2015年2月は、20冊、うち小説が13冊という内訳になりました。相変わらず読みやすい小説が多いですね。そういえば、月の後半は遅く帰ることが多く、就寝前にゆっくり読む時間がなかったように思います。
さて、今月印象に残った本ですが、実は読む前からとても楽しみにしていた本が、以外と期待はずれだったという物が比較的多い、私的には外してしまった一ヶ月という感じです。
その中で、あえて選ぶとしたら、小説では“幕が上がる”でしょうか。劇作家・演出家の第一作と言うことで、あまり期待していなかったのですが、あに図らんやの面白さ。高等学校の演劇部を舞台にした素晴らしい青春ストーリーに仕上がっています。
同じく“くちびるに歌を”は、離島の中学校の合唱が舞台になっています。これもなかなかおもしろかった。2冊とも娘に読ませたいと思っています。
そして、それ以外の本の中では、“エースと呼ばれる人は何をしているのか”が、予想を裏切るくらい良かった。非常にわかり易い言葉で、書かれていて、しかも誰もが納得する中身で、しかも誰もができることではない。自信満々で鼻持ちならないような奴には読んで欲しくない(きっと読まない)けど、自分になかなか自信が持てなくて、迷っている若い人たちに読んで欲しい。
001/024
「あやし うらめし あなかなし」浅田次郎
浅田次郎の短編怪談集。どれもこれも味わい深い作品ばかり。ストレートに幽霊などが出てくるわけではないけれど、背筋がゾッとしてくるような作品ばかり。(2/1)
002/025
「きりこについて」西加奈子
今年の直木賞作家の作品をとりあえず読んでみようと借りてきた。独特の文体なのだが、これは彼女の特徴なのだろうか。(2/8)
003/026
「晴れた日は謎を追って がまくら市事件」伊坂幸太郎、大山誠一郎、伯方雪日、福田栄一、道尾秀介
がまくら市という架空の都市を舞台に、五人の作家が書き綴る連作集。ちゃんと前の事件が次の作家の作品につなげてあるなど、構成もしっかりしている。良くできた作品集になっている。第二弾もあるようなので、読んでみようと思う。(2/8)
004/027
「知の格闘~掟破りの政治学講義」御厨貴
彼の書いた物は結構好きなのです。とは言っても、時折新聞に掲載される論評くらいしか読んだことはないのですが。それにしても人に歴史を語らせるというのは、とても興味深い作業ですね。どんな人でも、自分を大きく見せたいし、過去の自分の行動を正当化したいと思う。当然のことながら私自身もそうなので、いつか自分の都合の良いような歴史を記録しておかないと。(2/9)
005/028
「くちびるに歌を」中田永一
いやぁ、いい話やったなぁ。お約束の泣かせるためのストーリー展開やったけど、まんまとそれに乗せられた。それはそれで、悪くはないけど。(2/9)
006/029
「維新 京都を救った豪腕知事 槙村正直と町衆たち」明田鉄男
どうも、この男は相当自己顕示欲が強く、傲岸な人物であったらしい。しかしながら、明治維新で衰退する京都を救った大恩人であることは間違いがない。しかしながら、それ以上に心を打つのは、京都の町衆の心意気である。多分に脅され、やむにやまれるところもあったであろうが、いわゆる番組小学校が整備されたのは、彼らの功績である。そのおかげで今の京都がある。(2/11)
007/030
「リカーシブル」米澤穂信
集団の猛進と狂気。タイトルには“再帰性”という意味があるそうですが、なぜこの小説にそのようなタイトルがついているのかは理解できませんでした。また、舞台仕掛けがあまりに大がかりで、若干引いてしまうところも。(2/11)
008/031
「教養としての宗教入門 基礎から学べる信仰と文化」中村圭志
今世界を賑わせているカルト集団がある。とある世界的な宗教を名乗ってはいるが、内実は単なる狂信的暴力集団である。残念ながら、我々にはなじみが薄い地域でもあり、彼らを含めた世界を何となく敬して遠ざけるような、そんな風潮が見られる。しかし私は、最も縁遠いその世界観を理解したいと切に願っている。そのための手段は限られているが、何とかその一端でも垣間見えないものか。(2/11)
009/032
「天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災」磯田道史
