11月は久しぶりにゆっくり読む時間がとれたためか合計27冊となりました。うち小説が12冊、その他が17冊でうち新書が7冊という具合でした。新書は朝夕の通勤や出張中に電車の中で読んだ物が多く、それだけ移動時間も多かったと言うことでしょうか。
特にここ数年間の政治向きの本が散見されますが、別に今回の解散総選挙を意識したものではなく、たまたまそうなってしまったものなので、言い訳をしておきます。
さて、それらの中から今月の本を選びますと、小説では、道尾秀介さんの「鏡の花」が良かったですね。2~3年前に雑誌で書かれた短編を集めた物ですが、一つ一つの話が独立しているものの、こうやって集めてみるとそれぞれがパラレルワールドを構成しているような不思議な感覚が味わえます。また、近しい人の死によって、残された者達が感じる空虚感が上手く表現されています。お薦めです。
その他、ノンフィクションでは、「SFを実現する 3Dプリンタの想像力」が秀逸でした。
完全な文系人間である私にとって、とても遠い話だと思っていたのですが、そうやって忌避している間に、世界はどんどん変わって行ってしまっているということを思い知らされました。仕組みや理屈が解らなくても、それを“既にある物”として受け入れていかないといけませんね。今は“第三の産業革命”と言われているそうです。第一、第二の産業革命は、主に製造業中心でしたが、この3Dプリンタは“流通”などの分野にまで大きな影響を及ぼしそうです。注目の技術ですね。文系人間にも読みやすいお薦めの1冊です。
001/136
「首都感染」高嶋哲夫
新型インフルエンザのパンデミックを首都封鎖で封じ込めようとする物語。最近では、デング熱にエボラ熱と、これまであまり縁のなかった病気の名前を聞くようになった。それらの特徴をよおく聴いていると、むやみに恐れる必要のない病気であることがよく判るが、それには、しっかりとした予防が不可欠である。正しい知識を身につけることが必要である。(11/1)
002/137
「国家の暴走」古賀茂明
一昨年誕生した第二次安倍政権であるが、その何とも言えない不気味さが端的に描かれており、心の奥底に何となくわだかまっている不安の正体がよく判る。如何に信念や理念が正しいと思っていても、その表し方、実現の手法を誤ってはいけない。いくら先の選挙で国民の大多数の信任を得たように見えても、実のところはそうではないし、また国民は白紙委任をしたわけでもない。実際、国民の大多数が不安に思う要素があるとするなら、もっと丁寧な進め方をするべきではないか。(11/2)
003/138
「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です」カレン・フェラン
常々うさんくさく思っていた、経営コンサルタント業界の裏側を暴露した書籍。ただ、これはアメリカ国内での話であって、これがそのまま日本に当てはまるとはとても思えない。実際のところ、日本の企業は外部コンサルタントにそれほどの信をおいていないと思うのだが、どうなのだろうか。昨今のグローバル経済の進展に伴い、アメリカ的な経営方法が日本企業にも求められつつある状況を見ると、この書籍に書かれていることのいくつかは既に日本でも起こっているのだろうか。(11/2)
004/139
「特等添乗員αの難事件Ⅰ」松岡圭祐
万能鑑定士Qシリーズのスピンアウト小説。これも軽くて読みやすい。(11/3)
005/140
「特等添乗員αの難事件Ⅱ」松岡圭祐
シリーズの第2作目。軽すぎて、あんまり残ってないぞ。(11/3)
006/141
年が明けると、次女が高校受験を迎える。ここに書かれていることは日本の中でも東京周辺の本の一部であると思いたいが、親としてはとても気になるところである。この本の中には、いかにもという少女から、まさかと思われるようなケースまで、様々な事例が紹介されている。本来であれば次代を担うべき若い世代の人たちが、夢を持って生きていけない時代が続いている。無理矢理に強いられる競争からこぼれてしまった若者達を救う場所がなく、社会からこぼれ落ち、どんどん難民化し、さらに格差社会が広がっていく。我々がこの社会を正さなければいけない。(11/5)
007/142
「安倍官邸と新聞 『二極化する報道』の危機」徳山善雄
