9月は、21冊で、小説が12冊、その他が9冊という内訳になった。
今月は結構好きな作家の本もあったのだが、あまり心に残った物はない。ということで今月のお薦めを選ぶにも大変苦労する。
そんな中であえて選ぶとすると、小説では『at Home』でしょうか。この秋ドラマ化もされるようですが、家族をテーマにした読みやすい短編集です。
それ以外の本では、『ルポ 保育崩壊』でしょうか。これからの社会は“ヒト”が、最大の財産になります。ヒト無くしては、どんな社会も残っていきませんし、産業や教育、あるいは文化の担い手としても欠かせません。その最も大事な財産である“ヒト”を育てるための基本中の基本機関である“保育”が、今や崩壊しようとしている。ここを何とかしないと、この社会に未来はない。みんな解っているのだろうか。
001/177
「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる」エマニュエル・トッド
タイトルほどのインパクトはない。この本を読みながら、ドイツとフランスの関係は、日本と韓国の関係にどことなく似ているような気がした。もちろん、2国に分断された(した)という歴史ということでは逆であったり、そのまんまと言うことはないが、歴史ある国と急激な工業化で世界のトップレベルに上り詰めた国。さらには、この本のように一方の国が、もう一方の国を羨んだり貶めたりといったことが常態化している国同士の関係。(9/1)
002/178
「ルポ保育崩壊」小林美希
超高齢化、少子化、晩婚化、人口減少。日本の将来を予想する言葉には、明るい未来を予感させる物が無い。日本の現状を憂いて様々な提言がされている。そして、判で押したようにそれらの提言の行き着く先は常に“人”である。しかしながら、その人という資源が、最も枯渇化している。そんな中で明るい未来を語られても、まったく現実感がない。(9/4)
003/179
「鈴木さんにも分かるネットの未来」川上量生
この鈴木さんは、スタジオジブリの鈴木敏夫さん。どうやらそれほどITには詳しくないそうで、彼にも判るように、ネットの将来をかみ砕いて書かれた物。今の子供達は、携帯電話やスマートホン、パソコン、インターネットが普通にある環境で育ってる。当然私たちが子供の頃は、そんな物はなく、大人になってから次々と世に現れてきた。幸いにして、今は何とかついて行けているが、そろそろ限界かなと思う瞬間も多々ある。(9/5)
004/180
「at Home」本多孝好
表題作がこの秋にドラマ化されるそうで、その帯に惹かれて購入。非常に読みやすい短編集で、あっという間に読める。疑似家族を描いた表題作は、予想どおりのハッピーエンドで、安心して読める。(9/5)
005/181
「ねじまき片想い~おもちゃプランナー・宝子の冒険~」柚木麻子
恋愛小説のようで、ミステリ小説のようで、お仕事小説のようで。いろんな要素が絡み合った小説。彼女らしい小説なのかどうかは評価できないが、おもしろいことは間違いない。(9/5)
006/182
「複製症候群」西澤保彦
彼特有の、SF推理小説。よくもこんなトンデモ設定で、小説がしかもロジックが求められる推理小説が書けるものと感心する。(9/6)
007/183
「稼ぐまちが地方を変える」木下斉
よくある未来への無責任な提言かと思って読んでいたのだが、予想を裏切る内容。著者自身が、商店街の再生に取り組みながらも挫折した苦い経験を持ち、その経験からくる有用な助言が書かれている。特に、何ごともお役所頼みという姿勢については、一刀両断。役人の身で言うのは気が引けるが、役所でやれることには限界があることは事実。(9/11)
008/184
「Qrosの女」誉田哲也
話の展開がかなり強引。こうは進まないだろうという突っ込みどころ満載。(9/12)
009/185
「奇跡の人」原田マハ
三重苦の偉人として誰もが名前を知っているヘレンケラーの物語を、同時代の日本に置き替えて作られた物語。かなり無理がある。(9/12)
010/186
「営繕かるかや怪異譚」小野不由美
この著者の本は初めて。おもしろいという評判を聞いたので、手に取ってみた。どうやらこの手の怪談話がお得意なよう。まぁ、メチャクチャおもしろいという感じでもなく。(9/12)
011/187
「裸でも生きる2 Keep Walking 私は歩き続ける」山口絵理子
