平成30年最後の月は、16冊。うち小説が6冊、その他が9冊という内訳でした。結果、昨年は計185冊という結果となりました。
月の前半は、なかなか進まなかったのですが、後半は一気に進んだ感じでした。いつものごとく好きな作家さんの小説が続いたほか、定番のブルーバックスなどの新書という安定のラインナップのほか“文学論”と銘打った物もありました。
そんな中でのお薦めです。
まず小説では、ベタですが東野圭吾さんの“パレードの誤算”が、良かったです。本文でも書きましたが、東野さんには最近ちょっと期待外れの作品が続いていたのですが、今作はミステリ要素もしっかりありつつ、このシリーズにしては少し毛色が違った作品になっていて、とても面白かったです。昨年のミステリ小説のランキングでも上位に位置づけられているのももっともかなと思います。
そのほかの本では、これまた安定のブルーバックス“フォッサマグナ”が秀逸でした。理数系はさっぱりの文化系男子の私ですが、このシリーズには文系の私にもわかりやすく書かれた物がたくさんあって、気に入っているシリーズです。でこの本も前述のごとくとてもわかりやすく興味を引くように書かれていて、とても面白かったです。特にこの著者の一連の地学に関する作品は、いずれも面白く、とてもお薦めです。
前にも書きましたが、平成30年は185冊という結果で、おおよそ二日で一冊というペースでした。まぁ多いとは言えないし、少ないとも言えないまぁまぁほどよい感じでしたでしょうか。
昨年から読み始めた作家さんと言えば門井慶喜さんが筆頭でしょうか。彼の作品はどれを読んでも面白く、私の中で“外れのない作家”の一人となりました。
あとは、メディカルミステリーの知念実希人さん。彼の作品もとても面白く、気に入って読んでいます。確か現役のお医者さんなんですよね。
ほかにシリーズで読み始めたのが、“東京バンドワゴン”シリーズ。これは見事に
はまりました。昭和の雰囲気を残す大家族が繰り広げるホームドラマなのですが、基本的に悪人が出てこない安心して読める物語で、とても気に入っています。ただ、今のところこの作家のほかの作品を読もうという気にならないのが、申し訳ないところです。
これまでも、基本的に数を追い求めて読んでいたわけではありませんが、今年はもう少し効率的に読んでいきたいなと思っています。
また、過去に買いためて積読になってしまっている本がたくさんあるので、このほんの山を少しでも崩していく一年にしたいと思っています。
今年もどうぞよろしくお願いします。
001/170
「そして、メディアは日本を戦争に導いた」半藤一利、保阪正康
昔から、日本の歴史が好きで、小説はもちろん、通史や歴史書、古典籍などをよく読んでいます。しかしながら、時代的には江戸時代までが多く、いわゆる近現代史にはあまり手をつけませんでした。でも最近は、少しこの時代にも興味を持つようになってきて、ちょくちょく読むようになってきました。そんな状況を踏まえてのこの一冊です。内容的には戦前のジャーナリズムについて、二人が語り合っているという物で、それぞれの私見も交じっていることから、すべてをそのまま信じることはできませんが、軍部の台頭とともに弱体化されたことは間違いないようですが、それ以上に、そうした方が売れたから、ということのほうが問題が大きいように思う。結局日本のメディアは、売れる物にしか興味がないということ。そして、それは今も同じなんじゃないか。そんなメディアに、国民を導く能力なんてなくて、扇動するだけで、責任なんかこれっぽっちもとるつもりなんかないんじゃないか。(12/1)
002/171
「斗南藩 『朝敵』会津藩士たちの苦難と再起」星亮一
著者は宮城県の出身で、福島に在住されており、明治維新で逆賊とされた東北列藩、特に会津藩について多くの著書を残されています。本書では明治維新後、会津から青森県下北半島付近へ移封された会津藩士たちの苦難の歴史が綴られています。江戸末期の動乱の時代、倒幕を叫ぶテロリストたちが跋扈していた京都の治安を預かっていたのが会津藩で、その間に京都でも数多くの会津藩士が命を落としています。しかしながら、それが維新軍の連中には気にくわなかったようで、戦後の会津藩の取り扱いはヒステリックなほどに苛烈を極めます。結果的にこのテロは成功したものの、確たる国家観を持っていなかった新政府は、その後60年余で瓦解し、破滅への道を一直線に突き進むことになります。これまた宿命でしょうか。そういやぁ、この本にも出てくる“ある明治人の記録”って、読んだはずなんだけど、どこへ行ったかなぁ。(12/2)
