2016年12月13日火曜日

2016年11月

11月は17冊、小説が9冊、それ以外が8冊ということになりました。
まぁ、平均的なペースでしょうか。

前月同様、週末はほとんど出かけるようにしていましたので、読書に割いた時間が少なく、細切れの時間で読むため、一冊を読破するのに、結構な時間がかかってしまいました。
時間を忘れるくらいに没頭する本が、それほど無かったということもあるのですが。

それでも、先月の中からお薦めを選ぶなら。
小説では、“君の膵臓を食べたい”でしょうか。昨年のベストセラーなので、今更という感じかもしれませんが、図書館の予約の順番がなかなか回ってこなかったので、こんな時期になってしまいました。本文でも書いていますが、あることをきっかけに主人公が大きく成長する姿が、かつての自分の姿を思い出させてくれました。といっても、こんな劇的な出来事があったわけではないですがね。
それから、戯曲もこの分野に含めているのですが、台詞とト書きだけで構成されているのっておもしろいですね。小説と違って、心証描写がないので、平板な感じがするのですが、自分が演出家になったつもりで読むと、とてもおもしろい。結構はまりそうです。

それ以外の分野では、“明治維新という過ち”は良かったです。近代以降の文字情報が大量に残されて時代に於いても、歴史は常に勝者に視点で描かれるという当たり前のことを、改めて思い起こさせてくれる本でした。結局のところ、真実は常に闇の中にあって、今後も明らかにされることはないのでしょう。でもって、結果として見えていることから推理することを楽しむのが醍醐味でしょうか。



(001/160)
テロ」フェルディナント・フォン・シーラッハ
何かの書評で取り上げられていたのを見かけ、図書館で予約していたところ、やっとかり出すことができたもの。ドイツ人作家の法廷ものミステリなのだが、小説ではなく戯曲の形で書かれている。テーマは“ハーバード白熱教室”のように“正義”についての話。150名余の乗客を乗せた旅客機が、テロリストに乗っ取られ、7万人が集まるサッカー場に突っ込もうとしていたところを、ドイツ空軍のパイロットが撃墜し、結果旅客機の乗客乗員は全員死亡したが、7万人の命は救われた。この空軍機パイロットが殺人罪で起訴されたのだが、果たして有罪か無罪か。いいテーマだと思うのだが、このスタイルが良かったのかどうかと問われたら、どうだろう。法廷での丁々発止は、この方が臨場感あるのかな。 (11/1)

(002/161)
微笑む人」貫井徳郎
彼の小説は2作目かな?前に読んだ本が思っていた以上におもしろかったので、これに手を伸ばした。ノンフィクションの体を取りながら、容疑者の過去がどんどん明らかになっていき、次の展開をとても楽しみにしながら読んでいたところ、最後にきてなにやら変な展開になり、いったいこの物語の謎って何だったんだろう。と不思議な気分で読み終えた。(11/3)

(003/162)
暗い越流」若竹七海
最初と最後が“葉村晶もの”という歯痒い作りの短編集。途中の短編では主人公(語り部)が何も特定されていなかったこともあって、てっきり同じシリーズかと思って読んでいたが、どうにも違和感があって、読み返してみると全く違うことに気が付いた。いやぁ、だまされるところだった。(11/5)

(004/163)
なかなか強烈な個性の持ち主であるお二人の対談集と言うことで読んでみたところ、何とも赤裸々にここまでぶちまけて良いのだろうかと戦いてしまう。あえて感想は書きません。いや、書けません。(11/6)

(005/164)
去就 隠蔽捜査6」今野敏
このシリーズも結構長くなって、新作が出るのを楽しみにしている。今作はストーカー絡みの殺人事件の犯人を追うという物語で、現場を歩く刑事と主人公であるキャリア官僚が、お互いの持ち味を出しながら解決に導いていく。最後におまけのように付いている家庭内での挿話は必要だったのだろうか?ちょいと置き場所を謝ったかなと思うのだが、どうだろう。既に月刊誌ではシリーズ7が連載されているので、来年にはまた新作が読めそうだ。(11/6)

(006/165)
古い医術について」ヒポクラテス
ヒポクラテスというと紀元前5世紀頃のギリシャで活躍した“医学の父”として名前だけを知っている人。かの“ヒポクラテスの誓い”でもよく知られている。本書はその“誓い”を含む彼の著作を集めたもの。今から2400年以上昔に“古い”と言われていた医術とはどんなものだったのか。彼が出現することで、病には“原因”があり、環境や食生活などから発病することを、様々な症例を記録し、分析することで実証しようとしている。当然十分な器具も無い中なので、現在の目から見ると明らかな誤りもあるのだが、その科学に対する姿勢は現在でも模範とするにふさわしい。難しかったけどおもしろかったです。(11/13)

(007/166)
非常に刺激的なタイトルが示すとおり、明治維新という歴史的事象を真っ向から再評価試用とした著作である。実は、私自身が京都の幕末の歴史をかじる中で、漠然と感じていたことが、そのままタイトルにされていることから、ずっと読みたいと思っていたところ、ようやく図書館で借りることができたものです。出典が必ずしも明確にされていないところもあって、どこまで信用して良いのか分からない部分もあるのだが、目に見える事象を追いかけているだけでも、さもありなんと思われる。勝てば官軍というのはまさにその通りで、同時代の一般人もその胡散臭さは感じていたと言うことであろう。テロリストも失敗すれば、そう呼ばれるだけで、成功すれば革命家と呼ばれる。要は結果がすべて。(11/15)

(008/167)
日本の古代史は謎が多い。自己正当化のために、歴史を編纂することが国家の重大事業であった中国とは違い、文字を持たなかった我が国で国史が編纂されたのは、6世紀頃と言われている。その時点に口承で伝えられてきたことを文字にして記録されたものと思われる。前のとおり、歴史書は自己正当化の為に作るというのが原則であるから、自分に不都合なことが記録されることはない。この本の中では、かなり思い切った内容にまで踏み込んで書いてあるのだが、もちろん現在の資料でそれを確かめることはできない。だからこそ歴史はおもしろい。(11/18)

(009/168)
テレビドラマにもなったシリーズものなのだが、どうも“その3”は、読んでいないような気がしてきた。最初の頃のようなどこまでも軽い調子は少し影を潜め、結構シリアスな展開で進んでいく。また、本来“戦力外”であったはずの主人公であるが、本作では非常に鋭い推理を展開している。まだ、このシリーズは続くのだろうか。(11/19)

(010/169)
最近増補文庫版が出版されたにもかかわらず基の新書版を読んでしまった。幕末に紀州から江戸の藩邸勤めとなった武士の日記を基に当時の武士の食生活を描いたもの。当時既に外食産業が隆盛にあったことや各地に“名物”というものもたくさんあったことがよく分かる。それにしても、普通のことなのか彼が特別なのかはよく分からないが、よくこまめに記録を取っていたこと、特に食べ物の記録は詳細である。一部を読んだだけで当時の豊かな食生活が見えてくるし、美味しいものを食べたくなる。 (11/19)

(011/170)
最近よく売れているそうで、興味を持って借りてきました。かつてガリバー企業であったキリンビールが、スーパードライの発売で業績を伸ばすアサヒビールに業界トップの座を奪われながらも、再びその座を奪い返した。そういったマクロなシェア争いではなく、四国の高知県における県内シェア争いを如何に戦ったかが描かれている。結果的に筆者は四国本部長、東海本部長を経て本社の副社長にまでなられたので、高知県での彼の経験がその後の同社の復活につながったのだろう。商品力もさることながら、営業力だけでもトップに立てるということを実践した記録でもある。(11/19)

