2026年9月3日木曜日

2026年8月

とにかく暑かった8月の成果です。最終的に小説が11冊、それ以外の書籍が3冊で計14冊という結果になりました。今月も、先々月よりはましでしたが、あまり数字は伸びませんでしたね。

ちょっと虎の試合中継に気持ちがとられてしまって、読書に集中できなかったきらいが否めません。

そんな中でのお薦めですが、

小説では、本屋大賞の候補となっていた『探偵小石は恋しない』が、評判どおり面白かったかなと思います。ミステリというにはちょいと違うけど、全体としてみるとちゃんとミステリになっているという、不思議な感じの小説でした。お薦めします。

あとは、川瀬さんの『ビューティフルワースト』もよかったです。悪が連鎖していく姿とSNSの恐ろしさがたまらない。本当に最低な奴しか出てこないので、心して読んでほしいのですが、結構面白かったです。お薦めです。

続いて小説以外では、『日本史のなかの酒』がなんといっても秀逸でした。広告でタイトルを見ていたのですが、歴史好き、酒好きの私には見逃せないタイトルで、すぐに予約して読むことができました。とても興味深いテーマについて、数ページにまとめられていて、とても読みやすく、楽しめました。お酒が飲めない方にもおすすめの一冊です。

8月は、全国的にゲリラ豪雨に見舞われた月でしたね。千葉県での災害の様子は目を疑うような光景でした。亀岡でも月末の深夜に豪雨に見舞われ、翌朝は電車も止まって出勤が叶わないということもありましたが、幸い大きな被害がなくてほっとしていました。

9月は台風のシーズンですし、これ以上大きな災害が出ないことを祈るのみです。

 

001/110

「豊臣家の包丁人」木下昌輝

ちょっと期待して読んだのですが、それほどでもなかった。今、大河ドラマで話題の豊臣兄弟に焦点を当てた物語で、転機となる場面に現れる一人の料理人が主人公であるらしい。まぁ、創作の物語なのですが、ところどころに史実が紛れ込んでいるのでややこしい。そういう意味で読みにくい本でした。(8/2)

 

002/111

「チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ 」スティーヴン・キング

これまで知らなかったのですが、キングは毎年定期的に数編の中編小説を書き、合本にして出版していているそうで、この本もその一冊で、2編の中編小説が収められています。2編ともいわゆるハートウォーミングな小説で、いずれも映画化されているというなかなかの習作です。ちょっと毛色が変わっていて、面白かったです。(8/4)

 

003/112

「検証 異次元緩和」原田泰

黒田元日銀総裁が主導した『異次元緩和』について、当時の日銀政策委員会審議委員である著者が、データを用いて検証したもの。つまりは内輪の評価です。お察しのとおり、自画自賛のオンパレードで、この政策のおかげで雇用は改善し、生産性もGDPも伸び、自殺者も減少し、良いことづくめの結果をもたらしたとのこと。もちろんアベノミクスも大絶賛です。歴史にIFはないので、異次元緩和をしなかった世界がどうなっていたかを検証することはできないので、我々庶民には結果を甘んじて受け入れるしか道はない。しかしながら中央銀行にできるのは金融政策だけであり、財政や為替政策については全く責任がないと胸を張るのは釈然としない。(8/5)

 

004/113

「風林火山のむすめ」木下昌輝

まさか、こんなに時間を置かずにこの作者の本を読むことになるとは思いもしませんでした。タイトルだけに惹かれて借りてきたので、作者名までは気が廻らなかったというのが正直なところなのですが。主人公は武田信玄の娘。父親の追放、信長への裏切り、諏訪家を滅ぼし娘をそくしつにしたことなど、かつて信玄が犯した5つの悪行について、その理由を探っていくという物語で、作者の独自の歴史解釈が含まれています。実際はどうだったのでしょうね。(8/6)

 

005/114

「奇妙な花嫁候補 ロンドン謎解き結婚相談所」アリスン・モントクレア

こちらは、最近お気に入りのシリーズの最新刊です。第二次大戦後、二人の訳アリの女性が共同で開いた結婚相談所が舞台。今回は主人公の一人の人生にとってとても大きな出来事が起きようとしているとき、それを邪魔をする弁護士が殺されるという大事件が起こります。その謎を解く二人。相変わらず面白かったです。(8/8)

 

006/115

「定食屋『雑』」原田ひ香

多分この方の小説を読むのは初めてだと思います。主人公は、夫に離婚を切り出されている主婦と定食屋の女主人。その定食屋を舞台に、二人の人生が描かれます。お料理小説かと思って借りてみたら、普通の人情本でした。(8/14)

