2025年最後の月は、文芸作品11冊、その他が6冊で、計17冊。年間では232冊と240冊には届かずという結果になりました。
この月は、読書以外のことに時間を取られることが多くて、不完全燃焼な部分もありましたが、数としてはそんなに悪くないですが、質の面ではどうでしょうか。
小説、特に国内小説ではではこれぞと思うような本には出会えなかったかなという印象です。
ということで国内小説にはお薦めがなく、唯一翻訳もので『そしてミランダを殺す』を強く推したいと思います。翻訳もよかったんだと思いますが、あまり出会ったことのないスタイルの小説で、読み手を飽きさせない展開はとても良かったです。この作家さんの本は2冊目だと思うのですが、いずれも外れなしでした。別の本も読みたいと思いますが、とりあえずこの一冊はお薦めです。
続いて小説以外の本では、面白い本がたくさんありました。
まずは骨太のテーマで書かれた『核燃料サイクルという迷宮』は、特にお薦めです。政府が強引に原子力発電の再稼働を進めようとしている理由や過去の隠ぺいの歴史、今さえよければよいというエゴむき出しの我々の醜さなどがこれでもかと描き出されています。めちゃくちゃ面白かったです。ぜひともお薦めします。
次いで、世界的な企業の強さの秘密を描いた『レゴ』も面白かったです。組み立てブロックの製造業から始まり、特許が切れて迷走し、多角化に失敗し、瀕死の状態になりながらも本業で復活し、成長を続ける企業のレポートです。とても参考になるところも多く、大小問わず“ものづくり”をされている企業には参考になる部分も多いのではないでしょうか。お薦めです。
最後は、日本の庶民における洋装の歴史を描いた『Tシャツの日本史』です。仁保の洋装の歴史は明治維新に始まるのですが、そこから和装を排除し洋装に切り替えられていくまでの歴史が特に面白かったです。知らないことばかりでとても興味深い内容でした。
21世紀の最初の四半世紀が終わり、たぶん次の四半世紀を全う出るとは思えない年になってきました。それでも、本を読むことによって、知らなかった世界、新しい世界への扉が開く瞬間の興奮はないものにも代えがたいものです。
新しい2026年にどのような出会いがあるのか、ワクワクしながら楽しみたいと思います。今年もよろしくお願いします。
001/216
「核燃料サイクルという迷宮 各ナショナリズムがもたらしたもの」山本義隆
とても面白い本でした。2011年の東日本大震災を受け原子力発電というシステムそのものの脆弱性が明らかになったにもかかわらず、今また老朽化しているにもかかわらず、“廃止”する技術を持たないことから全国の原発再稼働が始まっています。何度も言いますが、世界に誇る高速鉄道“新幹線”のスピードが、これだけ上げられるのは、“高速運転する列車を安全に停止させる技術”があるからこそです。そういった術を持たない技は、使ってはいけない。この本には、原発を巡る黒い闇も赤裸々に明かされており、とても興味深く全国民にお薦めしたいです。(12/4)
002/217
「そしてミランダを殺す」ピーター・スワンソン
三部構成のミステリ小説で、一人の女性が各部ごとに違うもう一人と交互に語り継ぐという面白い構成になっています。空港のラウンジで偶然に出会った女性に、妻の不貞を打ち明けたところ、共謀してその妻を殺すことを持ちかけられるという衝撃的な滑り出し。各部ごとに、驚くような展開を見せ、あっと驚く結末が用意されています。これまた面白かったです。(12/5)
003/218
「クロエとオオエ」有川ひろ
著者お得意の“激甘お仕事ラブコメ”で、今作の舞台はジュエリー業界。とある宝飾店の御曹司とジュエリー職人。相変わらず面白く、安心して読めます。(12/7)
004/219
「貧乏お嬢さまと消えた女王 英国王妃の事件ファイル18 」リース・ボウエン
こちらはシリーズ最新刊。ようやく借りることができました。“王冠を懸けた恋”として知られるエドワード8世の在位中という時代設定で、その世紀の恋の相手方が、例によって騒ぎを巻き起こす。そして殺人事件が起こり、主人公夫妻が事件を解決に導く。時代はこのまま第二次世界大戦へ突入するのだが、続きが楽しみです。(12/9)
005/220
「<みる/みられる>のメディア論 理論・技術・表象・社会から考える視覚関係」高馬京子、松本健太郎編
これはなかなか評価の難しい本でした。十数人の学者が、『みる、みられる』という関係を切り口に様々なテーマについて取り上げており、『観る・観られる』という点では『観光』、『看る・看られる』という点では『監視社会』などとても興味深い論点もあったあのですが、いかんせん一遍ずつの紙幅が限られていて、なかなか深い考察に入っていけません。切り口が興味深かっただけに、やや残念でした。(12/9)
006/221
「レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一のブランドの育て方」蛯谷敏
デンマークにある世界的な玩具メーカーである『レゴ』の歴史やその成長の秘密について詳細に記録した書籍で、とても興味深くて読みやすく、一気に読むことができました。いっとき経営危機に陥ったところ、奇跡的な回復を遂げ、今では超優良企業として君臨しています。そこには、『玩具用ブロック』の製作という一点に集中するという卓抜した経営判断がありました。その物語はとても面白かったです。書籍で紹介されていた『LEGOのイノベーション・マトリックス』は、見た目にもわかりやすく、他社の参考になると思います。また、巻末の解説もとても示唆に富む内容で、いつかどこかで紹介できたらいいなと思います。お薦めです。(12/11)
007/222
「栄光のバックホーム 横田慎太郎、永遠の背番号24」中井由梨子