(012/171)
華氏451度」レイ・ブラッドベリ
SF小説の大家の代表作。表題となった華氏451度というのは、紙が発火する温度だそうで、“書物”の所持が禁止された社会で、“不法所持”を監視し、見つけ次第焼却してしまう“fireman”が主人公となっている。ある日自分の職務に疑念を覚えた主人公が、悩みながら新しい道に歩み出そうとする。作品中には、娯楽の中心となった家庭用のバーチャルリアリティ装置に誰もが夢中になっている様子が描かれており、現在のスマホ依存社会を彷彿とさせる。将来的に書物が無くなることは想像したくないが、何でもかでもバーチャルでとなるといささか危険を感じる。現に、電子書籍では勝手に改訂されることも起きているようであるし、実は知らない間に情報は操作されているかもしれない。(11/20)

(013/172)
ガンコロリン」海堂尊
医者でもある作者らしい短編小説集。彼が提唱する死後画像診断にまつわる話や、東日本大震災にまつわる話などいろいろ。表題作だけなら割とお気楽な小説集のようにも思えるが、淡々と描かれる重い話もある。(11/20)

(014/173)
リア王」シェイクスピア
思い立って、こんなモンも読んでみました。そういえば、シェイクスピアの作品というのはあまり読んだことが無くて、過去に何を読んだか覚えていない。確か四大悲劇の一つでしたよね。今回改めて読んでみて、この人は戯作者としてとても優れた人だということを認識した。こういった戯曲を読んで、脳内に浮かぶ風景は人によって違うと思います。テレビドラマであったり、映画であったり、舞台であったり。実は私は、いつもなら、映画のスクリーンが浮かぶのですが、今回は舞台が浮かびました。最大の違いは、舞台だと視点が固定されるということです。映画やテレビなら手許のクローズアップになって見えていないはずのところや、主人公の背後がはっきりと目に浮かんでしまいます。となるとはっきりと見えてくるのが演出家、舞台監督の力量です。蜷川幸雄の偉大さを改めて感じました。(11/22)

(015/174)
呼び覚まされる霊性の震災学  ・11生と死のはざまで」東北学院大学震災の記録プロジェクト 金菱清(ゼミナール)編
東北学院大学の学生さんが、震災後の被災地の様子をおもしろい観点から切り取ってレポートしたもの。冒頭の“幽霊タクシー”のレポートがマスコミで大々的に取り上げられていたが、それ以外の各編もしっかりと現地を歩き、丁寧なインタビューを重ねたことで、素晴らしいルポルタージュになっている。しかもこれらを学部生の皆さんが執筆したというのだから驚きである。(11/23)

(016/175)
君の膵臓を食べたい」住野よる
本屋大賞の第二位らしい。めちゃくちゃおもしろかった。かなり甘酸っぱめの青春小説で“きゅんキュン”ポイント満載の一作です。まだ若い作家のようですね。これからが楽しみです。ローティーンだった頃の私は、まさにこの作品の語り部のような子供でした。周りの人に嫌われるのが怖くて、人に見えないようにひっそりと生きている、そんな子供でした。ホントは、人一倍人に愛されたいのに。あの頃一歩踏み出す勇気をくれた人のことは、今でも忘れられない、恩人です。感謝してるよ、本当に。(11/26)

(017/176)
泥酔懺悔」朝倉かすみ他

女流作家による“酒”にまつわるエッセイ集。自他共に認める酒豪から下戸の方まで、顔ぶれは様々。大酒豪の武勇伝もさることながら、下戸の方が冷静に観察する泥酔者の姿がおもしろい。他山の石、人のふり見て我がふり直せ。(11/26)

2016年11月9日水曜日

2016年10月

10月は13冊、うち7冊が小説、その他が6冊という結果になりました。
10月迄で159冊ですから、今年はどうやら200には届かなさそうですね。今年は天気の良い休日は、できるだけ出かけるようにしていたので、まぁ、ほどよい感じでしょうか。

小説では、宮部みゆき、池井戸潤、若竹七海、柚月裕子など好きな作家の作品が並んでいて、いずれもおもしろかったです。ただ、池井戸さんはワンパターン化にさらに磨きがかかったように思えてしまい、少し残念です。宮部さんは、最近はこのシリーズしか現代ミステリを書いておられないように思えるのですが、できればまた“火車”のような本格社会派ミステリを書いて欲しいです。若竹さんのこのシリーズはおもしろく、このキャラクターは特に気に入っていて、続きが楽しみです。柚月さんの法廷ものもお気に入りの分野で、今回はあまりなじみのない家庭裁判所の調査官が主人公です。

その他の本は、いずれもおもしろかった。特に外れは見あたりません。ただ、今ベストセラーとなっている“言ってはいけない”ですが、確かに内容はおもしろいのだが本文にも書いたように、直前に読んだ別の本と内容・表現がかぶっているところが多かったのだが、参考文献には全くあがっていないので、ちょっと奇異に思っています。

読んだ本が少ないと、ここに書ける中身もやや少なくなってしまいますね。

(001/147)
著者お得意のイヤミスの短編集。ミステリとはいえ事件の謎と言うより、日常にある小さなミステリが描かれている。全体を通して、親子の確執がテーマになっており、げに恐ろしきは、肉親の憎悪。(10/1)

(002/148)
相手の体や表情筋の動きで大脳皮質に語らせる。声に出して語らなくても、すべての真実が明らかにされてしまう。どこかで読んだような、まるで“千里眼”!?連作短編集なのだが、全体を通して主人公である女性捜査官が過去に関わった事件に係る謎解きも同時並行で描かれる。まだまだシリーズとして続くようだけど、あんまり次作へは食指が伸びない。(10/3)

(003/149)
人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」ジャレド・ダイアモンド
原著作名が“Why Is Sex Fun?”というとんでもないタイトルなのですが、内容は至ってまじめな本です。念のため。で、書かれているのは、人類が種の保存のために行う生殖行為が、他の生物と比較して非常に特異であることを実例を挙げて論証していきます。もちろん生物の進化については、今ある事象からさかのぼって想像していくしかないわけで、それが正しいかどうかは誰にも解りません。でもこうやって見てみると、不思議でおもしろい。タイトルさえ気にしなければ、おもしろい本ですよ。(10/8)

(004/150)
かつて“筆談ホステス”を書いた女性の近著です。昨年の春、市会議員に当選して、音声読み上げソフトが議会に導入されたというニュースは読んでいたのですが、前著以降に未婚で出産し、子育てをしながら今の仕事している様子が書かれています。耳が聞こえないという大きなハンデを抱えながらも、最新の情報機器などを駆使しながら、楽しそうに子育てされている様子が伝わってきます。当然、楽ではない。大変だとは思うのですが、たとえドン亜ハンデがあろうと、国民皆が活躍できる社会であって欲しい物ものです。(10/10)

