2月は小説が13冊、それ以外が2冊!!、計15冊という結果になりました。
小説は、新しい作家さんの本も読んだのですが、心に残ったのは定番の作家さんばかり。
お薦めを提示するのも難しいですが、一冊を選ぶとなると凪良さんの『星を編む』の一択でしょう。あえて言葉を重ねる必要もないくらい面白かったです。是非前作と併せてお読みください。
他には、先月初めて読んだ南杏子さんの二作品も期待どおりの面白さでした。現場経験もあるうえに、それが上手に分かりやすく言語化されていて、とても心に染み入ります。二冊ともお薦めです。
小説以外では、2冊しかありませんが、いずれもとても興味深い本でした。
はらずも、2冊とも『戦前』をテーマにした書籍ですが、近代国家として世界にデビューするときに、無理に背伸びをしようとしているさまは、今見ると滑稽でしかないのですが、当時の人達にとっては何よりも大切なことだったんでしょうね。でも結果的に、国民を絶望の淵に立たせることになった訳ですから、結果責任を負わなければならない人たちには、きっちり責任を取ってほしかったです。こそを曖昧にしたがために、またぞろ過去の亡霊が姿を現すことになる。人とは学ばない生き物なんですね。2冊ともお薦めです。
寒い日が続いた2月から3月になって、温かい日と寒い日が極端に現れています。
暖かくなると、”散歩”の虫が騒ぐのですが、散歩と読書を程よく楽しみながら、春を待ちたいと思います。
001/015
「いつか夜は明けても S&S探偵事務所」福田和代
これは、サイバー事件専門の探偵事務所を作った元警察官と元自衛官のコンビによる物語で、シリーズ三作目になります。前の二作も面白かったですが、今作も二人の主人公の活躍に心躍ります。若干荒唐無稽なところがあり、この分気をそがれるところはありますが、そもそもエンターテインメントですから、そこをあまり気にしてはいけないですね。(2/1)
002/016
「そして、メディアは日本を戦争に導いた」保阪正康、半藤一利
大好きな二人による対談形式の書籍です。明治維新から太平洋戦争終結までの約80年間のマスメディアについて語られています。本来権力の監視者であったはずのマスメディアが、硬軟織り交ぜた手練手管でどんどん骨抜きにされていきます。そして両氏が口を揃えて、現在の状況がその頃の状況に極めて似ているということ。過日タレントのタモリ氏が、今という時代を指して『新しい戦前』と絶妙のことばで表現しました。こんな危険な状況で子供たちにバトンを渡してはいけないと強く思いました。(2/1)
003/017
「エイレングラフ弁護士の事件簿」ローレンス・ブロック
ローレンス・ブロックがこんな物語を書いていたとは全く知りませんでした。主人公である弁護士と依頼人とのやり取りだけで終わる短編小説集なのですが、本人ですら罪を犯したと主張しているにもかかわらず、彼が依頼を受けると、他に犯人が現れて、依頼人は訴追されることなく無罪放免となるという摩訶不思議。そして高額な報酬。これほどダークな弁護士はいただろうか。不思議な物語でした。(2/9)
004/018
「北緯43度のコールドケース」伏尾美紀
数年前の江戸川乱歩賞受賞作にしてデビュー作。当然のことながら初めて手にした作家さんです。主人公は大学院で博士号まで取得しながら研究生活からリタイアし北海道警察に就職した女性刑事。5年前に発生したまま、容疑者が死亡し、未解決のままになっていた少女誘拐事件が、その少女の遺体が発見されたことから大きく動き出す。機密漏洩の疑いをかけられながら、主人公が事件を解決にむかって動き出す。なかなか面白かったです。続編が出ているので、続けて読みます。(2/11)
005/019
「賞金稼ぎ スリーサム!」川瀬七緒
乱歩賞受賞作家で、結構好きな作家さんです。これも新しいシリーズの一作目です。出自も見た目もばらばらの三人組が、とある放火事件の解決に挑んだところ、はからずも多額の賞金を得ることになり、チームとしてやっていくことになる。今後の作品を読むかどうかは思案中です。(2/11)
006/020
「スカーフェイス 警視庁特別捜査第三係・淵神律子」富樫倫太郎
