Stayhomeの5月は計16冊、小説が8冊、その他が8冊という結果になりました。
連休中は、散歩に出かけることもなく読書に耽っておりましたが、連休が明けると途端に疲れて眠っていることが多く、読書量が減ってしまいました。
以前にも少し書きましたが、これから社会がどのように変化していくのか、とても興味を持っています。最近は、巷の雑誌などで、まことしやかに語られていますが、技術一辺倒である様な気がしています。個人的には、急に現れる事象に対する柔軟な心であったり考える力が必須となってくる世の中がやってくるのではないかと思っており、そのヒントになりそうな本を漁っています。
さて、そんな中でのお薦めの本ですが、小説では“線は、僕を描く”が秀逸でした。
本文でも書いていますが、今年の本屋大賞の第3位となった本です。まだ、1、2位の本を読んでいないのですが、既に読んだ候補作の中ではダントツのできでした。水墨画というあまり馴染みのない世界を扱いながら、読んでいるうちに全てが分かったような気になってしまいます。小説の中で、芸術を描くことはとても難しいと思うのですが、その難題を見事にクリアしていると思いました。かつての本屋大賞受賞作“蜜蜂と遠雷”でも感じた感覚です。お薦めです。
もう一冊は、かなり古い小説なんですが、“七時間半”も面白かったです。
東海道新幹線開通前に、東京と大阪の間をむすんでいた特急列車内を舞台にした物語なんですが、出発前から物語は始まり、実質は“10時間”くらいの物語で、その間に起こった人情劇が面白く描かれています。列車の車内アテンダントという存在があって、それは当時の花形職業だったということを初めて知りました。当時の旅行事情などが見えて非常に興味深い小説でした。獅子文六さんって初めて読みましたけど、決して古さは感じませんでした。面白かったですよ。
そして、小説以外の分野ですが、まずは“FACT FULNESS”ですね。
これは、最近のベストビジネス書に挙げる方も多くて、いつか読んでみたいと思っていた本でしたが、かなり分厚い本だったので、手を付けずにいたところ長い休みを機会に読んでみました。いろんな事を考える上で重要なのは、考える基礎となる事実やデータをしっかりと押さえておくと言うことではないでしょうか。この本では、いくつかの典型的な思い込みの例を挙げつつ、思い込みの癖を解説するものです。高い評価を受けていることの理由がよく分かるとても面白い興味深い本でした。かなり分厚いですが、一気に読めます。お薦めです。
あとは、“感染地図”も面白かったです。19世紀半ばロンドン市内に広かったコレラ禍について、病原については明らかになっていなかったが、感染源となった井戸を特定したことで、その後の感染を防いだ事実を書き記したものです。見えない恐怖におびえる人たちと、原因を突き止めようとする一人の医師の強い意志はドラマチックな物語のようで、一気に読みふけってしまいました。今、私たちも新型コロナウイルスという見えない恐怖と戦っています。一日も早く落ち着いてくれることを祈るばかりです。
6月に入った途端に蒸し暑い日々が続いています。緊急事態宣言も加除されて、人の移動制限も少しずつ緩和されてきました。4月5月はstayhomeで外出もままならず、本を読むか酒を呑むかという至高の時間を過ごしておりました。
しかしながら、6月からは少しずつ“散歩”の時間も増やしていこうかなと思っています。ずっとウチに籠もっていた間に、行きたいところがどんどん増えてきていたのですが、そこはお天気の具合も見ながら徐々に、散歩と読書を楽しんでいこうと思います。
001/068
「FACT FULNESS」ハンス・ロリングス、オーラ・ロリングス、アンナ・ロリングス・ロンランド
最近のビジネス書の中では最も評価の高いベストセラー書籍です。昨年末に買っていたものの、なかなか読む機会が無く、積読になっていましたが、外出する機会が全くなくなったことから読み始めました。結構分厚いので、時間を掛けて読もうかと思っていましたが、あに図らんやとても面白くて一気に読み切ってしまいました。私たちが無意識のうちに持ってしまっている“思い込み”が、モノを見る目を曇らせています。そして、それは事実を突きつけられないと分かりません。この本では、10種類の思い込みを紹介し、真実を見る目を育てようと提言しています。残念ながら主著者のハンス氏は、原著の出版後なくなられたそうで、共著者の息子さん夫婦が、書籍の内容を広める活動を引き継いでおられます。評判どおりにとても面白い1冊でした。(5/2)
002/069
「IOTの衝撃」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部編訳