(005/151)
最近話題になって、書店の店頭や書評で大きく取り上げられているので、ついつい買ってみた。内容的には、努力はもちろん大切だけれど、結局持って生まれたものが人生の多くを決めてしまうんだよということが書かれている。論拠としては、過去に書かれた論文を引いてこられていて、ショッキングでありながら、それなりに説得力があるようにも見えるけど、そもそも過去の実験や統計はどうなのか、本当にここに書かれているようなことが原典にも書かれているのかは不明。と言うのは、参考文献としてたくさんあがっているのだけれど、直接引用がほとんどなくて、これって本当にそう書かれているの?とついつい思ってしまうのです。おまけに、つい先日読んだ“人間の性はなぜ奇妙に進化したのか”とほぼ同じ文章が何カ所か出てきているのですが、参考文献には挙げられていない。本当?なんか胡散臭い。参考に挙げられている書籍を、ちょいと探してみようかな。(10/12)

(006/152)
消滅 Vanishing Point」恩田陸
久しぶりに読んだ彼女の小説。近未来の空港で外国から帰国した数名の男女がテロの容疑で足止めを食らってしまう。一室に集められた彼は、期限までに自分たちの力でテロリストをあぶり出すことを要求される。その理由というのがまた脱力ものなのだが、そのプロセスがそれなりにミステリの謎解きっぽくておもしろい。あくまで“ぽい”だけでミステリではないので誤解のなきよう。この人は、こういう小説も書くんだと改めて再認識いたしました。読み進めやすくて、おもしろかったです。(10/16)


(007/153)
翻訳と日本の近代」丸山真男 加藤周一
現代日本を代表する二人の知の巨人が、日本の近代化とそれに海外の文化が如何に寄与したか。それをどのように受け入れたかなどについて語り合ったもの。必ずしも対談ではなかったようだが、彼らが話したことを上手くまとめてある。もともとは、明治維新の前後に西洋のシステムや概念を日本に持ち込むに当たって、どのように日本語を当てていったのかといいうようなプロセスについて語っているのかと思っていたところ、よく考えたら、それまでの日本文化であっても、そのほとんどは中国から輸入されたもの。であるなら、中国の事物を日本化する際にも“翻訳”という過程を経ていたわけで、この本を読んで改めてそのことに気づかされた。それにしても、二人の会話の中では、これまで聞いたことのないような人名や書物が、次々に飛び出してくる。まさに知の巨人。(10/16)

(008/154)
仏教最古の経典と言われる“スッタニパータ”の日本語訳。“ブッダのことば”と書かれているとおり、説教臭さよりも、ブッダが聞く人にわかりやすく語りかけている様子が彷彿される。言葉も平易でわかりやすく、多くの文章に “詩”というタイトルが付いていることからよく分かるとおり、リズミカルな文章もたくさん出てくる。解説によると、後の整備された教義の原型となっているような言葉も散見され、原初仏教の教えに近いものが記されているのだろう。執着(こだわり)を捨てよということが幾度となく出てくるが、それほど宗教臭も強くなく、読みやすい本です。(10/18)

(009/155)
静かな炎天」若竹七海
葉村晶シリーズの最新短編集。主人公も40歳を超え、四十肩に悩まされるようになってしまった。かつてのような激しいハードボイルドなやりとりはなくなり、クールなやりとりが続く。まるで、海外の小説の翻訳版を読んでいるような感じになる不思議な本。彼女の書く本はどれもおもしろくて好きなのだが、このシリーズは特にお気に入り。この先この主人公は、どんな風に年を取っていくのだろうか。(10/22)

(010/156)
希望荘」宮部みゆき
これもこの著者の代表作にもなってしまったシリーズの最新作。最初からシリーズ化を念頭に書かれたものなのか疑問なのだが、前作で思わぬ展開を見せたこのシリーズも、独り身になった主人公が、探偵事務所を開設し、心機一転人生をスタートさせたところからお話しが始まる。過去の一連の作とは、全く違うシリーズと言えなくもないが、あえて過去の葛藤を抱えたままの主人公を動かしていくことで、どのような結末をこのシリーズに用意しているのか、とても気になるところ。最近の彼女の著作の中では数少ない社会派の推理小説でもあるので、大事に書いていって欲しい。(10/23)

(011/157)
神の民俗誌」宮田登
およそ40年前に刊行された新書で、信仰の拠り所である“カミ”について、民俗学の観点から解説されたもの。まだ神道という形に体系化される前、どのようにとらえられていたのかとても興味深く思い、購入したものである。漠然と、まずは大自然(特に災害など)に対する“恐れ”が発端にあり、それを鎮めるための“カミ”が生まれたのかなと思っていたのだが、この書籍にはその観点は出てこず、“ケガレ=気枯れ”とその清浄化という観点からカミに繋げておられます。ということで現在では若干不適切かなと思うような表現も出てきますが、民俗学の分野では切り離せないことかと理解しています。(10/28)

(012/158)
陸王」池井戸潤
“技術や強みを持った中小企業”対“理不尽な大企業、金融機関”のバトルで、最後は中小企業が勝つという王道のような作品。最初に登場する金融機関の担当者が従来とは違い、おやッと思わせたのですが、結局は落ち着くところの落ち着くという展開。今回はそれにスポ根要素も加わるのだが、あまりに王道過ぎて、そろそろ違う要素を付け加えるのもありかなと思うのだがどうだろう。おもしろくない訳じゃないんだけど。展開が読めてしまってねぇ。(10/29)

(013/159)
あしたの君へ」柚月裕子

彼女の裁判ものはお気に入りで、今作は家庭裁判所の調査官というなかなか縁のない職業に光が当てられている。家庭裁判所の取り扱う案件は、大きく家庭内のいざこざと少年審判に分けられ、この小説ではそれぞれの分野で起こる事件を、調査官補といういわば見習い職員が解決していく様を描いている。物語を通じて主人公が成長していく様が上手く描かれている。(10/30)

2016年10月5日水曜日

2016年9月

9月は計16冊。うち小説は5冊、その他11冊というできでした。

見ていただいたら分かるとおり、東日本大震災関係の本が5冊あります。これは御厨さんの本を読んだ後、思い立って、図書館で改めて目に付いた本を借りだしてきたものです。
特に、これらの本は震災から概ね1年以内に書かれた物が中心であり、内容的にもかなり高揚した雰囲気の下で書かれたものが多く、そういう意味でも5年が過ぎてしまったのかと、つい感慨深く思ってしまいました。これら一連の著書の中は、いずれも興味深かったですが、中でも現場で奮闘した医師達の記録である“救命”を、特に感慨深く読みました。

さて、そのほかのお薦めですが、実は5冊の小説に中では、自信を持ってお薦めできる物がありませんでした。単に数が少なかったためか、選択が適当でなかったためか、次月はもう少し吟味して読みたいと思っています。

震災関連以外でのその他分野の中では、ソ連人記者が書いた“一枝の桜”が秀逸でした。翻訳もわかりやすいのですが、おそらく原著も上手く書かれているのだろうなと思われます。観察眼も鋭いですし、古き良き時代の日本がとても生き生きと描かれています。すでに品切れになっているので、古本でしか買うことができませんが、どこかで見つけられたら是非読んでみてください。これは自信を持ってお薦めできます。

(001/131)
京都市左京区にある“何有荘”の再生に成功した著者の経営論。著者自身が病気や家庭内の問題で大きな悩みを抱え、克服していく過程が非常にドラマチック。不動産に限らず、“もの”を売ろうと思ったら、ただ単にそのものを見せるだけではなく、“物語”を付加することで“特別感”を提供することが重要であるとは、よく言われることである。もちろん嘘はあかんけどね。(9/3)

