発的に増えてきています。週末の散歩も京都市内には出にくくなります。とはいえ自宅で読書というのも芸がないので、できれば本を片手にちょっと遠出ができればいいなと思っています。そんな時のお供に最適の本ってどんな本でしょうね、皆様からのご推薦があれば是非ご教示ください。

 

001/152

よみがえる古代の港 古地形を復元する」石村智

まず冒頭に京都府北部丹後地方の記述があって、たまらず借りてきました。古代の港というのは、須く遠浅の入江であり、現在の港湾とは全く様相が違っていた。当時の京都北部は、いわゆる表日本で、大陸との重要な門戸でした。私の母の実家がある舞鶴湾の浦入遺跡の辺りもその条件を満たしているとは思うのですが、いかんせん後背地が山なので、港としての機能は果たせていなかったでしょう。現地形をみながら古代の景色を想像するのは楽しいですね。(10/1)

 

002/153

半次捕物 疑惑」佐藤雅美

最近お気に入りの作家さんのかなり初期の作品です。捕物帖と銘打たれていますが、謎解きの要素は少なく、さらにかなりトーンも暗目です。シリーズ物の途中を読んでしまったので、ちょっと入りづらかったこともありますが、このシリーズはちょっと合わないみたいです。(10/2)

 

003/154

そして、メディアは日本を戦争に導いた」保阪正康、半藤一利

昭和史の大家である半藤さんと保阪さんが戦前の歴史を振り返って語り合ったもの。明治維新からの70年で、社会が徐々に泥沼へ落ち込んでしまう様子が描かれています。そもそも明治政府そのものがテロが成功してしまって生まれた政府であり、その基本的な体質は維持されたままだったのではないかと考えています。戦争に突っ走ったのは、決してマスコミだけのせいではなく国民がそれを求めてしまったということがあるとも思っています。結果的に、国民すべてが責任を負うこともなく戦後の復興を享受し、戦争犯罪人の多くが恩赦で社会復帰し、戦後の社会のリーダーにのし上がるという笑えない事態を迎えました。戦後70年を過ぎ、今の状況があの当時に似てきたという指摘もあります。「賢者は歴史に学ぶ。」(10/2)

 

004/155

サル化する社会」内田樹

現代社会が日々劣化していくことを実感しています。彼の書く文章には納得させられることばかりで、どれを読んでも面白い。この本も、さまざまな媒体に発表されたものをまとめたものだが、出版されたのがコロナ禍の直前。その後のありようを見てどのように考察されているのか、また機会が作って読みたいと思います。(10/5)

 

005/156

口は禍いの門 町医北村宗哲」佐藤雅美

シリーズものの3作目。最初の作品は面白かったけど、徐々にその感動が薄れてくるなぁ。期待が大きすぎるのだろうか。とりあえず後一冊なので、ちゃんと読み切ろう。(10/9)

 

006/157

日本の風景を歩く 丹波・丹後」水上勉

お隣の福井県出身の作者による丹後地方への旅の記録です。まだ道路が整備されていなかった頃の宮津から伊根、経ヶ岬への舟航の風景はなかなかに興味深いものがあります。(10/9)

 

007/158

ヴェサリウスの柩」麻見和史

私の今のお気に入り作家の鮎川哲也賞受賞作にしてデビュー作です。大学の法医学教室を舞台にした本格推理物です。今の作者は警察ものを得意とする作家さんというイメージなんですが、この作品では警察はほとんど活躍せず、一研究員が謎を解き犯人を追い詰めるというかなり無理のある設定になっています。最近のミステリでこれをやると、リアリリティがないと言われてしまうんでしょうね。(10/10)

 

008/159

街道をゆく16 叡山の諸道」司馬遼太郎

何となくこのシリーズを読み返してみようと思い手に取りました。この巻は京都、滋賀の両側から比叡山を目指す道をたどると共に、宗祖最澄が比叡山を目指してたどった道についても書かれています。興味があちらこちらに飛んで、それがこのシリーズの醍醐味かと思います。(10/16)