前作に続き、発展途上国でのビジネスに挑戦する著者の自伝。とんでもない苦労をして、騙されて、それでもチャレンジし続ける著者のバイタリティに感動する。ここまで彼女を突き動かす物とは一体何なんだろう。信念だけであそこまでできるのか。(9/13)
012/188
「世論調査とは何だろうか」岩本裕
世論調査の結果ほど当てにならない物は無い。というのが私の持論。質問の作り方で、どのような結果にでも誘導できる。よく比較対象に出される大手の新聞社の結果などはまさにそのとおりで、同じことを調査しているはずなのに、正反対の分析結果を導き出すことができる。如何に騙されずに自分の意見を持つか。それが大事。(9/14)
013/189
「黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎」山本兼一
これまたかなり荒唐無稽な物語。(9/18)
014/190
「まったなし」畠中恵
テレビドラマにもなった“まんまこと”シリーズの最新刊。妻と子を亡くした主人公が、まだ立ち直れていない。でも、いつまでもそのままじゃいけないよね。まだ若いんだから、早く前を向いて歩きださないと。と他人は気楽に言える。この先、このシリーズはどう進んでいくのだろうか。想像がつかない。(9/19)
015/191
「蟻の菜園」柚月裕子
彼女の本はどれもおもしろい。この作品は、珍しくルポライターが主人公で、保険金殺人の謎に切り込んでいく。途中から結末が見え始めてくるのだけれど、それでもつい最後まで一気に読んでしまう。(9/19)
016/192
「月光のスティグマ」中山七里
これはどうなんだろう、不満が残るわけでもなく、かといって手放しでおもしろいと言える作品でもなく、どうしたものかと思ってしまう。いつものえげつないような設定や凄惨な場面がなく、えらく抑えた感じが不完全燃焼として感じられるのか。(9/21)
017/193
「プラトンとの哲学 対話篇をよむ」納富信留
プラトンの著作としては、師であるソクラテスが交わした対話編がすぐ頭に浮かぶ。果たしてそこでソクラテスの言葉として描かれている物は本当に彼の言葉なのだろうか。それともプラトンが師の言葉を借りて語ろうとしていた物なのか。ついつい哲学書を理解して読もうとして失敗してしまう。本来、哲学書は自分が考える際の指標にすべき物で、理解をしてしまっては、そこから先に進めない。考えることを癖にし、考えることを止めないように。(9/2)
018/194
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」山本巧次
現代と江戸時代とのタイムトンネルが古民家の押し入れに出現。その昔読んだ半村良の“時穴道行き”を思い出させる。この作品の主人公は、至って軽い調子で、何やら曰くありげなイケメン同心に熱を上げている。ドタバタ加減がお気楽で良い。(9/23)
019/195
「街道をゆく12~十津川街道」司馬遼太郎
このシリーズを手にするのも久しぶり。紀行文でありながら、歴史をたどる旅であり、いつもながらその筆の運びに引き込まれる。同じ近畿地方の、それも平城京のすぐ南にこれほどの秘境があったとは、ほとんど意識していなかった。そういえば北海道の新十津川へ入植したのも十津川の人々だったとは、その昔何かの本で読んだのだったろうか。また、続けてこのシリーズを読んでみようかな。(9/23)
020/196
「通天閣」西加奈子
一組の男女が主人公になっているのだが、なぜかこの二人は最後までお互いを認識することなく物語が進む。大阪のミナミで、一生懸命に生きる二人の物語なのだが、なんだかよく判らん。(9/29)
021/197
デジタル技術を使って、日本の古典美術品を再現しようというプロジェクト。今話題の“風神雷神図屏風”などが、当時の極彩色をもって再現されている。考えてみたら、どの作品でも当時の最高権力者などが発注元となって創らせた物だから、金に糸目はつけなかったはず。当時の最高技術が惜しげもなく注ぎ込まれた作品であったろうことは疑いない。でも、きっとそれって、変な先入観が邪魔をして、我々の目には受け入れられないんだろうな。(9/29)
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