(002/132)
テレビドラマの原作になったもの。ドラマとはキャラ設定がかなり違っていて興味深い。実はドラマではかなり重いトーンで描かれていたのだが、原作にはそれほどの重さ、暗さは感じられない。もしドラマのような雰囲気だとイヤだなと思いながら読んだのだが、全く違っていてホッとした。(9/3)

(003/133)
オーラルヒストリーの大家である著者が、東日本大震災のあった2011年にいろいろなメディアで発信したコラムなどを集めた物。一貫して、与野党を問わず当時の政治の欠落が主張されており、それがそのまま今なお進まない復興の遅れにつながっている。当時、著者はこの災害によって、社会の潮目が大きく変わってくるに違いないと読んでいたのだが、実際のところはどうだろうか。西日本はもちろん、交通機関は麻痺したものの、大きな災害にならなかった首都圏などでは、あの災害は、どれほどの痛みを持って記憶されているのだろうか。あれから5年が経ち、各地の原発も“順調”に再開され始めている。まだ、たった5年しか経っていないのに。(9/6)

(004/134)
前から読みたいと思いながら購入して、そのまま何年も放ってあった。ようやく読み始めたものの、通勤の電車限定で読んでいたこともあって、ほぼ2ヶ月かかってしまった。全体は4部に分かれており、書かれた時期が違うようで、それぞれにずいぶん調子が違う。おそらく原文のドイツ語なら詩のように書かれたところもあるのではないかと想像する。ニーチェの思想の集大成と言われ、主人公“ツァラトゥストラ”の口を借りて、様々なことが小説の様な体を借りて、語られる。全体を読むと何となく分かったような気になるのだが、それがニーチェの考えと合っているのかさっぱり分からない。中公新書の解説を買ったので、もう一度答え合わせをしながら読んでみるか。(9/8)

(005/135)
震災風俗嬢」小野一光
未曾有の災害に襲われた東北地方にクラス人たちの中で、多分に偏見を持ってとらえられがちな風俗業界で働く女性達にスポットを当てたルポルタージュ。彼女ら自身が被災者であり、肉親や知り合いを亡くしていたりしながらも、淡々と働く姿が描かれている。そして彼女らが迎えるお客さんも被災者であり、肉親を亡くした方々で、その一瞬の邂逅の中で、彼女らの口から異口同音に“癒し”という言葉が語られる。きれい事ではなく、確かにそこに心のふれあいがある。(9/10)

(006/136)
巷説百物語」京極夏彦
怪談話をモティーフにした時代物小説。本当はこの本を先に読みたかったのですが、図書館でもなかなか見つからず、だいぶ前に“続~”を読んでいたのですが、今回ようやく図書館で見つけ、読むことができました。妖怪物のようでいて実際の妖怪は出てこないある種のミステリ小説です。作者の特徴で、ページ数もかなりの量になるですが、飽きることなく読める本です。(9/17)

(007/137)
東日本大震災当時、YouTubeで被災地情報を発信したことで有名になった市長の奮闘ぶりをインタビューの形で書籍にしたある種のオーラルヒストリーです。当時、かなり破天荒な市長として世界的に話題になったようですが、本書を読む限りではその出自自体、かなり特殊な経歴を持った市長のようで、ある意味真っ当な市民感覚で、事態に当たっている姿が彷彿とされます。震災後数ヶ月くらいの時点で書かれているので、あれから5年以上が経過した今、どのように事態が進んだのかも大いに興味があるところです。(9/18)

(008/138)
危険なビーナス」東野圭吾
著者の最新刊、しかも書き下ろしでベストセラー快走中と言うことで期待して読みました。途中まではとても良かった。ミステリ要素もたっぷりあって、この先いったいどうなるのだろうと興味津々で読み進みました。しかしながら、この先はいわゆるネタバレになるので、詳しくは書きませんが、私はほとんど外れのない作家と評価している作家ではあるのですが、彼の良くない面が見えてしまう作品になってしまったかなと思います。途中までは良かっただけに残念。(9/18)

(009/139)
いわゆる“断捨離”。“より少なく、しかしより良く”、これをビジネスの世界に応用するため、“見極める”“捨てる”“仕組化する”という3ステップで取り組む方法が具体的に書かれている。ただ、本人の経験やアメリカでの事例を基に書かれているので、成り立ちそのものが大きく違う日本社会でどれほど成り立つものなのか、はなはだ疑問ではある。(9/19)

(010/140)
安倍首相の進めるアベノミクスを徹底的にこき下ろすために書かれた物。主張の中身は理解できるし、過去に首相が公式に発言した内容を受けた論旨の展開となっているので、あながち間違いとは言い切れないと思うのだが、書きっぷりにあまりにも感情がほとばしりすぎており、これは多分に売らんがための編集者の仕業かなと思うのだが、もう少し冷静な筆致で書かれた方がよいのではないかと思われる。まぁ、この本の発売直前に聴いた講演でも同様の話っぷりだったのではあるが、それにしても、ちょっともったいない。(9/19)

(011/141)
東日本大震災のさなか、現地で医療の最前線に立っていた医師達は、何を考え、どのように行動したのか。震災直後に9人の医師達にインタビューした内容を基に構成された記録。混乱する現場、被災の現場、被災者達の助け合い、酷使しすぎて倒れた医師の姿、動かない行政、それぞれに生々しい証言で構成されている。こういった証言を受け、今後どのように政策に活かされているのか。なぜ活かされないのか。早く、しっかりと検証しないと、“次”は近いうちに確実にやってくる。(9/19)

(012/142)
“まごの店”で知られる三重県立相可高校の取り組みを仕掛けた多気町職員の手記。同店開設までの苦労話、生まれてから町職員になるまでの履歴、町職員になってからの諸活動について書かれている。およそ公務員が書いたこの手の書籍ほどつまらない物はないのだが、その色眼鏡をぶち破るくらいの破天荒ぶり。この手の突飛なアイデアをいくつも出せる公務員というのはそうはいない。さらにそのうちのほとんどは、言い放しで自分では手を動かさない。そういう意味では希有な例である。(9/19)

(013/143)
一枝の桜 日本人とはなにか」フセワロード・オフチンニコフ
旧ソ連共産党の機関誌“プラウダ”の東京特派員であった著者の日本レポート。今から40年くらい前にソ連で発行されたものである。身分は新聞記者であるが、実態はおそらく諜報活動も行っていたのではないかと思うが、真実は不明。今こうやって読んでみると、古き良き時代の日本が描写されていて、外国人の目を通すと“あの頃”は、こう見えたんだなと感慨深く読むことができる。実はこの本、古本屋で見つけて詰んであった物を読んでいたところ、とてもおもしろかったのだが、お出かけ先で読んでいて、途中でどこかに忘れてしまったのを諦めきれず、再び古本屋で買い求めたといういわく物。それくらいおもしろい本でした。(9/24)

(014/144)
東日本大震災後数ヶ月後に日本経済新聞で掲載された、日本を代表する評論家・作家などのインタビュー記事。当時、彼らがどのようなことを考えたのかが綴られている。いろいろなことが語られているが、その中で心に残ったフレーズを。山折哲雄氏“これから問われるのは、死者の魂との絆”。肉親、親友の突然の死を受け入れることは難しい。とはいえいつまでも引きずっていることも望ましいことではない。如何に折り合いをつけるか。桶谷秀昭氏“(3月11日は歴史の節目になるか?という問いに対する答え)それは、これから決まること”。あの頃、歴史の転換点になると予言した人がたくさんいた。結果として、その予言は実現しなかった。何か変わりましたか?(9/24)