 

007/116

「四日間家族」川瀬七緒

自殺をするためネットを介して集まった4人の男女が、山中の車内で、ことに及ぼうとしたときに、目の前で捨てられた赤ん坊を保護したことから、誘拐犯として疑われ、ネットで狩られる事態に陥る。それを打破するために、本来の誘拐事件の犯人を追いかけるという物語。登場人物のキャラクターには若干引いてしまいますが、物語としては面白かったです。(8/17)

 

008/117

「ザ・ネバーエンディング・ストーリー 東京バンドワゴン」小路幸也

シリーズの最新作の一つ前。昨年出版されていたのですが、読みそびれていました。今作は、大河小説のスピンオフ版で、昭和の終盤まで時代が遡ります。進行中の物語の中ではすでに亡くなっている、主婦二人の姿が生き生きと描かれています。(8/19)

 

009/118

「神の光」北山猛邦

『消失もの』というジャンルがあるとは知りませんでした。その消失ものという縛りの中で書かれた5編の短編集です。世間の評価は高いようですが、イマイチぴったりきませんでした。(8/20)

 

010/119

「ビューティフルワースト」川瀬七緒

SNSの書き込みで損害賠償請求を受けている主婦、盗撮で生徒から脅されている教師など、ろくでもない5人の人物を主人公にした小説。まぁ、よくこれほどろくでもない人物を考え付いたなと感心しました。とぉっても後味の悪い小説でしたが、めちゃくちゃ面白かったです。(8/23)

 

011/120

「日本史のなかの酒」『日本歴史』編纂委員会編

これは面白かった。『日本史』つまり、『文書』の中で『酒』がどのように描かれてきたかを考察する30本近くの論文を集めたものです。特に古代編がとてつもなく面白く、『続日本紀』に記されている禁酒令について書かれたものは秀逸でした。当時、人と人が集まりお酒を片手にときに政権への不満を語り合うのが常だったようで、記録に残ろところでは、『奈良麻呂の乱』『応天門の変』の前後に禁酒令が出されているようです。いやぁ、面白かった。(8/27)

 

012/121

「探偵小石は恋しない」森バジル

ようやく読めた今年の本屋大賞8位作品。浮気調査を得意とする私立探偵小石の物語。単なる謎解きミステリではなく、登場人物の過去に焦点を当てた謎解きが軸となる、一風変わった作品です。ちょっとやられましたね。(8/27)

 

013/122

「大江戸フューチャーズ」稲葉大樹

紀州藩主から徳川将軍となった徳川吉宗が、さまざまな改革を進めるうえで、軍師として抜擢したのが、家康時代にも暗躍した忍びの集団『今猿』。さまざまな知恵を授け、改革を実行していきます。ちなみに、『今猿』と書いて『こんさる』と呼ぶそうです。(8/28)

 

014/123

「井上ひさしの『子供につたえる日本国憲法』」井上ひさし

平和については、強い気持ちを持っておられた著者が、子供に平和について理解を深めてもらうため、日本国憲法の前文と第9条について、いわさきちひろさんの絵とともに、平易な言葉で書き記したものです。今の日本国憲法ができたとき、文部省が全国の子供向けに作った『新しい憲法のはなし』という名著があるのですが、なんとしても現行憲法を改定したいと考えている政権は、学校で憲法について詳しく教えることを忌避する傾向にあるようです。本当に改定が必要と考えるのであれば、積極的にその内容について教えていくべきだと思うんですがね。(8/31)

 

2026年8月23日日曜日

2026年7月

灼熱の7月は小説が9冊、その他が5冊で計14冊となりました。

自分でも驚いたのですが、前半に小説9冊を続けて読み、後半はその他ばかりという不思議な経過となりました。

先月同様、7月もかなり低調でしたね。加齢のせいか、暑さのせいか、堪え性がなくなってきたような気がしています。

そんな中でのお薦めですが、小説は月初に読んだ作品が軒並みよかったです。

まず『みしらぬ国戦争』です。作者独特の世界観で描かれていて、好戦的な指導者に率いられ、『新しい戦前』といわれる現代の明日が描かれているように感じられます。面白かったです。

続いて『最後の一色』です。こちらは上下巻に分かれた長編小説ですが、私の生まれ故郷の近傍が舞台になっていて、その意味でもとても興味を持って読みました。詳細は以下の本文に譲りますが、戦国期に散った一人の豪傑を見事に描き切っていて、とても面白かったです。劇推しします。