歴史資料に残されている過去の災害に関する記述から、その災害の被害・規模を類推し、それらを今後の防災に活かそうとするもの。書籍の最初に天正地震(1586)の際に若狭湾を襲った津波の記述が出てくる。当時の記録から波高は5~6mだったと推定されている。もちろんそのまま信用するわけにはいかないだろうが、今後の防災対策を考える上では、十分考慮に入れるべきだろう。(2/13)
010/033
「脳男」首藤瓜於
何年か前の江戸川乱歩賞受賞作。この賞も最近は凋落が激しいが、これは比較的ましな方か。若干荒唐無稽感はぬぐえないが。(2/14)
011/034
「吹雪の山荘-赤い死の影の下に」笠井潔、岩崎正吾、北村薫、若竹七海、法月綸太郎、巽晶章
これはひどい。少しは期待して読み始めたのだが、雑誌連載から単行本化まで10年以上係った理由がよく判る。というより、よくこんな本を出版する気になったモンだとあきれかえる。(2/15)
012/035
「パレートの誤算」柚月裕子
外れの多い“このミス”シリーズの中では、数少ない当たり作家なのだが、この作品は少々いただけない。軽いハードボイルド系に手を伸ばしたようだが、どうにも穴が多すぎる。さらに生活保護制度の闇の部分をテーマにしたのは良いが、制度の上っ面だけを眺めて書いたようながする。これまではおもしろかったのに。(2/15)
013/036
「ワンダフル・ストーリー」伊坂幸犬郎、犬崎梢、木下半犬、横関犬、貫井ドック郎
人気作家の名前を少し変えて、犬に関する小説を書かせるという、ちょっとひねった短編集。犬崎さん、結構良かったです。ほかの作品も読んでみたいなぁ。(2/21)
014/037
「ドキュメント御嶽山大噴火」山と渓谷社編
昨年9月の御嶽山の噴火についての記録集。当時の新聞記事から時間の経過を丹念に記録した物。命からがら逃げてきた人の体験談、科学的な見地からの意見、救助に当たった人の手記などからなる。57名の犠牲者は、戦後の火山災害としては最多。そのほとんどが火山弾の直撃で絶命したというのだから、恐ろしい。心から冥福を祈りたい。(2/21)
015/038
「依頼人は死んだ」若竹七海
葉村晶シリーズの短編集。それほどハードボイルド臭が強くなく、少し残念。書かれている“悪意”が結構凄くて、ゾッとする。(2/22)
016/039
「サファイア」湊かなえ
宝石にちなんだ7つの物語が収められた短編集。最初の数編は??と思うような作品だったが、後半の“ムーンストーン”“サファイア”“ガーネット”の3編は感動もの。結構おもしろかった。(2/22)
017/040
「白戸修の狼狽」大倉嵩裕
平凡きわまりない白戸君という青年が、なぜか中野を訪れるたびにトラブルに巻き込まれてしまう。第2編となる短編集。結構気に入っている。(2/22)
018/041
「近大マグロの奇跡 完全養殖成功への32年」林宏樹
クロマグロの完全養殖に成功した、近畿大学水産研究所の物語。最近は大学経営の成功例として、一躍脚光を浴びているが、その基になったのが、このクロマグロ完全養殖成功へ至る長い道のりであったことは疑いのないことだろう。残念ながら、かなりはしょって短めにまとめられているのだが、その苦労は伝わってくる。グランフロントにあるレストランにも是非行ってみたいところだ。(2/23)
019/042
「エースと呼ばれる人は何をしているのか」夏まゆみ
アイドルグループであるAKB48のプロジェクトに関わっていた著者が、ダンスの指導を通じてみた、“エース”と呼ばれる人とそうでない人の違いを簡易な言葉で書き綴った物。はっきり言って読む前はかなりなめてましたが、この本はかなり良いです。ここで言う“エース”は“センター”とは違う意味でとらえられており、誰もが“センター”に慣れるわけではないが、“エース”には必ずなれると読み手を鼓舞してくれる。そしてそのためのシンプルな習慣が“自己を確立し、自信を持ち、前に向かって進む”というものである。そしてこれは、いわゆる“リーダーシップ”の要素とも合致している。何かにつまずいて悩んでいる人には、等しく読んで欲しい1冊である。(2/27)
020/043
「幕が上がる」平田オリザ
とある高校の演劇部が舞台となった青春小説。目標に向かって努力する若者達の姿が描かれている。劇作家・演出家として名高い著者が初めて書いた小説だそうだが、想定していたよりはるかに読みやすい。演劇の稽古の進め方などが、細かく書かれていて新鮮である。ハッピーエンドでなおよろし。(2/28)
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