(015/145)
被害者は誰?」貫井徳郎
この本を読むまで気が付かなかったのだが、どうやら彼の作品を読んだのは初めてだったらしい。最初の一冊が、これで良かったのかどうかは悩ましいところ。小難しい小説家と思いきや、少し軽めの本格ミステリで、短編集ながらいろいろなバリエーションのミステリが楽しめます。さて、彼の作風は本格ミステリなのかライトミステリなのか、ほかの本を読もうかどうしようか。(9/25)

(016/146)
若様とロマン」畠中恵

明治維新後に元旗本家に生まれながらも、一般の警察官として働く“若様”達の物語。これが三作目かな?今回は、軍が力を持ち始め、戦争へと向かいそうな流れを食い止めるべく、若様達の結婚を通して、反戦仲間を増やしていこうというストーリー。若様達のお見合いを軸に様々な騒ぎが起こる。シリーズなのでついつい読んでは見たものの、もう次はいいかな。(9/29)

2016年9月12日月曜日

2016年8月

今年も猛暑に襲われた8月の読書歴は20冊。小説が13冊、それ以外が7冊という結果になりました。

例年、暑い時期は読書が進まず、時に休日も暑さに負け、ごろごろしながらビデオを見ているか、エアコンをかけて昼寝をしているかという感じだったのですが、今年は7月から8月にかけて、何度か文庫を2、3冊片手に遠出をしたこともあって、結構量も多かったように思います。

そんな中での今月お薦めの一冊ですが、今月は大倉崇裕さんの本が4冊もあって、自分でも驚いています。ライトな感じで結構好きなのですが、“いきもの係”シリーズは、サブの元捜査一課の刑事のキャラが魅力的で楽しく、ついつい進んでしまいました。

また、ヘビーなミステリでは、“狐狼の血”は、とてもおもしろかったです。特に昨年の“このミスベスト10“の上位2作が、も一つだったので、好印象になりました。ただちょっとハードなので、ご注意を。

もう一作あげると、“本日は、お日柄もよく”がとても良かった。彼女の作品は、当たり外れがあるような気がして、なかなか手も伸びなかったのですが、書店で大きく展開されていたこともあって、買ってみました。ある種のお仕事小説なのですが、主人公の成長する様が感動的でもあります。

さて、その他の本に目を向けると、ちょっと難解な本にも手を伸ばしてしまい、若干瞑想気味かなと自分自身も思っています。

そんな中では、話題になった本と言うことで、“USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?”を読んでみたのですが、想像していた以上におもしろい本でした。単なる成功譚のたぐいかなと思っていたのですが、そこはしっかり数理的な手法でマーケティングをし、実績を上げたプロセスが簡略に描かれています。この後、同じ著者によるマーケティングに関する書籍が出版されており、まだ読んではいませんが、企業関係者の方には、それらも参考になるんだろうなと思います。

そしてさらに“散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道”は、お薦めしたい一冊です。書籍自体は、少し前に出版されていて、大宅壮一ノンフィクション賞も受賞した作品なのですが、不幸にして最近までその存在を知らず、たまたま書店で見かけて購入したにもかかわらず、数ヶ月放置していたのが悔やまれるくらい良い本でした。
いずれもお薦めです。

(001/111)
8月のスタートは、またまた新たなキャラクターによるライトミステリです。先月にもご紹介しましたが、この作者のミステリは最近結構お気に入りで、見つける度に読んでいるのですが、このシリーズの存在は知りませんでした。警視庁総務課に、捜査とは別に動植物を扱う部署(いきものががり)ができ、捜査一課出身の警部補と生き物おたくの女性新人巡査が、生きものを手がかりに事件を解決するという連作短編集。今作はその3冊目となっております。超いきものオタクの主人公の天然ぶりが魅力的で、ついつい前の2作を探し求めています。(8/3)

(002/112)
人気シリーズの第3弾です。主人公は文部科学省の研究費不正使用調査のタスクフォースに配属された女性事務官。持ち前の正義感と推理能力で、権威に立ち向かっていくという、ある意味スカッとするタイプの物語です。今回は、地磁気逆転の新証拠発見や謎の人面塚の謎に臨みます。夏の暑い時期、頭を悩ませるような難しい本を避けて、すっきりしたいときにはお薦めです。(8/6)

(003/113)
ヒーロー!」白岩玄
“のぶたをプロデュース”でデビューした作者の最新作。舞台は、とある高等学校、主人公達が校内での“いじめ”をなくすため、驚くような奇策を実行する。それはそれで、効果を上げたように見えるのだが、その過程で、主人公の女子高生が取り返しのつかない大事な物を失ってしまう。最後に彼女は、失った物を取り戻すために、大きな一歩踏み出す。主人公の女子高生の心裡がとても詳細に描かれている。ただ、今の人たちの特徴なのだろうか、私にはとても断片的に見えてしまう。その断片と断片を繋ぐ物が見えてこないのは年を取りすぎたせいだろうか。(8/7)

(003/113)
改めて、自分の理系的センスのなさに愕然とする。きっととても易しく書かれているはずなのに、ほとんど理解不能。本書では、アインシュタインや彼以降の宇宙論について、解説がされている。導入部分で取り上げられているケプラーやニュートンぐらいまでは、何とかついて行けたのだが、途中からはさっぱり。文字として書かれていることが、全くイメージできない。参った。(8/10)

(004/114)
ベストセラーになっている“嫌われる勇気”に続くアドラー心理学入門編の第二弾。前著によって、アドラー心理学も一気にメジャーになり、改めて世に知られるようになったことは衆知のとおり。本書では“尊敬”と“愛”について、多くのページを割いて述べられている。アドラーの言うところの“愛する”“幸せになる”ためには、大変な勇気が必要である。自分にそのための覚悟はあるか。自信がない。(8/11)

(005/115)
狐狼の血」柚月裕子
昨年2015年の“このミスベスト10”の第3位にランクインした作品。正直言って、これより上位の2作品も読んだけど、こちらの方が私にはおもしろかった。この著者も当たりの少ない“このミス大賞”の受賞者にあって、数少ない“当たり作家”で、出版されると必ず手に取りたくなる。本作は、彼女にとってはとても珍しい警察物で、しかも暴力団担当の刑事を主人公にした荒っぽいストーリーで、広島弁の台詞回しも荒々しい。意外な結末もミステリらしくて良い。(8/11)

(006/116)
小鳥を愛した容疑者」大倉崇裕
最近知ったお気に入りシリーズで、これがその第一作。警視庁“生きもの係”の最初の事件が描かれている。軽いタッチで、なおかつ女性が主人公。設定もそれほど複雑ではないので、テレビドラマにも向いていると思うのだがどうだろう。映像化するなら、主役のコンビは誰が良いか?などと妄想をふくらませながら読んでもおもしろい。(8/13)

(007/117)
しまった、これは前に読んだことがある、と気がついたのは半ばまで読んだ頃。人気シリーズの番外編で、小数点が付いている。最近シリーズ6が出版されたこともあり、つい目について、図書館で借りたのだが、大失敗。まぁ、おもしろいからそれでも良いかな。(8/13)

(008/118)
前述のお気に入りシリーズ第二弾。これまで読んだ二冊と違い、今作は長編ミステリとなっている。カルト教団が絡んだり、警察官の狙撃事件や“生物兵器”を使ったテロが企まれたりと、かつての大事件を彷彿させるところ。最後には思わぬどんでん返しが。(8/13)