『テミスの不確かな法廷 再審の証人』は、続編にあたるのですが、登場人物に仕掛けがあって、ミステリとしても完成されていました。とてもよかったです。

続いては、新川さんの2冊です。どちらもとてもよかったです。描かれている世界・テーマは全く違いますが、いずれもお薦めします。とてもよかったです。

最後は南さんの『ブラックウェルに憧れて』です。こちらも新川さんの『女の国会』同様、女性であるというだけで虐げられる独特の社会を描いたもので、思わず応援したくなる本です。私も二人の娘の親なので、女性であることで不利な扱いを受ける社会を忌み嫌っており、そうではない社会を残す責任があると思っています。

小説以外の本では『弱い円の正体』でしょうか。本文にも書きましたが、とても興味深い本だったので、図書館から借りて読み始めてすぐに、現物を買い求めました。あちらこちらに付箋をつけながら、読んだのですが、私も個人的には、今後再び円高といわれる状況に戻るとはなかなか思えず、個人所得(給与)が増えて、個人消費が伸びない限りは、1$=150円前後という状況が続くのではないかと考えています。そんな中での消費税減税?撤廃?いったい何を考えているのか、さっぱりわかりません。でも、この書籍はお薦めです。

8月に入っても猛暑が続き、災害も相次いでいます。休日もぐったりして、本に手が伸びることが少なくなってきました。読書も低調です。

なんかすっきりしませんね。

 

001/096

「みしらぬ国戦争」三崎亜記

この方も非常に好きな作家さんで、描かれる独特の世界が自分の傾向に合っているとひそかに思っています。舞台となった国では数年前から、『未確認隣接国家』と交戦状態にあり、毎日のように国内のあちらこちらで、『爆撃』の被害が起きています。そんな時に、我が国を救ってくれる『ミシラヌク国』祖いう存在がクローズアップされ、救世主のように扱われますが、その正体は、、、という物語で、二人の人物の目線から交互に物語が語られます。交戦時の情報統制、国民感情の誘導など、恐ろしい世界が次々と描かれ、息もつかせない展開です。面白かった。(7/2)

 

002/097

「最後の一色(上)、(下)」和田竜

これは傑作です。一色氏というのは丹後国の最後の守護職にあった武家で、私の故郷とはとても縁がある家です。物語は、一色家と長岡(細川)家の大雲川(由良川)での合戦の場面から始まるのですが、この場所が私の通っていた中学校のすぐ隣。そこからは一気に読みふけりました。長い物語ですが決して飽きさせない物語で、こいつは土地になじみのない方にとっても楽しめる書籍かと思います。本作は、作者が本屋大賞を受賞した『村上海賊の娘』から12年ぶりに描かれた長編小説で、綿密な資料調査の下に描かれており、当時の信長、光秀、細川幽斎父子そして主人公である一色五郎のやり取りがリアル緩慢際に描かれています。も一度言いますが傑作です。お薦めします。(7/9)

 

003/098

「テミスの不確かな法廷 再審の証人」直島翔

この本も前作がとても面白かったので、引き続き借りてきました。変わらず面白かったです。主人公は発達障害による生きづらさを秘めながらも正義を全うしようとする裁判官で、今作では一軒の再審請求を軸としながら、2つの事件が描かれ、そこで対峙する女性検事が実は大きな役割を担っていたという二重三重の構造になっていて、とても面白かったです。前作ともどもお薦めです。(7/11)

 

004/099

「女の国会」新川帆立

この作品は、山本周五郎賞も受賞したという習作で、先進国の中では群を抜いて低いジェンダー指数など屁とも思わない日本の国会が舞台になっています。女性というだけでその才能を排除して恥じない社会に未来があるとはとても思えません。本作では、そんな政界における女性差別だけではなく、さらに大きな問題についてもテーマとして挙げられており、女性の国会議員、秘書、新聞記者さらには地方議員が順繰りに語り部となって、旧態依然とした永田町の狭い世界を描くかなり骨太な物語になっています。お薦めです。(7/12)

 

005/100

「ブックウェルに憧れて]」南杏子

この作家さんもお医者さんなのですが、本作は近年話題になった医大入試時の女性差別を取り上げた物語で、一人の指導教官とその指導を受けた4名の女性医師の物語が、時代を行きつ戻りつ描かれています。現役の医師が書かれているので、若干の誇張はあるとしても、それほど突拍子もないお話ではないのではないかと思わせるリアリティをもって描かれています。これまた一気に読みました。面白かったです。(7/12)

 