 

009/160

安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」相澤冬樹

大阪のNHKで、森友事件を追いかけていた著者による事件のレポートです。彼は、一貫して、この事件は大阪府と財務省によって作られたもので、当時の総理大臣とその家族が絡んだことで、その実態が覆い隠されてしまったと考えているようです。出版されたのが2018年のことで、赤木さんのメモが注目される寸前でした。この本が、文庫化されるときにその後のことも書き加えられたようで、この単行本出版時には、若干生煮え感が残っています。そこは残念。(10/16)

 

010/161

新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義」安西洋之、中野香織

いわゆるラグジュアリー戦略に関する経営の本かと思っていたら、むしろ文化論の本でした。ラグジュアリーという言葉を端的に表す日本語というものが存在せず、私たちには、その感覚を実感することはかなり難しいように思えます。つまり、まことしやかに書かれたラグジュアリー戦略についての経営指南書は、ほぼほぼ的外れなんだろうと知れました。なかなか難しい本でした。(10/17)

 

011/162

葬儀!」ジュリエット・カズ

世界各地の葬儀に関する風習を集めた物ですが、巻末の翻訳者あとがきでも触れてあるように、著者が自らの足で歩き、目で見たことだけを手がかりに書かれているので、必ずしも学術的に掘り下げられて物ではなく、一般的な物でもない。そういう意味では雑記に近いものでもありました。(10/19)

 

012/163

怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン 小さな事件は通常運転です」綿貫渉

タイトルからは、最近話題の駅員に対する暴力事件やモンスターカスタマーの話を集めたものかと思っていたんですが、鉄道YouTuberとして活躍している著者が、鉄道会社に就職してから辞めるまでの間の体験記で、特に大きな事件が起きるわけではありません。どちらかというと淡々とした日常が綴られています。私の父は昔の国鉄の職員でして、退職まで駅員として働いていたので、駅員さんの勤務体系などについては基礎知識があるつもりでしたが、最近は少し変わってきているんですね。それに何より省人化が進み、駅等でのサービスの質の低下が気になるところです。(10/20)

 

013/164

風を彩る怪物」逸木裕

オルガン製作者を主人公の一人に据えた“音楽小説”で、本屋大賞と直木賞をダブル受賞した恩田さんの“蜜蜂と遠雷”を思い出しながら読んでいました。オルガン製作というのは、楽器制作というより建築工事に近いということを聞いたことがあるのですが、改めてその特徴がよくわかりました。解説によると、この作者は、本来はミステリを専門に書かれているようで、こういった小説を書かれるのは珍しいようです。かなり面白い小説でした。人気の本で予約してから借りるまでに相当待ちましたが、十分にその価値がありました。(10/22)

 

014/165

女副署長」松嶋智左

著者は、元警察官で、全国初の女性白バイ隊員だったそうです。その経験をもとに女性警察官を主人公にした小説をいくつかものにされています。どこかの書評かなんかで作者のことを知り、とりあえずすぐに借りられる本を借りてきました。大型台風襲来に備え臨戦体制の警察署内でけ現職警察官が殺害されるという、かなり無理のある設定ですが、ここの登場人物の描写は詳細で、流石に元警察官と思わされるものでした。なかなか面白かったです。(10/23)

 

015/166

忘れられた日本憲法」畑中章宏

今からおよそ150年前、明治維新でそれまでの幕藩体制が崩壊し、初めて北海道から沖縄までを含む“国家”らしきものが出来上がりました。しかしながら、所詮テロ組織がたまたま作った物ですから、統治のための哲学も組織もないままにな走り出し、混乱の極みでもありました。その後明治22年にようやく大日本帝国憲法が公布されたのですが、その間に、官民問わずあらゆる層から憲法案が発表されました。この本は、そういった私製憲法にスポットを当てたものです。この本では、その内容というより、どんな人物がどのような思想で憲法を作ろうとしたのかということに重点を置いています。巻末の参考図書が充実していたので、その中から面白そうな資料を読んでいこうかと思っています。とても興味深い内容の本だったのですが、どうにも文章が私好みではなく、とても読みづらかったのが残念でした。(10/25)