(009/119)
一時は存続すら危ぶまれたアミューズメントパークを、奇跡のV時回復に導いた仕掛け人が書いた軌跡。前職はP&Gのマーケティング担当者であったものが、転職して今の職に移ってきた。アミューズメントの世界を、勘や経験だけでなく、数学的なマーケティングで分析し、成功に導く手腕はお見事である。この本が単なる成功譚ではなく、ビジネス書として高評価を得ている理由がよくわかる。我々のような公的サービスの分野ではどうすればよいのかと考えながら読んでいました。 (8/15)

(010/120)
いつもの千里眼シリーズ。今作では、ヒロインである“岬美由紀”の想像を絶する隠された過去が明らかになる。物語としては、上下巻に分かれているくらいに盛りだくさんで、大きく2つの物語が絡み合いながら、進んでいく。いつも以上に破天荒な展開なので、どうしたんだろうと思っていたところ、それはもう一つの物語の伏線でした。(8/21)

(011/121)
つい口をついて出てしまう嘘、失言。その裏に隠れている心理。人は正直に生きなければいけないと教えられてきたところだが、一生の間に一度も嘘をつかずに生きてきた人はいない。しかしながら、その態様は様々で、一概にすべてが“悪い(というのも相対的なものだが)”ということもできない。人を傷つけないためにつく嘘や自分の誇りを守るための嘘などは、それほど目くじらを立てることもないのでは。ただヘイト・スピーチ、暴言、誹謗中傷などは許されるものではない。彼らはなぜそんな言葉を選んでしまうのか。今、そういった暴力的な言葉のほとんどは、ネットの世界の中で匿名者によって発せられ、エスカレートしていく傾向にある。卑怯と言うことは簡単だが、もう一度問う、彼らはなぜそんな言葉を選んでしまうのか。その真相を知りたい。ある種の破滅志向なのか。(8/23)

(012/122)
経営者とは 稲盛和夫とその門下生たち」日経トップリーダー編
稲盛氏の講演録などと彼の経営を学ぶ“盛和塾”生達へのインタビューから構成される。稲盛氏の著作や講演録は世に多く出版されているが、その“弟子”“信者”達の言葉を集めた物は珍しい。彼が世の企業経営者、特に中小企業の経営者達に向ける視線はとても優しい。彼の考え方が、すべからく正しいとは言えないと思うが、彼の言葉は多くの人を惹きつける。それは、彼の語る言葉が“経営指南”ではなく“生き方指南”であるからだろう。(8/23)

(013/123)
数年前の出版で、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞する秀作である。かなり前に買ったまま読まずにいた物を、電車のお供に読み始めたところ、あまりのおもしろさに一気に通読。太平洋戦争における日本軍の過ちについては、いろいろなところで分析もされており、詳しい著書も出版されている。それらの中でも触れられているかもしれないのだが、有数の激戦地となった硫黄島の戦いについて、これほど詳細に書かれた物は初めて読んだ。近年日米双方の視点で描かれた映画が公開されるなど、注目もされてきたところ。この戦争の最大の誤りは“戦争を始めてしまったこと”であることは間違いがない。多くに人はそのことに気がついていたはず。しかしながら誰もそれを止められなかった。そしてそれからも相変わらず同じ過ちを何度も何度も繰り返す。性懲りもなく。(8/24)

(014/124)
人気シリーズの最終巻。近年の彼の著作に登場するキャラクターが総出演(ただし顔見せだけの端役だけど)。予定どおりのハッピーエンドでほっとする。どうやら今後は、あるキャラクターシリーズだけが続いていき、他のシリーズは完結するようだ。それはそれで残念な感じ。続けて欲しいシリーズがあるんだけどな。(8/24)

(015/125)
彼女の著書を読んだのは久しぶり。最初に読んだ“楽園のカンヴァス”の印象とその後に読んだ作品との落差が激しく、他の著書を読むのが怖くて、しばらく手を出せなかった。この本は、スピーチライターという職業に魅せられ、大きな成長を遂げる一人の女性が主人公。その成長の過程に立ちはだかる試練とそれらを一つずつ越えていく過程が感動的。泣かせようという作為を感じつつも、ほろりとしてしまう。なかなか良い作品です。(8/27)

(016/126)
夏雷」大倉崇裕
彼の著作群の中で一つのシリーズとなっている(らしい)山岳ミステリの一つ。ただ、山岳小説としては、専門的でストーリー性もあって良いと思うのだが、ミステリとして読むと、若干物足りない感じ。一番大事なところがよくわからないままに終えられていて、何かだまされたような気がする。(8/27)

(017/127)
残り者」朝井まかて
戊辰戦争に敗れ、江戸城を明け渡すことになった徳川家。その明け渡しの前夜、大奥に居残り、引き渡しの様子を目撃した5人の女性が主人公。当たり前のように続く日常が、ある日を境にバッタリと途絶え、それまで支えにしてきた物がすべて消えてなくなる。その厳しい現実に曝されたとき、人はどうするのか。過去に引きずられ後ろばかりを見ながら生きていくのか、或いは思い切って前を向いて進んでいくのか。後者でありたい。(8/28)

(018/128)
掟上今日子の挑戦状」西尾維新
ドラマにもなったシリーズの一作。思い切って、何冊かをまとめて買ったものの、なかなか読めずに放っておいたところを、ようやく手に取った。最初に読んだ頃は結構おもしろいと思いながら読んだのだけれど、何か変に理屈っぽくなって、ちょっと読みづらい。駄作というわけではないのだけれど、あんなに一気に買わなければ良かったなと少し後悔している。(8/28)

(019/129)
格差と序列の日本史」山本博文
歴史として我々が学ぶのは、実は行政機関の変遷の歴史だった。前史時代から大和政権、朝廷、幕府、近代政権まで、歴史として学んできたことの多くは、時の権力をあまねく全国に行き渡らせるための制度であった。その権力を発揮するために作られたのが序列で、それは現代も存在するし、逆に存在しないと国家としての体裁も保てない社会となる。一方、“格差”と呼ばれているものは、権力者によって、その序列をできる限り流動化させないために作られた側面もあるのではないか。この書にあるように、“格差”は前時代の方がはるかに大きかっただろうし、それを乗り越えるすべは全くなかったというのが実情だろう。とはいいながら、本人の努力では絶対に超えられない格差がある。特に“経済格差”は常に拡大する方向に進むのが自然な流れだとするなら、可能な限りそれを解消する方向に舵を切っていくのが、行政の仕事だろう。 (8/31)

(020/130)
小説 君の名は」新海誠
この夏話題になったアニメーションのノベライズ本。監督が描いた小説なので、おそらく映画のストーリーに忠実に描かれているのかと思うのだが、どうなのだろうか?その昔楽しみに見ていたNHKの少年ドラマシリーズ(タイムトラベラー(いわゆる“時をかける少女”ですね)、ねらわれた学園など)と同じ匂いのする作品。なんかあの懐かしさがぶり返してくような作品。(8/31)

2016年8月2日火曜日

2016年7月

7月は、結構読む時間が取れたようで、最終的に22冊となり、そのうち小説が12冊で、それ以外は10冊という結果になりました。

どこかでも書いたのですが、この月は内容的にも充実しており、お薦めしたい本がたくさんあります。

ただ、小説はあまり最近の本を読んでいないので、お薦めできるのが少ないのですが、まぁ話題性というところでは来年の大河ドラマの主人公を取り上げた“剣と紅”がお薦めでしょうか。作者にとっては、初めての歴史小説ですが、誰も知らないような人物にスポットを当てたところが、高く評価できます。長いですが、山場も結構あって、飽きずに読める作品かと思います。