006/101

「梅雨物語」貴志祐介

彼の小説を読むのは久しぶりです。こちらは全く別物の3篇の中編をまとめたもので、ホラーとミステリが混じりあった習作ばかりです。それぞれにエラくマニアックな知識が詰め込まれていて、よくまぁこんな小難しいものをテーマに据えたものと感心するばかりです。(7/15)

 

007/102

「先祖探偵」新川帆立

自らが幼少期に捨てられて、親どころか自分の名前も知らない状態で、職権で氏名を与えられたことから、依頼人のルーツ探しを専門とする探偵の物語。最初の四話は依頼に基づき行った調査の物語で、雑誌に連載されたもの。中の一話に亀岡市が出てきて驚きました。太田道灌の太田氏のルーツが亀岡市内の太田というところにあるようで、これは知りませんでした。そして大団円となる最後の一話は自らの母親を探す書下ろしの物語。法律家の作者らしく、行政手続き用語が頻出する中で、明らかになった真実には、意表を突かれました。面白かったです。(7/16)

 

008/103

「イン・ザ・メガチャーチ」朝井リョウ

ご存じのとおり今年の本屋大賞の受賞作で、ようやく予約の順番が回ってきました。いわゆる「推し」について、仕掛ける人、のめりこんでいた人、のめりこんでいく人の三名の視点から順次物語が綴られていきます。彼の作品は、独自の視点から社会を描いたものが多く、感情移入が難しいものが多い印象でしたが、今作品は逆に、よくわかりすぎて読みながら精神が疲弊していくような感じにとらわれる方が多いのではないでしょうか。読者には受けないけど本屋さんが好きそうな感じだなと思って読みました。(7/18)

 

009/104

「ぼくは化け物きみは怪物」白井智之

本格ミステリの年間ベストテンの常連さんの書籍です。5編の独立した掌編からなる短編集で、ぶっ飛んだ世界が描かれています。あまりにぶっ飛びすぎているにもかかわらず、本格ミステリとして成立させるという手腕には感服しますが、物語としてはどうなんだろうか。(7/20)

 

010/105

「廃線だけ 昭和の棄景」丸田洋三

ここに揚げるのはどうしようかと思ったのですが、いわゆる写真集に近い書籍で、昭和時代に廃止された鉄道線路や遺棄された鉄道車両等の写真を集めたものです。著者・撮影者は私より少し年下の同世代で、も少しノスタルジックな写真も出てくるかなと思ったのですが、活動範囲が全く違って東日本が中心で、あまりそれは感じませんでした。いわゆる廃墟の写真なのですが、撮影時期からすでに数十年を過ぎていることもあって、そんな風景もすでに消え去っているようです。(7/21)

 

011/106

「弱い円の正体 仮面の黒字国・日本」唐鎌大輔

図書館で借りて最初の一章を読んだら面白かったので、すぐに購入して続きを読みました。日本の愚かな政治家たちには「円安信仰」があるようで、かつての輸出立国の夢からなかなか抜け出せていないうちに、国内の経済力が弱体化し、かつての強い円は見る影もありません。そしてインバウンド客に安い労働力が搾取されている。この本でも書かれているように、この円安傾向は簡単には治まらないと思います。企業が内部留保をため込んで、労働者に還元しない時代が続き、気が付いたら国内需要が低調のまま改善の見通しが立ちません。そんな中で、海外のデジタルサービスに多額の貢献をするという状況は、かつての経済大国の面影もありません。日本貿易振興機構出身の著者らしく、有望な解決策の一つして海外からの投資誘致を挙げていますが、そんなにうまくいくのか疑っています。(7/23)

 

012/107

「作り方を作る 佐藤雅彦展公式図録」佐藤雅彦

この本は、この春に朝日新聞の書評で見かけ、すぐに予約したもので、ようやく順番が廻ってきました。著者は、電通でキャリアをスタートされ、CMプランナーとして「ポリンキー」や「バザールでござーる」などのキャンペーンを手掛け、独立後は「だんご3兄弟」を作ったかと思うと「ピタゴラスイッチ」の製作にも携わり、現在は東京藝術大学の名誉教授をされているという著名人なんだそうですが、私はさっぱり知りませんでした。私自身は、ものや制度を作るより、仕組みを作ることに興味があって、何か通じるものがあるかと思い読んでみたものです。残念ながら、その点ではすぐに“これだ!”と思うことは感じられませんでしたが、彼自身が簡単に飛び越えてしまう『踏切版を使ったジャンプ』にたどり着くブレークスルーの源にとても興味を抱きました。(7/24)

