新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、自宅にこもりがちとなった令和2年の4月は、17冊、うち小説が4冊、その他が13冊という結果でした。
週末は、全く出かけることなく、呑んでるか読んでるかのどちらかだったので、何れもそこそこの量となりました。
ご覧のとおり、読書の傾向はかなり変化しまして、小説はわずか4冊、それ以外の本でも、いつもの定番シリーズの他、次の社会を占うヒントになりそうな本や逆に現実逃避するような趣味一辺倒のような本が増えてきましたね。
そんな中でのお薦めです。
まず小説では、“medium”でしょうか。
最後のどんでん返しにはやられました。続編が書けないまさかの展開でした。詳しくは書きませんが、お薦めの1冊です。
今回は小説以外の本が多かったのですが、その中では次の3冊を挙げたいと思います。
まず“7つの階級”です。
これは、イギリスのBBCが実施した大規模な階級意識調査を分析したもので、日本の状況には直接マッチしないかもしれませんが、この分析方法については非常に参考になると思います。また、本文でも触れていますが、今回のコロナウイルスに伴う諸事象は、私たちの生活を直撃し、突然収入の道を絶たれた人たちが続出するなど、いかに私たちが寄って立っていた地盤が、いかに脆弱だったのかと言うことを思い知らせてくれています。このコロナ禍が収束したときに、どんな世界が待っているか、この階層間の移動が、一気に進みそうな気がしています。
2冊目は、“アートシンキング”です。
これまた、本文で書いていますが、コロナ禍の収束後の社会は、このウイルスといかに上手く共存し折り合いを付けていく社会にならざるを得ないように思います。今まで考えもしなかった世界がやってくることを覚悟しなければなりません。おそらく未だかつて誰も経験したことがない世界。そんな世界で生きていこうとすると、従来型の思考方法は全く役に立たないのではないかと考えられます。ここでいう“アート思考”がその答えだと迄は言いませんが、一つのヒントかなと思っています。参考になりました。
3冊目は、がらりと変わって“地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題”が、とても新鮮でした。
まぁ、気象に関する解説書なのですが、“雪”という事象に限って解説されているところが、斬新でした。台風や大雨と違って、雪の害というのは、大きな影響を受ける地域が偏っているため、なかなか実感を持てないという面があるのではないでしょうか。実は自分もそうでして、雪の降る仕組みについては、全く無知でしたが、この本では、非常に分かりやすく非常に興味深く解説されていて参考になる内容でした。コロナ禍で殺伐とした毎日ですが、こんな本もなかなか良い。お薦めです。
何度も触れていますが、今は非常に厳しい状況が続いています。出口はなかなか見えてきません。そんな時間をどう過ごすのか、次に備えて自分を磨くか、それとも快楽にふけるか。いろんな過ごし方があると思いますが、私はこれまで以上にお酒と読書に時間を費やしています。
実は、そのどちらも私の思索を助ける物でして、何もできない私としては、次に備えるため自分の“考える力”を磨いていきたいと考えています。
皆さんご理解くださいね。
001/050
「medium 霊媒探偵城塚翡翠」相沢沙呼
昨年のミステリ部門の各賞を受賞した作品で、本屋大賞にもノミネートされています。死者の霊を感じることができる主人公と探偵役を務める作家が、“霊のお告げ”を基に、証拠を探し出し、事件の謎を解くという、ミステリ小説です。途中からなんとなく結末が見えてくるんですが、本当の結末はさらにその上を行く、大方の度肝を抜くようなオチが用意されていて、さすがにこれは想定していなかった。やられました。絶対に続編は作れないほどのインパクトです。面白かったですよ。(4/4)
002/051
「行商列車 <カンカン部隊>を追いかけて」山本志乃