そのほか、外れの多いこのミス大賞出身作家の中では珍しい当たり作家の中山七里さんの“どこかでベートーベン”も期待を裏切りませんでした。いつもながら音楽の描写という難易度の高い表現に果敢に挑んでいます。

続いて小説以外の分野ですが、これは結構粒ぞろいです。

まずは脱北した若い女性が書いた“生きるための選択”。著者自身は北朝鮮ではかなり裕福な生活をしていたようであるが、あるとき足下をすくわれ、貧困生活に落ち込んだことから、自由な世界へ脱出するまでの数年間を描いた物である。圧巻の内容で、著者の“生きるための力”には圧倒される。

次に、ファイスブックのCOOが書いた“LEAN IN”もお薦め。男性中心の社会の中で突き進んでいく著者の奮闘ぶりが描かれている。今働いている或いはこれから社会に出る女性はもちろん、ザッカーバーグが、本の帯に書いているように、世の中の男性にこそ読んでほしい一冊。お薦めです。

もう一冊いきますと、ベストセラーにもなっている“学力の経済学”もお薦めです。すべてを“経済成長”という物差しで測ることには異を唱えたいと思うが、それ以外の基準を指し示せないのも事実である。税金を使って施策を進める限り、その施策を執行する側には、常に説明責任を果たす必要がある。我々のような仕事をしている身においては、忘れてはいけないことである。

番外では、プラトンの“国家”は別格でおもしろかった。プラトン対話編の最高峰とも言われているが、期待を裏切らない内容でありました。

さぁ、8月はどんな傾向になりますやら。自分でも見当がつきません。


(001/088)
ユートピア」湊かなえ
“いやミス”の名手である著者であるが、この作品ではミステリ色は薄く、主人公である三名の女性の嫉妬やエゴがとてもイヤらしく描かれている。私などは、そんなに?と思うくらい極端に描かれているなぁと思うのだが、どうなんだろう。(7/2)

(002/089)
千里眼岬美由紀の新シリーズの一作なのだが、今作ではいつものジェット戦闘機やアパッチを乗りこなす姿は出てこず、ランボルギーニでのカーチェイスが何度か出てくるくらい。時間つぶしに楽しんでいます。(7/3)

(003/090)
ブッダの旅」丸山勇
ブッダが誕生してから最後入滅するまでの旅路をたどった新書版写真集。残念ながら、新書版と言うことで、写真に迫力がなく、キャプションや本文の記述が、それほどこなれていなくて、若干不満が残る。以前読んだ、同シリーズの“メッカ”がとても良かったので(もちろん別の方が書かれたものですが)、期待が高すぎたのかもしれませんが。(7/3)

(004/091)
最近はやりのライトミステリの大家である著者の代表作。かなり以前の作品なのだが、先日とある方が勧めておられたのを思い出して、つい買ってしまった。とはいえ、新刊ではなかなか手に入りづらいので、古書店で買ったものですが。主人公は、超“外弁慶”のお嬢様作家と編集者(これが双子の弟で、兄は警視庁の刑事)のコンビのキャラが立っている上に、ミステリとしてもちゃんと成立している。彼の著書はどれも結構おもしろい。(7/5)

(004/092)
設定がぶっ飛んでいる。警察庁では、研究によって“霊”の存在を発見し、その霊が巨大なパワーを秘めていた場合、人に危害を加えることも可能であることを突き止めた。警察庁では、過去の迷宮入り事件を洗い出したところ、そのうちの多くは、霊が起こした犯罪であった。そこで、霊による犯罪を取り締まるため、実験的にもうけられたのが、静岡県警捜査五課。霊が犯人なら何でもありやろと思うのだが、そこはちゃんと正当ミステリの手順も踏んでいる。そんな連作短編集です。(7/9)

(005/093)
世襲格差社会」橘木俊詔
世襲の職業と言われて最初に頭に浮かぶのは何でしょうか。この本では、親が子に嗣がせたいと思う職業、思わない職業などについて、データを踏まえながら、その傾向を考察しています。極端な例として、医者、政治家、農業・小売業者などが取り上げられている。今、全国の数多の中小事業者が後継者難に陥っている。その原因はいろいろあって、一概には言えないのだろうが、子ではない他人に事業継承をすることへのアレルギーもあるように思える。ミスマッチもあるのだろうとは思うが、限りある資源を上手く活用して、格差が固定・拡大しない社会を造っていきたい。(7/9)

(006/094)
覆面作家の愛の歌」北村薫
シリーズの2作目に当たる。今作品集では、軽いタッチがやや影を潜め、比較的ミステリ色が強い内容になっている。主人公の豹変ぶりが大きな魅力の一つとなっているのだが、今作ではその二つのキャラが少しずつ近くなってきたように思うのだが気のせいか。(7/9)

(007/095)
出版自体は3~4年前で、誰に勧められて買ったのかは覚えていないのだが、とてもおもしろく、考えさせられる内容である。著者は、フェイスブック社のCOOとして活躍し、各ビジネス誌ランキングでも上位に名を連ねる常連でもある。そんな著者が、世界中の女性に向けて、共に進もうと呼びかけるために書かれたものであるが、むしろ我々男性こそが読むべき内容となっている。女性が社会に進出できるようになって、まだ百年にも達していない。“まだ”というべきか“もう”と言うべきなのか。女性が普通に活躍しようと思っても、ある時期に、いや至る所に、見えない“壁”が立ちはだかる。世の男達が造ったものもあれば、女性自身が造ったものも存在する。そんな中で、“自分自身”がつくったものがあるとするならば、それを打破しようと呼びかけている、そんな内容の本だと私は読みました。娘達にも是非読ませたいと痛切に思った一冊です。(7/11)

(008/096)
『学力』の経済学」中室牧子
最近もベストセラーとして書店に平積みされているところから、気になって購入した物で、これまた部屋に積読状態であったのをようやく読むことができた。教育経済学というのは耳慣れない言葉で、教育の経済的効果を扱うことから、一般の教育者には忌避感が強い言葉だと書かれている。確かに、教育の効果として、経済成長をその評価基準に据える考え方には、簡単に頷けないところであるが、その視点が全くないというのも如何なものかと思う。特に、教育の悪しき平等主義が災いし、最も重要な教育施策を検討するための材料すら探せないというのはナンセンスである。本来なら、あらゆる科学的な検証を加え、国民が合意できる求めるべき成果指標を定めた上で、長期的な施策というのは立てられるべきではないか。我々行政に携わる者にとっては、非常に有用な一冊である。(7/16)

(009/097)
高校入試」湊かなえ
彼女の本は今月2冊目。高校の入学試験を巡り、試験当時に起こる事件を時系列で追いかける展開。元々は著者がテレビドラマの脚本として書いた物を改めて小説として書き直した物だそうで、脚本とは違う結末に描かれているらしい。小説では、いわゆる“ト書き”部分が全くなく、すべて登場人物のモノローグで描かれるというあまり見たことのない手法で、最初のうちは次々に語り手が変わるので、ストーリーを追いかけるのが難しかったが、途中で慣れてきた。ただミステリとしては、動機の点など若干???と思うところもあり、絶賛はし難い。(7/17)

