読書の秋の最終月(?)11月は、小説が16冊、それ以外が7冊、計23冊という結果になりました。
最近、京都市の電子書籍図書館というやつにはまりまして、気に入った本があれば即借りて読むことができます。スマホでも読めるので、満員の車内でも関係なく読めるので、軽めの物語を中心に往復の通勤車内のお供にドはまりしています。これは、お薦めです。
さて、そんな中での小説のお薦めですが、どうしてもお気に入りの作家さんが多くて悩ましいところで、いまさらこれほどのベストセラーを挙げるのは恥ずかしいのですが、平岩弓枝さんの『御宿かわせみ』は、めちゃくちゃ面白かったです。34巻もの超大作になるまで愛され続けたというのもよく分かります。本文にも書いてますが、旅宿を舞台にした人情物かと思っていたのですが、いわゆる捕物帖で、いい意味で予想が裏切られ、なおかつどんどん先を読みたくなる筆致は本当にお見事で、はまってしまいました。これは今後34巻まで完走したいと思います。
小説以外では、農業消滅がとても興味深く考えさせられる本でした。自分も田舎を捨て、農業を放棄した身の上なので、恥ずかしくて堪らないのですが、国内での食糧生産をどうするのか、いい加減確りとした対策を考えないと、次の世代の人たちは食糧不足で大変なことになりそうです。当然のことながら政府には全くその気はないようなので、危機感を感じている我々が自衛のために何か考えないといけないということではないか。最近、そのように考えるようになりました。田舎で遊んでいる田んぼや畑をどうしようか。真剣に考えています。
電子書籍図書館は、簡単に借りられて、1~2ページ読んで気に入らなければ、親指操作で簡単に返却できます。おかげで、これまで名前を知らなかったような作家さんの本にもいくつか出会えました。京都市図書館の貸出カードをお持ちの方ならだれでも利用可能なので、是非ともお薦めです。
11月が終わって179冊。このペースだと年間では200冊を若干下回るくらいかなと思いますが、今読んでいる本も面白いです。残り一か月も楽しみます。
001/156
「邪神の天秤 警視庁公安分析班」麻見和史
お気に入りのシリーズの続編となるシリーズ。全シリーズで警視庁刑事課のエースだった主人公が、公安課へ異動となって、全く違う操作手法に戸惑いつつも、逆に刑事課時代の捜査手法を持ち込むことで、事件捜査に貢献していきます。このシリーズは、全体で大きな流れを作っているようで、順番に読まないと訳わからなくなりそうです。(11/2)
002/157
「激安ニッポン」谷本真由美
世界の中で、とびぬけて物価が安い日本について書かれたものです。円安と低い物価が正義だと思い込んでいる政府、日銀のとんでもない政策のおかげで、この有様です。どうも奴らは、日本という国を誰かに売っ払いたいようですね。賢い人、要領の良い人は、どんどん海外へ逃げていく。一体全体どうしたいんだ?(11/3)
003/158
「現代の奴隷 身近にひそむ人身取引ビジネスの真実とわたしたちにできること」モニーク・ヴィラ
図書館でたまたま見かけて借りてきた本だったのですが、思った以上に面白いというか興味深くて考えさせられる書物でした。身内や恋人など身近な人たちから犯罪組織や闇ルートを通じて、知らぬ間に人身売買され、奴隷契約の下、性搾取や労働搾取にとらわれている人々が、全世界で5000万人以上存在すると言われているそうです。この本は、そんな状況から逃げ出し、立ち直ったサバイバーといわれる人たちの経験談を通じて、その実態を明らかにしたルポルタージュです。外国の出来事と高をくくっていると、コロンビアから性奴隷として強制的に働かせられた舞台として日本の東京が出てきます。まさに極身近にひそんでいることがよく分かります。よく知られているように、技能研修制度も奴隷契約の温床としての側面を持っており、脱走者も多数出てきていますが、日本の入管制度では、その被害者が犯罪者として裁かれる仕組みになっています。また、今朝の新聞では、カンボジアで特殊詐欺グループの一員として強制労働を強いられていた日本人が逮捕されたというニュースも報道されました。こうした罠に落ちないための仕組み、罠に落ちてしまった人たちを救う仕組みを早急に作ることが望まれています。多くの気づきを与えてくれた素晴らしい書籍でした。皆さんにもお薦めします。
(11/9)
004/159
「偽神の審判 警視庁公安分析班」麻見和史
