2017年9月2日土曜日

2017年8月

8月はちょいと少なめ、計14冊で、小説とその他が7冊ずつという結果でした。
暑さのせいか、休日もあまり本を読む気になれなかったと言うこともあるかと思います。

そんな中でのお薦めの1冊ですが、小説では昨年のベストセラーの1冊でもあった“桜風堂ものがたり”がとてもおもしろかったです。本文でも書いていますが、“悪人”が出てこない小説で、どの登場人物に心を重ねても安心して読むことができます。また、実際に書店で働く人たちの様子がとても巧く描かれていて、全国の書店員さんに愛されたと言うこともよく解ります。心温まりたい方にはお薦めです。

それ以外の分野では、アイドル本なども読んでしまいましたが、講談社のブルーバックスを3冊集中して読みました。昔からこのシリーズが好きで、時折取り憑かれたように集中して読みたくなることがあります。今回はたまたまその周期に当たったみたいです。いずれもとてもおもしろかったですが、特に地球の歴史に関する2冊は秀逸でした。誰も見たことのない過去の歴史が、こういった地道な研究で少しずつその一端が垣間見えてくることに、大いなるロマンを感じます。自然科学が苦手な私にもとてもわかりやすく書かれていて、お薦めです。

8月は、何故かいろんな人から、いろんな本を教えられ、薦められることの多い月でした。
こうやって、自分の読書記録を公開することは、とても恥ずかしいことなのですが、人から薦められる本というのは、自分では絶対手を伸ばさないだろうなと言うような本もあって、とても興味深い物があります。今年の残りは、そんな本も読んでいきたいと思っています。

001/103
朝日新聞紙上でのコラムをまとめたもの。書かれている中身は興味深く面白いものもあるのだが、字数に限りがあるためか、数多く引用されている他の書籍や記事などの内容までは書かれておらず、非常にストレスがたまる構成になっている。ちょっと読みづらい。(8/4)

002/104
あまりに外れが多くて、絶対に手を出してはいけないと思っているこのミステリがすごい大賞の受賞作。そんな先入観はいけないと、久しぶりに読んでみたのだが、残念ながら私には合わなかった。末期ガンの治療を巡るミステリで、専門用語も多数出てきて、それだけでも詰まりがちなところ、文章自体のリズムも私には合わない。どうもこの賞とは相性が悪いようだ。(8/6)

003/105
刺激的なタイトルに惹かれ図書館で予約。このタイトルは、当初計画されたような規模の平安京は、そもそも必要なかったのではないかということを問うている。794年に造営された平安京であるが、結局のところこの造営計画は完成を見ることなく終わっている。その理由を著者は大きく二つあげている。まずは実用的ではなかったということ。実際この都は、大内裏から羅城門へ向かう朱雀大路を中心に、左京右京に分かれているが、この大路が幅80m以上もあって、なおかつこの大路に面して門を造ることはできないとされていて、ほぼ人や物が流れる道路としては設計されていない。もう一つは大きすぎということ。現に、都城の辺境地域になると、ほぼ人が住まない土地であるとともに、実際何度も災害で消失した後も、同規模で再建されることがなかったことが判っている。だが、この巨大なる都市計画のおかげで今の京都は、存在できているわけで、その建設趣旨は最後まで全うできなかったとしても、その後何度かの政権交代を重ねつつできあがった今の京都の基礎は平安京にあるといえるのではないでしょうか。(8/16)

004/106
桜風堂ものがたり」村山早紀 
昨年の本屋大賞にノミネートされ、各書店に山積みされているのを見て、とても気になっていた本でした。今は大変厳しくなったリアル書店の店員さんが主人公の物語です。いろんな書評を読んでいると心暖まる”“泣けるといったフレーズが並んでいるのですが、私が本当にいいなぁと思ったのは、作中に一人の悪人も出てこないことです。唯一出てくるのは、不特定多数の大衆という悪人達で、匿名性の殻に隠れて、一人の書店員の人生を狂わせます。本のあとがきにも書かれているとおり、どうやらこの物語は、長い物語の序章のようで、今後シリーズ化もされるようです。ちょっと彼女の本が楽しみになってきました。(8/18)

005/107
よるのばけもの」住野よる
悪意に充ち満ちた中学生の物語。とある同級生をいじめることで、とりあえずの均衡を保っているクラスでボロを出さないように振る舞う少年が主人公。周りの空気を読みすぎて、心の中に大きなを抱えすぎたせいか、深夜になるとその姿形を変え、ばけものと化してしまう。その主人公が、本当の気持ちを吐露したことによって、ばけものは姿を現さなくなる。(8/19)