(010/098)
教場2」長岡弘樹
ベストセラーになった前作を受け継ぐ続編。舞台は警察学校。鋭い観察力を持つ教官が主人公で、教え子である警察官の卵達が引き起こす小さな事件の謎を解く。(7/17)

(011/099)
生きるための選択」パク・ヨンミ
著者は北朝鮮に生まれ、命からがら脱北を図り、中国・モンゴル経由で韓国に逃げてきた少女の実体験記。北朝鮮国内での朝鮮労働党の圧政、監視社会が淡々と描かれている。また、この手記を読む限りにおいては、当時の国民達も情報遮断の状態に置かれていたためか、党のプロパガンタをすべて信じ込まされていたようである。そんな中で脱北当時わずか13歳であった著者が、2年間かけてようやく自由の国にたどり着き、そのときには朝鮮語以外話せず、小学校低学年並みの学力状態から、大学進学を果たし、英語を巧みに操れるようになるまでの努力には脱帽する。本書に出てくるアイルランドでのプレゼンテーションはYouTubeでも見ることができる。ただ、すべてにおいて信用できないあの国のことであるから、どこまで真実なのか、と思ってしまう私って心が濁っているなぁ。(7/18)

(012/100)
プランナーとして名高い著者のNHKでの番組を基にしたエッセイ。企画を成功させるには、何よりも“自分が楽しめる企画であること”が大事で、次に“人を喜ばせる企画であること”特に“特定の誰かを念頭に置いた企画であること”が秘訣である。彼は京都の有名料亭の再建に携わっているとのことで、実のところ、それまで彼のことは全く知らなかった。かの“カノッサの屈辱”“料理の鉄人”の制作に携わっていたとは知らなかった。(7/18)

(013/101)
国家 (上)(下)」プラトン
読み始めからおよそ50日で読了。朝の通勤電車の中だけで読んでいたため、結構長くかかってしまったが、気持ちとしてはそれほど長くかかったという感じではない。理想の国家のあり方について、ソクラテスが対話の中で明らかにしていくという体で話は進む。内容的には、それこそあらゆる人があらゆるところで語られているので、特に触れません。そこで、素人なりの純粋な感想を少し。国家が堕落していくパターンとして、最悪の形が“潜主独裁”とされているのですが、ここで語られている内容は、第二次世界大戦前ドイツでのナチスによる独裁制を彷彿させます。それから、理想の政治体制として、哲人による政治をあげている一方で、“詩人”については徹底的にこき下ろしています。何か個人的に含むところがあったんだろうかと妄想がふくらむ。(7/21)

(014/102)
江戸の和菓子屋を舞台にした人情物。主人公は和菓子屋を営む兄弟で、父の店を叔父に乗っ取られ、その後かつての職人の店に転がり込み、兄が和菓子職人、弟が店を切り盛りしながら父の味を伝えていく。いろいろとお嫌がらせを受けながらも、兄弟力を合わせて何とか窮地を切り抜けていく。乗っ取った叔父の娘と弟の恋バナもあり、うまく読ませるお話である。和菓子の描写が丁寧で、思わず食べたくなってしまう。(7/21)

(015/103)
三人目の幽霊」大倉崇裕
主人公は、落語専門の季刊誌の編集部に配属された新人編集者。一作だけは、かなり事件性の高いストーリーになっているが、多くは寄席を舞台に起きる日常の不思議を、編集長の洞察力で解き明かしていく物語。最近注目している作家のデビュー短編集。最近名をあげた倒叙ミステリではなく、通常の方式で物語は進む。期待が大きかったので、若干不満。まぁ、デビュー作だから仕方ないかな。(7/21)

(016/104)
人はなぜ戦争をするのか」アルバート・アインシュタイン、ジグムント・フロイト
最近改めて文庫版で出版された物だが、原典は1932年に、アインシュタインが国際連盟からの“今一番話したい相手に、話したいテーマ”で手紙を書くという依頼に応え、書かれた物で、両者の間で交わされた書簡の体を取っている。人類は、本能的に戦うことが想定されており、それを意志の力で抑え込まなければならない。戦争は国家のエゴがぶつかり合って起こるものであり、これを避けるには、国家がその持てる権力の一部を放棄し、それを一元的に統括する世界的な組織が必要である。要は国際連盟の必要性を説いた物となっている。しかしながら、結果的に国際連盟は、アメリカなどの裏切りにより、その崇高な理念を発揮することができず、終わってしまったのは衆知のとおり。(7/26)

(017/105)
大前研一が、今ビジネスマンが考えておかなければいけない論点について、雑誌に連載したコラムをまとめた物。相変わらず、舌鋒鋭く切りまくっており、鼻持ちならない論調もいつものとおり。書きっぷりは気に入らないけど、言ってることは論理的でわかりやすく、違った視点を提供してくれるところはありがたい。いつもながら嫌いやけど読むとおもしろい典型的な作。(7/27)

(018/106)
手塚治虫が死の間際まで書きためていたコラムを集めた物。彼自身が漫画家を志したきっかけや、戦争中の暮らしぶりなどを振り返って書いている。いつ死ぬか解らない極限の状況を生き延びた先に向かえた社会は、彼に目にどう映っていたのだろうか。アトムが生まれた21世紀は彼が期待した世界に近づいているのだろうか。そして、この先の未来、地球はどこへ向かうのか。(7/27)

(019/
若竹七海の“葉崎市シリーズ”の一冊。軽いタッチで描かれたコージーミステリの傑作の一つだと思う。最後の最後まで気が抜けない。彼女の本は、とてもおもしろくて見つける度に、借りたり買ったりしているのだが、いかんせん最近は新刊があまりでないので寂しい。特に“葉村晶シリーズ”が読みたい。(7/29)

(020/108)
主人公は、家康天下取りに功績のあった徳川四天王の一人である井伊直政の養母である井伊直虎(女性!!)、来年のNHK大河ドラマの主人公でもある。私の記憶では著者にとっては、初の歴史小説となるはず。その主人公に、こんなマイナーな人物を持ってくるところは心憎い。徳川幕府では、最後の大老となる井伊直弼を輩出するなど、歴代要職を務めた井伊家であるが、徳川家に仕える前は、今川氏や武田氏に挟まれ、小領主の悲哀を一身に受け、廃絶の危機もあったところを、この主人公の機知でそれを乗り越え、その繁栄の基礎を築いた。どこまでが史実かは解らないが、なかなかの傑物であったことは間違いない。(7/30)

(021/109)
“外れ”が多い“このミス大賞”出身作家の中では、数少ない“当たり”の作家の一人だと評価している。時々スプラッタ小説の様な、おどろおどろしい物もあるのだが、この岬洋介シリーズは、謎解き要素の強い本格ミステリであり、作者の本流ともいえるのではないか。本作は、高校生時代の岬洋介が手がけた初めての事件という設定になっており、ピアノの天才、スーパーマンとして描かれている。ストリーテラーの正体も、フ~ンなるほど、というオチになっている。(7/31)

(022/110)
神様ゲーム」麻耶雄嵩
結構前に書かれた物なのだが、最近続編が書かれたことで、にわかに注目を浴びており、ついつい引っかかって勝ってしまった。内容的には一風変わったミステリで、小学生である主人公が、“神さま”の力を借りて事件の謎に気づいてしまう。ミステリとして、こういう設定はありかなしか。結構すれすれかなと思うのだが、あちこちのコラムでは高く評価されている。最近出たという続編の内容が良いのかもしれない。(7/31)