先日読んだシリーズの続編で、この二冊でとりあえず最初の大きな事件は片が付いたという感じです。実は、どれから読んでも大丈夫だろうと、この本を先に読み始めたのですが、冒頭からこれはダメだと気付き、慌てて最初の一冊を読んでからこの本に着手しました。シリーズ物は順番に読め。鉄則ですね。 (11/17)
005/160
「農業消滅 農政の失敗がまねく国家存亡の危機」鈴木宣弘
元農林水産省の官僚ということで、若干眉に唾つけながら読んでおりましたが、その予測を裏切る面白さでした。自分の生家が農業をやっていたこともあって、農業政策には少なからず興味を持っておりました。我が家のような小規模農家では、農業だけで生計を立てるのは不可能で、父も普段は国鉄で働いて、休日に農業をやるといういわゆる兼業農家でした。周りの家もほぼ同様で、専業農家というのは数えるほどだったと記憶しています。自分も、本当は地元の市役所に努めながら農業を続けていこうと思っていたのですが、どこで間違ったのか、今のような羽目に陥ってしまいました。今や日本の農業は絶滅の危機に瀕しています。”食の安全保障”などということがまことしやかに叫ばれますが、エネルギーも資料も農薬もすべて輸入に頼り切った現状ではお寒い限りです。座して死を待つのみか。どうにも明るい未来が思い描けません。(11/14)
006/161
「琥珀の闇 警視庁文書捜査官」麻見和史
文書、文字を手掛かりに事件の謎を解く。これもお気に入りのシリーズ最新刊です。主人公に思わぬライバルが出現するのですが、それが吉と出るか凶と出るか、興味深いです。(11/18)
007/162
「ワカタケル」池澤夏樹
主人公は雄略天皇。兄である安康天皇の死後、ほかの兄弟やライバルたちを次々と葬り去り、皇位を勝ち取る。その後も暴虐な衝動を抑えきれない姿がありありと描かれる。日本書紀に書かれた事跡を基礎に物語にされています。稲荷山古墳から出土した鉄剣のエピソードが描かれるなど、歴史的にも興味深い物語となっています。(11/18)
008/163
「フォトミステリー」道尾秀介
一枚の写真をもとに書かれた数行の短いストーリーを集めたもの。短編集と呼ぶにもあまりにも短いストーリーたち。中には、「?」と思うものもいくつかありましたが、思わずうならせられるような深い作品もありました。(11/18)
009/164
「パリ警視庁迷宮捜査班」ソフィー・エナフ
パリ警視庁のはみ出し者、問題児ばかりを集めた特別な部署が作られる。癖が強すぎるメンバーではあるが、決して無能であるというわけでもなさそうだ。ただし予算はない。本当に大丈夫なのか。(11/18)
010/165
「神様の用心棒1 うさぎは闇を駆け抜ける」霜月りつ
ついネットで見つけて、思わず一気読みをしてしまいました。シリーズものです。幕末、兄の後を追って敗走する新選組に従い、北海道の五稜郭で命を落とした主人公が、なぜか十年の後、函館山に集まった怪のものから、人々の暮らしを守るため神様の使いとしてよみがえる。なかなかおもしろかったです。(11/20)
011/166
「神様の用心棒 2 うさぎは玄夜に跳ねる 」霜月りつ
シリーズ2作目。
(11/21)
012/167
「ブラック・スワンの箴言 合理的思考の罠を嗤う392の言葉」ナシーム・ニコラス・タレブ
ベストセラーとなった『ブラック・スワン』の作者による箴言を集めたもの。それっぽいことが、まことしやかに書かれているですが、所詮はそれだけの事。特に座右の銘にしようとか、心に刻んでおこうかというような気にはならない。箴言ってそういうものだと思っています。(11/22)
013/168
「JK」松岡圭祐
作者の描くスーパー女子高生の新シリーズです。当たり前のことを貫こうとしただけで、やくざまがいの不良たちに両親を惨殺され、自らも身も心も殺されてしまった主人公が復讐に立ち上がります。冒頭の残虐な描写はかなりきついです。面白いけどお薦めはできないレベルです。(11/23)
014/169
「御宿かわせみ」平岩弓枝
全部で34巻にも及ぶ長大シリーズの一作目です。その昔NHKのドラマになっていたものを亡くなった母が大好きで、毎週楽しみに視ていました。当時は全く興味もなかったのですが、最近改めてどのような物語だったのか読んでみようと思い立ち、読み始めました。で、今まで全く知らなかったのですが、いわゆる捕物帖といいますか、時代劇ミステリだったんですね。旅館が舞台ということで、人情ものかと漠然と思っておりましたが、そこがちょっと驚きでした。結果、とても面白かったです。とりあえず全34巻にチャレンジします。(11/23)
