2022年2月2日水曜日

2022年1月

2022年最初の月は20冊、うち小説が9冊、それ以外が11冊というスタートでした。今月は、昨年末に一気に読み過ぎたせいか、若干読み疲れていたような気がします。今年は、このペースでじっくりと読み続けていければ良いなと思っています。

というわけで、お薦めの一冊ですが、小説はどれも結構面白くて、逆に一冊を除いてどれも良かったくらいです。

その中で特に3冊選びますと、

まずは雷神、最近道尾さんの作品は、肌に合わないモノが多かったのですが、本作は良かったです。主人公の優柔不断さには、若干イラッとしましたが、設定といい、あっと驚く展開といい、なかなか良かったです。

次は同じくミステリの二重螺旋の誘拐は、何段階ものどんでん返しにハマってしまいました。途中まではなめてたのですが、最後の展開には参りました。半日もかからずに読める長さだったのも良かったです。最後まで読んで読むと、タイトルの意味が分かります。お薦めでございます。

三冊目は、松井今朝子さんの江戸の夢びらきです。もともと歴史物が好きで、面白そうな作家さんを探していたところで目にとまりました。歌舞伎がテーマと言うことで、理解できるかなと若干の不安はあったのですが、全くの杞憂。作者の略歴を見て、納得しました。他のお作品も読みたいと思います。お薦めです。

ここに挙げた以外でも、初めて読んだ山本幸久さん、月村了衛さんの作品も面白くて、他にも読もうと思いましたし、福田和代さんは、全く違う路線の作品でしたが、こちらの方が好みかもしれません。麻見和史さんの作品は、安定の面白さで、引き続き読んでいきます。いずれもお薦めできる作品です。

小説以外の本では、かなりテーマが拡散していて、あれもこれもという焦りが見えるようですね。そんな中でのお薦めです。

まずは、明治維新です。今月明治維新に関する書籍が3冊並んでいますが、2冊目までは偶然、3冊目は2冊目のこの本からのつながりです。あの時期に江戸幕府が倒れて、新しい政治体制に移ったのは、歴史の必然だったと思うのですが、その後の70年の歩みを顧みてみると、薩長の二大勢力によって成された改革は、明らかに失敗だったと言わざるを得ません。歴史に“if”はありませんが、現代も違った社会になっていたことでしょう。この本を読んでいる時に、たまたま友人と読んでいる本の話になり、お互い同じ著者の別の本を見せ合うことになり、驚きました。とても面白本でした。

次に、病院の看護師さんが書かれたコロナ奮戦記もとても興味深く読みました。今回のコロナ禍では、医療従事者の方々の献身的な働きのおかげで、なんとか社会の平穏が保たれています。本当に頭が下がります。私たちは、その実態を理解し、自らの行動を律する必要があります。上手く纏められた記録です。是非一読ください。

今月も、民主主義、資本主義、人類史、哲学といった分野の本も読むことができました。今後もこれらの分野の知識を深めて行きたいと思っています。

小説では、どうしても好きなミステリに傾きがちなのですが、何度も宣言しながらなかなか読めていない内外の古典文学にも手を伸ばしていきたいと思っています。

2月に入ってもまだまだ寒いし、まん延防止措置も出されていることから、散歩もままならず、週末はついついお酒と映画(といっても配信ですが)にハマりがちで、読書時間が少なくなっています。それでもなんとか月20冊のペースは守っていきたいと思います。

 

 

001/001

神様には負けられない」山本幸久

2022年の一冊目は初めて読む作家さんによるお仕事小説です。といっても、舞台は義肢装具士の専門学校で、主人公はそこで学ぶ学生たちですから、お仕事小説とは言えないのかもしれませんね。私自身が、昨年春から職人を養成する専門校で働いており、この本に出てくるような実社会で役立つ技術を身につけようと努力する生徒たちを支援しています。彼ら彼女らのモティベーションをいかに上げて続けてあげられるのか、日々悩んでいます。(1/1)

 

002/002

碧空のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート」福田和代

この本もお仕事小説と言えると思います。舞台は航空自衛隊の音楽隊という特殊な職場です。この作者はいわゆるクライシス・ノベルの分野で作品をたくさん出されていますが、この作品は一転して、ほのぼのとした日常とときどき起こる日常の謎を解き明かしてくという物語です。続編、続々編も出版されているようですね。結構良かったです。(1/3)

 