 

013/108

「解きたくなる数学」佐藤雅彦、大島遼、廣瀬隼也

ひとつ前の書籍を読んで、興味を持ち図書館で探してきました。絵本のような体裁ですが、本書には23問の数学の問題が掲載されています。通常の問題集のような問題文や図ではなく、ナット、ダイス、タイルなど私たちの身の回りにある物の写真をベースに問題が作られていて、『思わず解きたくなる』ような体にしてあります。残念ながら、数学的素養に乏しい私には、どの解法も目新しく、とても興味深いものでした。お好きな方はノートとペンを片手にお読みください。(7/27)

 

014/109

「廃線だけ 平成・令和の棄景」丸田洋三 

前に読んだ本の続編です。同じく廃線跡をカメラに収めた写真集。相変わらず東日本が多くて、若干不満。そういえば、10年位前まで舞鶴市の港湾区域内に、かつての舞鶴港線の踏切跡の線路がそのまま放置されていたけど、今もまだそのままなのかなぁ。(7/30)

 

2026年7月15日水曜日

2026年6月

何があったのか、6月はわずか8冊。内訳は小説が5冊、その他が3冊という低調ぶりでした。本当は、これ以外にもう一冊読んでいたのですが、その記録・記憶が一切飛んでしまって再現できないため、これで進めます。

月に10冊を切ったのは過去にも記憶がなく、記録を取り始めて初めてかもしれません。

サッカーは全く興味がなく、タイガースも調子が悪かったのでほとんど視ていませんでしたし、別に何があったわけではないのですが、低調でしたね。

以前なら、普通に読めていた本も読み通すのが難しくなってきて、途中まで読んでは返却期限により返却するということを数限りなく繰り返していました。脳が読むことを嫌がっているようにも感じます。ヤバいですね。

てなことで、お薦めはほとんどないかと思いきや、小説では3冊、その他では1冊をお薦めします。

まず小説では、『飛上りもん』です。この方の時代小説は、結構面白くて過去にも何冊か読んだのですが、実在の人物を取り上げられたのはおそらく初めてではないかと思います。江戸時代の治水事業というピンポイントな分野に目を付けられ、自然との闘いを通して主人公の躍動感が感じられる良い物語でした。

続いて同時代の『天下の値段』ですが、こちらの舞台は大坂で、当時世界唯一の先物取引所である大坂堂島の米相場での、幕府と商人のやり取りが描かれています。知恵を絞っての丁々発止のやり取りが痛快です。

最後は『激しく煌めく短い命』です。作者の綿矢さんは京都市内のご出身で、本作も生家の周辺が舞台として出てきているようです。物語は、公立中学校の入学式で二人の少女が出会うところから始まります。出会いから約一年間の友情と淡い愛情が描かれた第一部と十数年後に再開したのちの第二部の二部制で、600ページを超える大著ですが、一気に読める物語です。

続いて小説以外の一冊については、あえて『井上清論集 天皇の戦争責任』を推したいと思います。かなり攻めたタイトルですが、複数人の記録・証言を基に、日中戦争前後に政府内でどのようなやり取りがあたのか、詳らかにしていきます。著者の結論はさておき、直接の記録が残されていない事柄について、その空白を埋める手段としては、かなり根気のいる仕事で、それだけでも賞賛に値すると思います。

6月は、昼間はほとんど外出し、夜はその記録をまとめるという作業が集中したのと、月の半ばに強烈な眩暈に襲われて以来、堪え性がなくなって本が読めなくなってきたように感じています。

最近はようやくそれも治まってきて、徐々に読書のスピードも回復してきました。暑さにめげず頑張って読んでいきます。

001/088

「井上清論集4 天皇の戦争責任」井上清

えらい攻めたタイトルに惹かれて借りてみました。井上氏といえば、岩波新書の『日本の歴史(3分冊)』が頭に浮かびますが、実は著書を読むのは初めてです。当時、天皇自身は公に発布された文書以外では、国民に向かって肉声を発することはなく、正式な記録としては残されていません。しかしながら、側近たちが天皇から言われたことを多くの人たちが、私記として残しています。著者は、そういった記録を丹念に突き合わせることで、天皇の言動を明らかにしていきます。私自身は、著者と同様に、天皇は戦争を主導し、国民に災禍をもたらした責任者であったものの、アメリカの戦後の世界戦力の中で政治的にその責任が不問にされたにすぎないと考えています。敗戦後、その責任を逃れるために、若干往生際の悪い無様な様子も記録されています。なかなかに面白かったです。右翼の方を除いて、お薦めいたします。(6/1) 