私の記憶の中にある“行商列車”は、昭和の40年代、豊岡から当時の国鉄宮津線を西舞鶴まで向かい、そこから舞鶴、山陰線を経由して、朝10時前に京都へ到着する急行丹後です。西舞鶴を7時50分頃出ていたと思うのですが、この列車でよく京都へ連れて行ってもらっていました。その列車の中には、丹後からたくさんの荷物を背負ったおばさん達が乗り込んで居られて、昔の二条駅で降りて行かれました。きっとそこから市内に行商に行っておられたのでしょうね。いつ頃からか、その姿も全く見かけなくなりました。それは、私がその時間の列車に乗ることがなくなったからなのか、急行がすべて特急になってしまったからなのか、今となっては全く分かりません。懐かしい景色です。(4/4)
003/052
今年2020年は、日本書紀が編まれて1300年という記念の年に当たります。昔歴史の時間に習いましたが、古事記、日本書紀は、それ以前にあった“旧辞”“帝紀”を再編して編まれたとされています。でも、なぜ基になったこの二つの歴史書が後世に伝わっていないのか、なぜ古事記、日本書紀という二つの書ができあがったのか、という事は、はっきりと分かっていません。いずれにせよ、時の権力者が、自らの権力の正統性を確立するため、歴史を創作した物なんですが、古事記では何が不足で、日本書紀を創ることにしたのか、これを想像することが歴史のロマンってところでしょうかね。本書は、かなり専門的に書かれているので、理解しながら読むのはかなり骨が折れますが、こういった推理を楽しみたい方にはお薦めです。(4/5)
004/053
今、全世界で新型コロナウイルス感染症の拡大が進み、私たちの普段の生活が一変しています。人と人が接触しない世界、携帯端末などを使い情報や意志のやりとりをする世界、そういったことが当たり前の世界がやってきそうな予感がしています。10年後に来るだろうと想像していた社会が2年後にやってくることも考えられると思っています。この本は、第4次産業革命によって、まさに10年後に実現されるだろう社会を予測しているものです。ただ、今考えられている先端技術の一端を紹介しているだけで、結果どのような社会が実現するかと言うところまでは書かれていません。これは、私たちが想像するしかないですね。(4/10)
005/054
「7つの階級 英国階級調査報告」マイク・サヴィジ
BBCが実施した英国階級調査の分析結果を基に現在の英国社会の問題点を明らかにしたものです。英国民を三つの資本“経済資本”“文化資本”“社会関係資本”を基に“エリート”“確立した中流”“技術的中流”“新富裕労働者”“伝統的労働者”“新興サービス労働者”“プレカリアート”の7つの階級に分けています。別にそれらに上下の区別はないとしていますが、明らかにプレカリアートと呼ばれる最下層と位置づけられる人々はかなり厳しい状況に置かれています。さらに、こういった調査をしても、彼らの実態は全くつかめないこと、またこの格差は加速度的に広がっていることが指摘されています。ピケティの著作にも書かれていることですが、この仕組みを何とかしないと大変なことになりそうです。新型コロナウイルス感染症の拡大は、経済資本に乏しい層、ストックのない人を直撃しています。彼らを救うことこそが政治の役割だと思います。かなり長いレポートですが、読む価値あり。面白いです。(4/11)
006/055
「教室が、ひとりになるまで」浅倉秋成
とある“書籍紹介サイト”を眺めていて見つけた学園物の小説です。ある種の超能力を備えた生徒が学園で起こった事件の謎を解いていきます。そのミステリも良かったのですが、物語全体を流れるのが、いわゆる“スクールカースト”と呼ばれる現象で、最後は事件のきっかけに繋がっていきます。このリアリティのある高校生活の描き方が秀逸でした。中に出てくる“彼らが僕の悩みを理解できないのと同じように、僕もまた彼らの悩みを理解してあげることはできない”というフレーズも心に残りました。(4/11)
007/056
「山怪参 山人が語る不思議な話」田中康弘
図書館でたまたま見かけたので、弐を飛ばして読みました。この本は、そんな山で働くマタギなどが経験した不思議な体験を集めた物で、名前の通り3冊目に当たる物です。
私の生まれも舞鶴の田舎で、実家の裏は小さな山。子どもの頃はその山も遊び場の一つでしたが、夜に見るそれはとても恐ろしく、“なにものか”が棲んでいるような、そんな気配が感じられました。山が拓かれ、電気の灯りが遍く届くようになると、山の雰囲気も大きく変わっていくのでしょうね。(4/11)