 

016/167

みとりねこ」有川ひろ

全編ねこを主人公にした短編集。冒頭の二篇は、余命短い青年が愛猫の引き取り手を探す旅を描いた“旅猫レポート”の番外編。私自身は、動物を飼いたいとは思わない人なので、この本に出てくるような猫への接し方というのは想像がつきません。ただ、猫というのはとても神秘的な動物であるということは想像がつきます。あまり飼い主に媚びないし、ある種超然としているところが猫の魅力なんですかね、知らんけど。小説としては、とても面白かったです。(10/26)

 

017/168

昭和史の10大事件」半藤一利、宮部みゆき

昭和という時代をいくつかの大事件を通して回顧するという面白い対談集です。冒頭にそれぞれが思う10大事件を挙げ合うのですが、それぞれの個性が引き立つ選定で、それもなかなか興味深い。個々の事件については特に取り上げませんが、昭和元年(一週間しかなかった)生まれの女性がとても少ないこととその理由、安保闘争の虚実は特に面白かったです。対談の最後でも語られていますが、昭和の最後1989年は、世界史の中でも大転換があった年です。そういう意味では昭和というのは、とても特殊な時代だったのだなぁと改めて感嘆いたしました。(10/27)

 

018/169

拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」蓮池透

著者は、拉致被害者の御家族で、長く家族の会の事務局長をされてました。北朝鮮の国家的犯罪であった拉致の全貌が徐々に明らかになる頃、マスコミにも盛んに登場されていました。この本は、その当時のことを当事者の側から書き留められたものです。当時の外務省のや政治家お面々の様子が細かに綴られています。当時は感情的になってしまったことも時間を経て、当時を反省しながら客観的に述べられています。そもそもまともな外交戦略なんてない我が国のことですから、こんな複雑な問題を解決する能力は期待ができません。また、この本の中でも繰り返し語られているのですが、何を持って解決とするのかということに誰も答えを持っていないという実態にも気付かされます。また、解決しないことを願っているとしか思えない連中が存在することも。(10/29)

 

019/170

殺し屋、やってます。」石持浅海

たまたま図書館で見かけて借りてきましたが、初めて読む作家さんのミステリです。結構な数の作品を結構な数の作品を書かれているようですが、シリーズものをほとんど描かれていないというのは珍しいかなと思います(この作品は珍しく続編が出ていますが、、)。この作品の主人公は職業殺し屋、ターゲットの背景などには一切関心を持たず、プロとしての仕事に徹しているのですが、仕事を終えた後は別、時折その背景を推理することもあります。なかなか面白かったです。別の作品も読んでみます。(10/30)

 

020/171

五つの季節の探偵は」逸木裕

先日読んだ本が面白く、本来はミステリを書かれているということもあって、この本を読んでみました。主人公は一人の女性、高校生時代に友人から無理やり頼まれて探偵の真似事をたことで、探偵の面白さに目覚め、父親が経営する探偵事務所で探偵業を営むことになります。この本はそんな彼女が10年の間に遭遇した5つの事件を扱っています。成長の過程で、やや危険な方向に進みそうになりますが、最終話を読むと、探偵として立派に成長したようです。面白かったです。(10/30)

2022年10月9日日曜日

2022年9月

九月は、急な温度変化と毎週のように訪れる台風に悩まされた月でした。 
この月は計17冊。うち小説が12冊、それ以外の本が5冊という結果でした。九ヶ月で151冊となりましたので、ぴったり年二百冊となるペースですね。 
小説の割合が高かったですが、これぞという本にはなかなか巡り会えないということを実感するような月でした。 