話題の映画の原作となった書籍です。休日に読み始めて、本を片手に宛てなく街に出かけたのですが、本に触発され、映画も見てきました。劇場も半分以上の入りでしたから、結構の人気作品になっているようですね。主人公のお話は、阪神ファンの間では有名なお話で、将来を嘱望されたプロ野球選手でした。私も彗星のように現れた彼には大きな期待を寄せていたところが、ほどなく試合に出なくなり、心配していたところで大病を患ったと知らされました。その後、病気を押して講演活動をされたりしていましたが、病には勝てず2023年阪神の18年ぶりの優勝を見ること叶わず、亡くなりました。本当に素晴らしい選手でした。合掌(12/14)
008/223
「白薔薇殺人事件」クリスティン・ペリン
今春の本屋大賞翻訳部門で第二位になった本だそうです。フーダニット(Who done
it?)ものの習作との触れ込みでした。60年の時を超えてつながる二つの事件。とても面白かったですが、登場人物が複雑で、一覧表が手放せない本でした。(12/15)
009/224
「Tシャツの日本史」高畑鍬名
最近朝日新聞のスクラップを整理していたら書評欄で取り上げられていて面白そうだったので借りてきたのですが、予想以上に面白かったです。日本における洋装の歴史の中でも『Tシャツ』にフォーカスして、その流行を概観したものです。まず、その前史として明治維新で和装が洋装に駆逐されることになった契機をピックアップされているのですが、これが目からうろこ。続いて初めて知った『レーヴァーの法則』(流行は繰り返すということを看破しました)。最後は、『タックイン』と『タックアウト』のせめぎあい。2022年コミケ会場風景をオタク文化と絡めて書かれた次の文が秀逸です。『そこには「おたく」と「オタク①」と「ヲタク」と「オタク②」が同居していた。』『一番若い「オタク②」は、シャツをインで着ている。古い「オタク①」と「ヲタク」は、今なおタックインにトラウマを抱えている。彼らの始祖である「おたく」は徹頭徹尾、インである。』引用が長くなりましたが、『シャツアウト』に関しては、枕草子にも同様の風景が出てくるそうで、まぁ面白い。日用品に関わる皆さんには、めっちゃお薦めです。(12/16)
010/225
「藍を継ぐ海」伊予原新
直木賞受賞作なんですね。多分この作家さんの本を読んだのは、この本で2冊目くらいではなかったでしょうか。いわゆる理科系の題材を扱っておられることが多く、この本も地質学や生物学などにかかわる5つの短編が収められています。直木賞受賞作と聞くと若干「?」がついてしまうのですが、個人的にはニホンオオカミを題材にした一編が良かったです。(12/18)
011/226
「パンプルムース氏の秘密任務 」マイケル・ボンド
これは最近読み始めたお気に入りのシリーズ物の2作目で、相変わらずのドタバタ劇。肩の力も抜けて、息抜きにはぴったりです。(12/19)
012/227
「アルツハイマー病研究、失敗の構造」カール・へラップ / 梶山あゆみ訳
ちょっと毛色の変わった書籍で驚かれたかもしれませんが、最近読んだ本(どの本だっかた覚えていません)で紹介されていて、興味を抱いて検索したら、府内では八幡市図書館に蔵書があり、ネットワークから借り出してきました。内容は、アルツハイマー病の原因として考えられている“アミロイド・カスケード仮説”について、この仮説のみを信奉することの誤りを徹底的に検証した書籍で、300ページに及んで医学用語が飛び交う書籍なのですが、これは翻訳が良かったせいか、とても読みやすく結構一気に読めた感じです。書かれていた文章で気に入った一節をご紹介します。『“急いで何かしなければ”という姿勢に頼りすぎてきたからこそ、今のような状況-治療薬もなく、手掛かりもわずかしかない-に陥ったのではないか』
私には、今の伝統産業界にも当てはまるとしか思えない。めちゃくちゃ難しかったけど、面白かったです。“失敗学”の教科書としてもお薦めです。(12/19)
013/228
「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」井上真偽
この作家さんは結構好きなんですが、同シリーズの前作を読んだ時、どう感じたのか全く思い出せない。続きがあっても多分読まないだろうなと思う一冊でした。(12/21)
014/229
「マリア
女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨
最近いはまってる作家さんで、なんとなく中毒性があり読んでいるんですが、このシリーズは特に警察組織が無能に描かれていて、若干鼻白むところがあります。もう少し有能に描いてあげても罰は当たらんと思うんだが。仕方なく続編は予約しました。(12/23)
015/230
「公爵さまが、あやしいです 行き遅れ令嬢の事件簿1」リン・メッシーナ
最近見つけた19世紀のイギリスを舞台にしたコージーミステリシリーズです。超身分社会の中で、最下級貴族の端っこに置かれた主人公が、覚醒し殺人事件の謎を解くというお約束のストーリーですが、これが結構面白い。また続編を読もうと思います。(12/26)
016/231
「あいにく あんたの ためじゃない」柚木麻子
直木賞の候補作にもなった短編集らしいのですが、この作家さんの本との相性にはかなり波があるようで、この本はあまり相性が良くなかったようです。未時間短編集にもかかわらず結構日数がかかりました。しばらく距離を置こうかなと思います。(12/28)
017/232
「高宮麻綾の引継書」城戸川りょう
初めて読む作家さんで、デビュー作のようですね。結構売れていると聞いたので図書館で予約し、読んでみました。いわゆるお仕事小説で、逆境にめげずのし上がっていく女性が主人公なんですが、かなり癖強めな主人公で、現実感には乏しく逃避型の空想小説として読むにはよいが、これで現実の仕事への意欲がわくかどうかは微妙なところ。お仕事小説はそこが大事だと思うのですがいかが?続編も出ているようですが、読むかどうかは思案中です。(12/30)