平成最後の月は計13冊。うち小説が10冊、その他が3冊という結果になりました。思いなしか小説が多いですね。最近では、何となくこれが通常のペースとなった感があります。どうも通勤時にあまり読めなかったので、新書が2冊だけとなってしまいました。
まず小説ですが、この月も本屋大賞候補作を2冊読みました。
特に森見さんの“熱帯”はとても期待しながら手にした本でした。下の感想にも書いてますが、前半と後半が全く違う小説のようで、とても不思議な印象を受けました。でも期待どおり面白かったです。
“ひと”は、主人公の設定があまりに“良い人”すぎて、私のように根性が曲がっている人間にとっては素直に読むの難しい小説でした。もちろん、それさえ気にせず素直に読めれば心温まる物語になっています。やっぱ小説は素直に読まなきゃダメだよね。反省します。
そのほかは、とりあえずミステリ小説が多かったですね。ちょいと偏りすぎかなとは思いますが、好きな物はしょうが無い。
若竹さんと道尾さんは安定の面白さ。お好きな方も多いと思いますが、やはり安定の面白さですね。それから、大倉さんの“福屋警部補”シリーズも楽しみに読んでいます。これもお薦め。こうやって見ると、結構好きな物ばかり選んで読んでいたことが分かりますね。
小説以外では三冊しか読んでいないのですが、これはいずれもお薦めです。
いろんな書評で取り上げられたり、人から勧められて読んだ本ばかりなので、ある意味一定評価された本ばかりなので、それは当たり前かもしれませんね。でも実際面白かったので、勧めてくれた方々には感謝です。
こうやって、自分の感想を載せていると、いろんな方からもお薦めの本を教えて頂きます。とてもありがたく読書の参考にさせてもらっています。本当に感謝しています。
ということで平成最後の読書感想文でした。
001/040
「熱帯」森見登美彦
こちらも本屋大賞候補作。最後まで読み通した者がいない不思議な小説“熱帯”を巡る物語。前半と後半が全く別の小説の体をなしており、前半は代表作である“夜は短し~~”の用に進み、後半は“有頂天家族”の様な感じかな。物語の中でまた別の物語が語られる入れ子のような小説で、それが何層にも渡っている不思議さ。この小説の主要なテーマになってる“千一夜物語”が、同様の形式を取っているらしい。この小説を読んだ人のほとんどが、その“千一夜物語”を読みたくなったと言われており、おかげで岩波文庫が売れているらしいのですが、ご多分に漏れず私も同様の感想を持ちました。面白かったです。
(4/6)
002/041
「明智光秀」早乙女貢
彼の小説を読んだのは大学時代に読んだ“北条早雲”以来で30数年ぶり。光秀を巡る小説だと、本能寺の変がクライマックスになるのだが、この小説ではまだ中盤であり、この本の中では変後の明智光秀と彼を付け狙う人物が描かれている。光秀は山崎の合戦で秀吉に敗れ、敗走中の山科小栗栖の山中で打たれたことになっているが、それは影武者で、その後も生き残り、別の人物として豊臣氏の滅亡に大きな力となったという伝説がある。本書ではその伝説を基に物語が展開されており、ちょいと期待とは違う本でした。ある種のトンデモ本ですね。(4/7)
003/042
人気シリーズの後日譚である。主人公の二人が結婚し、生まれた娘も合流し、新たな設定で物語が進みます。あとがきによると、作者は再びこの設定で物語を書き続ける意思を持っているようで、ファンの皆様には楽しみなことでしょう。私は、物語としてはまぁどうでも良いかなと思うのですが、ここで取り上げられる本には大いに興味があります。そういう意味では興味深いシリーズなのです。(4/8)
004/043
「ひと」小野寺史宜
本作も本屋大賞候補作ですが、残念ながら第二位で大賞とはなりませんでした。主人公はとても良いやつで、わずか三年の間に父を交通事故で、母を突然死で亡くし、せっかく入った大学を中退したところから物語は始まる。そんな境遇にも関わらず、誰を恨むこと無く謙虚にまっすぐに生きていく様は気持ちいい。その主人公の周りをそれにつけ込もうとする人たちと彼を支えようとする人たちが取り巻き、はらはらさせながら物語が進む。そんな中で、最後の最後に主人公が本当に欲しいものに気づき、それを声に出すところで物語は終わります。帯に書いてあったように“感涙にむせぶ”とはなりませんでしたが、気持ちの良い物語でした。(4/9)
005/044
「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること」河合雅司