そんな中での今月のお薦めです。 

小説では、なんと言っても今村さんの“塞翁の盾”が、秀逸でした。久々に、さすが直木賞受賞作と呼べる小説であったと思います穴太衆の城造りと国友衆の鉄砲造りというまさに“盾と矛”の技能集団が、琵琶湖を挟んで南西と北東に対峙しているというのが非常に興味深い。因縁深いともともいえるのでしょうか。彼らの競い合いは、究極的には戦いのない世界を実現するためだったとし、今の核抑止論に綱ある発想の萌芽を擬製しています。当時そんな考えがあったとは思えないのですが、想像することは自由であり、この小説の大きなテーマとなっています。すでにお読みなった方も多いと思いますが、お薦めです。 

もう一冊は、“星屑”なのですが、アイドル歌手を目指す少女たちの物語です。この小説の良いところは、悪人が登場しないことに尽きます。この手の小説であれば、妨害者やアンチなど、一人くらいは“嫌なヤツ”を登場させたいところですが、この本には一切出てきません。最後まで安心して彼女らの夢を応援できる。とても良い小説でした。 

もう一冊は、この秋からテレビドラマ化されるinvert”が良かったです。実は前作があって、とても面白かったのですが、とても続編が書けそうにないような終わり方だったので、とても残念に思っていたところ、それを逆手にとった素晴らしい発想で続編をものにされました。しかも最後のどんでん返しは見事でした。でも、今度はこの結末は映像では難しいと思うのですが、さてどのように演出されるか、それも楽しみです。これまたお薦めの一冊で、さらにこの続編が出ているので早く読みたい。 

続いて、小説以外の本ですが、今月はわずか5冊と数が少なかったのですが、内容的にはかなり充実しておりまして、正直すべてお薦めできる本でした。 

“脱炭素経営”では日本のノー天気ぶりを改めて確認できました。欧州の基準がすべてだと言うつもりはないですが、我が国の政策は犯罪的だと思います。誰に対する犯罪かって、それは私たちの子ども対に対する犯罪だと知るべきです。 

“スポーツ毒親”は、子どもたちに自分で考えることを許さない日本の社会、学校、家庭によって生まれた共同犯罪集団を描いています。マスコミによるあおり行為も見逃せませんね。 

“主権者のいない国”については本文で熱く語っているのでそちらを読んでいただきたいのですが、この著者の本をがっつり読んだのは初めてかもしれません。他のテーマでも読んでみたいのですが、考え方が一方に偏るのを防ぐために、反対意見の本も読んだ方が良いのかなとも思っています。それくらい中毒性が高い(?)。 

“とてつもない失敗の世界史”と“世界滅亡国家史”は、重なる事項もいくつかあったので、時期を変えて読むべきだったなと反省していますが、どちらも読みやすくて面白い本でした。特に前者は姉妹編も出ているようなので、それも読もうと思っています。 

かつては、読書の秋という言葉がありましたが、最近はあまり目や耳にすることもなくなってきたような気がします。これから年末に掛けて、ミステリベスト10など今年の本のランキングが発表されます。そんなものも参考にしながら残り3月を楽しみます 

 

 

001/135 

脱炭素経営という言葉は、これまで馴染みのない言葉だったので、勉強のため読みました。そして分かったことがいくつか。日本国内では普通に使う“地球温暖化Global warming”という言葉は、海外ではほとんど使われず、“気候変動=Climate changeまたは“地球高温化=Global heatingという言葉が通常使われるらしい受けるイメージが全く違いますね。さら特に欧州ではそのリスクを前提とした社会活動や経済活動当然に求められることなど。翻って日本では、温室効果ガス削減に向けた真っ当な政策は全く検討されることはなくこれを梃子にして原発再稼働を目指すという狂っているとしか思えないようなトンデモ政策が頭をもたげている。この先1~2年以内のことしか考えないような年寄りに未来を委ねてはいけない。とても当たり前のことです。(9/1) 

 