多分これまで彼の作品は読んだことがなかったんではないかと思っています。いわゆる刑事ものをたくさん書かれています。本作の主人公は、事件解決のためなら手段を択ばないかなり破天荒な女性刑事で、過去に殺人犯と対峙したときに顔面を切り付けられたときの傷が残っているため、スカーファイスという二つ名を持っています。あまりに破天荒すぎて、若干引く。(2/14)
007/021
「葵の残葉」奥山景布子
こちらも初めて手にする作家さんです。時は幕末、尾張徳川藩の支藩に生まれながら、数奇な運命に翻弄された四兄弟を描きます。尾張徳川藩、会津松平藩、一橋家の当主となって幕末から明治を迎え、その兄弟の写真が現在に残されているようで、その写真を基に物語が展開されていきます。ちょっと物語が平板な感じがして、惜しかったなぁという感想でした。(2/16)
008/022
こちらも初めての作家さんのはずです。主人公が薬剤師ということで、ちょっと興味を持って読んでみました。薬剤師の仕事について全く知識がないと、少しわかりにくいかなと思う箇所もありましたが、解説もされていて物語としては読みやすくなっています。ただ、「名推理」と銘打つのは若干大げさかも。(2/18)
009/023
「星を編む」凪良ゆう
本屋大賞の受賞作となった『汝、星のごとく』の続編になります。続編と言いながら、時系列的には前日譚のような部分もあります。前の作品を思い出しながら読みましたが、前作の思わぬところに繋がっていたり(これを『伏線回収』というのでしょうか)と、なかなか面白かったです。さすがにお上手な作家さんです。前作を読まれた方には、絶対お薦めです。まだ読まれてない方は、必ず順番通りにお読みください。(2/20)
010/024
「地雷グリコ」青崎有吾
直木賞候補にもなり、今年の本屋大賞の候補作にもなっていますね。人気があって、なかなか順番が来ませんでしたが、ようやく借りることができました。頭脳推理ゲーム対決を繰り返すゲームなのですが、あまりにルールが複雑すぎて、ついていけない部分もありますが、無理に考えずに、エンタメとしてひたすら読むことに徹しました。(2/22)
011/025
「繭の季節が始まる」福田和代
感染症によるパンデミックを抑えるため経済社会活動を完全にストップし、屋外移動を禁止するという一か月間の「繭」政策をとる近未来の物語です。主人公は、そんな世界で数少ない例外として働く警察官。事件など起きるはずのない世界で起きる小さな事件を解決します。(2/24)
012/026
「ディア・ペイシェント」南杏子
先月読んで、すっかりはまってしまった作家さんの第二弾になります。主人公は、中核病院で働く女性医師。はからずも、モンスターペアレントに狙われることになり、心が徐々に破壊されていきます。命を守る医療現場の最前線で身を粉にして働く医師の苦悩が、当事者目線で描かれていて、思わず引き込まれます。とても良いです。(2/24)
013/027
「数学の女王」伏尾美紀
こちらも今月初めに読んだ乱歩賞受賞作品の続編にあたります。舞台は北海道警察。札幌市内の大学構内で起きた爆殺事件の犯人を追う物語で、主人公の女性刑事が捜査主任に抜擢されます。小さな手がかりから、真犯人にたどり着く過程が丁寧に描かれています。ただ、事件が大きい割に、動機があまりに矮小で、そのアンバランスにぐらりと来ます。(2/24)
014/028
「『戦前』の正体 愛国と神話の日本近現代史」辻田真佐憲
明治維新以降の戦前と戦後の長さがほぼ同じになり、『戦前』と呼ばれていた時代が見えにくくなってきています。そのため、保守派の陣営から歴史修正の動きが活発化してきています。この本では、長い日本の歴史の中でも、かなり特異な時代であった『戦前』にスポットを当て、その作為性をあらわにしています。かなり面白かったです。巻末の参考書籍一覧を参考に、いくつか読んでみようと思います。(2/26)
015/029
「いのちの停車場」南杏子
気に入った作家さんだったので、続けて借りました。東京の救急救命センターで働く主人公が、いわれのないクレームのせいで職を離れ、故郷である金沢で訪問診療の医師になるところから物語がスタートします。老々介護や最先端医療、看取りに安楽死と物語のテーマは多岐にわたります。この小説は、ちょうどコロナ禍の時期に、吉永小百合さんの主演で映画化もされたようで、いつか見てみようかなと思います。(2/28)
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