7月の一週目は大変な豪雨に襲われました。被害に遭われた皆様には心からのお見舞いを申し上げます。
さて、6月は、計15冊。そのうち小説は10冊、それ以外が5冊という結果でした。じめじめした日々には、スカッとした話が読みたいところですが、今年はもっぱら侍BLUEの皆さんの活躍が日本を盛り上げてくれましたね。最後は本当に残念な結末となりましたが。
さて、6月は、計15冊。そのうち小説は10冊、それ以外が5冊という結果でした。じめじめした日々には、スカッとした話が読みたいところですが、今年はもっぱら侍BLUEの皆さんの活躍が日本を盛り上げてくれましたね。最後は本当に残念な結末となりましたが。
そんな中でのこの月のお薦めですが、やはり小説では門井さんの直木賞受賞作でしょうか。非常に期待しながら読み始めたので、若干に不安があったのですが、父親目線で読んでいくと、結構共感できる部分があって一気に読んでしまいました。お薦め作品です。
それから、先月から読み始めた“東京バンドワゴン”シリーズも安定の読み応えがありました。長く愛されている本には、ちゃんと理由がありますね。作品とともに登場人物が成長していく様が楽しく、続きを読みたくなります。ただ、これだけ登場人物を増やしていって大丈夫なのかと心配しながらもわくわくしてしまう、そんな作品です。きっと皆さんの中にも読まれた方はたくさんいらっしゃるでしょうが、もしまだ読まれていない方があれば、是非読んでみてください。期待は裏切りませんよ、きっと。
その他の本では、福祉施策とそれから漏れ落ちる人たち、結果発生する犯罪についての本を読みました。“高齢初犯”と“ルポ居所不明児童”の2冊です。決して面白本ではないけれども、今のところ大過なく過ごせている自分たちも、本当にふとした何かの拍子で、陥ってしまいかねないという恐怖を抱かせる本でした。平坦な道を順調に歩いていられる内は良いけど、そこから外れたり、転落しそうになったときに、防護柵や安全策が準備されているかということですね。
さて今年も半年が過ぎたところで、82冊という途中経過です。ちなみに昨年は85冊、一昨年は87冊、2015年などは125冊も読んでいたんですね。そのころでも前に比べて減ったなと思っていたのですから、今から考えるとどんだけ暇やったんや、って感じですね。今年もこのままだとだいたい150~160冊のペース。まぁ、少しでも面白い本を面白く読みたいと思います。
001/068
「高齢初犯 あなたが突然、犯罪者になる日」NNNドキュメント取材班
どうも最近の統計によると、いわゆる独居老人の数が増えているそうで、その予備群も含めると、けっこうな人数の人たちが、“孤独な”老後を送ることになりそうである。そういった中で、高齢者になってから犯罪(万引きが圧倒的に多いようですが)に手を染めてしまう人も増えているようです。この本は、そんな人たちを取材した記録で、犯罪に至った経緯や動機などについてのインタビュー集である。この取材班によると、心の奥底にある真の動機やきっかけが見えてこず、周りの人たちから途絶された孤独状態が、そのそこにあるのではないかと推理している。自分も何かの拍子で簡単に向こう側に行ってしまうのではないか、そんな不安が常にある。(6/3)
002/069
「銀河鉄道の父」門井慶喜
直木賞受賞作品。面白いに違いないと、かなりハードルを上げて読み始めたのだが、期待に違わずとても面白い小説でした。ご存じのとおり、主人公は宮沢賢治の父で、賢治が生まれた日から亡くなるまでを父の目を通して描いている。父としての厳格さを保たなければならないと思う一方で、息子に寄り添いたいと葛藤する様が、現代に通じているようで非常に興味深い描写になっている。とても面白くて、一気に読んでしまいました。(6/3)
003/070
「肉小説集」坂本司