003/172
「K氏の大阪弁ブンガク論」江弘毅
妙にタイトルに惹かれて借りてみました。小説に描かれる“大阪弁”にフューチャーした文学論です。取り上げられている作家は、有名どころでは司馬遼太郎さん、山崎豊子さん、和田竜さんなど多数おられるのですが、中には存じ上げない方も多数あり、まだまだだなぁと実感いたしました。特に、和田さんの“村上海賊の娘”では、泉州の言葉がふんだんに使われており、それが作品に躍動感を与えているのですが、和田さん自身は関西出身ではなく、方言監修をして頂きながらの著作だそうで、改めて文学を生み出すことの難しさを垣間見ることができました。あとは、船場の大店の出身だという山崎さんの初期の作品や、司馬さんの“俄”は、いつか読んでみたいと思います。今でこそ、関西芸人さんの活躍で、大阪に代表される関西弁は全国的に知られるようになりましたが、“関西弁”とひとくくりにするのは、大きな間違い。ほんとに多種多様で、聞いてるだけでホッとします。個人的には、女性のしゃべる岡山弁が好きなんですが。。。(12/7)
004/173
「フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体」藤岡換太郎
マイブームのブルーバックスシリーズで、最近目についた一冊です。初めて聞いたときには、“発作マグマ”と間違えて覚えたというのは、当時の小学生あるあるですね。この地形の定義は難しいのですが、日本語では“大地溝帯”と言ったように記憶しています。名前の通り、日本列島のほぼ中心を真っ二つに分ける大きな溝なんですが、その生成はまだよく分かっておりません。本書では、地質学上の大きなトピックスが偶々二つ同時期に起こったことがその要因であると大胆に推測してます。フォッサマグナ自体は、地質学上の境界なんですが、ここを境に東西の文化が分かれているというのも、“偶々”とはいえ不思議な因縁を感じずにはおれません。いずれにしても、一冊の推理小説を読むような面白い本です。文系の方にもお薦めですよ。(12/8)
005/174
「ぐるぐる博物館」三浦しをん
博物館マニア作家である三浦さんが、全国のユニークな博物館を訪ね歩く面白いレポート集です。世の中には様々な種類の博物館があるようですが、それらの中から著者が厳選した石、めがね、萬画などの博物館を訪ねられています。私も博物館は大好きなんですが、これらはどこも行ったことがありません。また、混んでいるとゆっくり見ることができないので、人気の展示会などは、却って足が遠のいてしまいます。京都も大小取り混ぜると100カ所以上もあると言われる博物館天国なので、また、暇に飽かせて回ってみたいと思います。(12/9)
006/175
いつものシリーズです。今作では、大黒柱の勘一が病気になったり、研人の進路問題が勃発したりといろんな事件が起こります。人が活きていく限り、悲しい出来事も必ず起こります。神ならぬ身、それは避けて通れないところです。でも人間にはそれを乗り越えていく力が備わっています。良い小説には、それを助ける力があると信じています。(12/9)
007/176
「視線は人を殺すか 小説論11講」廣野由美子
これもとても珍しい文学論、小説論です。テーマは視線。目は口ほどに物を言うと言われますが、映像作品であれば、目の動きを中心にした表情で、多くのことを伝えることができます。しかしながら、小説となるとこれがなかなかに難しい。いっそ、その心の中の風景を描写することの方が簡単で、わかりやすい。この本では、そういった視線の動きで少々風景を描写する26作品を題材に、小説の中での視線の使い方を論じています。こういった文学論は初めてだったので、とても興味深かったです。残念ながら、これらの作品はほとんど読んでいないので、折を見て読んでみようと思っています。(12/14)
008/177
「崩れる脳を抱きしめて」知念実希人
最近お気に入りの作者が描くメディカルミステリです。最後に“大どんでん返し!!”とあおってあったのですが、途中からなんとなく筋が見えてきて、試みは大成功とはいっていないような気がします。メディカルミステリとは言いながら、内容は恋愛ミステリでもあります。ちょっと腐してしまいましたが、小説としてはとてもよくできた恋愛小説になっていて、心温まるストーリーで面白かったです。(12/15)
009/178
「沈黙のパレード」東野圭吾