002/136 

新型コロナ感染症の拡大で右往左往するマスコミの様子を戯画的に描いた物語。あまりにバタバタしすぎで、そこにパワハラやセクハラが絡み合って収拾がつかない状態になっています。ひょっとすると現実の姿をありのままに映し出しているのかもしれませんが、読むのはしんどい。(9/3) 

 

003/137 

殺人喜劇の13人」芦辺拓 

著者が第一回の鮎川哲也賞を受賞したデビュー作。彼の代表シリーズである“森江春策の事件簿シリーズの前駆をなします。本格推理物なので、くどさが拭えないのですが、30年前の京都を舞台にしており、当時の街の様子を思い出しながら読んでいました。仕掛けやトリックには納得出来ないところが多かったのですが、これは若さゆえでしょうか。続きもちょいと読んでみてから評価を決めます。(9/6) 

 

004/138 

鍋奉行犯科帳田中啓文 

お気に入りの作家のシリーズものです。江戸時代の上方が舞台であることは、他の時代小説と変わらないのですが、登場する町奉行というのが、大変な食いしん坊で、でも結構優秀だったりもする。語り部を務めるのはその配下の若い与力で、奉行の指揮のもと事件解決に奔走する。いつもながら彼の小説は登場人物がとても魅力的。面白かったです。(9/8) 

 

005/139 

invert 城塚翡翠倒叙相沢沙呼 

この秋からテレビドラマにもなるそうですね。前作を読んだときには、とてもおもしろかったけどこの手法は続けられないなぁ、どうすんだろうと心配していたのですが、今度は倒叙小説として続けるというファインプレーでした。私なんかは、その発想だけで脱帽なのですが、ミステリとしても良かったです。気がつけば、さらに続編も出ているようで、楽しみです。(9/8) 

 

006/140 

タイトルからしてキャッチーなのですが、最近スポーツ界でのハラスメントに大きな注目が集まるようになってきて、かつてのような鉄拳制裁を含む指導は徐々に姿を消してきました。非科学的で理不尽なしきたりもようやく見直されてきつつあります。昔は練習中に水分を取るなんて言語道断だったんですが、今では水分補給は当然のこととされています。この本は、ジュニアスポーツ界で一部の“優秀な指導者”を盲信する親達にスポットを当てたルポルタージュで、実は著者自身もかつてはスポーツ毒親だったことを認めています。私自身には、この親達のメンタリティが全く理解できないのですが、子供の成長のためには何が必要なのか、真剣に考えていれば、こんな方向には進まないんじゃないかとか単純に思ってしまうのですが、どうなんでしょうか。(9/9) 

 

007/141 

初めて読む作家さんです。寄席を舞台に起きる事件の謎を、病気のために引退した元師匠が施設にいながら説くという、ある種の安楽椅子探偵物のミステリです。よく知らない東京独特の落語会の様子が知れて面白い。(9/10) 

 

008/142 

プリズン・ストーリーズジェフリー・アーチャー 

著者が、罰を受け収監されていた間に、獄中で収集した実話に基づき書き上げた短編集です。事実は小説よりも奇なりと申しますが、転んでもただでは起きないという言葉を実践する物でもあります。さすがです。(9/11) 

 

009/143 

医療捜査官という存在を創造し、医療の分野から事件を解決するというシリーズです。初めて読む作家さんです。多分これっきりのお付き合いになると思います。(9/11) 

 

010/144 

主権者のいない国」白井聡 

日本国の主権者は国民であるとは、この国の憲法にも書かれていることで、誰もが小学校の時に学んでいるはずなので、誰もが知っているはずなのですが、それも理解できている人は殆どいないのではないか、その実態がこの本のタイトルに反映されています。主権者であると言うことは、現在のこの国のありように全責任を負っていると言うことです。貧富の格差を生み、多くの若者が家庭という最小単位の社会を営むことができず、少子高齢化社会が急激に進行し、日本国民の幸福度も右肩下がり、そのすべてに対して、そんな政策を進めた政府を選んだ全責任は、私たちにあります。国民主権という言葉だけを教えて、それを理解し実践するための教育を故意にしてこなかったことの反動が来ています。見えないふりをしていても、破綻はすぐそこにあります。座してそれを待つのみか。(9/16) 

