2014年3月8日土曜日

2014年2月

2月は、わずかに10冊。そのうち小説が3冊と近年まれに見る少なさ。これは、書物を厳選したと言うより、月の後半が忙しくて、通勤途上の毎日往復数十分しか本を読む時間がとれなかったためで、その割には頑張って読んだなという感じ。手軽で読みやすい新書が5冊あるのはそのためです。
この10冊の中では、万城目学さんの「とっぴんぱらりの風太郎」が秀逸。着想、キャラクター、ストーリー展開のどれをとっても素晴らしく、まもなく発表の本屋大賞の本命だと思います。
それ以外では、楽しみにしていた本がそれほどでもなかったりと、かなり消化不良感が残ったこの月でした。

001/015
死なないやつら」長沼毅
朝日新聞の広告で見つけて購入。最初は地球上の極限状態下で生きている動物を紹介し、後半で生物学のおもしろさ、果ては地球外生物の可能性などを初心者向けに解説する、わかりやすい書籍。動物たちへの“愛情”がひしひしと伝わってくる。(2/4)

002/016
第3の案~成功者の選択」スティーブン・R・コヴィー、ブレック・イングランド
7つの習慣を書いたコヴィー氏の著書。対立する二者が、それぞれの案に固執するのではなく、協力して第3の案を求めることで、全てのことがうまくいくと書かれている。様々な実例が紹介されている。政治的・社会的に大きな問題にも応用ができると書かれているが、正直言って、それを求め続ける努力は大切だが、さすがに難しそう。(2/6)

003/016
現役キャリア官僚によるリアル告発小説、という触れ込みで政官のもたれ合いの描写は非常に細かい。ひょっとするとこんなこともあるのかと思わせるくらいのレベルなのだが、それ以外の“ストーリーテリング”の技術から言うと、素人レベル。まるで全く違う二人の作家が書いているくらいのレベル差がある。それを内容のセンセーショナルさが補ってるのではあるが、逆にそれが故に全体を通して“リアリティ”に欠けるような印象を与えてしまっているのは残念。(2/9)

004/017
かつお節と日本人」宮内泰介、藤林泰
かつお節と“和食”との関わりについての記述を期待して買ったのだが、大きな見込み違いで、これは日本における“かつお節史”である。日本の伝統的食材である思っていたかつお節であるが、我々庶民の生活に入ってきたのはそれほど古いことではない。また、改めて気づいたことであるが、我がふるさとで“だし”といえば、圧倒的に“じゃこ”であり、かつお節ではなかった。それが今では、“だし調味料”の普及で、かつお節の消費量は右肩狩りで増え続けているらしい。おそらくそれに反比例するように、“だしじゃこ”の消費は減り続けているのではなかろうか。この本を読んで、ふとそんなことを考えてしまった。(2/11)

005/018
検事の死命」柚月裕子
彼女のこのシリーズは結構気に入っている。実は主人公の設定からして相当にリアリティに欠けているのだが、それを補ってあまりあるストーリー展開のうまさが感じられる。とはいえこの短編集、やや作品によってレベルにばらつきが感じられるのは気のせいか。次回作に期待したい。(2/11)

006/019
これは著者のブログをテーマにしたがってまとめた物らしいが、今作は少々テーマが難解でしっかりと内容が理解できなかった。ちょっと難しいよ、これは。(2/15)

007/020
日本考古学の大家なのであるが、いつからか日本の地域の考古学に光を当てた学者としてとても尊敬している。この本も、考古学、歴史学といえば、中央政権を中心に考えることが主流になっており、全国各地域における歴史にもっと注意を向けないと、本当の古代の姿が見えてこないことに警鐘を鳴らしている。地域の歴史、本当に面白い。(2/15)

008/021
どうにもやる気の見えないニートな忍者が、様々な経験を重ねる中で成長していくドラマ。主人公の風太郎は、読んでいてもイライラしてくるようなダメガキで、それはちがうやろと思わず突っ込みを入れたくなるが、最後の大阪城炎上のシーンは思わず手に汗握る迫力で、最期はわかっているものの、思わず何とかならないものかと身もだえしたくなり、ラストは脱力。本屋大賞の本命ではないでしょうか。(2/19)

009/022
テーマは貧困と言うより、遺伝子組み替え食物や食物安全保障に関するレポートとなっている。アメリカでのこの分野の変革のスピードは激しく、そのことによって、貧困層は生命の危機にさえさらされている。ただ、この分野に関しては、正確な検証がされていないと言うことも事実で、著者はその検証すら権力側に阻止されていると告発している。これから環太平洋間で貿易の自由化交渉が進められようとしているが、どうか我々の安全だけは守って欲しいものである。(2/21)

010/023

昨年亡くなった天野氏の遺作。彼の専門の広告を切り口に、世相の移り変わりを書き留めた物。彼の書く物はとてもわかりやすく、批評力に優れている。もう新しい物が読めないのはとても残念である。(2/23)