2017年の最後は計13冊。うち小説(戯曲を含む)6冊、それ以外が7冊という結果になりました。結果2017年は一年で、計164冊の本を読むことができました。
というところで、12月のお薦めですが、正直なところ小説にはこれという作品に出会えませんでした。期待が大きすぎて、読んだ後がもう一つという物が多く残念でした。
しかしながら、小説以外の本には、お薦め本が結構たくさんありました。
まずは、久米宏さんの回顧録。個人的に彼のファンだということもあって、とても興味深く読みました。彼自身が何度も話しているように、彼はニュースキャスターではなかったけれど、素晴らしいマスコミ人だったと思います。
次に新書で読んだ三冊が秀逸でした。
“三つの石で地球がわかる”は、とってもわかりやすく、中学生レベルの理科の知識で十分楽しめます。面白い一冊でした。
“フランスはどう少子化を克服したか”は、日本では絶対にまねできない内容ばかりで、読んでいてとても歯痒い気分にさせられました。母親が働くことに眉をしかめたり、うるさいからと保育園の建設に反対したりするようなおかしな連中が大勢を占めるような国に将来はない。こいつらがいなくならない限り、日本は少子化を克服できないだろう。
“史上最強のCEO”、民間の力だけで宇宙を目指そうとしているイーロン・マスクという人物については、かねてから興味を持っていたのだけれど、どっかの国の大統領のようないけ好かない金持ち野郎かと思っていました。しかしながら、どうもそうではなさそうで、かなりいい男のようです。今後も注目していきたいと思います。
あと“格差と民主主義”も面白かったです。“暴走する資本主義”の著者でもある元米国閣僚の手になる一冊です。誰に勧められて読んだ本だったかは思い出せないのですが、彼が指摘する新たな資本主義のルールが、多数の支持を得ながら何ら実現されていないという事実こそが、暴走し続けていることの証左ではないでしょうか。
2017年は、せっかくの年末休みを本も読めない状況で迎えてしまい、さんざんな形で終えてしまいました。毎年のように繰り返していますが、今年こそは“これぞ”という一冊に巡り会いたいものです。
001/152
「テミスの剣」中山七里
先月読んだ本が、同テーマシリーズの続編と知って、先行する本作を読みました。別にそれぞれは独立した本なので問題はないのですが、やっぱ読む順序を間違ったかなぁ。“テミス”というのはギリシャ神話で描かれる“正義の神”。左手に平衡を表す天秤と右手に力を表す剣を持つ。正義の名の下に振るわれた剣に、ひとたび両断されたら、後にそれが誤りであったことが分かっても取り返しがつかない。ましてや、間違えることもある“人間”が、その力を振るうには、必要以上に慎重である必要がある。“疑わしきは罰せず”。(12/1)
002/153
「三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち」藤岡換太郎
講談社ブルーバックスは、典型的文系人間の私にもとてもわかりやすく科学の知識を授けてくれる大変ありがたいシリーズです。特に地球や宇宙の成り立ちについて書かれた本は大好きで、今年も一体何冊手に取っただろうか。中でも今作は、私の少し苦手な岩石を切り口に地球の成り立ちを開設するという一冊で、とてもわかりやすく書かれています。ここで言う3つの石とは、マントルを構成する橄欖岩、海底地形を形作る玄武岩、大陸地形となる花崗岩の三種類の石。今の科学でここまで分かってしまうのですね。面白かったです。(12/1)
003.154
「ジョブズの料理人 スティーブ・ジョブズとシリコンバレーとの26年」日経BP社出版局編
アップルのスティーブ・ジョブズが愛した和食料理人の半生をモノローグのような形で綴った物。決して、彼の専属料理人として働いていたわけではなく、あくまで行きつけの料理店主としての関係であった。従って、ジョブズとのエピソードはいくつか語られるが、決して踏み込んだ内容とはなっていない。あくまで一料理人が、如何にしてアメリカで成功するに至ったかという物語だと考えた方が良い。それにしてもそれほど深い内容が書かれているわけではないので、かなり消化不良です。(12/10)