003/003

天皇と儒教思想 伝統はいかに創られたのか?」小島毅

なんの国家思想もないテロリストたちによって図らずも生まれてしまった明治政府が、その威信や統治正当性を確立するために行った、涙ぐましいまでの政策について纏められたものです。様々な改革が成されたのですが、結局のところ、その後の軍国化と70年後の国家崩壊への端緒となってしまったことは否定できません。ネトウヨの皆さんからは酷評されている本書ですが、歴史事実として知っておくべき事だと思いますよ。(1/7)

 

004/004

放課後ローズ 警視庁第七捜査資料課」船越百恵

初めて読む作家さんでしたが、読後感はイマイチ。何度も途中で放り出そうと思いましたが、なんとか読み切りました。私には合わなかったです。(1/8)

 

005/005

江戸の夢びらき」松井今朝子

主人公は初代市川團十郎。その夫人の口を通して語られる一代記です。日本史の授業では、江戸を本拠にする荒事の市川團十郎と上方を本拠とする話事の坂田藤十郎と丹後として覚えていたのですが、改めて荒事とはどんな歌舞伎だったのか、少し理解できたような起まします。この方の作品は初めて手にしたのですが、歴史物を書かれる作家さんとしてのみの認識だったのですが、松竹にも在籍されたこともあり、歌舞伎の脚色、演出、評論なども手がけられる方と知り、益々興味がわきました。他の作品も読んでみようと思います。(1/10)

 

006/006

明治維新 偽りの革命 教科書から消された真実」森田健司

先に読んだ本とも繋がるのですが、明治政府というテロでできあがった国家が、いかに以前の歴史を否定し、結果的に70年度の国家破滅に邁進していったのかということがよく分かるように纏められています。とはいえ、江戸時代を手放しで礼賛する気はさらさら無く、幕藩体制が機能しなくなっていたことは確かで、大きな改革が必要であったことは間違いありません。ただ、その改革が薩摩長州という徳川への怨念だけでできた組織がテロを成功させてしまったことに大きな不幸の原因があります。とても面白い本でした。(1/12)

 

007/007

民主主義の本質と価値 他一篇」ハンス・ケルゼン

これは難しかった。今、民主主義という仕組みが大きな危機を迎えていると言われています。この本も同じく1930年代に共産主義と極右による独裁制が生まれ始め、民主主義の危機がささやかれた頃に書かれています。内容は難しくて、すべては理解できていないのですが、民主主義とは多数決ではなく、多数意見と少数意見をすりあわせていくこととの主張が斬新で心に響きました。学校では、少数意見の保護という言葉で習っていましたが、その意味が理解できたような気がします。(1/14)

 

008/008

永寿総合病院看護部が書いた新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録」髙野ひろみ、武田聡子、松尾晴美

一昨年の春、新型コロナウイルスの院内感染が発生し、手探りでの対策を余儀なくされた現場看護師さんたちの記録です。正確な情報も必要な物資も乏しい中での奮闘。当時蔓延っていた世間からの差別により離職を余儀なくされた医療従事者の皆さんの葛藤。マンパワーの絶対的な不足。本当に頭が下がります。感謝しかありません。(1/14)

 

009-009

人工知能の核心」羽生善治、NHKスペシャル取材班

今から5年前に出版された、藤井颯太の出現を予感させるような書籍です。羽生さんは、以前から人間の脳の働きや人工知能に大きな興味を持っておられたそうで、この本は人工知能の大家を訪ねて世界を飛び回るというテレビ番組から生まれた本です。彼の豊富な知識に驚かされます。(1/14)

 

010/010

美人薄命」深水黎一郎

この作者も初めてではないかと思います。ボランティアで高齢者への弁当配達をする青年とある高齢者女性との交流を描いた物語です。女性の話す前半生記と現在の二人のやりとりという二つの物語が並列で語られます。最後に変なオチも付いて、いい読後感のお話でした。(1/16)

 

011/011

魚食の人類史 出アフリカから日本列島へ」島泰三

タイトルからは、魚食の歴史について詳しく書かれたものを想像していたのですが、それはほんの少し。多くは、普通の人類史で、時折当時の想定される食生活が語られますが、魚食に特化した話ではありません。まぁ、社会学や民俗学ではなく、人類学がご専門の先生ですから、それもやむを得ないところでしょうが、こんなややこしいタイトルを付けないで。(1/18)

 

012/012

マルクス・ガブリエル危機の時代を語る」丸山俊一+NHK「欲望の時代の哲学」制作班

新型コロナウイルスの恐怖が世界を襲う直前に、ガブリエルが世界の5人の知の巨人たちと哲学論を戦わしたテレビ番組の書籍化で、書籍化に当たって新型コロナに関するインタビューも乗せられています。はっきり言って何が書かれているのかさっぱり理解できませんでした。コロナとともにある世界においては、カントの哲学が有用であると説かれているのですが、これもさっぱり理解不能です。頭痛がしてきました。(1/19)

