2016年3月12日土曜日

2016年2月

2月はぐっと少なく合計13冊。うち小説が7冊、その他が6冊という内訳でした。
なぜ少なかったのか、記憶が定かではないのであるが、体調もあまり優れなかったのと休日は本を読むより出歩くことが多かったことが理由かな。

さて、この少ない中で一冊を選ぶのはとても難しいのですが、小説では、あえて40年近く前に書かれた『古本屋探偵の事件簿』を挙げたいと思います。

この本を書かれた紀田順一郎氏は、評論家としてのほうが有名かと思うのですが、実は古書をテーマにした小説をいくつか書かれています。とはいえ、私も全く知らなくて、今回たまたま図書館でおもしろそうなタイトルに惹かれ、およそ一ヶ月掛けて読み切ったものです。
最近ベストセラーになったビブリア堂シリーズのように、古書店の店主が古書にまつわる謎を解いていくという物語で、40年前の神田神保町の風景が丁寧に描かれ、とても魅力的な一冊になっています。マニアお勧めの一冊です。

その他の分野では、これといって心惹かれる本は少なく、自信を持ってお薦めできるものはありません。でも敢えて挙げるなら、まずは東日本大震災関連の『小商いのすすめ』。これは書名とはあまり関わりなく、震災を契機に経済活動を含めた様々な活動のあり方をもう一度考え直そうよ、というものです。

また、もう一冊『だから、生きる』も良かったです。これも芸能人の書いた本ですが、著者の前半生を振り返って、将来に向かって生きていく強い意志が感じられます。詞を書く人ですから、聞き手(読み手)の心をつかむ言葉の選び方も上手いのでしょうね。

(001/022)
恋する原発」高橋源一郎
福島原発事故後に、チャリティのアダルトビデオを作るという、なんやらハチャメチャな小説。この小説から、何をメッセージとして受け取ればいいのだろうか。私には理解できなかった。これも、書店ガール3の中で挙げられていた本。(2/6)

(002/023)
小商いのすすめ」平川克美
スモールビジネスに関するノウハウ書ではない。明治維新以降、日本は国際経済の中に組み込まれ、資本主義の原理に中で生きて行かざるを得なくなった。しかしながら、常に自らの利益を最大化する方向にしか進まない資本主義は、早晩行き詰まることは間違いない。それは、先年話題になったピケティの指摘にもあるところ。今後私たちが目指すべき資本主義は、どうあるべきものなのか。東日本大震災と福島原発事故を契機に、今一度じっくり考えよう。(2/7)

(003/024)
ハイデガー哲学入門『存在と時間』を読む」仲正昌樹
入門と銘打ってあるので、もう少し読みやすいかと思ったが、とても手に負えるモノではなかった。最後まで活字を追うのがやっと。ハイデガー自身は、戦前から戦中に掛けてドイツで活躍した哲学者なのだが、どうもナチスとの関係も取り沙汰されていたらしい。使われる単語も、彼が新たに作ったドイツ語を無理矢理の本後にしたような言葉が、次から次へと現れて、その概念をつかむことが難しい。とにかく参った。(2/7)

(004/025)
高校時代に剣道を通じて友情をはぐくんだ女性二人を主人公とする武士道シックスティーンから続く三部作のおまけ。大学へ入ってから、卒業、結婚し、そのうちの一人が母となるまでの数年間を描く。武士道という日本人の心を崇敬するあまり、えらく国粋的なセリフが出てきて、鼻白む場面もあるのだが、それを除けば、主人公二人の魅力が随所に表れ、完結編にふさわしい内容になっている。(2/11)

(005/026)
南海トラフ地震」山岡耕春
今いちばん発生の可能性が高いと言われる南海トラフ地震のメカニズムを開設する本。ちょうど、京都から東京へ向かう新幹線の中で読んだのだが、そんなところでは読んじゃいけない本だった。新書版でありながら、専門家が正確に書こうとして、読者には解りにくくなってしまうという一例。(2/12)