008/057
「阿刀田高の楽しい古事記」阿刀田高
阿刀田さんの拾い読み古事記解説エッセイです。古事記の中でも私たちがよく知っている天岩戸、国譲りや日本武尊の物語などを平明な言葉で、あるいは物語の現場を訪ねながら分かりやすく解説されています。面白かったです。(4/12)
009/058
「屋上のテロリスト」知念実希人
第二次世界大戦が3ヶ月遅く終わった世界では、日本は東西に分割され、別の国家として時を重ね、互い反目し合い、一触即発の危機を迎えつつありました。そこに一人のテロリストが現れ、怒濤の展開を見せます。医療ミステリを専門とする著者が、最近好んで(?)書く、一風変わった社会を舞台にした小説です。SFでもなくミステリでもない。いわゆるエンタメ小説と言えば良いんでしょうか。途中から、なんとなく先のあらすじが見えてきてしまい、惰性で読んでしまいかねない危うさはありますが、2~3時間の空隙を埋めるにはもってこいかな。(4/14)
009/059
「絶望の裁判所」瀬木比呂志
閉鎖的で窮屈な社会になじめずドロップアウトした元裁判官が、最高裁判所(長官)を頂点とする組織・システムについて、内実をぶっちゃけるという物、いわゆる暴露本ですね。著者自身は、あの異様な世界を早々に見限った常識人のようなスタンスで書かれているのだと思うのですが、同じ公務員である私の目から見ても、あくまで官僚臭の抜けない独特の文章で、こりゃ“外の世界”の人たちには読みづらいだろうなと感じました。内容はかなり衝撃的な中身で、今後の日本の司法の未来には不安しか残りません。この代償は相当かなり高くつきそうです。(4/15)
010/060
「高校事変Ⅳ」松岡圭佑
彼の最新シリーズの4作目。今度は公安警察を巻き込んだ韓国系の半グレ集団との攻防。相変わらずぶっ飛びの設定と展開で、息もつかせぬスピードで、結末まで一気に進みます。そして、今回初めて “to be continued” で終わります。既に6作まで出ていますので、早速続編を注文しました。(4/18)
011/061
「シリーズ古代史をひらく 古代寺院 新たに見えてきた生活と文化」吉村武彦、吉川真司、川尻秋生編
古代の日本社会を語る上で欠かすことのできない“仏教”がテーマです。それを“寺院建築”“仏像”“僧侶”などの小テーマに分け、最新の学説を交えて解説してくれています。仏像=美術工芸品については、移動が可能であったことなどから、当時の姿をあるがままに止めているか否かについての判断が難しいのと、あまりに数が多いので、集中して読むことが難しかったですが、寺院建築様式の話や当時の僧侶の生活、仏教の受け容れられ様などは、なかなかに興味深い所でした。このシリーズを通して、日本書紀や日本霊異記が何度も取り上げられていて、どこかから引っ張り出してきて読んでみたくなりました。(4/19)
012/062
「イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち」澤宮優
プロ野球阪神タイガースの若きエース藤浪晋太郎選手が、ここ数年コントロールに苦しみ、一部のマスコミではイップスではないかと指摘されています。この本は、かつてイップスであることを公表したプロスポーツ選手のインタビュー集です。緊張した場面で、ゴルフのパットができなくなる、ボールが投げられなくなるといった症状が現れるのですが、原因は分かっておらず、“イップス”という名称も医学的な物ではありません。原因が分かっていないことから治療法、克服法というものもなく、プロの世界を離れた方もたくさん居られたようです。先ほどの藤浪選手の例で言うと、どこまでも軽々しく言及されている物がほとんどで、周りに理解されない症状であることも克服の難しさに拍車を掛けているのかもしれませんね。もちろん、藤浪選手の場合、本人は何もおっしゃっていないので、イップスであるとは限らないのですが、早く昔のように活躍してほしいと願うのは私一人では無いと思います。(4/19)
013/063
「和食はなぜ美味しい 日本列島の贈りもの」巽好幸
