001/058
『屋上ミサイル』山下貴光
“このミス大賞”の受賞作なのだそうだが、世評にもあるとおり、これで大賞とはやや問題があるのではないか。さすがにこれをミステリーと呼ぶのは気が引ける。なにやらかつての伊坂幸太郎を真似たようなハードボイルドタッチの青春小説です。軽くって読みやすいのだけれど、それだけではねぇ。(3/3)
002/059
『必然という名の偶然』西澤保彦
意外などんでん返しが最後に待ち受ける6つの短編小説集。今回は超能力は全く出てこず、“正統派”のミステリーになっている。とはいえ設定にはかなり無理があるけれど。(3/3)
003/060
『胡蝶の失くし物』仁木英之
シリーズ三作目。またもや新キャラ登場。今度はこれまで以上に毒を持った不気味なキャラで,今後彼にどのような役回りをさせるつもりなのか興味があるところ。(3/4)
004/061
『パーフェクトプラン』柳原慧
第2回のこのミス大賞受賞作だそうである。スピード感はあるが、なにやら満足感はあまり感じられない。少し欲張りすぎたのだろうか、こんなにたくさんの要素を入れないと作品として完成しなかったのだろうか。頭の切り換えが大変。
005/062
『ビジネスマンのための「行動観察」入門』松波晴人
以前から気になっていた“行動観察”の入門書。過去に実際行った“行動観察”の実例が多数掲載されている。もう少し“ノウハウ”の部分に踏み込んだ中身になっているかと期待していたが、そこまで甘くない、といったところか。かなり場数を踏まないと身にはつかないような感じ。(3/6)
006/063
『検証 東日本大震災の流言・デマ』荻上チキ
“あれから一年”ということもあって、震災関係の本を最近は手にすることが多くなってきました。この本は昨年の震災時に“大活躍した”と言われたツイッターなどによる流言・デマが如何に広がったかを検証したものである。結論的には、解決策が何ら提示されておらず、とても検証したというような内容ではないが、如何に無責任な内容のデマが、“善意”によって広まったかがよくわかります。昨年の震災では、この新しい通信手段による正負の両面が語られました。手軽に発信できる情報の中は、まさに“玉石混合”であるが、この“玉と石”の見分けがつく人がほどんどいない状況では、何の意味もありません。まるで“悪貨が良貨を駆逐する”状況によく似ています。扱える人間の程度がこのような状況では、非常時にはその利用を制限せざるを得ないのでは。(3/7)
007/064
『水底フェスタ』辻村深月
初めて読む作家。田舎の閉鎖的な村を舞台に、その閉鎖性への疑問を持つ少年の物語。長老たちの村を守ろうと蠢く様は、何やら恐ろしい。(3/7)
008/065
『決起! コロヨシ!!2』三崎亜記
“コロヨシ!!”の続編。どうやらこの物語はさらに先へと続きそうな感じ。いつもながら彼の作り出す世界は深淵で興味深い。スピード感のある描写と生き生きと眼前に甦る異境の描き方がすばらしい。(3/10)
009/066
『仏果を得ず』三浦しをん
人形浄瑠璃の世界を舞台とした青春小説。主人公が恋愛や様々な葛藤を契機に芸の道を極めていく様がすがすがしい。これまた、浄瑠璃を語る様の描写が見事。ついつい読み急いでしまう。(3/10)
010/067
『さびしい女神』仁木英之
僕僕先生シリーズ第4弾は初の長編。今回は王弁が活躍する。今回の物語の鍵となる“さびしい女神、魃”の置かれていた状況はあまりに無残で、同情を禁じ得ない。王弁の誠意が最後の最後に魃の心を蕩かす様は痛々しい。この物語で王弁はさらに大きく一段階上で登ることになる。(3/10)
011/068
『考える日々Ⅲ』池田晶子
彼女の著書を読むのは久しぶりです。本当に若くして失われてしまった才能が惜しまれます。おそらく面と向かって話をしたら、腹が立つこと請け合いですが、冷静に書かれた物を読むと頷かれることばかり。しっかり私も考えないといけませんね。(3/12)
012/069
『幻惑密室』西澤保彦
今週はほとんど本を読む時間がなかったと言うことに改めて気がつく。清水義範氏の“幻想探偵社”を読んでいたい。(3/17)
013/070
『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦
本人も知らない“お姉さん”の正体は一体何だったんだろう。消えてしまった彼女の胸の内はいったいどのようなものであったか。(3/17)
014/071
『ちょちょら』畠中恵
江戸時代を舞台にすると彼女の筆は冴える。かなり突拍子もない結末には思えるが、まぁ許しましょう。主人公も魅力的。ただ、鍵になる同僚岩崎の正体がつかめない。若干ご都合主義的かとも思われまが。(3/17)
015/072
『モルフェウスの領域』海堂尊
いつものAi関連の事件ではなく、白鳥もでてこない。いつものように医学領域と法律・政治の領域を縦横無尽に駆け抜ける小説。今回テーマのコールドスリープは、どの程度実現性にある技術なのだろうか。さすがに、簡単に導入できる技術ではなさそうな。(3/18)
016/073
『先生の隠しごと~僕僕先生』仁木英之
2作連続の長編書き下ろし。主人公の王弁の成長が著しい。今作では、僕僕先生の切れ味がもう一つで、そのため王弁がしっかりとせざるを得なかった。そしてさらに一行の人数は増えてどうなっていくのやら。この手の作品は、キリがないだけに終わらせるタイミングが難しい。“しゃばけシリーズ”しかり。(3/18)
017/074
『おそろし』宮部みゆき
作者の本領発揮。出世作は現代社会小説だったが、その後江戸時代を舞台にした小説が続く。さすがに空想ゲームの世界を舞台にした小説はいただけないが、それ以外の分野については、全くハズレなしの希有な作家である。三島屋百物語とあるからは今後も続編が出てくるわけで、主人公のおちかが最後にどのような成長を遂げるのか、非常に楽しみである。(3/20)
018/075
『ヤマト政権~日本古代史②』吉村武彦
1300年の記念の年を迎えた“古事記”・日本書紀の時代を中心とした歴史入門。同じシリーズでも前巻は考古学の分野で、どうにもとっつきにくいが“史”の時代になるとようやく身近に感じ、安心して読むことができる。古代史最大の謎である“邪馬台国”についてもサラリと記述してあるなど、ならして書かれていて専門家には物足りないだろうが、初心者には十分です。実際はどうだったのか、見ることはできないにしても“知りたい”気持ちは止められない。(3/20)
019/076
経済小説の大家が描く渋沢栄一の伝記小説。最初の妻である千代との結婚から、彼女の死までの間の出来事を綴る。前半は未だ彼が攘夷を信奉していた血気盛んな時期を中心に書かれ、後半は維新後、心ならずも中央政府に召し出された頃の出来事が書かれている。比較的淡々と書かれており、創作的な部分は少ない(と思う)。後年の経済人としての活躍ぶりを城山氏が書いたらおもしろかろうと思うのだが。(3/26)
020/077
震災後を振り返る書籍が多数出版されている。思い込みや精神論が書かれているわけではなく、当時の報道の様子を淡々と書き綴った物で、逆に何を伝えたいのかよく分からない。研究室の中に閉じこもって書かれた物では伝わらないよ。(3/27)
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