令和7年の幕開けは小説が11冊、それ以外が3冊で計14冊となりました。
思ったより読めませんでしたね。特に年末年始の9連休は、ほとんど読めませんでした。
そんな中でのお薦めですが、初めて読んだ3人の作家さんの作品が良かったです。
まずは、赤井五郎さんの『サマータイムリバース』。SFものなのですが、ミステリとしてもしっかり成立していて面白かったです。お薦めなのですが、電子書籍のみで作品を書いておられるようで、なかなか読むのが大変ですが、なんとかならないか模索中です。
二人目が壁井ユカコさんの『不機嫌な青春』。こちらもSF要素を含む短編小説集だったのですが、とても優しい感じの物語が詰まっています。お薦めです。
三人目が南杏子さんの『サイレントブレス』。こちらは、現役のお医者さんが書かれた医療ものなのですが、難病から患者を救うスーパードクターではなく、終末期医療に従事する医師が主人公で、看取りの医療を真正面から描いた作品です。作者のキャリアを読んでさらに感銘を受けました。彼女が書かれた他の小説も何冊か借りてきたので、読むのが楽しみです。この三冊の中では最もお薦めです。
小説以外では、とても気になっていた『観光消滅』がお薦めです。オーバーツーリズムで迷惑をこうむっている京都市内で働く身にとっては、まさに自分事として考えさせられる問題です。本の中では、さらに暗澹となる未来についても書かれています。恐らく解決策はない。
今年は、新しい作家さんを探そうということで、上に挙げた3人の作家さんだけでなく、他にも3名の新しい作家さんお本を読みました。残念ながら、その方たちの作品は私にはあまり合わなかったので、ここでは紹介していませんが、今後もできるだけ新たな作家さんを開拓していきたいと思っています。
またお薦めの作家さんをお教えいただけたら幸いです。
001/001
「青い服の女 新・御宿かわせみ7」平岩弓枝
年の初めにはふさわしくない一冊です。とりあえずこれで全シリーズを読破しましたが、この新シリーズについては、書評などにほとんど取り上げられていないことの理由がよくわかりました。終わって良かったです。最後は苦痛でした。(1/2)
002/002
「生殖記」朝井リョウ
奇をてらったようなとんでもないタイトルの小説ですが、LGBTQを正面から取り上げた社会派小説でした。主人公の心情を、本人ではなく本人に付属する独立器官にしゃべらせるという初めての手法に驚きました。策士ですね。(1/7)
003/003
「サマータイムリバース」赤井五郎
初めて読んだ作家さんで、最初から電子書籍用に書かれたものとお見受けいたしました。ジャンルとしてはSFミステリで、SFの設定がミステリを解く鍵としてしっかり機能していて、破綻もありませんでした。面白かったので、他の本も探して読んでみようかなと思います。(1/8)
004/004
「医は仁術なり やぶ医師天元世直し帖帖」沖田正午
これも電子書籍で読みました。しかしながら、設定、展開、人物のどれをとってもかなり不満足。残念ながら他の作品を読もうとは思えませんでした。(1/10)
005/005
「共犯の畔」真保裕一
33年の時を超えて果たされる壮大な復讐劇。なのですが、やや深みに掛ける印象でした。彼にしては、珍しい作風でした。(1/13)
006/006
「不機嫌な青春」壁井ユカコ
これもSF的な要素を含む短編集でした。4編の小説が収録されているのですが、最後の『ハスキーボイスでまた呼んで』が抜群に良かったです。いわゆるお約束のパラドックスも、えいやっと飛び越えてしまい、無かったことにしてしまいます。なかなか痛快でした。ほかの3編も面白かったです。青少年向けの作品が多いようですが、他の作品も読んでみようと思います。(1/13)
007/007
「8050問題の深層 『限界家族』をどう救うか 」川北稔
8050問題というのを御存じですか?80代の老親が50代の子供が、自立できず共依存の関係に陥り、負のスパイラルに巻き込まれていくという問題で、過去に大きな悲劇を生んだこともあって大きな社会問題となっています。公的な支援からは漏れ落ちてしまうケースが多く、各支援機関の連携が大きな課題です。今は、二人の娘は独立した生計を営んでいますが、この先、何が起きるかわからないことであり、自分にも起こりうることとして読ませていただきました。(1/14)