何故か食べ物に関する小説が多いこの作家、グルメミステリ作家とも呼ばれているらしい。この作品集はミステリ要素は全くなく、食習慣の違いなどから生じる人間同士のわだかまりを上手く小説に仕立てている。ただ、その食べ物が今回は全て“肉”となっていることで、気のせいか胸焼けがしてしまうような気がするのは、年を取ったせいでしょうか。(6/5)
004/071
「川はどうしてできるのか 地形のミステリーツアーにようこそ」藤岡換太郎
実はよく分かっていない“川”の生成過程を文系の私にもよく分かるように簡単な言葉で推理検証した物。海や地殻、大陸などの生成過程は、なんとなく解き明かされているようではあるが、実は川の成り立ちについては専門に研究している研究者も少なく、これと行った定説も無いようである。確かに空から降ってきた雨が、高いところから海へ向かう流れがすなわち川であって、そこに理屈は無いようにも思う。しかしながら、その流れが何故時代とともに変化するのか、などなどと考えていくととても面白い。(6/7)
005/072
「千年樹」荻原浩
主人公は一本の楠である。その木が地上に生まれ、最後切り倒されていくまでの千年間を小説として描いた物。その間には、数多くの悲しい歴史を視ることになり、多くの人の涙を吸って成長してきた。この巨樹を取り巻く人たちの成長の歴史も描かれていて、いろいろな視点から読む事ができる小説です。(6/9)
006/073
「東京バンドワゴン」小路幸也
このシリーズは前から気になっていたのだが、図書館ではなかなか一作目を借りることができず、読めていなかった物を、ようやく手にすることができた。舞台はとある古書店。語り部は、この家の亡くなってしまったお祖母ちゃん。姿形は見えないけれど、魂だけがこの世に残って、とても騒がしいこの家族のエピソードを語ってくれる。どこまでシリーズ化することを前提に書き始められた物かは分からないが、登場人物も多彩で魅力的、話の展開も面白い、続編を読みたくなる、とても良い作品です。この作品集では、主な登場人物の紹介といきなり新たなメインキャストが登場と、面白くなりそうな要素が一杯詰まった作品で、今後が楽しみ。でもこれは絶対順番に読むべきシリーズです。今まで待って良かった。(6/10)
007/074
「ルポ居所不明児童 消えた子どもたち」石川結貴
育児放棄、児童虐待などなど胸が締め付けられるような事件が後を絶たない嫌な時代のまっただ中。本来、子供を守るべきはずの親から守ることを放棄され、生命の危機に瀕する子供達が多数存在する。そういった子供達を救うすべは無いのか、と言うのがこのルポのテーマである。自分は、行政組織の中で働く人間なので、世間から寄せられる行政への期待は痛いほどよく分かる。しかし一方で、行政にできることの限界も分かってしまう。現在のように“個人情報”の取り扱いに慎重にならざるを得ない状況下では、その限界値もどんどん狭くなってしまわざるを得ないのだろうと思う。決して逃げを打っているわけではなく、なんとかしなければいけないという焦りはある。けれど専門職でも無い自分には、どうすることが解決策になるのかと言うことが分からない。もどかしい。あんな悲しい事件が繰り返される事があってはならない。(6/12)
008/075
「聖書考古学 遺跡が語る史実」長谷川修一
聖書に書かれている事柄を考古学の立場から検証した物。読みづらいかなと思い、かなり前に買ったまま放置していたのだが、今月は少し好調なので、休息を入れる意味で読んでみたら、これが期待を超えて面白い。私たちがよく知っている、ノアの洪水やモーゼの伝説などを解説するのかと思いきや、さすがにそこまでのトンでも本ではなく、聖書に書かれているイスラエルの民の歴史について丹念に検証を加える物で、とても好感が持てる書きっぷりであった。でもさすがにこの時代の西南アジア史はちんぷんかんぷん。(6/16)
009/076
「天久鷹央の事件カルテ 甦る殺人者」知念実希人
