4月は合計19冊。うち小説が8冊、その他が11冊、うち新書は5冊でした。
読みたかった本も、図書館の順番が上手く回ってきて、比較的順調に読めた一月だったと思っています。
さて、この中でこの月の一冊を選ぶのに、結構手間取っています。
小説では宮部みゆきさんの“悲嘆の門”が、かなり前に買ったままなかなか手が出せていなかったところ、ようやく読むことができました。感想にも書いたとおり、あまり好きな路線ではないのですが、それでもやっぱり素晴らしく読ませる本です。
さらに、かなり以前の本ではあるのですが、井上ひさしさんの“言語小説集”は良くできた短編集です。何度読んでも良いですね。遺作となった“東慶寺花だより”が映画化されますが、楽しみです。
そして、その他の本ですが、これが良い本ばかり。 “安倍官邸の正体”“最貧困女子”“賢者のリーダーシップ”“究める力”“ハーバード式脱暗記型思考術”“君は山口高志を見たか”
どれもこれもお薦めで、絞りきれません。
あえて絞り込んで、まず“究める力”。改革に邁進する著者のやり方、考え方、責任感。それほど特別なことが書かれているわけではありませんが、発想の転換に繋がり、今の私には特にフィットしました。
もう一冊“ハーバード式脱暗記型思考術”は、思考術と言うより、アメリカ特にハーバードでの学び方の紹介にページの多くが費やされています。もし、本当にこんなことが当然の様に行われているとしたら、日本は絶対に勝てません。本当に日本を世界に中で一目置かれる存在にしたいのであれば、大胆な発想の転換が必要でしょう。それを阻害しているのは、一体何なのか。とても考えさせられました。
001/058
「安倍官邸の正体」田崎史郎
二度目の登場となった安倍政権の本当の強さは何処にあるのか。第一次政権とどこが違うのか。その失敗を如何に今に活かしているか。それらのことが本当にわかり易く書かれている。昨年末の突然の解散総選挙。世間は驚いたが、まさに妙手であった。しばらくはこの政権は安泰なのだろう。お願いだから間違った方向にだけは進まないで欲しい。(4/3)
002/059
「密売人」佐々木譲
北海道警察シリーズ。タイトルのある密売人こそが真犯人、それも警察内部の人間。そして彼が密かに売り渡したのは、人の命。(4/5)
003/060
「アポロンの嘲笑」中山七里
東日本大震災とそれに誘発された福島原発事故と同時に進むテロ事件を描いた小説。いつものおどろおどろしい描写を抑え、原発の裏側が丁寧に描写されていて、つい引き込まれて行く。おそらく著者はこの偽善こそを描きたかったのだろう。途中に挿まれる怒りの声がそれを喚起させる。(4/5)
004/061
「文学強盗の最後の仕事」井上ひさし
井上ひさしはかなり好きな作家なのである。これは彼のエッセイ集であるが、中には超短編とも言える物語も挿まれている。もう新作は読めないのだけれど、また彼の小説を読みたいなぁ。(4/5)
005/062
「おとり捜査官1触覚」山田正紀
何かおもしろそうかなと思って読んだんだけど、これって一歩間違えば単なるエロ小説?境界線上かな。(4/7)
006/063
「医学探偵の歴史事件簿 ファイル2」小長谷正明
歴史上の人物やできごとにつき、過去の文献などを基に医学的な見地からその謎を解説した物。第2弾なのだが、実は第一弾は読んでいない。そのうち手にしてみよう。(4/8)
007/074
「最貧困女子」鈴木大介
昨年の新書大賞第5位となった問題作。とにかく紹介されている事例が凄すぎる。今の日本でこのような現実があることが衝撃的でもあるし、一方でそういう現実も何となく想定の範囲内かなとも思ってしまう。紹介されている女性達は、まだ若い人が多く、そういった人たちが年齢を重ねていくと、この先どうなってしまうのだろうか、想像するだに恐ろしい。一人の力では救うことができない。かといって、今のこの社会で彼女らを救う術を見つけることはできるのだろうか。(4/8)
008/075
「キャロリング」有川浩
彼女らしいラブコメの要素をグッと抑えつつも、読み始めたら止められない良い作品に仕上がっている。登場人物はみんな何某かの心の闇を持っており、そのことが全体のトーンを抑えている。最後の主人公と対峙する金貸し男が、良いキャラに仕上がっていて、結構気に入った。(4/10)
009/076
「言語小説集」井上ひさし
以前単行本版を読んだことがあるのだが、最近数編の新収録短編を合わせて文庫本化されたのを見つけて読んでみた。何度読んでもおもしろく、著者の幅の広さ、奥の深さを改めて感じさせる良い本になっている。冒頭の『括弧の恋』は何度読んでも秀逸。さらに新収録編の中では、最後の『質草』がホロリとさせながらも、古典落語の人情話のような小さな落ちがついていて、これまたよろし。(4/11)
010/077
シリーズ6作目では、絡まり合う登場人物達のルーツが少しずつ明かされていく。シリーズが始まった頃は、もう少しライトな感じもあったけれど、今作は非常に重く感じてしまう。そして、次回の7作目がシリーズ完結編となるらしい。(4/13)
011/078
「賢者のリーダーシップ」遠藤功
