年が明けて2024年の最初の月は、小説が15冊、それ以外が3冊で、計18冊となりました。小説の割合が高いですが、まずは順調な立ち上がりというところでしょうか。
昨年からの続きで、『御宿かわせみシリーズ』は今年中に読み切りたいと思っていります。また、新たに『ローマ人の物語シリーズ』も読んでいこうかなと思っています。
そんなこんなで、今月のお薦めですが、
まずは、『極楽征夷大将軍』です。主人公がお気に入りという面もあるのですが、それを置いても、超人ではなくとても魅力的な人物に描かれており、好感が持てます。かなりの長編ですが、読む価値ありと思います。尊氏にはアレルギーをお持ちの方にもお薦めします。
次の『成瀬は天下を取りに行く』ですが、ややコミュニケーションに難がある主人公ですが、彼女を理解してくれる周りの仲間にも助けられ、生きにくさを感じずに暮らせているようです。そんな大切な親友とも大学進学を機に別れの時がやってきそうです。最近、続編も出たそうなので、是非とも読みたいと思います。
三つ目は『獣の奏者』シリーズです。まずはⅠ、Ⅱと読んでみましたが、おっさんの私が読んでもワクワクする物語で、続きを読むのが楽しみです。平和とは何か、争うとはどういうことか。とても考えさせられる物語でした。いったんはこれで前半部分が完結しましたが、おっつけ後編となるⅢを読もうと思っています。
最後は『余命10年』です。本文にも書きましたが、難病との闘病の末、38歳という若さで亡くなった著者が、その命の糸をつむぐように編んだ物語で、その心象風景や闘病の姿などの描写は大きく胸を打つものがあります。単に感動的というだけではない素晴らしい物語でした。
ほかにも小説には良いものがありましたが、小説以外の3冊は、ちょっとお薦めするのがためらわれる内容でした。最近は
小説に偏って、それ以外の本で面白い本に出会うことが本当に少なくなってきました。とても残念でたまりません。そういえば、最近は歴史、哲学、科学系の本を読んでいませんね。気を付けよう。
ということで、今年もダラダラと綴っていきますので、どうぞよろしくお願いします。
001/001
「極楽征夷大将軍」垣根涼介
2024年最初の一冊は、昨年の直木賞受賞作であるこの本を選びました。室町幕府をひらいた足利尊氏を主人公においた物語で、弟の足利直義、家宰の高師直が交互に語り部となって物語が進みます。戦前は天皇に弓引いた極悪人とされていた尊氏なので、歴史愛好家の中でもあまり人気がない武将ともいわれています。過去に大河ドラマの主人公になったのは一度だけだったと記憶しています。私の高校時代の日本史の先生が尊氏のファンでして、私も大学生の頃尊氏を主人公にした吉川英治さんの『私本太平記』を読んで、とても魅力的な人物だなと思っていました。とても長い小説で、一週間もかかってしまいましたが、内容的にはとても面白かったです。お薦めです。(1/7)
002/002
「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈
これも、昨年とても話題になった本で、読まれた方も多いかと思います。滋賀県大津市に住む女子高校生が主人公で、無くなってしまった西武大津店をはじめとする大津市内の地名や場所が次々に出てきます。何よりも主人公が魅力的で、もっと続きが読みたくなってしまいました。お薦めの一冊です。(1/7)
003/003
「コロナ漂流録」海堂尊
Covid-19に翻弄された3年間を戯画的に描いた三部作の最終巻です。専門家の意見を無視し、自らの保身だけにまい進する政治家や官僚たちの姿が描かれています。もちろんフィクションなので、事実がこのとおりだったとは思っていませんが、ひょっとしたらと思わせるような迷走ぶりでしたね。そして、これがほんとに残念なのですが、細かな経過や内部事情の記録は残されていないので、決してこの経験は次に生かされないことが約束されています。こういう政治を作ったあの方の責任はとても重いです。(1/8)
004/004
「狐の嫁入り 御宿かわせみ6」平岩弓枝
今年も読みます。表題作では珍しく殺人事件は起きません。ハートフルな人情劇に仕上がっています。(1/9)
005/005
「酸漿は殺しの口笛 御宿かわせみ7」平岩弓枝
『酸漿』って、何と読むかお分かりになりますか?私は全く知りませんでしたが、これで『ほおずき』と読むそうです。朱色の実がなるあれですね。この巻では、事件が起きない作品が多くなってきました。一方で、幕末の不穏な空気を映し出すようなテロ準備行為の気配が伺えたり、今後主人公たちの人生に大きくかかわってきそうな物騒な人たちも登場してきました。また面白くなってきました。(1/11)
006/006
「白萩屋敷の月 御宿かわせみ8」平岩弓枝
これで、全体のおよそ四分の一になりました。個々の話もにそれぞれ特徴があって、全体としてメリハリのついた流れになっています。この巻の表題作は、シリーズ全体で200作を超える作品のうち、読者投票で断トツのトップに推された作品だそうで、まさに秀逸と呼べる作品でした。(1/13)
007/007
「自民党 『一強』の実像」中北浩爾
