8月は23冊で、小説が16冊、その他が7冊という内訳。先月ほどの充実感がないのは残念。
小説では西澤保彦さんのものが3冊もあって、読んだ本人が驚いている。確かに好きな作家ではあるが、新刊が待ち遠しいというような作家ではない。今でもそんな作家は数えるほどしかいないが、きっと私が知らないだけなんだろう。だれか教えてください。
というこことで、今月のお薦めなのですが、残念ながら小説では、これという作品には巡り会えませんでした。
その代わり、それ以外の本では、以外と良い本に巡り会えました。
まずは『日本の納税者』。これは、読む人に自己改革を求める本です。この本を読んで“変えるためには、まず変わらなきゃ”と思えない人は、かなり悲しいです。日本の未来のために、我が子、我が孫、我が子孫のために。皆さん立ち上がりましょう。
そして、次の二冊。『沖縄の不都合な真実』『騙されてたまるか』。
前者は、右寄りでもない、左寄りでもない沖縄の真実に目を向けさせるとても良い本に仕上がっています。
そして後者は、某社新雑誌の記者が著者と言うことで、かなり偏見を持って読み始めましたが、それがなかなか興味深い内容が書かれています。
『真実』って何なんでしょうね。
001/154
「探偵の探偵Ⅳ」松岡圭祐
テレビドラマにもなっているシリーズ最新作で完結編(?)。まぁ、また続編が出てきそうな感じではありますが。今のドラマは、“Ⅰ~Ⅲ”を原作にしているそうなので、この後はⅢでスペシャルドラマが一本つくられ、Ⅳで映画化というのが既定路線か??ドラマと並行で読んでいるせいで、つい具体的な顔が浮かんでしまうのが若干の弊害。(8/1)
002/155
「難民探偵」西尾維新
前から気になっている作家、はじめて読む。ペンネームは前から読んでも後ろから読んでもNISHIISHIN。立命館大学の出身らしい(ただし中退)。軽いタッチの小説であるが、今ひとつおもしろさを感じない。もう少し違う小説も読んでみないと解らないかな。(8/1)
003/156
「笑う怪獣」西澤保彦
全編に“怪獣”や“宇宙人”、“幽霊”等が出てくる何ともばかばかしい小説。一応本格推理小説かとなっているが、いろんなタイプの小説を書く不思議な作家である。(8/2)
004/157
「芥川賞の謎を解く 全選評完全読破」鵜飼哲夫
今年の芥川賞はお笑い芸人が受賞したことで話題になり、受賞作は200万部の大ヒットとなっているらしい(ちなみに、まだ読んでいない)。同賞は、受賞作もさることながら、その選評が全て公開されることで大きく話題にある。その過去の選評の中から特徴的な物を抜き出し、その傾向などからこれまでの受賞作の変遷や特徴を明らかにした物。過去の大作家達の傲慢な語り口や、どうしてもこの賞がほしくて様々なロビー活動をした太宰治の逸話などはとても興味深い。(8/4)
005/158
「騙されてたまるか 調査報道の裏側」清水潔
“調査報道”とは何か、ということについて自身の実例を絡めて紹介している。focusも創刊の頃はシャープな切り口でおもしろかったが、いつ頃から質が下がってしまったのだろうか。権力のチェック機能としてのマスコミのあり方については、著者の考え方に与するが、権力側の端っこにいる身としては、しっかり襟を正していかないといけないと改めて感じ入る。(8/7)
006/159
「まりしてん 誾千代姫」山本兼一
実在の人物らしい。人物像は、かなり脚色してあるようだ。おもしろければそれも良いと思うが、何やらちょっと全体的に調子が軽い。戦国時代後期の九州を舞台に女性の目を通して描かれたところはおもしろい。その辺りは著者の面目躍如というところか。(8/8)
007/160
「貘の檻」道尾秀介
何か、変な小説。大きくはミステリ小説なんだろうが、無視や動物になる夢が長々と描かれる。初期の頃の作品はとてもおもしろかったのだが、最近はかなり路線変更されている。それを評価する向きもあろうかと思うが、残念ながら私には、あまり好きな作風ではなくなっている。今作は、若干昔に帰ってきたかと思うが、まだぴったりはまるという感じではない。(8/8)
008/161
「利休の闇」加藤廣
戦国時代シリーズの一作。主人公は千宗易。元々は破天荒な人物であったはずが、茶道を究めていく中で、徐々に頑固にかたくなになっていく。一方彼の弟子であった秀吉は、大出世を遂げ、主客が転倒する。途中では、信長の死に関する謎を提供しておきながら、結局放ったらかし。何だかなぁ。(8/9)
009/162
「ものづくりを忘れた国は滅ぶ」唐津一、加護野忠男
約20年前に書かれた本。今も昔も、“ものづくり”こそが“実業”であって、“商、流通”は一段下に扱われるものづくり信仰は不滅である。一方、今ではどこまでが“ものづくり”なのか、その境界線を引くことも難しい時代になってきた。そんな時代の“ものづくり”とは。“ものづくり”に固執した国は滅ぶ?(8/9)
010/163
「必然という名の偶然」西澤保彦
架空の都市を舞台にした連絡短編集。笑顔に見える人の顔の裏側を垣間見せるような、そんなゾクッとするような恐ろしさが堪らない。(8/12)