 

011/145 

星屑」村山由佳 

女性アイドルを目指す二人の少女の成長物語です。地方に住む母子家庭の少女。一方は芸能事務所の社長の孫娘。その二人が、反目しながらもスターになるため、頑張るのですが、この二人には本人には明かされていないとんでもない秘密が。ドロドロした世界を描いているのですが、本物の悪人が出てこず、気持ちの良い創りになっていて、私好みではあります。どれくらいリアリティがあるのか想像もつきませんが、面白かったですよ。(9/18) 

 

012/146 

駆け入りの寺」澤田瞳子 

江戸時代京都の東山にある比丘尼御所林丘寺を舞台にした物語。いわゆる“駆け込み寺”ではないのですが、様々な問題を抱えた女性たちが、このお寺に集まってきます。作中で使われる独特の宮中言葉も相まって、当時の宮中の様子がなんとなく想像できる、ほんわかとした物語です。(9/21) 

 

013/147 

人気シリーズの第5弾。安定の面白さです。ただ、個人的にはテーマとなった“凶数”の意味が、不満足。ちょっと凝り過ぎじゃないか。(9/23) 

 

014/148 

塞王の盾」今村翔吾 

今一番面白い作家さんの一人、今村さんの直木賞受賞作です。どんな攻めをも、はね返す石垣とどんな守りをも、打ち破る鉄砲。滋賀県に生まれた職人集団である穴太衆と国友衆のプライドをかけた競い合いが描かれます。結末はすでに歴史が証明しているわけですが、創作された主人公を含む登場人物たちのキャラが秀逸で、手に汗握る展開にはページをめくる手が止まりません。唯一の疑問は、この小説の肝となっている“懸り”というのは実在したのか。とても興味があります。とりあえず面白かった。(9/25) 

 

015/149 

とてつもない失敗の世界史トム・フィリップス 

プロ野球の元監督である野村克也さんが、野球の勝負について語った“勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負け無し”という言葉があります。歴史もまさにその積み重ねで、成功者、勝者と呼ばれる人たちが、そこに至った要因を挙げることは、まず不可能です。ところが、失敗者、敗者には、必ずそこに至った原因があります。この本は、そんな失敗の数々を拾い上げた物で、それぞれがショートストーリーのようになっており、そんなに真面目にならずに、笑い飛ばしながら読める内容になっています。他人事なだけに、とても面白い。もし、自分の失敗談を将来誰かに語られたら嫌やろなぁ。(9/26) 

 

016/150 

タイトルから面白そうと思って読みました。過去に存在し、現在は消滅した48の国家について、その歴史を概観した読み物です。一つの国家に当てられるページ数は歩の数頁で、興味のある国を見つけたら、その詳細は改めて別に調べる必要があります。この本で取り上げられている“国家”の中には、ちゃんと他国から承認を受けている国家から、自称独立国家(例えば満州国)や偶然他国の支配から漏れてしまった空白の地域など、その成り立ちを眺めるだけで面白い。特に第二次世界大戦中のオランダ王国の王女が疎開先のカナダ国内で出産する際にとられた特例措置が興味深いです。なかなか粋な措置だと思います。(9/28) 

 

017/151 

フォークロアの鍵」川瀬七緒 

法医昆虫学捜査官シリーズの作者による、一風変わったミステリです。最後にはとってつけたようにとある凶悪事件を解決に導くのですが、まさにとってつけたよう。本筋は、女性大学院生が、研究のため、認知症を発症して日常会話に困難がある老人たちの消えない記憶をたどるという物語で、その探求だけで十分に面白かったのですが、最後の事件は蛇足でした。(9/30)