和食の美味しさを決めるのは、なんと言っても素材の良さだと思います。この本は、なぜ日本にこれほど多彩な素材が集まっているのかということを、地球物理学の立場から解説するという非常に画期的な一冊です。よく知られているように、地球の表面は多数のプレートで覆われており、日本周辺にはそのうちの4つのプレートが複雑に絡み合っていて、深い海、多くの火山、流れの速い川など他地域にはない地質的な特徴を持っています。そのことが、豊富な農水産資源となり私たちの食卓を彩ってきたと言うことです。しかしながら、せっかくの自然の恵みも生活様式の変化などにより十分に生かし切れなくなってきているようで、とても寂しく思っています。(4/19)
014/064
「アジアの中の日本文化 ことば・説話・芸能」名古屋市立大学日本文化研究会編
たまたま図書館で見かけて、タイトルに惹かれて借りてみました。名古屋市立大学で日本文化を研究するグループが、それぞれの研究テーマに応じた論文を1冊にした物なので、一応サブテーマは振ってありますが、統一感はなく結構振り幅が大きくて、頭の切り替えは大変でした。それでも、これまで知らなかった“大日本国法華験記”という平安時代の仏教説話を集めた書物は面白そうでした。書籍としては、なかなか手に入りにくい物の様ですが、興味津々です。(4/25)
015/065
「地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題」川瀬宏明
地球が温暖化すると、雪の量は減るに違いないと思っていたのですが、それは、そもそも雪の降る仕組みが分かっていない素人の浅はかさ。気象というのは、なかなかに奥が深いです。気象現象というのは、それを決定づける要因が複雑多様で、全く同じ現象は二度と再現できないと考えて良いと思います。それを実際にやろうとしているのが、現在の気象予報で、台風の進路などは、かなり正確に予想できるようになりました。その中でも、“雪”の予報は、専門家泣かせで、上空の風の吹き具合や0.5度の温度差で、雪の降り方は全く違います。この本では、日本列島に雪が降る仕組みをかなり詳しく解説されていて、それだけでも大変読み応えがあります。“日本海寒気団収束帯”と言う言葉は、この本で初めて知りました。ところで、最初の問いの答えは。是非この本で確かめてください。我々素人にもとてもよく分かるように解説されています。答えに興味を持たれた方々には、お薦めです。(4/25)
016/066
「給食の歴史」藤原辰史
この本は、誰の紹介だったか思い出せないのですが、面白い切り口の記録ですね。給食だから、単に学校教育の歴史の一部と思いがちですが、災害による飢餓の歴史、戦中戦後の食糧事情、敗戦後のGHQによる占領政策など複雑な社会情勢が、現在まで続く学校給食の歴史を彩っています。今も、格差拡大による子どもの貧困対策という側面がクローズアップされています。私が育った舞鶴の田舎では、小学校は食パンと脱脂粉乳の給食から始まって、高学年でコッペパンと牛乳に変わり、中学校は牛乳だけの給食で評判はとても悪かったと記憶していますが、今はどうなんでしょうかね。(4/26)
017/067
「アートシンキング 未知の領域が生まれるビジネス思考術」エイミー・ウィテカー
この本も、今般のコロナウイルス感染症の拡大に伴って、今後の世界の有り様や、自分が携わっている“公共”の仕事のあり方を考えるにつけ、参考にしようと買ってきた物です。今現在は、感染拡大防止のため社会活動を自粛することに注力されていますが、この状態はいつまでも続くものではなく、いつか変化していくと思っていますが、それは以前と同じような自由に人と関われる社会なのか、それとも他人と関わることなく生きていけるさらに自由な社会になるのか、その姿は全く想像できません。いずれにせよ、1年前と同じ状況に回帰するということはあり得ないとも思っています。そういった、これまで経験したことがない社会がやってくるとすると、従来の思考方法ではあらゆる問題に対応できないように思っています。この本は、いわゆるビジネス書としてかかれており、“生き方”の参考になるという物ではないですが、各章の狭間に挿入されているインタビューは非常に参考になりました。(4/26)
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