002/089

「飛上りもん」高田在子

時代は享保年間、紀州で生まれた主人公が治水の技術を学び、藩主の将軍就任とともに関東へ移り、紀州流の治水術を用いて、暴れ川との戦いを繰り広げます。実在した人物を主人公に据えながら、当時の政治・社会状況や人間の傲岸さを教えてくれます。一気に読みました。面白かったです。(6/14)


003/090

「天下の値段 享保のデリバティブ」門井慶喜

これも先に読んだ小説と全く同時代の歴史小説で、舞台は天下の台所「大坂」。世界最初の先物取引所でもある大坂堂島の米相場の現場が舞台です。江戸から見ると、浪速の“悪徳商人”たちが、米の値段を自儘に操り、武士に多大な損害を与えているという思い込みの下、それをつぶそうとする吉宗・田沼と浪速商人の丁々発止のやり取りが描かれます。これまた面白かったです。(6/15)

004/091

「日本経済の故障個所」脇田成

かなり細かな統計が次々と現れて、理解するのは非常に難解で、とても全体は理解できませんでしたが、少なくとも、失われた30年に続く超円安と資源高騰、物価高騰と実質賃金の低下、不安定労働と出生率の低下など、小泉内閣から安倍内閣へ続く政府と日銀の失政が招いた現状に、心が寒くなるばかりです。我々の政治への無関心が招いた、自業自得と言われればそのとおりですが、もっと賢くあればよかったと後悔するばかりです。(6/16)


005/092

「失われた貌」櫻田智也

昨年の年間ミステリランキングで軒並み上位にランキングされた小説で、楽しみにしていました。最近のミステリの主流となっている警察もので、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体 が発見されるという衝撃的な猟奇事件を、地道な捜査で解決に導きます。そして最後に大どんでん返し。売れたのがわかりますね。(6/20)


006/093

「最後の告発 警視庁文書捜査官」麻見和史

これは、お気に入りのシリーズ最新刊で、テレビドラマでも久しぶりにシリーズが再開されました。今作は文書捜査のよりも、地道な捜査が功を奏する場面が多かったような印象です。それでも面白いですがね。(6/21)

007/094

「コーヒー2050年問題」武田淳

これは、新聞の記事でコーヒー2050年問題というものを知り、詳しく知りたくて読んでみました。要は、急速な地球温暖化により、現在のコーヒー産地の半分以上でコーヒーが育たなくなることが確実で、気軽コーヒーが飲める時代が終了するというものです。現在の産地が無理でも、さらに高緯度の地域であればイケルンちゃう、と思ってしまうのですが、それらの地域はほぼ現在の人口密集地域で、すでに工業化もされていて、とても農園に戻すことが不可能な地域ばかりです。悲しいです。(6/22)

008/095

「激しく煌めく短い命」綿矢りさ

600ページを超える超大作ですが、これは面白かった。京都出身の作者らしく、京都市内の地名がそこかしこに出てきて、具体的な風景を思い浮かべながら読み進められます。テーマは非常に重く、胸が苦しくなる場面も多かったですが、長さを感じさせない面白さでした。めっちゃお薦めです。(6/28)

2026年6月9日火曜日

2026年5月

大型連休のあった5月は小説が8冊で、小説以外が5冊、合計が13冊という結果でした。

以下を読んでいただくとはっきりしているのですが、前半は比較的好調に読み進めていたところ、後半に入って一気にペースダウン。久しぶりに低調な結果となりました。

どうも、気分が沈むと書籍以外に野球中継や、Youtube動画に逃げていたことや、別のことで時間を取られていたことが、この結果につながっているような気がします。

そんな数少ない中での今月のお薦めを4冊絞り出しました。

まず小説では、夏川さんの『エピクロスの処方箋』は、前作同様面白かったです。京都の町で活躍する意思を主人公にした物語で、“家族”との時間を優先するため、大学病院から町中の病院へ転籍した主人公が活躍する物語で、時折挟まれる京都の町中の風景もお気に入りの一冊です。

もう一冊は、『少年とハリス』が面白かったです。初めて読んだ作家さんでしたが、日米修好通商条約を締結したことで知られるタウンゼント・ハリスの日本滞在時の様子を彼らの身の回りの世話をしていた地元の少年の視点から描いたもので、身を削りながら条約の締結に向け奮闘するさまが描かれています。お薦めです。

