2022年11月7日月曜日

2022年10月

10月は計20冊で、小説が8冊、それ以外が12冊という結果でした。

読書の秋本格突入で、順調に読めた月でした。

周期的にこういうときがやってくるんですが、今は小説以外の本の方に触手が伸びがちで、部屋に積んである本もそんな本ばかりです。なんか面白い小説があれば教えてください。

ということで、お薦めですが、小説では初めて読んだ逸木さんの“風を彩る怪物”がダントツで面白かったです。本文でも書きましたが、本来はミステリ専門の作家さんが、音を言葉で表現するというとても難しい作業に挑んでいます。面白かったです。

もう一冊は、有川ひろさんの猫本も面白かったです。独特の筆致で綴られた心温まるお話が揃った短編集です。お薦めします。

一方で小説以外では、特にこれといった本に巡り会えませんでした。

半藤さんと宮部さんの昭和10大事件は面白かったですが、ちょっとボリューム的に物足りなさを感じました。もっと奔放に語り合ってほしかったなぁ。

後は、安倍政権の闇を描いた本を複数読みましたが、これもかなり不満足。相当に忖度された内容になっているように感じられました。特に、報道関係者が書いたものであるなら、もっとファクトに切り込んで欲しかったなと思います。

11月に入り、京都市内の観光客は爆発的に増えてきています。週末の散歩も京都市内には出にくくなります。とはいえ自宅で読書というのも芸がないので、できれば本を片手にちょっと遠出ができればいいなと思っています。そんな時のお供に最適の本ってどんな本でしょうね、皆様からのご推薦があれば是非ご教示ください。

 

001/152

よみがえる古代の港 古地形を復元する」石村智

まず冒頭に京都府北部丹後地方の記述があって、たまらず借りてきました。古代の港というのは、須く遠浅の入江であり、現在の港湾とは全く様相が違っていた。当時の京都北部は、いわゆる表日本で、大陸との重要な門戸でした。私の母の実家がある舞鶴湾の浦入遺跡の辺りもその条件を満たしているとは思うのですが、いかんせん後背地が山なので、港としての機能は果たせていなかったでしょう。現地形をみながら古代の景色を想像するのは楽しいですね。(10/1)

 

002/153

半次捕物 疑惑」佐藤雅美

最近お気に入りの作家さんのかなり初期の作品です。捕物帖と銘打たれていますが、謎解きの要素は少なく、さらにかなりトーンも暗目です。シリーズ物の途中を読んでしまったので、ちょっと入りづらかったこともありますが、このシリーズはちょっと合わないみたいです。(10/2)

 

003/154

そして、メディアは日本を戦争に導いた」保阪正康、半藤一利

昭和史の大家である半藤さんと保阪さんが戦前の歴史を振り返って語り合ったもの。明治維新からの70年で、社会が徐々に泥沼へ落ち込んでしまう様子が描かれています。そもそも明治政府そのものがテロが成功してしまって生まれた政府であり、その基本的な体質は維持されたままだったのではないかと考えています。戦争に突っ走ったのは、決してマスコミだけのせいではなく国民がそれを求めてしまったということがあるとも思っています。結果的に、国民すべてが責任を負うこともなく戦後の復興を享受し、戦争犯罪人の多くが恩赦で社会復帰し、戦後の社会のリーダーにのし上がるという笑えない事態を迎えました。戦後70年を過ぎ、今の状況があの当時に似てきたという指摘もあります。「賢者は歴史に学ぶ。」(10/2)

 

004/155

サル化する社会」内田樹

現代社会が日々劣化していくことを実感しています。彼の書く文章には納得させられることばかりで、どれを読んでも面白い。この本も、さまざまな媒体に発表されたものをまとめたものだが、出版されたのがコロナ禍の直前。その後のありようを見てどのように考察されているのか、また機会が作って読みたいと思います。(10/5)

 

005/156

口は禍いの門 町医北村宗哲」佐藤雅美

シリーズものの3作目。最初の作品は面白かったけど、徐々にその感動が薄れてくるなぁ。期待が大きすぎるのだろうか。とりあえず後一冊なので、ちゃんと読み切ろう。(10/9)

 

