2012年9月8日土曜日

2012年8月


今月は暑さのせいか、量・質ともに低調と言わざるを得ない。
14冊のうち、2冊は新刊の新書。何れも期待したほどではなかった。
それ以外は、ほとんどがかなり以前に出版された物で、文庫になってリニューアルされた物が数冊。
その中であえて一冊を挙げるとすると、私の好きなリアル書店を舞台にした“書店ガール”だろうか。書籍のネット販売、電子書籍の普及で、リアル店舗は苦戦をするばかりであるが、そのうえ、言われなき男女差別に立ち向かい頑張る女性社員の姿に感動を覚える。まずまずの読み応えでした。


001/163
書店大賞候補となった人気シリーズの第二弾。あまり読む気は無かったのだが、時間つぶしのために買ってしまいました。相変わらず古書に対する蘊蓄はたいしたものである。(8/3

002/164
フォー・ディア・ライフ」柴田よしき
無認可保育園の園長にして、怪しげな私立探偵の物語。シリーズ化されているらしい。彼女の小説では、京都を舞台にした伝奇SF小説を読んだ記憶があるが、この小説は新宿が舞台。まぁ何というか、可も無く不可も無くと言ったところでしょうか。(8/11

003/165
死者は黄泉が得る」西澤保彦
これはまた、例によって不思議な設定のミステリ小説。どういうきっかけでこういった設定を考えつくのか、その発想の原点を知りたい。(8/11

004/166
タイトルから、もう少し読み応えのある物を期待していたのがだがかなり期待はずれ。商店街という物が生まれた大正末期、昭和初期から商店街が滅びつつある現代までの歴史が詳しく書かれてはいるが、最も期待するところの“再生への道”はほとんど語られていない。これでは詐欺だよ。(8/11

005/167
その日の前に」重松清
誰もがいつか迎える“その日”をテーマにした短編集。いくつかの物語が書かれ、最後は一つの物語の中に収斂される。愛する人を失う哀しみと、愛する人を残して死んでいく哀しみはどちらが深いのだろう。(8/12

006/168
どこが本格推理小説や!いくら何でもそれは言い過ぎでしょう。次回は本当の本格推理物を読んでみようと思います。(8/16

007/169
著者がデビューしてから、“秘密”で、ブレークするまでの間に書かれた、やや自虐的な小説。まさに苦悩の様子がよくわかる。考えてみると、超売れっ子となった彼も、この不遇の時代がかなり長かったのだなと、改めて思う。(8/17

008/170
六歌仙の暗号」高田崇史
古今和歌集と七福神についての圧倒的な情報量と推理で読ませる大作。本筋の殺人事件についての描写はイマイチだけど、歴史推理についてのロジックはかなりのもの。かなり堪能できる。(8/18

009/171
「三毛猫ホームズの傾向と対策」赤川次郎
この本が出た頃は、ほとんど彼の作品も読んでなかった頃だと思う。この作品も読んだという記憶がない。以前、この作家は筋立てをあまり考えずに書き始めて、最後につじつまを合わせるように書き終える、というような話を聞いたことがある。本当かどうかは定かではないが、こうやって読んでみると、本当にそうやって書き始めたのだろうという気がする。(8/19

010/172
ブルーベリー」重松清
連絡短編小説なのだが、私小説のような読後感である。だとすると、小説というより過去を振り返ったエッセイのような雰囲気もある。作品中、ちょうど私と年代がかぶっているだけに、当時の社会背景やできごとにもほぼ同感できる。もちろん東京で過ごしていたわけではないので、リアリティには欠けているが。ただ小説としてはどうか。あの頃のことを懐かしく振り返るばかりで、どうにもやりきれなさのみ残ってしまうのだが。(8/19

011/173
元京大総長にして地球物理学の権威の著作で、理系の解説書かと思いきや、古典文学をあちらこちらにちりばめた科学エッセイ。正直言って、何となくどっち付かずになってしまっているような感じ。もう少し硬派な理系本でも良かったように思う。(8/19

012/174
実況中死」西澤保彦
例によって超能力(というか超常現象)がらみのミステリーで、いつもながら厳しい状況下でのストーリー展開には感心する。ただ、いろいろな超能力兵器の登場は若干アンフェアかなとも思う。あの機械がないと今回の結末はあり得ないというのはよくわかるが、ちょっとね。(8/25)

013/175
書店ガール碧野
ネット書店に押されがちなリアル店舗で働く女性書店員の奮闘記。リアル店舗にはネット書店には絶対に実現できない大いなる魅力がある。男性社会の中で虐げられている女性労働者への応援小説としてもおもしろい。世の中こんなに上手くは運ばないというのが現実だと思うのだが、私も大好きなリアル店舗でがんばる女性(男性も含めて)にエールを送りたい。(8/26

014/176
K・Nの悲劇」高野和明
これは心霊ホラーなのかサイコミステリなのかどっちなんだろうか。どちらでも読めるところがおもしろい。昨年の“ジェノサイド”でブレークし、個人的にも非常に注目している作家である。残念ながら、それ以降の作品を目にすることがないので、とても残念に思っています。次回作が待ち遠しい作家の一人です。(8/26)