第二次安倍内閣発足後の新聞各紙の報道を振り返ってまとめたもの。著者は朝日新聞の記者なのだが、特に偏った見方をしているわけではないことは強調しておきたい。実は自分も昔はマスコミで働きたいという夢を持っていたのだが、それを具体化させることもなく今の仕事に就いている。当時の私は、マスコミの使命は権力の監視役であると信じていたので、今の私はひょっとするとその監視される側にあるのかもしれない。それでもマスコミに対する考えには、変わりはない。(11/7)
008/143
「窓際OL 会社はいつもてんやわんや」斎藤由香
著者は作家北杜夫の長女。彼のサントリーで働いておられるとは知らなかった。サントリーと言えば、開高健、山口瞳という偉大な作家を生み出した非常にユニークな会社だと認識しているが、その伝統は途絶えていないらしい。それにしても、社内の内情をこれほど赤裸々に書いて大丈夫なモノなのだろうか。人ごとながら心配である。(11/7)
009/144
「万能鑑定士Qの探偵譚」松岡圭祐
シリーズの中では若干長めで、ストーリー展開も少し落ち着いた感じがする1冊である。相変わらず面白いのであるが、主人公の弱さ、弱点をストーリー展開の軸に置き、それを克服するまでの姿が描かれている。(11/8)
010/145
「ちょっと徳右衛門」稲葉稔
面白いかなっと思って、借りて読んでみたのだが、うーん、なんか物足りない。(11/9)
011/146
「食事を一緒にするだけでその人のすべてがわかる」渋谷昌三
たかが一度くらい食事を一緒に摂っただけでは、その人の全ては判らないのである。しかしながら、数分間しゃべっただけで、相性が合うかどうかはわかってしまうものである。ふとした仕草、何気ない言葉、人の本性というのは、そんなところに表れる。そう、噛みは細部に宿るのである。(11/15)
012/147
「アベノミクスを越えて」苫米地英人
アベノミクスなるものの正体は何か。ひょっとすると誰にも判っていないのではないか、頭の悪い私にはそのように思えてくる。先日、突然のように衆議院の解散総選挙が話題に上ったと思ったら、あれよあれよという間に解散がきまり、来月の14日に選挙が行われる。さらに、その争点がアベノミクスの是非だという。本当にこの正体のわからないものを争点にして私たち有権者は判断しなければいけないのだろうか。困った。(11/15)
013/148
「福島原発事故 被災者支援施策の欺瞞」日野行介
あの大震災から3年半。その復興の要となる復興庁の幹部による暴言ツイッターの取材からこの本は始まる。本来なら最も重視されなければいけない福島県民の思いを封じ込める形で福島原発事故処理が進められる。“弱き者。汝の名は被災者”(11/18)
014/149
「女の一生」伊藤比呂美
老若様々な女性の問いに答える形で、著者が考える“ひとのあり方”を小気味よいくらいはっきりと断じる。当然のことながら男女には越えがたい性差があるわけで、肉体的なそれは如何ともしがたいのであるが、人間としての根本的なありようについては変わるはずもなく、書かれている内容については私にも納得できることが多い。できれば娘にも読ませたい本である。(11/21)
015/150
「続巷説百物語」京極夏彦
彼の本はこれまで読んだ記憶がなく、おそらく初めての1冊であると思う。できれば続編の前に正編を読んでおきたかったところであるが、残念ながら図書館になくこの本から読み始めた。読む前は怪談話のシリーズかと思ったのであるが、さにあらず。全ては人が引き起こした事件ばかりで、それだけに恐ろしさもひとしおとも言える。改めて、相当の書き手であると認識。(11/22)
016/151
「特等添乗員αの難事件Ⅳ」松岡圭祐
シリーズの第4作。どうやらこのシリーズはここまでのよう。何はともあれハッピーエンドで良かった。めでたしめでたし。(11/22)
017/152
「特等添乗員αの難事件Ⅲ」松岡圭祐
なんたるドジ、シリーズ4を先に読んでしまうという痛恨のミス。まぁ、どの作品を先に読んでも問題はない作りになっているはず何だけでど、いやぁ、失敗した。(11/23)
018/153
「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子