 

013/013

貧困専業主婦」周燕飛

稼ぎの良い男性を配偶者にして自信は専業主婦に収まり、便利な家電製品に囲まれて、楽で優雅な生活を送るというのが、いわゆる“専業主婦幻想”とでも言えるのでしょうか。最近の若い女性には、そのような専業主婦願望が高いといわれているらしいのですが、その実態はどうなのか。そもそも専業主婦が登場したのは、戦後の高度経済成長期だといわれています。その時代になぜか、女性を家庭に縛り付けるための政策が採られ始めます。しかしながら、成長が停滞すると機を一にして、男女ともに未婚率が上昇し、出生率の低下も止まりません。結果として、爺たちがのさばり、活力に欠ける社会がやってきました。どこで何を間違ったのでしょうか。取り返しは付くのでしょうか。(1/19)

 

014/014

琉球新報が挑んだファクトチェック フェイク監視」琉球新報社編集局編著

2018年の沖縄県知事選挙の際、琉球新報が取り組んだファクトチェックの記録です。デマが飛び交う選挙戦で、候補者や政党の主張を日々検証し、その結果を紙面で報道し続けました。そのきっかけというのが、その半年前に実施された名護市長選挙で、悪質なデマが拡散されながらも、そのデマを糾すことなくことなく、選挙結果に少なからぬ影響を与えてしまったことについての反省から実施されたものです。国内では、こうした取り組み事態が少なく、手本となるものがない中での試行錯誤の取り組みでした。日本では、首相が国会答弁で嘘八百を並べ立てても、誰もその内容をチェックしません。このような取り組みが広まることを期待します。(1/20)

 

015/015

雷神」道尾秀介

主人公を襲った突然の不幸からようやくその傷が癒えた頃に10数年隠し続けた秘密をネタにした強請が始まる。それから逃げようとして、記憶から消えたしまっていたさらに古い不幸を掘り当ててしまう。幾重にも伏線が張り巡らされた重厚なミステリです。なかなかに面白かった。お薦めです。(1/23)

 

016/016

戊辰物語」東京日日新聞社会部編

戊申戦争から61年目、次の戊申の年に新聞で特集された、61年前の生存者からの聞き書きを纏めたものです。それに、その前後に新聞で特集された2つの記事が付されたいます。誰もが、本当のことを話しているとは思えなくて、相当盛ってるなとは思うですが、当時の市井の人々の様子が垣間見えて興味深い内容です。(1//26)

 

017/017

機龍警察〔完全版〕」月村了衛

誰かが薦めておられ、面白そうだったので読んでみました。バトル満載の警察小説なのですが、設定がぶっ飛んでいて、いわゆるモビルスーツを着た傭兵を警察職員として採用し、テロ組織と対峙します。設定は突拍子もないですが、ストーリーはしっかりしていて、人気があるのも頷けます。続編も出ているので、続けて読みたいと思います。(1/30)

 

018/018

蟻の階段 警視庁殺人分析班」麻見和史

同じ著者の文書捜査官と並ぶ人気シリーズです。文書~を読み切ってしまいましたので、続けてこちらにも手を伸ばしています。主人公である新人女性刑事の成長物語なのです。この作品では、殺人事件の被害者の周りに配された遺留物が事件の鍵となっており、主人公を取り巻く捜査班による毎夜の分析会議でその謎に挑みます。面白いです。(1/30)

 

019/019

二重螺旋の誘拐」喜多喜久

それほど期待していなかったのですが、やられました。面白かったです。仕掛けに触らないように説明するのが難しいのですが、幼女誘拐事件を巡って二転三転。途中で仕掛けに気づいたと思っていたら、なんとまぁ、これは気づきませんでした。というのが率直な感想です。好みはあると思いますが、お薦めのミステリでした。(1/30)

 

020/020

災害とたたかう大名たち」藤田達生

自分が治めている土地も住民もすべて我が物ではなく、天からの、将軍からの預かり物である。江戸時代にあった(らしい)このような考え方を預治思想というそうです。恥ずかしながら、私は初めて目にした言葉です。確かに、米沢藩の上杉鷹山に関する書き物などを読んでいると、一部にそのような考えを持つ人もいたようですが、この本の著者は、江戸時代の初期には広く浸透していた思想であると想定されています。それはそれで非常に興味深い説なのですが、この本では、その思想についての説明に多くの紙幅が費やされていて、江戸時代の災害・復興史ではありません。(1/31)

 

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