なんと言うことか、11月は9冊しか読めませんでした。内一冊は上下2巻の小説でしたので、10冊と言っていいのかもしれませんが、一桁になったのは、いつ以来でしょう。
9冊の内、小説が6冊、それ以外が3冊という結果です。
そんな中での、お薦めの一冊ですが、今回は全く迷うことなし。宮部さんの“この世の春”。最高でした。傑作だと思います。感想にも書いてありますが、最初は“妖し”とか“この世ではないもの”などが跋扈する物語かと思っていたのですが、読み進めて行くにつれ、そういった要素は姿を消し、ある意味非常に現代的な要素も兼ね備えた素晴らしい小説に仕上がっています。この冬に読む本に迷ったら、是非お買い求めください。絶対損はいたしません。
001/143
文句なしに今年ナンバーワンの物語です。外れのない作家の名に恥じない一作です。ともすればオカルトに行ってしまいがちな彼女の真っ当な逸品です。現代医学の知己にも頼りつつも王道を外さない力量には参りました。上下2冊の長編ですが、恐らく5~6時間もあれば読み切れます、と言うかアッという間に引き込まれ、一気に読んでしまいます。滅茶苦茶面白い作品です。(11/5)
002/144
「真夏の雷管 道警・大通警察署」佐々木譲
彼の小説は結構ハマります。特にこの北海道警シリーズは面白い。昔はミステリと言えば有能な探偵と間抜けな警察というのが通り相場でしたが、最近はよりリアリティが求められるのか、地道な捜査で犯人を挙げる警察官が主人公となったミステリが幅をきかせているようです。とはいえ、本流から外れたような刑事が、独特の嗅覚で真相にたどり着くというのはお約束のようですが。本作もその例には漏れないのですが、それを置いても一気の読めてしまう面白さです。(11/12)
003/145
「AX」伊坂幸太郎
いっときは好きで読んでいた作家ですが、最近は少しついて行けなくなることがあって、しばらく遠ざかっておりました。今作は、恐妻家の殺し屋というアンバランスな組み合わせの男が主人公となったシリーズ物の完結編で、これなら大丈夫かなと思って読んでみました。昔に比べてかなり理屈っぽくなっているところはあるものの、比較的最初の頃に近いような読後感です。(11/19)
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「セックスと恋愛の経済学」マリナ・アドシェイド
原題“DOLLERS&SEX”と、かなり刺激的なタイトルですが、歴とした行動経済学の本です。本書では、恋愛も結婚もある種の経済活動と想定し、それにかかるコストとメリットを勘案して、意思決定していると考えます。何カ所か計算式も出てくるのですが、前提にしている数字が結構エエ加減で、それを前提に書かれてもなぁと言う気がします。ただ、この手の研究は決して舞えたらしい物ではなく、先行する研究が数多くあって、そこで得られたデータを頻繁に引用しつつ論が進められていきます。面白い本ではあるのだけれど、著者は女性であるにも関わらず、翻訳者が男性であることもあって、かなり扇情的な訳になっているのが残念です。(11/19)
005/147
「ネメシスの使者」中山七里
彼の小説も結構好きで、外れっぱなしの“このミス大賞”受賞者の中では、数少ない当たり作家です。ネメシスというのは、古代ギリシャの女神の名前で、“義憤”とも訳されている。物語は、凶悪犯罪を犯したにも関わらず極刑を免れた犯罪者の家族が、連続して殺害されるという事件がメインストリームとして展開される。そしてその犯人を捕まえてみれば、、。そして、終わったはずの事件が実は、、。という物語。彼にはつきもののおどろおどろしいシーンもなく、安心して読めます。(11/23)
006/148
「宅配クライシス」日本経済新聞社編
今年の春先にマスコミを騒がせたヤマト運輸の危機を開設した日本経済新聞の連載記事を元に構成された本。何度も同じ内容の記事が出てくるのはやむを得ないところ。日本では、古くから“物流”に対する認識が低く、先の大戦で悲惨な戦争に突入していったのも兵站について何も考えずに戦線を拡大していったことが原因であると言われている。決して気合いで乗り切れるようなものではなく、単なる“コストセンター”でもない。“宅配ネットワークは社会インフラである”と言われた方があるらしいが、それも違うんじゃないか、あくまで“サービス”の一つなのではないかと思う。(11/23)
007/149
「とるとだす」畠中恵
今は何シリーズと言っているのか、いわゆる“しゃばけシリーズ”の最新刊なのである。安定の面白さで、安心して読めます。今作でも、若旦那が成長した姿を見せてくれます。(11/26)
008/150
「観応の擾乱」亀田俊和
室町幕府の成立期、初代将軍である足利尊氏とその弟である足利直義との間で起こった戦闘で、凡そ20年にわたって行われた。ちょうど南北朝期に重なっていることもあって、何が何やら訳の分からない戦闘だというのが私の知識。結果的には、この戦闘を通して尊氏の権力基盤が強固なものになり、幕府の体制も固まったとも言える。そういう意味では“必要な”戦闘だったのかなとも思えるが、読んだ後も、何のための戦いだったのかは分からないままであった。本としては、戦闘の歴史を丹念に説明しようとするあまり、とても読みづらい構成になっています。もっと自由に筆を運んでもよかったのにとも思うが、こういう書き方しかできないような騒動だったのかもしれませんね。(11/26)
009/151
「つぼみ」宮下奈都
彼女の新刊なのだが、実はここ十数年の間に書かれたものを集めたもので、残念ながら新作はない。いずれも凜とした素敵な女性が主人公で、うち数編は“スコーレNo.4”のスピンアウト小説。読みやすい本でした。(11/26)
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