これも3年ほど前に買った本を発掘して読みました。IOTを如何に経営に活かしていくかということを中心に書かれており、相応に面白本でした。特に最後の章に“デジタル・ニューディール”という概念について書かれており、何のことかいなと思いながら読んでみると、いわゆるデジタル時代の個人情報について考察がされており、本人の承認が無い個人データの使用に新たなルールが必要と提言するモノでした。これこそ、私が一番関心があることで、統一的なルール作成が急務です。面白かったです。(5/2)
003/070
「直感を磨く 深く考える七つの技法」田坂広志
彼の本は結構好きで、10年以上昔になりますが、出ている本を片っ端から読んでおりました。最近は、似たような内容の本が多いことに気づき、読まなくなりましたが、最新著と言うことで久しぶりに購入しました。前述のごとく、昔の本で読んだことが、編み方を変えて書かれておりました。安心の中身でした。(5/2)
004/071
「さよならの儀式」宮部みゆき
著者が、数年前にいろんな媒体に書き留めたかなりSFチックな内容の短編を集めたモノです。ゲームマニアの著者には、完全な空想社会を描いた物語もいくつかあるのですが、こういった日常にごく微量のSF的な要素を加味した物語は、久しぶりにお目に掛かりました。それなりに面白かったです。(5/3)
005/072
「高校事変ⅴ」松岡圭祐
最近お気に入りのシリーズ第五弾。国家の一部勢力と最強のヒロインとの壮絶な戦いが描かれています。いつもながらよくできたエンタメ小説です。第六弾も購入しているので、引き続き楽しみます。(5/4)
006/073
「掟上今日子の退職願」西尾維新
ずっと以前にかったまま放置していた一冊です。結構お気に入りのシリーズだったのですが、ここへ来てヒロインのキャラクターが若干変化してきたように感じたのは、ブランクが長かったせいか。次の作品も買ってしまっているのだけれど、いつ読もうかな。(5/6)
007/074
「人工知能」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部編訳
これも先日読んだIOTの書籍と同様のもので、事業経営に人工知能がどのような影響を与えるか、どう活かせるかという様な観点で書かれた論文集です。これも面白かったです。人工知能の技術そのものは日進月歩と言うより時々刻々と進化しているところであるが、それとの向き合い方は変わらないのではないか、私たちが身につけておかなければいけない力に変わりは無いのではなかろうか。(5/6)
008/075
「ネクスト・ソサエティ」P・F・ドラッカー
ピーター・ドラッカーがおよそ20年前にいろんな媒体で“次やってくる社会”について発表した論文集で、長い間放ったらかしてありました。彼の書く文章は、普遍的な考え方は非常に参考になります。今コロナウイルス感染症の蔓延により、社会が大きなストレスを受けています。そして、この力の影響で次の社会も大きく変容していくことは避けられません。その指針となるようなものがないか発掘して読んでみました。彼も超人ではありませんから、次の社会のすべてが見通せるわけではないですが、変化を恐れない、変化にはしなやかに対応することが大事かなと思いました。(5/9)
009/076
「7時間半」獅子文六
東海道新幹線開通の数年前、東京駅と大阪駅の間を7時間半で結ぶ特急ちどりの車内で巻き起こされるドタバタ劇を面白おかしく描写した娯楽小説です。当時の旅の様子などが描かれており、その意味でもとても興味深い小説でした。これも、かなり前に書店で見かけて購入し、そのまま放置してあったモノを発掘しました。スピード感もあって結構面白い小説になっており、十分楽しめました。(5/9)
010/077
「感染地図」スティーブン・ジョンソン
この時期注目の書籍として書店に平積みされていたので、買ってまいりました。19世紀の半ばにロンドンのある地区を中心に爆発的に蔓延したコレラについて、その感染源となった井戸の存在と原因を明らかにした医師と牧師の物語。当時はまだコレラ菌の存在は確認されておらず、悪い空気が原因であると大まじめに信じられていました。それに疑問を持ち、感染者の行動を徹底的に追うことで、ある特定の井戸の水を引用していたことを突き止め、その井戸の使用を禁止したことで、感染は下火になっていきます。その経過はまるで小説のようでもあり、一気に読み切ってしまいました。人類はあらゆる病気と共存しながら進化し続けてきました。今の新型コロナウイルスについても、いつか上手く折り合いを付けて生けるだろうと思っています。めちゃめちゃ面白かったです。(5/17)
011/078
「昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか」鈴木美潮
