2026年3月11日水曜日

2026年2月

令和8年2月は、小説が6冊、小説以外が11冊で、合計17冊となりました。通常より2~3日少ないことを考えれば、まずまずの結果かなと思います。

今年に入って、『民主主義』、『資本主義』、『近現代史』の分野の書籍を手に取ることが増え、読めば読むほどさらに興味がわいてきます。

ということで、今月も小説少な目という結果になり、お薦め本も難しいのですが、あえて挙げていきたいと思います。

まず、小説についてですが、6冊のうち4冊がシリーズものなので、2冊からの選定となりますが、この中では『家族』でしょうか。

これは、実際にあった事件を題材にとった物語で、かなり恐ろしい物語になっています。被害者の関係者は、まだご存命かと思いますので、小説として取り上げるのはかなり難しかったと思いますが、なかなか重い小説でした。

次いで小説以外の本の中では、まずはエッセイ集になりますが『あらゆることは今起こる』が良かったです。いつもは不思議な世界の小説を書かれている作家さんですが、『ADHD』と診断された御自身の心の中で、どんなことが起こっているのか、とても分かりやすく綴ってくれています。とても勉強になりました。

ついで『あの戦争は何だったのか』も示唆に富む内容でとても面白かったです。この本をきっかけに『近現代史』についての本に手を伸ばすようになりました。『新たな戦前』が終わる前に、しっかりと『あの戦争』について、総括しなければならないと改めて思います。

三冊目は『ブラック郵便局』で、これは地方紙の記者によるルポルタージュで、『郵便局』の知られざる闇の世界の一部にスポットを当てていますが、あまりに闇が深すぎて、その明かりもそこまでは全く届いていない実感があります。自浄作用は全く期待できそうもなく、さらなる追求が望まれます。

2月は残念ながら、ノルマにしていた古典を読み切ることができず、複数の書籍を同時並行で読んでいます。来月にはご報告できるよう、ピッチを上げていきたいと思います。

 

001/019

閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書」知念実希人

猟奇殺人犯人の精神鑑定報告書とその鑑定をした鑑定人へのインタビューなどから構成される一風変わったサイコミステリで、期待しながら読みました。途中までは面白く読めたのですが、結末が若干頂けない印象で、かなり落胆しながら読み終えました。(2/1)

 

002/020

リバタリアンが社会実験してみた町の話 自由至上主義のユートピアは実現できたのか」マシュー・ホンゴルツ・へトリング

これは、アメリカ、ニューハンプシャー州に実在するグラフトンという町での実話なのですが、この町に完全自由主義者たちが移住をはじめ、彼らが町の大勢を占めるようになったことで起こったことままとめられています。まず、行政が税金を徴収することに異議を唱え、行政サービスも最低限のものに抑えます。消防署や警察署も縮小され、役場も機能しなくなります。それでも自由を謳歌したい住民にとってはユートピアなのか。アメリカという国は変わった国ですね。(2/5)

 

003/021

AIを美学する なぜ人工知能は『不気味』なのか」吉岡洋

美学・芸術額の研究家が著したAIを美学する本です。タイトルにひかれて読みました。書かれている文章は平易なのですが、内容を理解するには能力が足りませんでした。私たちがAIに対して持っている感情ってどんなもんなんでしょうか?『便利』『面白い』あるいは『なんか怖い』『不気味』という感情もあるかもしれません。AIが人間の知能を超えて暴走を始めるときシンギュラリティは、やってくるんでしょうか?そのとき、世界はどう変わってしまうのでしょうか?なんとなくですが、私たちが気づかないうちにことは起こってしまっているように思っています。(2/6)

 

004/022

あらゆることは今起こる」柴咲友香

小説の作家さんによるエッセイ集なのですが、実は『ADHD』と診断された著者がその心象風景を赤裸々に綴ったとても興味深いエッセイなのです。たしか新聞の記事で見かけたのだと記憶しているのですが、とてもよく読まれているようで、図書館で予約してからかなり待つことになりました。あらゆる病がそうなのですが、本人以外の他人には決してそのつらさは理解できないだろうと思っていますが、だからこそ自分と他人では考えも、感情も違うんだという前提で、交わることが重要なんだと改めて思います。(2/9)

 

005/023

『あの戦争』は何だったのか」辻田真佐憲

『あの戦争』と書かれると、日本人は『どの戦争』を思い浮かべるのでしょうか?この本では、1945年に終わったあの戦争を『あの戦争』としていますが、まずはその名称から考察をはじめ、その名称によって『いつ始まったのか』という問いへの答えが違ってきます。私たちは『あの戦争』の総括もしないまま数十年が過ぎて風化してしまい、今では全く新たな歴史を創り上げようというとんでもない動きも見受けられます。この本を読んで、改めて、私たちは新たな戦前に突入したんだと実感しました。(2/10)