初版は2017年、その後2021年に第4版として出版された物でした。内容としては、公表された資料、報道を基に書かれたもので、実像に迫ったものではありません。例えば、自民党の最大の特徴として派閥の存在について割かれた章があるのですが、財務基盤が弱体化し、閣僚任命などへの影響力も低下しているといった表面的なことが書かれているだけで、この時すでにシステムとして完成していたパーティー券の裏金化については、一切取材された形跡がありません。また、党を支援する外部団体として、よく知られている霊友会や神社本庁といった宗教団体に軽く触れられているだけで、執筆当時すでに政策の内容にまで大きな影響を及ぼしていた旧統一教会についても全く触れられていません。自民党の実像を知るには程遠い内容でした。これらのことは、いずれも党が積極的に隠ぺいしていたことばかりです。如何に私たちには見えていないか、よく理解できます。(1/15)
008/008
「獣の奏者 Ⅰ闘蛇編 」上野菜穂子
この方の小説をいつか読みたいと思っていたのですが、なかなか機会がなく今作が初めてとなります。すでに世界的にも評価されている作家さんなので、今さら申し上げることはありませんが、独特の世界観に思わず引き込まれ、ページをめくる手が止まらず、眠る前に少しだけ読もうという読み方には向いていません。めちゃくちゃ面白いです。一巻では母を失った主人公の少女が、自らの居場所を見つけるまでの数年間が描かれています。全体で4巻+外伝1巻という構成ですが、それぞれに書名がついているので、別の本としてカウントしています。(1/18)
009/009
「硝子の塔の殺人」知念実希人
知念さんが本格推理小説に挑んだ作品で、マニアの方にはたまらないのかもしれませんが、そうでない私にはとにかく読みづらい。綾辻さんの「館シリーズ」へのオマージュのような小説ですが、どこまで成功しているのか、私には判断できかねます。ICTが進んだ現代を舞台にした本格推理は難しいのではないかと思います。(1/20)
010/010
「獣の奏者 Ⅱ王獣編」上野菜穂子
第2巻ですが、内容的にはいったん完結しています。長さ的にもちょうどいいくらい。面白かったです。 (1/21)
011/011
「ぼっちママ探偵」南口綾瀬
作者は、本来「描く人」だそうで、初めて「書いた」ものだそうです。主人公は、小学生の娘を持つシンママ。元夫と別れた後は、Webデザイナーなどをしながら、一人娘を育てているのですが、とにかく他人とコミュニケーションをとるのが苦手で、ママ友を作ることを避けて、ぼっちママとして暮らしていくのですが、持ち前の洞察力で、周りに起きる小さな謎を解き明かしていきます。そして、最後の一行で明かされる主人公の意外な素顔。それまでの伏線が、見事にこの一行で回収されます。作者は、まずこの最終行を思いついて、そこから物語を膨らませたと書いておられますが、これはお見事でした。面白かったです。(1/22)
012/012
「配達あかずきん 威風堂書店事件メモ」大崎梢
この本も、日常の謎を解き明かす書店員を主人公にしたお仕事小説で、作者にとってのデビュー作です。元書店員だそうで、リアリティがあります。続編も出ているようなので、機会があれば読もうかなと思います。(1/24)
013/013
「一両二分の女 御宿かわせみ9」平岩弓枝
表題作の少し前の作品で、『一両二分』について軽く語られところがあったので、てっきりそれかと思って読み進めていたところ、全く違う意味で登場して、ちょっと驚きました。(1/25)
014/014
「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生
言わずと知れた塩野さんの晩年の名著です。1992年から毎年一冊のペースで出版され、15巻をもって完結しました。今年の年頭に、このシリーズの読破を目標に挙げておりまして、その一冊目を読了しました。出版当初から、歴史書か文学書かという論争があったようですが、とりあえずエンタメものとして読もうかと思っています。第一巻では、小さな都市国家として生まれたローマが、イタリア南部を傘下に収めるまでの5世紀が扱われています。カタカナの名前は覚えにくくて辟易しますが、物語としては面白いです。(1/25)
015/015
「閻魔まいり 御宿かわせみ10」平岩弓枝
シリーズ10作目にして、主人公の長年の友人がついに妻帯します。それも、かなり強引に。主人公たちが正式に結ばれるのは、まだ先のようです。(1/27)
016/016
「ペニー・レイン 東京バンドワゴン」小路幸也
シリーズ18作目なんですね。毎年一作の出版なのですが、途中に何巻か番外編の短編集があるので、実世界より2~3年遅れているそうで、コロナ禍は未だやってきていません。人と人との繋がりを軸とした小説なのであの異常な世界をどのように描かれるのか、とても興味があります。今作では、少しずつ人の移動があったりして、これは次作への伏線かなと邪推しています。(1/28)
017/017
「余命10年」小坂流加
最近映画にもなった作品だそうですが、まったくその背景を知りませんでした。作者自身が、主人公同様難病に罹り、この小説を書き上げたのち、文庫版のための改訂で闘病中の描写を加えた直後に他界されたそうで、おそらく著者自身のリアルな思いや葛藤が反映された作品になっているのだと思います。小説としても素晴らしい作品でした。お冥福をお祈りします。(1/29)
018/018
「未来のドリル コロナが見せた日本の弱点」河合雅司
最近のベストセラーである未来の年表シリーズの中の一冊です。一貫して『少子高齢化』と『人口減少』が日本の弱点と主張されています。それは間違いが何ところなんですが、じゃあどうすればよいのか。現実的な解決方法が思い浮かばないことが残念でなりません。(1/30)
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