006/157

日本の風景を歩く 丹波・丹後」水上勉

お隣の福井県出身の作者による丹後地方への旅の記録です。まだ道路が整備されていなかった頃の宮津から伊根、経ヶ岬への舟航の風景はなかなかに興味深いものがあります。(10/9)

 

007/158

ヴェサリウスの柩」麻見和史

私の今のお気に入り作家の鮎川哲也賞受賞作にしてデビュー作です。大学の法医学教室を舞台にした本格推理物です。今の作者は警察ものを得意とする作家さんというイメージなんですが、この作品では警察はほとんど活躍せず、一研究員が謎を解き犯人を追い詰めるというかなり無理のある設定になっています。最近のミステリでこれをやると、リアリリティがないと言われてしまうんでしょうね。(10/10)

 

008/159

街道をゆく16 叡山の諸道」司馬遼太郎

何となくこのシリーズを読み返してみようと思い手に取りました。この巻は京都、滋賀の両側から比叡山を目指す道をたどると共に、宗祖最澄が比叡山を目指してたどった道についても書かれています。興味があちらこちらに飛んで、それがこのシリーズの醍醐味かと思います。(10/16)

 

009/160

安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」相澤冬樹

大阪のNHKで、森友事件を追いかけていた著者による事件のレポートです。彼は、一貫して、この事件は大阪府と財務省によって作られたもので、当時の総理大臣とその家族が絡んだことで、その実態が覆い隠されてしまったと考えているようです。出版されたのが2018年のことで、赤木さんのメモが注目される寸前でした。この本が、文庫化されるときにその後のことも書き加えられたようで、この単行本出版時には、若干生煮え感が残っています。そこは残念。(10/16)

 

010/161

新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義」安西洋之、中野香織

いわゆるラグジュアリー戦略に関する経営の本かと思っていたら、むしろ文化論の本でした。ラグジュアリーという言葉を端的に表す日本語というものが存在せず、私たちには、その感覚を実感することはかなり難しいように思えます。つまり、まことしやかに書かれたラグジュアリー戦略についての経営指南書は、ほぼほぼ的外れなんだろうと知れました。なかなか難しい本でした。(10/17)

 

011/162

葬儀!」ジュリエット・カズ

世界各地の葬儀に関する風習を集めた物ですが、巻末の翻訳者あとがきでも触れてあるように、著者が自らの足で歩き、目で見たことだけを手がかりに書かれているので、必ずしも学術的に掘り下げられて物ではなく、一般的な物でもない。そういう意味では雑記に近いものでもありました。(10/19)

 

012/163

怒鳴られ駅員のメンタル非常ボタン 小さな事件は通常運転です」綿貫渉

タイトルからは、最近話題の駅員に対する暴力事件やモンスターカスタマーの話を集めたものかと思っていたんですが、鉄道YouTuberとして活躍している著者が、鉄道会社に就職してから辞めるまでの間の体験記で、特に大きな事件が起きるわけではありません。どちらかというと淡々とした日常が綴られています。私の父は昔の国鉄の職員でして、退職まで駅員として働いていたので、駅員さんの勤務体系などについては基礎知識があるつもりでしたが、最近は少し変わってきているんですね。それに何より省人化が進み、駅等でのサービスの質の低下が気になるところです。(10/20)

 

013/164

風を彩る怪物」逸木裕

オルガン製作者を主人公の一人に据えた“音楽小説”で、本屋大賞と直木賞をダブル受賞した恩田さんの“蜜蜂と遠雷”を思い出しながら読んでいました。オルガン製作というのは、楽器制作というより建築工事に近いということを聞いたことがあるのですが、改めてその特徴がよくわかりました。解説によると、この作者は、本来はミステリを専門に書かれているようで、こういった小説を書かれるのは珍しいようです。かなり面白い小説でした。人気の本で予約してから借りるまでに相当待ちましたが、十分にその価値がありました。(10/22)

 

014/165

女副署長」松嶋智左

著者は、元警察官で、全国初の女性白バイ隊員だったそうです。その経験をもとに女性警察官を主人公にした小説をいくつかものにされています。どこかの書評かなんかで作者のことを知り、とりあえずすぐに借りられる本を借りてきました。大型台風襲来に備え臨戦体制の警察署内でけ現職警察官が殺害されるという、かなり無理のある設定ですが、ここの登場人物の描写は詳細で、流石に元警察官と思わされるものでした。なかなか面白かったです。(10/23)