昨年大ベストセラーになった1冊。人は誰でもついつい自分が置かれている環境に不満を言い、全ての責任を押しつけようとする。そしてそれで逃れようとする。当然その方が楽であるし、そのことで自分が傷つくこともない。しかしながら、できれば今与えられた環境の下で常にベストを尽くしていきたいものである。ひょっとすると茨の道かもしれないが、“暗いと不平を言うよりも、すすんで灯りをつけたい”ものである。(11/23)
019/154
「SFを実現する 3Dプリンタの想像力」田中浩也
たまたま、3Dプリンタが、ものづくりの将来を大きく変えてしまうだろうという話を聞いたところだったので、書店の店頭で見つけて衝動買いし、そのまま直ちに読み始めるという私にはとても珍しい経験をした。今、3Dプリンタがこのような状況にあると言うことを全く知らず、本当に恥ずかしい限りである。よくぞそんなことで今の仕事ができていることよと、改めて反省しきり。世の中の動きは激しい、特に技術分野での進歩は、我々文系分野の人間には、よほど注意してみていかないと大きく取り残されてしまう。改めてそんな当たり前のことに気づかされました。(11/23)
020/155
「パパは楽しい躁うつ病」北杜夫 斎藤由香
親子の対談集である。話を聞き出すために、娘の方がしゃべりすぎているきらいがあり、少し残念な気がする。マンボウ先生もそれだけお年を召されていたと言うことであろうか。そういえば彼のエッセイ集って、相当昔に読んだ記憶があるけど、最近はとんと手に取っていないなぁ。(11/23)
022/156
「ダブル・フォールト」真保裕一
テニスのサーブは、一度失敗しても二度目が許されている。もちろん二度失敗すると失点になるのだが、その分一度目は思い切ってチャレンジをすることができる。昔読んだテニス漫画で、鬼コーチが確実に決まられるセカンドサーブの重要性を語る場面があった。絶対に失敗しない二度目があるからこそ、最初の一撃をリラックスして思い切り撃つことができるのだそうだ。世の中のテニスプレーヤーがどのように思ってゲームに臨んでいるかは知らないが、実はサーブを二度続けて失敗したとしても、それはポイントを一つ失うだけ、ゲームはさらに続くのだ。そんなお話でした。(11/24)
023/157
「ハラールマーケット最前線」佐々木良昭
海外から日本を訪れる観光客が二年続けて1000万人を突破し、今後もさらに増えていくことが期待されている。今は欧米や東アジアが中心だが、今後はイスラム圏からの観光客の増加が見込まれている。しかしながら、その最大の障壁になっているのが、イスラムの厳しい戒律である。もちろん日本におけるイスラム教は一般的ではなく、それに対する理解もほとんどすすんでいない。イスラム圏の国家は今後も大きく発展していく可能性を秘めており、日本がグローバル社会で生きていくためには、イスラム社会との協働は避けて通れない。日本人にはイスラムだけでなく宗教そのものに対する理解も大きく不足しているだけに、これはとても大きく困難なテーマなのである。本書で触れられているような、見た目だけの御都合主義ではすぐに破綻してしまうのではなかろうか。(11/24)
024/158
「京都人は変わらない」村田吉弘
京都の老舗料亭の主人が描いた京都人の本質。世間の人が“京都人”に対して持っているであろう先入観、思い込みを丁寧に解説している。実は京都人ではない私にも解ることはたくさんあるのだが、この本で初めて知った習慣もたくさんある。京都って本当に奥が深い。(11/27)
025/159
「純喫茶『一服堂』の四季」東川篤哉
半分眠りながら読んだせいもあるのかもしれないが、これはあまりにひどいなぁ、彼らしくない作品である。一人一人の登場人物もあまり魅力的ではないし、ミステリとしての面白さもない。(11/28)
026/160
「カレイドスコープの箱庭」海堂尊
バチスタシリーズの最新(?)刊なのだが、ちょっと今作はいただけない。ストーリー展開の強引さについては目をつむるにしても、謎解きとしてもイマイチかな。(11/29)
027/161
「鏡の花」道尾秀介
何人かの登場人物が、パラレルワールドのように様々な設定で描かれる連作短編集。そしてなぜか、どの作品でも誰かが一人故人となり、残された者達の哀しみが描かれるという不思議な仕立てになっている。一つ一つの物語も独立して読むことができ、完成度も高いのだが、こうやって並行に並べると、その面白さも倍増。(11/30)
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