小説以外でも二冊。

まずは、『音でデザインする』ですが、“音環境デザイナー”という耳慣れないお仕事に就いておられる方で、緊急地震速報のあの不気味な音をつくられた方だそうです。朝日新聞の書評欄で取り上げられていたものを読んだものです。著書の中で、デザイナーとアーティストの違いにも書かれているくだりがあって、そのフレーズがとても気に入りました。とても役に立つ一冊でした。お薦めします。

もう一冊は、『世界経済の死角』という本で、二人の経済学者による対談の形で、綴られています。河野さんについては、以前ご紹介した『日本経済の死角』の著者でもあって、この二冊を読むと、我々が物言わぬまま他人任せにしてきたことのツケが回ってきていることに気が付かされます。『誰が悪いのか』『どうすべきなのか』という議論もあるでしょうが、まずは今私たちが置かれている状態について、ちゃんと認識することが大事かと思います。お薦めの良書でした。

冒頭にも書きましたが、実は今年中にとある資格取得を目指して、その勉強のために多くの時間を取られていたのですが、なんと先月中に期限を迎える受験申し込みを忘れてしまっていて、思い出したのが深夜12時を過ぎてからという大失態をしでかしてしまい、今は途方に暮れている状態です。来年まで、モティベーションが保てるか不安しかありません。

そんなこともあって、6月も低調に走り始めましたが、何とか気を取り直していきたいと考えております。

 

001/075

「性的同意は世界を救う 子どもの育ちに関わる人が考えたい6つのこと」斉藤章佳、櫻井裕子

月の初めから、なかなか刺激的なタイトルの書籍ですが、図書館の新刊書コーナーに並んでいたのを見かけて借りてきました。加害者臨床家と性教育実践者のお二人による対話形式の書籍です。この6つのこととは、①性を「言語化」する、②AVとの付き合い方を考える、③ソロプレイの不安を取り除く、④子どもが「自立」できる人間関係を築く、⑤性を自己決定する、⑥誤った「男らしさ」から解放される。という6つなのですが、御存じのように日本の性教育は、『教えず、隠す』ことを旨とし、専門家の間ではそれが性犯罪を助長しているというのが常識とされています。「寝た子を起こすなというけれど、寝てる子が突然スマホで起きる」ことで、誤った性知識を身に着けたうえで社会に出てくる。恐ろしいことだと思いませんか。(5/2)

 

002/076

「8つの完璧な殺人」ピーター・スワンソン

最近、彼の作品をランダムの読んでいます。この作品では、ある書店主がかつて「完璧な殺人」として、ブログに書いたミステリ小説をなぞるように、事件が起こり、その真犯人に迫りながら、彼の知られざる過去が徐々に明らかになるという物語です。後半が少し息切れ気味に感じたのが少し残念。(5/2)

 

003/077

「少年とハリス」稲葉稔

江戸時代末期、日米修好通商条約の締結のため日本に滞在したハリスとその当時彼らの世話をするため雇われた、下田の農家の次男坊との交流を描いたものです。当時の不穏な社会の動きや下田周辺の庶民の生活ぶりが描かれており、殺伐とした情景があまり描かれていないので、肩透かしではありますが、安心でもあります。(5/4)

 

004/078

「つながりません スクリプター事件file」長岡弘樹

映像の制作現場に欠かせない記録=スクリプターが主人公のミステリ小説です。各章ごとに、語り手が変化し、主人公自身は決して語り手としては登場しません。それだけに、やや不気味な存在としても描かれています。(5/5)

 

005/079

「エピクロスの処方箋」夏川草介

こちらも本屋大賞の候補作でしたね。前作からの続きで、京都を舞台にした医療ものの作品です。著者自身もお医者さんですが、派手な医療現場の描写はほんの一部で、医療従事者の哲学について、深く突き詰めた作品です。主人公“家族”のこれからを楽しみにしています。(5/6)

 

006/080

「音でデザインする 『緊急地震速報音』は、なぜ緊張するのか」小久保隆

こちらも新聞の書評で『アートは無責任、デザインは有責任』という言葉とともに紹介されていたのが心に刺さり、借りてきました。著者は緊急地震速報のあのアラームをデザインした音環境デザイナーとして活躍されており、実際の作品を二次元コード読み取りながら、実体験できるという今ならではの書籍です。書中からの引用です。『インスピレーションで勝負できるアーティストと違って、デザイナーは職人であり、自分の作ったものに対してのちのちまで責任を持たなければならない。』“デザイン”という言葉には、“問題を解決する”という意味が本来含まれていると聞いたことがあります。つまり、デザインには結果が求められるということですね。職人の技にも通じると思います。(5/7)

 