008/008
「SNS暴力 なぜ人は匿名の刃をふるうのか」毎日新聞取材班
最近問題になることが多いSNSを使った言葉の暴力について、新聞社による取材を基に書かれた本です。取材のきっかけとなったのは、とあるテレビ番組をきっかけに誹謗中傷を寄せられた女子プロレスラーの自死。過去何度も問題になったにも関わらず、同様のことが繰り返されています。まさに言葉の暴力なのだが、加害者側にも同情すべき事情があると括られやすいことに違和感があります。いくら嫌なことや苦しいことがあったとしても、それを見ず知らずの他人にぶつけることにはどう考えても繋がらないのではないか。それが短絡的につながり易いとするなら、そこに何らかの病理性は考えられるが、だからと言って免責されるものではないと考えます。(1/15)
009/009
「成瀬は信じた道を行く」宮島未奈
昨年の本屋大賞を受賞した前作の続編です。滋賀県大津市に住む主人公の日常を描く物語ですが、前作の時代と被るものから大学生となり『びわこ観光大使』にも選ばれた主人公の活躍など痛快な内容です。前作同様とても面白いお薦めの本です。(1/18)
010/010
「運命の時計が回るとき ロンドン警視庁未解決殺人事件特別捜査班」ジェフリー・アーチャー
こちらもアーチャー氏の最新シリーズの一冊です。ロンドン警視庁のエースとして働く主人公が、チームの皆と一緒に悪を追い詰める小説です。途中でドキッとする場面も出てきますが、まずは穏当な終わり方でホッとしました。さて物語はどのように続いていくのかとても興味があります。(1/18)
011/011
「観光消滅 観光立国の実像と虚像」佐滝剛弘
コロナ禍で冷え込んだインバウンドがコロナ前の活況を取り戻し、昨年は史上最高、特に12月は単月で過去最高のインバウンドを記録したと報道されています。今年は関西万博効果でさらに増加することが見込まれています。そんな中で浮かれる政府に冷や水を浴びせるような内容の本書でした。私が常日頃から感じていたようなことがダイレクトに書かれていて、終始納得の一冊でした。このまま国の計画のようにインバウンドが増えていけば、間違いなく人的なキャパをオーバーしてしまい、その需要を賄えるだけの人材を確保することは不可能になってくるでしょう。破綻は近いと思います。(1/22)
012/012
「サイレント・ブレス 看取りのカルテ」南杏子
初めて読む作家さんで何気なく手に取ったのですが、滅茶苦茶良かったです。大ヒットでした。元々は雑誌の編集者で、海外での出産経験から一念発起して医学部へ学士入学して医師となり、現在も終末期医療の専門病院としてき勤務される傍ら小説も書いておられるという作家さんです。この作品はそのデビュー作に当たり、大学病院から在宅医療専門のクリニックに左遷された主人公が、終末期の医療に携わりながら命や看取りについて学んでいくという物語で、リアリティにあふれる掌編が収められています。シリーズ化できそうなのにしていないという潔さも良く、早速他の作品を複数借りてきたので、早く読みたいと思っています。(1/24)
013/013
「化け者心中」蝉谷めぐ実
初めての作家さんが続きます。これは時代物のミステリなのですが、本の帯にこれでもかと大家の作家さんの推薦文が書かれており、期待しながら読みました。しかしながら、とにかく読みにくい。時代考証に忠実に描こうという心意気は良いのですが、セリフ回しが理解しづらく、筋を追うのもやっとという感じで、読後はへとへとになりました。私には向いていませんでした。(1/25)
014/014
「スメラミシング」小川哲
こちらも初めて読んだ作家さんです。SF要素のある小説やコロナ禍での陰謀論を題材にした小説など6編からなる短編集です。これも帯に大絶賛の推薦文が書かれていたので、どんなもんかと読んでみましたが、おそらく他の本は読まないだろうと思います。最後の一編だけは、わかりやすい物語で好みでした。(1/26)
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