人気シリーズの長編第二弾。すでに死んだはずの人間がシリアルキラーって。警察は絶対に逮捕できないじゃん。これは大変!!と言う物語。設定に懲りすぎて、どう決着を付けるのかと楽しく読みました。そのトリックは、ちょっとどうなのかと突っ込みを入れたいところではあるが、医学ミステリでもあり、そこは大目に見てあげよう。(6/16)
010/077
「雲上雲下」朝井まかて
この作家の書く時代物が好きで読んでみたのだが、これまでとはがらりと雰囲気を変えたファンタシー小説とも言えるような不思議な作品。私たちが子供の頃に読んだ昔話の主人公達がぞろぞろ登場してきて、不思議な物語を演じていく。そしてその結末では、今のある風潮を嘆いて終わる。本好きの私としては、できればもう少し明るい希望を描いて欲しかったな。(6/17)
011/078
「青くて痛くて脆い」住野よる
“君の膵臓を~~”で鮮烈な印象を与えた作家の最新作。今のところ彼の作品は全て読んでいるのだが、その中ではこの作品はやや異質な感じの作品。目立たずひっそりと生きてきた一人の男子大学生が、一人の女性と出会って少しずつ変わっていく、でもある出来事が二人の間を修復不能にまで破壊した、と彼は一人勝手に思っていた。ある種の報復措置に出るのだが、それでも彼は大事なことに気がつかない。本当に“青くて痛い”やつ。人と交わることを避けていると、自分の世界が拡がらず、目の前の現象を自分の言葉で説明つくように理解してしまう。自分にもあったことだなぁと、ふと遠くを見る目になってしまう。そう考えると、自分も相当に“痛い奴”だったと言うことですね。(6/19)
012/079
「外国人が熱狂するクールな田舎の作り方」山田拓
飛騨の山中で、インバウンド観光に徹した事業を実施している著者による成功譚。どうせ自分自慢の本なのだろうと高をくくって読んでいたのだが、意外と良い指南書だった。最初こそ鼻につく感じも結構あったが、コンサルタント出身らしく、行政の補助金に頼らない、仮説を立て実証していく、結果をさらに分析し改善する、といったPDCAサイクルをきっちり廻すことでしっかり結果もついてくる。そして成功例を作るとあちらこちらから声が掛かる。そのノウハウを惜しみなく提供してくれると言うのもありがたいこと、あとはそれを聞く耳を持つか、実行する覚悟があるか。だね。(6/22)
013/080
「玉村警部補の巡礼」海堂尊
“チームバチスタ”シリーズに出てくるキャラクターを主人公にしたスピンオフ小説。確か第二弾だったはず。今作では四国八十八カ所を巡礼しながら、そこで起きた事件を解決していく。まぁ設定にかなり無理があるので、ん?となるところもあるが、エンタテイメントと思えば、それも気にならないかな。それでも、こんな所にも死後画像診断をテーマにした話が出てくるのね。さすがだわ。(6/23)
014/081
「盗人」田牧大和
以前この作家の作品を読んで気になっていたので、久しぶりに手を付けてみました。タイトルどおり、主人公は盗人一味の陰の頭目なのだが、その人間関係や背景がとても上手く描けていて、とても面白かったのだが、いかんせん最大の謎となる部分がかなり拍子抜け。いくら何でもそれは無いやろ、と突っ込みたくなる。筋回しは上手いのに、残念。(6/24)
015/082
「シー・ラブズ・ユー 」小路幸也
東京で古書店とカフェを営む大家族を主人公とした“バンドワゴンシリーズ”の第二弾。ただでさえ登場人物が多いところへさらに家族が増えていく。この先もこの調子で増えていくんだろうか?10年を超えて愛され続けるというのは、それない利に理由があるわけで、本シリーズの場合は何と言っても主人公である“堀田一家”のそれぞれのキャラクター設定にあると言えます。それぞれに際立った設定がされており、誰を中心に据えても物語として成立するようになっています。このあと10数冊続くようなので、楽しみに読みたいと思います。(6/26)
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