011/164
「沖縄の不都合な真実」大久保潤、篠原章
最近話題になっている某作家もどきの単なる“沖縄たたき”とは大きく一線を画す1冊。明治維新後現在に至るまで日本政府が沖縄に対して行った非道や今現在沖縄が直面している“本当の危機”がよく解る。意図的に仕組まれた“基地依存問題”を解決する道はとてつもなく険しい。これが解決されない限り“戦後”は終わらない。(8/15)
012/165
「漱石先生大いに悩む」清水義範
夏目漱石が書いたとされる一通の手紙が、友人宅から発見されたことで、漱石が大作家としてデビューするきっかけとなた一連の出来事を少し悲しい物語としている。あたかも実際にあったことではないかと思わせる書きっぷり。(8/15)
013/166
「自分を動かす あなたを成功型人間に変える」マクスウェル・マルツ
デール・カーネギーなどに影響を与えたと言われる著作。これは、乱暴を承知で一言で言うと“すべては気の持ちよう”ということになろうかと思います。アドラーではないけれど、全ての結果は、自分がそれを選択したから現れた結果であって、それ以外の何ものでも無い。何かを変えたければ、自分の意思で変える努力をしなければいけない。自分を変えたいときも然り。(8/15)
014/167
「日本の納税者」三木義一
“納税者”の役割とは何か。本来なら税金の使途をしっかり監視することがその最大の役割なのだと思う。しかしながら実態は全くそうはなっていない。その原因の一つが“源泉徴収”であることは間違いないだろう。税金を払っていることにあまりに無頓着であるため、その使途に全く関心が持てなくなっているのではないか。この本には、私たちが納税者として本来果たさなければいけない“義務”と本来持っている“権利”について書かれている。これらは我々が“常識”として思っていることとは全く違っている。先日、たまたま会った国税局の方にこの本の話を仕かけたが、全くご存じなかったのは、ちょっと残念。(8/19)
015/168
「キネマの天地」井上ひさし
井上ひさしの代表的戯曲。読み方が下手なせいか、上手く情景を頭の中に描くことができない。戯曲の読み方には“コツ”が必要だとある人から聞かされたことがある。どうやったらつかめるのだろう。(8/19)
016/169
「下戸は勘定に入れません」西澤保彦
誰かと一緒に酒を飲むと、その人と一緒に時をさかのぼってしまう“特異体質”をもったオヤジの物語。一応完結する小説が連続して編まれていながら、全体として一編の小説となる。主人公の数十年の数奇な人生の全ての原因は、ここに書かれた数日間に起因している。って、ちょっと切ない。(8/22)
017/170
「禁断の魔術」東野圭吾
もともとガリレオ探偵シリーズの短編として書かれた物を、改めて長編に仕上げた物。従来にも増して主人公が“人間くさく”描かれている。どうも、ドラマや映画がヒットしたせいで、特定の俳優の顔がちらついてしまうのは、いかんともしがたいところ。最近のこのシリーズは、どうも映像化が前提で書かれているようで、ちょっとがっかり。(8/22)
018/171
「ゴミの定理」清水義範
短編小説集。特にテーマは定められていないように見受けられる。いずれも意表を突かれる題材で読みながらにやりと笑ってしまう。彼らしい作品群。(8/23)
019/172
「里海資本論~日本社会は「共生の原理」で動く 」三木義一
“里山資本主義”に続く、NHKスペシャルの取材をもとに書かれた本。この本では瀬戸内海を舞台に、その海を“耕し“、”育てる”ことで地域内での経済を循環させ抵抗とする取り組みが紹介されている。ともすれば、“公共の物”である“海”に対する責任感と行ったものは軽く見られがちであるが、“公共物”であるが故に、みんなが責任を持つべきである。とっても当たり前のことに改めて気づかされる。(8/26)
020/173
「掟上今日子の備忘録」西尾維新
今年の秋からドラマ化されるそうである。彼の本を読んだのは、これが2作目かな?とても評判の作家だそうだが、自分にはあまりしっくりと来ない。相性が悪いのかな?(8/26)
021/174
「北乃杜高校探偵部」乾くるみ
ステキな青春小説なのである。ミステリ要素は、、、それほどない。」(8/29)
022/175
「飲めば都」北村薫
とにかくお酒が大好きな女性が主人公のライトノベル。酒の上での失敗を重ねつつ、最後はハッピーエンドになるところが良い。(8/30)
023/176
「誰そ彼れ心中」諸田玲子
最近話題の女流の時代小説作家の一人。初めて読んでみる。ミステリの要素をはらみつつも、ある種のホラー小説のような要素も強い。太古の昔から、最も恐ろしいのは“人”であるとされてきた。この小説も、そんな“人”の恐ろしさがしっかりと描かれている。この著者の得意分野は何だろう。少し気になる。(8/30)
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