015/170
「トッカン 徴収ロワイヤル」高殿円
これもテレビドラマにもなりました税務署の徴収官として活躍する主人公を描いたシリーズものですね。今作は短編集ですが、徴収の現場だけでなく、税務大学校での研修の様子も描かれるという特異な作品となっています。結構面白かったです。(11/25)
016/171
「JKⅡ」松岡圭佑
正体がばれそうになった主人公が、暴力団の犯罪計画の端緒をつかみ、それを妨害するため、彼らに挑みます。こちらもかなりハードです。(11/26)
016/172
「宇宙大密室」都築道夫
この作者はミステリ作家という認識だったのですが、元は編集者であったり翻訳家であったりといろんな顔を持っておられたのですね。この作品集は、その中でもSF小説を集めた作品集になっています。実は、彼の小説を読むのはこれが初めて。こんなお話を書かれる方だったのですね。(11/27)
017/173
「神様の用心棒3 うさぎは梅香に酔う」霜月りつ
シリーズ3作目。
(11/27)
018/174
「神様の用心棒 4 うさぎは桜と夢を見る」霜月りつ
シリーズ4作目、おそらく完結編です。(11/28)
019/175
「 ―幽霊絵師火狂- 筆のみが知る」近藤史恵
主人公は、何かが”見える”風変りな絵師。料理屋の二階に居候しながら描く絵は、怪しげな”怖い”絵ばかり。料理屋の娘が見る悪夢から解放し、厄介ごとを解決したことから信頼を得、娘を助手代わりに持ち込まれた謎や事件を解いていきます。この作者がこんな作品も書かれるのかと驚きました。(11/28)
020/176
「東アジアと日本 シリーズ地域の古代日本」吉村武彦、川尻秋生、松木武彦編
特定の地域にスポットを当てながら、古代日本を検証しなおす新シリーズの一冊目で、東アジアという”世界”史の中での日本の古代について概観していきます。まさに概観で、興味があったら参考図書に挙げた専門書を読んでねという内容になっています。中に『災害』や『ジェンダー』といった切り口で書かれた章もあって楽しみにしていたのですが、ちょっと肩透かしでした。史料がないのは承知の上ですが、せめても少し踏み込んでほしかった。(11/29)
021/177
「ドキュメント通貨失政 戦後最悪のインフレはなぜ起きた」西野智彦
面白かったです。今からおよそ50年前に起こった『ニクソンショック』から『オイルショック』『狂乱物価』と続いた2~3年を、当時の回想録や新聞記事などから多角的に検証しながらまとめられた大作で、当時の日本銀行や政府内部の様子が手に取るように描かれています。いずれも(自分の都合の良いように修正されたであろう)誰かの記憶をもとに描かれていることから、どこまで信頼のおけるものかは判らないのですが、少なくとも全体最適を考え責任をもって決断できるリーダーがいなかったということは確かなようです。すでに退任した前日銀総裁や元首相が進めた異次元緩和も全く功をなさなかった現在のかじ取りにも通じるようで、暗澹たる気持ちになります。歴史には決して学ばないというのは、伝統芸なのでしょうか。(11/30)
022/178
「不安に克つ思考 賢人たちの処方箋」クーリエ・ジャポン編
2020年から始まったパンデミックの時期に集中的に発刊されたシリーズのうちの一冊です。19名の賢人と呼ばれる方々が、この状況下でどんなことを考え発信したかまとめられています。例によって日本人は一人もいません。パンデミックで大きく変わったこともあれば、変わったように見えてたけれど、結局元通りということもありました。しかしながら、ものの見方は明らかに変わったように思えます。(11/30)
023/179
「神の豚」溝渕久美子
第12回創元SF短編賞優秀賞受賞作だそうです。これも京都市の電子書籍図書館を眺めていて見つけました。最新の科学が、翌日には陳腐なものになっている今という時代は『SF=空想科学小説』という分野の物語を書くのがとても難しい時代になってきたのではないかと思っています。そんな中で、SF小説を書こうとすると、どうしても如何に不条理な世界を描くかということがポイントになってくるように思われます。この物語は、突然兄が豚になってしまった、驚愕の世界を描いています。それを加味したとしても、これってSF小説なのか?若干違和感を覚えます。(11/30)
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