007/081

 「世界経済の死角」河野龍太郎、唐鎌大輔

新旧の経済学者による対談をまとめたもので、河野さんの著書を読んで、惹かれて借りてきました。書中から心に残ったフレーズを引用します。『海外からの旅行者に日本人の労働力を安く叩き売ることが、私たちの豊かさに本当につながるのか』、『(無料の検索やサービス)もしお金を払わずに済んでいるのだとしたら、それは私たちが「顧客」ではなく、「売られる商品」になっているということ』、『イノベーションは意識しなければ、社会に対しては収奪的な作用を持つ』、『多くの自動化は、「平均生産性」を高めることはあっても、「限界生産性」はあまり改善されず、むしろ低下する。つまり人手がいらなくなる』今の経済政策は、収奪者側がイニシアティヴをとっており、このままでは、私たちが豊かになる方向へは進みません。SNSに踊らされていないで、しっかり考えないと。(5/10)

 

008/082

「その殺人、本格ミステリに仕立てます」片岡翔

タイトルに惹かれて借りてみたのですが、最後までノレずに読み終わった一冊でした。まず、最近気にはなっていたのですが、どうも私は『本格ミステリ」と呼ばれるものとは相性が悪いようです。持って回った言い回し、手掛かりをすべて提示しなければという呪縛にとらわれた冗長な説明など、読んでいてイライラしてしまう傾向があります。この小説は、本格ミステリではないのですが、同様に印象を持ちました。(5/10)

 

009/083

「アラート」真山仁

現在の日本国憲法下での国土防衛、日米安全保障、自衛隊、在日米軍のそれぞれのあり方について、真っ向から切り込んだ一冊です。思想的にすべてに同意するものではありませんが、誰もが考えなければいけないということは間違いありません。日本という国の力を冷静に見積もったうえでの、国家安全保障のあり方について、考えてみましょう。(5/16)

 

010/084

「一日署長」大倉崇裕

最近では、劇場版名探偵コナンシリーズの脚本家として名前を見ることが多いのですが、作家としての作品もいくつか拝読しています。この作品は、警視庁の資料庫に配属された女性警察官が、未解決事件の資料を読むと、その当時の所轄署の所長に憑依するというトンでも設定。そしてその時間はきっちり24時間。かくして『一日署長』のできあがり。よく考えましたね。(5/17)

 

011/085

「言いなりにならない江戸の百姓たち 『幸谷村酒井家文書』から読み解く 」渡辺尚志

北関東のある村に残された江戸時代後期の古文書から、当時の庶民と武士との関係性などを読み解いた力作です。過去に何度も書いたことですが、私は、庶民の日常生活の編遷に興味がありまして、断片的な記録に残された当時の風景を妄想するのが大好きなのです。江戸時代に入ると、当時の農民層の人たちが残した文書も結構あって、それらがすべて解明できれば、もっとはっきりと絵が描けることでしょう。この本では、村戸村との水争い、村役人の不信任、武士の不行跡などについて、赤裸々に訴え出た記録に基づき、当時の世間を描いています。面白かったです。(5/19)

 

012/086

「転がる検事に苔むさず」直島翔

先日読んだ“テミスの不確かな法廷”が、あまりにも面白かったので、同じ著者の作品を借りてみました。本作は、警察小説大賞(すみません、存在すら知りませんでした)受賞作であり、著者のデビュー作に当たるという一冊です。本職は司法担当の記者出身の現役の新聞記者。作品は、警察小説とは言いながら、警察はほとんど活躍しません。主人公である検事は窓際検事で、同僚の若手検事は、捜査の邪魔はするは、勝手な行動をとるわで、社会人としての常識に著しく欠ける人物として描かれています。続編を読むべきか悩むところです。(5/20)

 

013/087

「『看護婦』の近代社会史 誇りが拓いた自立への道」山下麻衣

明治時代、近代医療制度が確立していく中で、医師、薬師とともにその一翼を担うことになる看護師の歴史について概観した書籍です。NHKの朝の連続ドラマの主人公としても、当時の看護婦にスポットが当てられているところですが、女性が働ける現場というのは、本当に限られていて、その技術、地位向上のために当時の先駆者たちが奔走したであろうことは想像に難くないところです。当時は、病院勤務の看護婦と患者宅に派遣されて身の回りの世話をする派遣看護婦という存在がったようで、この本では特に後者に焦点を当てて書かれています。書物としては、やや平板に描かれていて、も少し突っ込んだ考察があってもよいのかなと思うところもあって、若干食い足りなさが残りますした。(5/28)