恥ずかしながら、最近始めて読みました。
兵庫県出身で京都大学の西田幾太郎に師事した京都学派を代表する哲学者です。
私が、学生の頃は大学入試に出る本として、必読の書であったにもかかわらず、購入したままでこれまで手が出ることなかったものを、ようやく読もうという気になったものです。
彼が存命の頃に、雑誌に寄稿した23章の文章は、一言で言って難解。なかなか素人にすべてを理解するのは難しいですが、そこに書かれているテーマは身近な事ばかりで、それぞれの考察の深さ、多様さには驚かされます。
ただ、中には比較的解りやすいたとえなどで書かれている部分もあって、ホッとするところもあります。
今回この本を読んで、彼自身について少し調べてみると、活躍した時代は非常に短く、戦中に思想犯として投獄され、戦後すぐに獄中死しています。それが48歳。かつて学校の教科書で読んだような人が、このように自分の今の年齢と近い年齢で生涯を終えたことを思うと、感慨無量です。
この間に、多数の研究書を世に出しています。
で、この人生論ノートですが、第2章は「幸福について」です。
この最後のほうに次のような文章が出てきます。
『幸福は人格である。人が外套を脱ぎすてるやうにいつでも気楽にほかの幸福は脱ぎすてることができる者が最も幸福な人である。しかし眞の幸福は、彼はこれを捨れてもて去らないし、捨て去ることもできない。彼の幸福は彼の生命と同じやうに彼自身と一つのものである。この幸福をもつて彼はあらゆる困難と闘ふのである。幸福を武器として闘ふ者のみが斃れてもなほ幸福である。』
どうです、しびれませんか!!
ほかにも、『人生は、フィクションである。だからどのやうな人でも一つだけは小説を書くことができる。』など、ほかの所でも良く目にする言葉も出てきます。
一日一章ずつ読んでいってもすぐに読み切れる、素敵な書物でした。
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