006/108
火天風神」若竹七海
猛烈な勢力を持った台風が直撃する湘南のリゾートマンションを舞台に起きるパニックミステリ。極限の状況に置かれた登場人物達は、心の奥底に潜む悪意を剥き出しにし、お互いが疑心暗鬼になる中で、恐怖の一夜が明ける。彼女の小説は好きなのだが、これでもかというくらい人の悪意が描かれると、ちょっとやり過ぎじゃない?と思ってしまう。(8/20)

007/109
すべての理由」山本彩
アイドル本なのですが、ついつい興味があって読んでみました。華やかな世界で働く著者ですが、現在の状況からは考えられない挫折の時期も経験しているそうです。この本を読む限り、相当にまじめなタイプのようで、そんな人にこんな仕事が務まるんかいなと心配になってしまう。(8/20)

008/110
地球の歴史をたどる旅はとても興味深い。今私たちの地球は温室効果ガスの影響で、徐々に温暖化していると認識している。しかしながら、地球上に残された様々な痕跡を見ると、気が遠くなるほど長い地球の歴の中では、決して異常に暖かい状況ではないことが判っている。残念ながら、過去の気候の歴史が判ったところで、今後の地球環境の行方が明らかになるわけではない。でも、私たちには想像もできない方法で、過去の痕跡を探す作業は、とても面白い。(8/24)

009/111
秋山善吉工務店」中山七里
彼にはとても珍しいタイプの小説。突然の火災で父を亡くし、その父の実家に身を寄せた母子が、最初は疎ましく思っていた祖父秋山善吉に心を開いていく物語。そこに火災の原因を探る刑事が絡んで、ミステリの要素も兼ね備えるとても面白い物語。一章ごとに主人公が替わり、主人公の真っ当な生き方に惹かれていく様が気持ちよい。ミステリとしての完成度はそれほど高いわけではないが、下町人情物語としては、いい感じの小説である。(8/25)

010/112
シリーズ第二弾。あまり物事を深く考えたくて、気分転換に読みたい本が欲しいときにお薦めします。それくらいの本です。私は休日のお出かけのお供。バッグに忍ばせて、列車に乗りました。(8/26)

011/113
ヒポクラテスの憂鬱」中山七里
これまたシリーズ第二弾。大学の法医学研究室が舞台。変死事件を扱う法医学者であるが、予算の関係で、解剖に廻される変死遺体は、ほんの一部。この小説では、変人でありながら絶対的な知識と技術、経験で、隠された真実を白日の下にさらすカリスマ法医学者と彼の下で修行する新人、さらには埼玉県警の刑事が絡んで、いろいろな事件を解決していく。さらに今回からはラブロマンス(?)的要素もちらほらと。(8/28)

012/114
私たちが毎日口にするお茶について、その歴史、おいしさの秘密、さらにはおいしく飲むための淹れ方までを詳しく解説する本。今回は図書館で借りて読んでしまいましたが、本来は手元に置いて、折に触れ参照する方が相応しいような一冊です。今の我が家では、自宅ではティーパックで飲むことが多くて、昔のように急須で淹れるということはほぼ無くなりました。また、昔はわざわざ買ってまで飲む代物でもありませんでしたが、最近外出先で水分補給する際は、緑茶かミネラルウォーターというのが定番になりました。本当はここに書かれているように、丁寧に淹れたお茶を楽しみたいものです。(8/29)

013/115
とても面白い本です。我々が暮らす地球の表面を覆う海、すべての生命の源と言われていますが、その海がどうやってできたのか、原子のはどのようなものだったのか、そして何よりもはどこから来たのか。46億年に及ぶ地球の歴史を一年間のカレンダーに置き換え、現在のような海になるまでがわかりやすく書かれています。それで言うと、地球に海が誕生したのは、2月9日頃になるようです。すべては、太陽と地球の絶妙な距離がすべての源だったんですね。これは人と人の関係にも言えるかも。(8/31)

014/116
誰がアパレルを殺すのか」杉原淳一、染原睦美

日本経済新聞系の雑誌記者が書いたアパレル業界のレポート。今の仕事は和装などの伝統的な工芸品産業を振興することが中心になっており、これもある種のアパレル産業であろうと、とある方が薦めておられたので買ってみました。かつて、作れば売れると言われたファッション業界が、ニーズを無視した商品作りや独特の商取引、ある種構造的な業界特有の問題点をないがしろにしてきたことから、一気に衰退が始まったようです。また、それが一業種にとどまらず、百貨店や巨大SCなど流通業者の主力商品であったことから、連鎖的に流通業界の衰退へと繋がっていきます。実はこれって、きものがたどってきた道と極めて似ていると思ってしまいます。だからといって将来への答えがあるわけではないのですが、考えるヒントとなる一冊でした。(8/31)