通勤のお供で読んでいた一冊です。ベストセラーとなった前著と書かれている中身は同じで、それを少しブレークダウンして、私たちの“暮らし”がどのように変化するのかという視点で書き改めた物です。これを読む限り、明るい未来は想像できず、私たちの娘たちの世代に負担をかけていかなければならないことに申し訳なく思うばかりです。こうなってしまったのは“○○のせい”と言い切れないのが逆に情けなくて、すでに亡くなってしまった人も含めた我々“大人たち”が背負わなければならない十字架のような気がします。(4/10)
006/045
「数えからくり 女錠前師 緋名」田牧大和
時代物のミステリを書いている作家というイメージ。今作も何気なく借りてきて読んだのだが、どうやらこれはシリーズ第二作。登場人物の人間関係はその1作目を読まないと分からないという大いなるミス。これだけを読んでも面白いのですが、前作で描かれた凄惨な事件が、登場人物それぞれの人格形成に暗い影を落としているようで、それを飛ばして読むとむずがゆい感じ。失敗した。(4/14)
007/046
「南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる」綿貫淳子
南極越冬隊で一年間調理退院として勤務した女性の体験談。南極での厳しい生活がユーモラスに描かれている。テレビ番組で彼女が考えた“悪魔のおにぎり”というのが紹介され、いろんな媒体で面白いと評判になっていることから、図書館に予約して借りてみた。越冬隊は、一年間に使用するすべての食材を、日本からの出発前や途中寄港するオーストラリアで積み込む以外、途中で補給することができないので、その見積もりが大変である。また新鮮な野菜などは、とてもほしくなるだろうなぁ。非常に軽い調子で書かれているので、1時間ほどで読めてしまいました。(4/15)
008/047
「スケルトン・キー」道尾秀介
サイコパスの物語。サイコパスというのはある種の天才で、誰もが苦しみながらたどる道を一気に越えていく天賦の才能を持った人。滅茶苦茶面白かった。終盤のどんでん返しから、続編を想像させる結末まで見事しか言えない展開です。もし未だ読んでいなければ、是非とも読んでください。(4/20)
009/048
「続・僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」池田理代子、平田オリザ、彬子女王、大隅良典、永田和宏
ある方から預けられました。とある大学での講演とその後の対談を集めたものです。この中では平田オリザさんのコミュニケーション論が秀逸でした。人と人とのコミュニケーションが成り立つためには共通の環境が必要です。たとえば言語、たとえば経験、たとえば知識。そういった共通の環境がない場面で試されるのが、コミュニケーション能力です。これはなかなか身につかないよ。
010/049
「黒猫・モルグ街の殺人事件 他5篇」ポオ
これは、以前読んだ文学論集で取り上げられていた“盗まれた手紙”を読みたくて買ったものでしたが、初めて読んだ“モルグ街の殺人”が思った以上に面白かった。世の中のミステリ通の方にとって、この小説は入門編中の入門編。これを読んでないやつは潜りだと言われても仕方がない位の名作です。シャーロック・ホームズもここから生まれたんだ。(4/24)
011/050
「殺人鬼がもう一人」若竹七海
大好きな作家の最新作です。主人公として活躍する悪徳警官が素晴らしく魅力的です。連作の短編集なのですが、一つ一つテイストも違っていてとても面白いです。是非とも菜々緒さんの主演で映像化して欲しい。なんだか目に浮かびます。気持ちのよい勧善懲悪を期待される方にはとてもお薦めできませんが、ハードボイルドミステリをお好みの方にはお薦めです。めちゃくちゃ面白いよ。(4/28)
012/051
「かわたれどき」畠中恵
“まんまこと”シリーズの最新作です。主人公の麻之助が成長して町名主として立派につとめを果たすようになります。そして、あの悲しい出来事から立ち直って、新たな幸せを手に入れようとしています。この次が気になる。(4/29)
013/052
「福家警部補の報告」大倉崇裕
平成最後の一冊はこれでした。いわゆる倒叙式のミステリなんですが、解説にも書かれているとおり、すべての物語が犯罪実行者目線で描かれているのが斬新で面白い。シリーズ3作目なんですが、どれもお薦めです。また続編が出ないかな。(4/30)
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