004/155
「フランスはどう少子化を克服したか」髙崎順子
少子高齢化対策が急務となっている日本にとって参考になることが書かれているのではないかという期待を持って読んでみたが、正直日本には導入できないだろうなと思うようなことばかりであった。そもそも日本という国には、子供を社会のみんなで育てていかなければ行けないという発想がなく、子供は家庭しかも母親が育てるものという固定観念から抜け出せておらず、どんな政策を持ってきても機能することはないだろう。おそらく明治維新までの社会においては、女性も貴重な労働力であったことから、子育ては社会で育てなければいけないという考えが主流だったのだろうが、明治維新後、子供は将来の戦力だと考えるようになってから、“産めよ増やせよ”と女性を子育てに縛り付けること是“とし、国民への洗脳が始まった。今もその洗脳は解けていない状況下では、実効性のある少子化対策なんて夢のまた夢。(12/10)
005/156
「騙し絵の牙」塩田武士
グリコ森永事件をモティーフにした“罪の声”の著者による最新刊。俳優の大泉洋に当て書きしたとされる小説で、表紙にも彼の写真が使われている。いろいろなところで評価も高かったので、楽しみにしながら読んだ。結果、この主人公が大泉氏?と言うのがしっくりこず、その違和感を引きずったまま読むことになってしまい、面白みが減ってしまうことに。難しいですねぇ。(12/10)
006/157
「ロバート・ライシュ 格差と民主主義」ロバート・B・ライシュ
アメリカで労働長官を務めたことのある経済学者の著書。アメリカ国内での貧富の差とそれを助長する仕組み、さらにはそのスピードをさらに加速させるための活動について書かれている。私たちには、それほど差し迫った実感はないのかもしれないが、日本も今では世界でも有数の格差の拡大が進む国の一つに数えられている。民主主義というのは、優れた制度かもしれないが、ある種の限界がある制度でもある。特に誰もが参加できるはずなのに、結果的には“お金持ち”でなければ政治家にはなれない現実。アメリカの大統領選挙では、資金力のある候補者が圧倒的に有利であり、その結果当選後の政治姿勢は、その資金源の性質に大きく左右される。そして、ピケティが喝破したように、資産は集約される方向に進むことから、強者はますます強くなり、弱者はますます弱くなる。本来、それを解決することこそが政治の役割ではないか。(12/15)
007/158
「史上最強のCEO イーロン・マスクの戦い」竹内一正
スペースX、テスラ・モータース、ソーラーパワーズといった企業を率いる今注目の経営者であるイーロン・マスクの事績をたどった物。CEOの役割の一つに資金の調達と言うことがあるが、彼の元には様々な企業や団体から多くの資金が集まり、それを“夢の事業”に投資してきた。一躍名をあげたのは、スペースXプロジェクトで、NASAなどに比して10分の1のコストで宇宙船を打ち上げ、それをビジネスとして成り立たせることを目指している。当然、既存の利益団体である巨大企業などから見ると目の上のたんこぶに当たるのだが、それを物ともしない姿勢が痛快である。テスラの持つ電気自動車に関する特許権を全て解放し、自由に使用させることで、EV化のを進め、地球温暖化の阻止に貢献したいという彼の信念が、多くの共感を呼ぶのだろうか。初めて名前を聞いたときは、いけ好かない金持野郎かと思っていたが、意外に良い奴らしい。(12/15)
008/159
「名探偵のキッシュをひとつ チーズ専門店1」エイヴリー・エイムズ
コージーミステリという分野に分類される少し軽めのミステリ。町長である祖母が、殺人事件の容疑者にされ、その無実を晴らすため孫娘が奮闘する。お約束どおり警察は無能で、結局その素人探偵が事件を解決してしまう。警察や刑事訴訟に関する彼我の違いが大きすぎて、上手くついて行けない部分も多く、心底楽しめる感じではない。海外ミステリは難しい。(12/17)