出てすぐに買い求めたのですが、なかなか読む機会に恵まれず、満を持して読み切りました。テレビと映画でシリーズ化され、福山雅治さんの当たり役ともなったガリレオシリーズの最新作です。ストーリーの仕立てもトリックもお見事で、最後まで一気に読み通してしまえるくらいのスピード感もあります。ここしばらくは、期待を裏切る作品が続いていたのですが、今作はとても良かったです。ただ、結末があまりにも切なすぎる。胸がかきむしられるほどに。(12/16)
010/179
「日本史のミカタ」井上章一、本郷和人
当代きっての人気学者が、日本の歴史について意見を戦わすというので、さぞや面白かろうと楽しみ読んだのですが、期待はずれでした。お互いが自分の知識をひけらかすことに一生懸命で、読者は置いてけぼり。という感じ。歴史にお詳しいい方々にとっては面白いのでしょうが、一般市民代表の私には難しすぎてついて行けません。(12/18)
011/180
「TAS特別師弟捜査員」中山七里
高校でおこった少女の死。その真相を探るために関係者を探るスパイとして活動する男子生徒とその相棒の刑事。そしてその刑事が同じく内情捜査のためその高校へ教育実習を装い潜入捜査。って、ちょいとやり過ぎじゃねぇ?まぁ、物語としては面白かったから良いとしても、設定が何とも大胆で、ありえねぇ。(12/23)
012/181
「山怪 山人が語る不思議な話」田中康弘
森や山を活動場とする猟師さんたちが、山で出会った不思議な出来事。それを全国各地で拾い集めて一冊に纏めたもの。決して派手は放しではなく、いずれも淡々と話されているものばかりである。そんな昔の話ではない、つい最近の話ばかり。世の中には不思議な話があるものです。森って本当に不思議な空間です。昼間でさえ、虫や動物の声、風の音がぱたりと止む不思議な一瞬の静寂が訪れることがあります。そのときに何かを感じるか感じないか。人によって違うと思うのですが、私は全く感じない人でした。鈍感。(12/24)
013/182
「君たちに明日はない」垣根涼介
ある人に続編をもらったものだから、その前にと思い図書館で借りてきました。会社の都合でリストラされようとしているビジネスマンたちの物語です。物語はリストラ請負会社の男性を軸にして進むのですが、主役はその対象となった人たちで、その一瞬にそれぞれの人生が凝縮されたような物語が展開されます。人の数だけ物語があるということですね。(12/29)
014/183
「天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟」知念実希人
最近気に入っているシリーズです。ことらは短編集。主人公の医学知識もスゴイですが、ミステリ的な要素もあって結構気に入っています。ただ、短編の時はミステリ要素が希薄で若干物足りない。もちろん面白いけどね。(12/31)
015/184
「『明治礼賛』の正体」斎藤貴男
今年2018年は、明治維新から150年という節目の年に当たり、全国各地でいろんな記念行事が行われたようです。まあ、京都人にとっては、明治維新なんて、テロリストが市中を徘徊し、市街戦が行われ、挙げ句の果てに皇室が京都を逃げ出して、首都から一地方都市に格下げされるというとんでもない年であったわけで、とてもお祝いする気になんてならなかったという人も多かったのではないでしょうか。この本では、そんな明治時代を少々うがった見方で斜めに見て、現在の政権批判を加えています。論調は、あまりに牽強付会でやり過ぎちゃうかと思えてしまうのですが。もう少し冷静な筆致で書かれても良かったのでは。決して間違ったことを言ってるわけじゃないんだから。残念。(12/31)
016/185
「ベルリン 分断された都市」スザンネ・ブッテンベルグ、トーマス・ヘンゼラー
平成30年、2018年最後の1冊は、この本にしました。私にとって最も近しい国、外国の都市であるベルリンが、壁によって東西に分断されていた頃の歴史を5つの家族の物語(実話)を漫画形式で記録したものです。私が住んでいた20年前には、壁の痕跡は殆どなくなっていましたが、その跡地に立って左右を眺め、とても不思議な感覚を覚えました。実は来年2019年は、その壁が崩壊してちょうど30年になります。残念ながら、30年経ってもなお東西ドイツの経済格差はなかなかなくなっていないようです。そのことが今後のドイツの行く末に若干の影を落としているようにも思えます。どうか2019年が平和で平穏な年でありますように。再び間違いを起こしませんように。(12/31)
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