これまた、少し前の出版であるが、最近図書館で借りだして読んだものである。
毎日少しずつ読むつもりが、大変おもしろく、結構一気に読んでしまった。
著者は、伊藤忠商事を再生させた元代表取締役社長で、現在は経済財政諮問会議のメンバーでもある。
最近の読書傾向の一つとして、世の中の名経営者と言われる人たちの本を良く読んでいる。
日経新聞の私の履歴書が単行本化されている物が中心ですが、この本はそれとは違い、書き下ろしで書かれた物である。
ひとことで言うと、おもしろい。それに何よりも「自分はこれをやった!!」 という自慢話めいた物が出てこないところが心にすっと入ってくる所以であろう。
どうも、功成り名を遂げた方の自伝を読むと、苦労話は良いにしても、その後の自慢話と、それから始まる処世訓と言うパターンが多く、読んでいてもだんだん鼻についてくるということが非常に多い。
ところが、この本はそう言ったことがほとんど見られず、丹羽氏なりの思いや考え方が綴られており、好感が持てる。
経営者として就任してすぐに、「クリーン、オネスト、ビューティフル」という非常にわかりやすい言葉を標語として上げられた。
その上で、経営者にとって最も大事な素養は「コミュニケーション力」という。
如何に素晴らしい理念を持っていても、それが伝わらなければ、どうにもならないということだ。
それは、経営者が自らの言葉で、その組織の人たちに直接語りかけることが必要であるとも説いている。
実際、著者自身がそのようにもされていたようで、まさに有言実行の人であったようである。
最後に、丹羽氏というと、最近の経済財政諮問会議でのホワイトカラー・エグゼンプションに関する発言が新聞紙上を賑わせたことがある。
ところが、これも実際の趣旨とは全く違う形で報道されたもののようで、たまたまこの著書の中で、新聞報道などの二次情報は、しっかりと現地現場でその目で確かめることが必要、と書かれたこととと符合するようで、まさに納得と言うところ。
今は、この本も文庫本で手にはいるとか。絶対お得な一冊である。
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