(006/027)
うずら大名」畠中恵
時代物の新シリーズ。とはいえ、この先続くかどうかは不透明。主人公は、部屋住みの身の上だったものが、弾みで大名家を継いだものの、今度は身内の讒訴で若くして隠居を余儀なくされた大殿様。同じように、図らずも名主を継いだ、昔の知り合いと共に幕府を揺るがす大きな事件の謎を追う。あまりに大きすぎて、突っ込み処満載なのだが、読み物としてはまずます。(2/13)

(007/028)
工学部ヒラノ教授」今野浩
後先になったが、先月読んだシリーズ本の1作目。大学の工学部の内部事情を綴った物。この著書の最後にも少し触れられているが、最近大学の理系中心化を進めようという動きがあって、文化系の学科、特に哲学や文学などの人文系の学科を縮小しようという暴挙が進められている。今日たまたま視たテレビで、北朝鮮の学校教育現場でも理系教育が進んでいて、将来兵器の開発を進める優秀な人材を作るために行われているというレポートがあった。ひょっとすると日本もその道を歩もうとしているのか。何か恐ろしい気がする。(2/14)

(008/029)
古本屋探偵の事件簿」紀田順一郎
時代は昭和五十年代後半。主人公は神田神保町に店を構える古書店の店長。本探しを請け負う傍らで、なぜか探偵のような業務を引き受けてしまう。時折顔を出すアルバイトの大家の娘が、私と同年代。昭和のあの頃って、こんな風だったのかなぁと思いながら読んだ。あの頃、高松の住まいの近くには本格的な古書店がなく、京都で働くようになり、市内の中心部に古書店がたくさん並んでいる風景に、心躍らせたことを思い出します。(2/18)

(009/030)
かたづの!」中島京子
彼女の本を初めて読む。元々は現代小説を専門に書いている人が、初めて歴史小説に手を染めたもの。史実に基づくフィクションと描かれているとおり、かつて陸奥八戸の南部藩で、ただ一人実在した女性城主(女亭主)を主人公にした物語。権謀詐術渦巻く時代に、夫と嫡男を謀殺され、乗っ取られそうになった家を、自らが亭主となることで守り、後世に伝えていく。もちろん平坦な道ではなく、数々のエピソードが綴られる。このうちどの話が実際に伝説として残されているのか、非常に興味がある。巻末に載せられている参考文献も大いに気になるところである。(2/21)

(010/031)
だから、生きる」つんく
咽頭がんで声を失ってしまった著者の半生記です。昨年の近畿大学での入学式での姿は、かなり衝撃的でした。のどを使うことでできるお仕事ですから、その声が出なくなってしまうということは、どれほどのショックであったか想像すらできません。でもその事実としっかり向き合い、前向きに生きようとする著者には尊敬の念を覚えます。2/24)

(011/032)
彼女には珍しい(?)学園もの。全く接点がないような優等生と落ちこぼれ、そして何をとっても平均点という3人を主人公とした連絡小説集。最終話でそのなれそめが明かされ、平均点の目立たない彼女が変わっていく様が描かれる。いい感じの小説です。(2/27)

(012/033)
ものづくりの反撃」中沢孝夫、藤本隆宏、新宅純二郎
インダストリー4.0とか“IoT”といった最近の流行を徹底的に批判し、日本経済の本当の実力について、3名が語り合うという構成になっています。私自身は、決してものづくり至上主義ではなく、むしろ懐疑的にとらえている方なのですが、この書の最後に藤本先生が書かれている『良い現場』が長い奮戦の中で学んだ『良い設計の良い流れ』作りの能力構築能力を、いかにしてサービス業や農業などに普及させていくことは非常に重要だと思う。これこそが我々が望むところなのです。じゃぁ、どうすればそれは叶うのか。それが問題だ。(2/27)

(013/034)
3時のアッコちゃん」柚木麻子
ベストセラーとなった前作の続編である。今回はアッコ女史はそれほど登場しない。でも存在感はしっかりとある。そんな小説になっています。(2/28)


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