009/160
「『日本スゴイ』のディストピア 戦時下自画自賛の系譜」早川タダノリ
今“日本スゴイ本”の大ブームだそうで、巷にはよく似たテイストの書籍やテレビ番組があふれかえっています。これって、日本人が自信を失いかけていることの裏返しなんだろうか。中国や韓国も同様の傾向にあるそうなので、東洋人の特質なのかな。かつて同様に日本(人)賛美の書籍があふれかえって時期があった。その当時は、世界の列国から日本が“不当におとしめられ”、自身を失いかけていたところ、破れかぶれの戦争に突入した。現在の状況が当時によく似ていると言うのが著者の主張である。ただ、どうも今の状況は、日本国内の様々な仕組みが制度疲労を起こしており、一歩間違うと破綻にまっしぐらとも言えるところを、眩ますために流されているように思えてならない。装ではないことを祈る。(12/17)
010/161
「ロボット (R.U.R)」チャペック
“ロボット”という言葉が初めて使われたのがこの戯曲だそうです。語源としてはチェコ語で賦役(強制労働)を意味するrobota(ロボッタ)とスロバキア語で労働者を意味するrobotnik(ロボトニーク)という言葉を合わせた造語だそうです。ここで描かれているのは、今我々がイメージするロボットと言うよりアンドロイドに近い物と思われる。人類に替わる新たな労働力として発明されたロボットが、自らの意思を持ち始め人類に対して反乱を起こしていく、その先にあるのは、、という物語。最近、人工知能の研究が加速的に進み、その進歩は目を見張るばかりである。ただ、どこまで行っても将来的に人工知能が自らの意思を持つことはないと思うのだが、“まるで、意思を持っているかのように振る舞う”ことは、十分に考えられる。与えられた(自ら獲得した)データを元に最適解を求める作業の中で、“人類を排除する”方向に大きく舵が切られると言うことは十分に考えられる。今のこの流れは止められないと思うので、残る興味は、“いつそのときが来るか”という一点に絞られる。(12/23)
011/162
「夢をまことに」山本兼一
この本を読むまで、その存在すら知らなかった“国友一貫齊”という幕末の大発明家の物語。鉄砲産地として有名な国友村で、鉄砲だけでなく万年筆や反射望遠鏡を制作し、太陽の黒点の観測まで行っていたらしい。実際の人物像はここに描かれているとおりかどうかは分からないが、その発明品を見ただけで諦めない強い気持ちを持っていた人だと分かる。こういった稀代の職人の力と技が、日本の工芸技術を発展させてきた。(12/24)
012/163
“ぴったしカンカン”,“ザ・ベストテン”、“ニュースステーション”などなどの大人気番組でMCを務めた氏の回顧録。昔から彼のテンポの良いしゃべりが好きで、先ほどあげた番組も大好きでした。今では、ほとんどテレビで見かけることもないのでとても残念。氏がかねがね話していたことで、この本の中でも触れられているが、彼はいわゆる報道の経験がなく、キャスターと呼ばれることに抵抗があったようだ。ただ、マスコミの使命は権力の監視役であると言うのが彼の口癖でもあった。私がまだ学生だった頃、漠然とマスコミの世界に憧れていて、同じようなことを考えていたことを思い出します。といってもそれは、松本清張の小説に出てくるような、警察の捜査に疑問を覚え、自ら事件解決に邁進する新聞記者に憧れていただけなんですがね。(12/24)
013/164
「掟上今日子の遺言書」西尾維新
2017年最後の一冊はこの本になりました。以前、新垣結衣さんの主演によるドラマの原作シリーズの4冊目になります。飛び降り自殺者の下敷きになり、大けがをしてしまいながら、なぜか殺人未遂の容疑を受けてしまうと言う容疑者体質の隠館の依頼を受け、主人公の忘却探偵が自殺未遂事件の謎を解きます。実は、調子に乗ってこのシリーズを3冊くらい買ってしまっていたのですが、ちょいと後悔しています。(12/29)