ほぼ同年代の女性が書かれたテレビヒーロー列伝と言うことで、非常に興味深く読みました。仮面ライダー、ウルトラマン、そのほか月光仮面に始まるたくさんのヒーローてんこ盛りです。ライダーシリーズや戦隊ものは、今も続いており、世代を超えて親しまれているのを実感いたします。巻末に、歴代ヒーローもののテレビ放映時期が網羅されているのですが、以外と短期間に終わっていたものがあったり、記憶とは違っている事もあったりと、とても楽しく読めました。そして改めてみてみると、私が生まれた田舎では、小学校に入るくらいまで、民放が放映されていなかったこともあって私がこういったテレビ番組を見ていたのは、小学校の間だけだったというのを再認識しました。このわずかな期間の記憶であるにもかかわらず、とても記憶に残っていると言うことは、それほど強烈に私たちの心を捉えて放さなかったと言うことなんでしょうね。今の子ども達にとってはどうなのでしょうか。(5/23)
012/079
「店長がバカすぎて」早見和真
2020年本屋大賞の第9位だったんですね。リアル書店を舞台にした物語で、“バカすぎる”店長に心乱される書店員が主人公となっています。書店を舞台にしたお仕事小説と言うことで、結構楽しみにしていたのですが、私にとってはかなり期待外れ。登場人物にも特に面白みがなく、驚くようなどんでん返しがあるわけでもなく、ストーリーも平坦で、リアル書店員の実態を描いているという事以外に、何が書店員さんのハートをつかんだのか、私にはよく分かりませんでした。残念です。(5/23)
013/080
「世界哲学史Ⅰ 古代Ⅰ知恵から愛知へ」伊藤邦武、山内志朗、中島隆博、納富信留責任編集
5月の連休明けから読み始めたので、結構時間が掛かりましたが、期待どおりとても面白本でした。世界“哲学史”ではなく、“世界哲学”史なのだという定義づけから始まり、“哲学=フィロソフィー”と言う言葉が生まれたギリシャ哲学の概観から始まりまりますが、その後は時代を追って、エジプト・メソポタミアで生まれた哲学の萌芽と院d哲学の出会い、そして中国で生まれた諸子百家など古代のビッグネームが次から次へと現れてきます。それぞれの特徴については、簡単にしか触れられていないので、そこから前に進みたいという欲求がさらに生まれてきます。全部で8巻まで発行される予定なのですが、これはなかなか大変の世界にはまり込んだのかもしれないぞ。(5/30)
014/081
「線は、僕を描く」砥上裕將
本屋大賞の第3位となった作品です。実は1位と2位を含めまだ4冊は読んでいないのですが、既読の6冊の中では一番良かったと思います。物語は水墨画という全く意表を突かれる世界で展開され、あることをきっかけに心を喪ってしまった青年が、偶然に水墨画と出あい、魅了され、次第に心を取り戻していくまでの過程が描かれています。芸術を解さする能を持たない身としては、どこまで本質を共有できたのか心許ないですが、それを抜きにしても良かったです。これはお薦めです。ところで、この作者は、全く初めてなのですが、奥付けをみると御自身も水墨を描かれているようです。この先はどうされるのか、ちょっと楽しみです。(5/30)
015/082
「丑三つ時から夜明けまで」大倉崇裕
彼の作品はちょっとお気に入り、テレビや映画の脚本も書いておられるので、映像化を多分に意識しながら書かれているのではないかと思います。この作品は、静岡県警の架空の部署が舞台になっているのですが、その部署というのが“幽霊による犯罪”を取り締まるために実験的に設けられた刑事五課。しかしながらその存在はトップシークレットという設定です。設定はぶっ飛んでいますが、謎解きのルールはちゃんと踏まえているので、ミステリとしても楽しめます。(5/30)
016/083
「地上最後の刑事」ベン・H・ヴィンタース
京都市図書館が久しぶりに開架サービスを開始したとのことで、早速書架を眺めていて、偶然見つけた一冊です。舞台はアメリカの地方都市なんですが、一年以内に小惑星が地球と衝突することが発表されていて、経済活動が止まってしまい、警察も機能しなくなっているという設定で物語が進みます。自殺者が続発し、ファストフード店のトイレで、首つりとおぼしき死体が発見される場面から始まり、引っかかりを感じた新人刑事が、事件を追っかけるというストーリーです。図書館で概要を読んだだけで、ちょいと興味を持ってしまい、よく見るとすでに同設定で3作の作品が出版されているとのことで、その3冊を全て借り出してきました。実は、ハヤカワポケットミステリはこれが初めてなのですが、また、いろいろ借りてみよう。(5/31)
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