様々な分野での5人のリーダーへのインタビューと、彼のリーダーシップ論という構成。リーダーシップを考える上での前提条件が参考になる。①リーダーシップは目的ではなく手段である。②それぞれの役割に応じたリーダーシップが求められる。③100人のリーダーが居れば100とおりのスタイルがある。④100人の人間が居れば100人ともリーダーになれる。そして、日本人に向いたリーダーシップとして、組織の中に溶け込み、内側から組織の力を燃焼させ、その力を引き出そうとする“溶け込むリーダーシップ”を推奨する。(4/14)
012/079
「縮小都市の挑戦」矢作弘
かつて巨大企業の城下町だったアメリカのデトロイト、イタリアのトリノを例に、都市の縮小の様子と再生に向けたそれぞれの取り組みについて記す。規模の違いはあるが日本の各都市も同様の問題を抱えている。最後に日本の例として京都府北部についての記述もあるが、残念ながらこれという処方箋が示されているわけではない。我々が自分たちの知恵で立ち向かっていかなければいけない問題である。(4/20)
013/080
「究める力」藤井裕幸
先日読んだ遠藤功氏のリーダーシップ論の中でインタビューに答えておられたのが気になって即購入した物。実はこのサンドピックという会社のことも、こんな目覚ましい改革を遂げられたことも全く知らなかった。前に遠藤氏の著でも触れられていた「改革の抵抗10項目」を如何にして克服されたのかが特に気になった。如何に多数の人から同意を得るか。そのためにはどうしなければいけないのか。非常に参考になる。(4/20)
014/081
私の大好きな宮部さんの近著。残念ながら、彼女の書くいくつかの分野のうち若干苦手な分野であったのが惜しい。“英雄の書”に続く物語で、現実世界と仮想世界が混じり合うある種のSF小説なのだが、むしろロールプレイングゲームのストーリーに近い。しかしながら、これくらいぶっ飛んだ世界を舞台にしているからこそ、思い切った人物設定やストーリー展開も可能になるのだろう。ただ、“荒神”は許せて、本書になると少し違和感を持ってしまう私って、心が偏狭なのかも。(4/24)
015/082
「八月の六日間」北村薫
アラフォーの“山ガール”が会社の休みを利用して山で過ごす数日間を、それぞれ一章としてつなげた小説。おもしろいのは、全体で3年ほどの時間が経過し、その間にかつての恋人との複雑な関係や、親友の死など本来ならメインストリームとなるできごとを、さらりとト書きで説明してしまい、山で過ごす○日間だけを取り出して、小説に仕立て上げる発想の転換。映像にしてもおもしろいかも。(4/26)
016/083
「イスラム国の正体」国枝昌樹
過去に中東地域での赴任経験がある元外交官による。“イスラム国”なる異形の“国家”が誕生した歴史などが丁寧に書かれている。
著者自身はかなり言い切る形で論を進めていくが、おそらく本当のところは、想像の域を出ない。このグループがどうして他国から人を引きつけるのか。その資金源はどこにあるのか。遠からず自壊していくだろうとは思うが、いずれにしても、放置して良いグループではない。(4/27)
017/084
「マンガでやさしくわかるアドラー心理学」岩井俊憲
最近はやりのアドラー心理学の入門書の一つ。私の理解は十分ではないと思うが、アドラー心理学の肝は“人間の行動には、その人特有の意思を伴う目的がある=目的論”ではなかろうか。別の書で言われる“引き寄せの法則”とも近い。また、“自己決定”という単語もキーワードになる。全ては、自分が選択した結果であるなら、常に“冷静”であること、目をそらさず“勇気”を持って見つめることも重要である。そのためには“他者の目を持って見、他者の心を持って感じ”、“困難を克服する活力”を身につける必要がある。“怒り”や“嫉妬”“劣等感”は、その感覚を鈍らせる。(4/28)
018/085
「ハーバード式脱暗記型思考術」石角友愛
アメリカの高等教育機関で実施されている“考える学習”について、著者の経験を下に紹介されている。とてもわかり易く、まさに今の日本には足りない教育だと言うことが明らかになる。と考えて、ふと気がついた。ひょっとして、このような教育の形ではなく、“型にはめ”、“考えるのではなく”、“与えられたことを取り入れるだけ”の教育を進めているのは、このように“自立的に考える市民”が育たないようにしているためのではないか。これって陰謀論。(4/29)
019/086
「伝説の剛速球投手 君は山口高志を見たか」鎮勝也
今から40年前に稀代の剛速球を投げる投手が居た。残念ながら私はテレビでしか見たことがないが、小さな体を思い切り使って投げる姿はうっすらと記憶している。残念ながら阪急ブレーブスという地味な球団にいたため、大きく取り上げられる機会は少なかったが、その豪腕で球団を初の日本一に導いた。今こうして、彼の足跡をたどってみると、当時は普通の姿だったのではあるが、如何に酷使されていたのかがよく判る。今もコーチとして後進の指導に当たり、伝説を生み出し続けていることに感服する。(4/29)
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