 

015/166

忘れられた日本憲法」畑中章宏

今からおよそ150年前、明治維新でそれまでの幕藩体制が崩壊し、初めて北海道から沖縄までを含む“国家”らしきものが出来上がりました。しかしながら、所詮テロ組織がたまたま作った物ですから、統治のための哲学も組織もないままにな走り出し、混乱の極みでもありました。その後明治22年にようやく大日本帝国憲法が公布されたのですが、その間に、官民問わずあらゆる層から憲法案が発表されました。この本は、そういった私製憲法にスポットを当てたものです。この本では、その内容というより、どんな人物がどのような思想で憲法を作ろうとしたのかということに重点を置いています。巻末の参考図書が充実していたので、その中から面白そうな資料を読んでいこうかと思っています。とても興味深い内容の本だったのですが、どうにも文章が私好みではなく、とても読みづらかったのが残念でした。(10/25)

 

016/167

みとりねこ」有川ひろ

全編ねこを主人公にした短編集。冒頭の二篇は、余命短い青年が愛猫の引き取り手を探す旅を描いた“旅猫レポート”の番外編。私自身は、動物を飼いたいとは思わない人なので、この本に出てくるような猫への接し方というのは想像がつきません。ただ、猫というのはとても神秘的な動物であるということは想像がつきます。あまり飼い主に媚びないし、ある種超然としているところが猫の魅力なんですかね、知らんけど。小説としては、とても面白かったです。(10/26)

 

017/168

昭和史の10大事件」半藤一利、宮部みゆき

昭和という時代をいくつかの大事件を通して回顧するという面白い対談集です。冒頭にそれぞれが思う10大事件を挙げ合うのですが、それぞれの個性が引き立つ選定で、それもなかなか興味深い。個々の事件については特に取り上げませんが、昭和元年(一週間しかなかった)生まれの女性がとても少ないこととその理由、安保闘争の虚実は特に面白かったです。対談の最後でも語られていますが、昭和の最後1989年は、世界史の中でも大転換があった年です。そういう意味では昭和というのは、とても特殊な時代だったのだなぁと改めて感嘆いたしました。(10/27)

 

018/169

拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」蓮池透

著者は、拉致被害者の御家族で、長く家族の会の事務局長をされてました。北朝鮮の国家的犯罪であった拉致の全貌が徐々に明らかになる頃、マスコミにも盛んに登場されていました。この本は、その当時のことを当事者の側から書き留められたものです。当時の外務省のや政治家お面々の様子が細かに綴られています。当時は感情的になってしまったことも時間を経て、当時を反省しながら客観的に述べられています。そもそもまともな外交戦略なんてない我が国のことですから、こんな複雑な問題を解決する能力は期待ができません。また、この本の中でも繰り返し語られているのですが、何を持って解決とするのかということに誰も答えを持っていないという実態にも気付かされます。また、解決しないことを願っているとしか思えない連中が存在することも。(10/29)

 

019/170

殺し屋、やってます。」石持浅海

たまたま図書館で見かけて借りてきましたが、初めて読む作家さんのミステリです。結構な数の作品を結構な数の作品を書かれているようですが、シリーズものをほとんど描かれていないというのは珍しいかなと思います(この作品は珍しく続編が出ていますが、、)。この作品の主人公は職業殺し屋、ターゲットの背景などには一切関心を持たず、プロとしての仕事に徹しているのですが、仕事を終えた後は別、時折その背景を推理することもあります。なかなか面白かったです。別の作品も読んでみます。(10/30)

 

020/171

五つの季節の探偵は」逸木裕

先日読んだ本が面白く、本来はミステリを書かれているということもあって、この本を読んでみました。主人公は一人の女性、高校生時代に友人から無理やり頼まれて探偵の真似事をたことで、探偵の面白さに目覚め、父親が経営する探偵事務所で探偵業を営むことになります。この本はそんな彼女が10年の間に遭遇した5つの事件を扱っています。成長の過程で、やや危険な方向に進みそうになりますが、最終話を読むと、探偵として立派に成長したようです。面白かったです。(10/30)