 

006/024

資本主義の次に来る世界」ジェイソン・ヒッケル

イギリスの経済人類学者によって書かれた、原題『LESS IS MORE How Degrowth Will Save The World』という書籍の邦訳です。『民主主義』と『資本主義』は、我々が子供のころから当たり前のように存在し、未来永劫続くものだと思っていたところ、『民主主義』はすっかり形態が変わってしまい、『本来の形』がわから難くなってしまいました。当然、この先どうなるのかもわかりません。さらに『資本主義』については、前世紀末に唯一の競合であった『共産主義』が壊滅し、未来に向けてさらに発展していくことが期待されていましたが、今では完全に暴走し、格差が拡大し、万人が幸せになれるシステムではないことが明らかになりましたが、誰もそれを止めることができません。著者は、緩やかな変革を望んであられるように見受けられますが、私は、大きな事故が起きて初めて止められるのではないかと恐れています。とても興味深く面白かったです。(2/12)

 

007/025

家族」葉真中顕

今月二冊目の小説は、かなり恐ろしい小説でした。直木賞候補にもなった作品は、実際にあった大量殺人事件をモティーフにして書かれており、この事件のことを耳にした時も戦慄を覚えましたが、小説として読んで、改めて恐怖を感じました。現実の事件では、首謀者が自死したため、真相は闇の中となりました。小説の中ではどのように描かれるのかと興味を持っていましたが、作品の中でもそれを書くことに躊躇されたのか、詳細には描かれませんでした。遺族もおられることですからやむを得ないんですかね。(2/14)

 

008/026

平家物語の合戦 戦争はどう文学になるのか」佐伯真一

平家物語というと、琵琶法師による語り物としてのイメージが強いですが、読み物としてまとめられたものも多数あるようで、『源平盛衰記』なども、その異本の一種と数えられています。私が小学生のときの担任の先生が、授業中に脱線して、この『源平盛衰記』のお話をしてくれることがあって、宇治川の先陣争いや一の谷の合戦、敦盛の最期など、とてもなじみ深いものでした。敗者である平氏にターゲットを当てて書かれた物語の中で、戦争がいかに描かれているのか。とっても面白かったです。(2/17)

 

009/027

自由の限界 世界の知性21人が問う国家と民主主義」エマニュエル・トッドほか

読売新聞の記者が、そのネットワークを生かして、世界の21名の賢人に行ったインタビューがまとめられています。(2/17)

 

010/028

仏教の歴史 いかにして世界宗教となったか」ジャン=ノエル・ピエール

著者はフランス人でありながら、特に日本の仏教研究についての第一人者で、フランの研究機関が4大宗教について纏めた書籍の一つになります。世界における仏教の歴史がとても端的にまとめられていて、初学者にも理解しやすい中身となっています。インドで生まれた仏教が中国へ伝わったものの、そこから先は仏教全体ではなく、その一部が〇〇宗という形で日本に伝わってきます。なんかこの辺が日本らしいというか、不思議なところですね。面白い。(2/17)

 

011/029

ブラック郵便局」宮崎拓郎

一地方新聞社の記者である著者が、取り上げた一つの新聞記事がきっかけで、明らかになった全国の郵便局で当たり前のように行われている独特のルールについてレポートされたものです。強烈なノルマをこなすための自爆営業やパワハラ、それによる自死など、その闇は計り知れないほど深い。さらには、全国郵便局長会という謎の団体。ある意味諸悪の根源ともいえる組織ですが、なぜか誰もそこにメスを入れることができない。恐ろしいです。(2/18)

 

012/030

公爵さま、それは誤解です 行き遅れ令嬢の事件簿3」リン・メッシーナ

今年に入って読み始めたシリーズの3作目。最初の作品はミステリ要素の強い作品でしたが、前作くらいからその要素が薄くなり、今作に至って、うっすらとミステリ要素はあるものの、ほぼラブコメのような作品になりました。そう思って読むとそれなりに許せる気がして、次作も読むことにしました。(2/18)

 

013/031

弱いロボット」岡田美智男

先日読んだAIの本の参考図書で挙げられていた中で、面白そうなタイトルに惹かれて読んでみました。お掃除ロボットというと、普通はあの丸い形をした自走式のクリーナーを思い浮かべますが、この本に出てくるロボットは、ごみの近くまではやってくるけど、自分ではごみが拾えなくて、誰かに拾ってもらうことでようやくミッションが果たせるゴミ箱ロボットです。人類とロボットの共存の理想形かもしれませんね。とても興味深いです。(2/20)

 

014/032

マスカレード・ライフ」東野圭吾

人気のシリーズとなった作品の最新刊です。半年以上待ってようやく読めることになりました。これまで同様ホテルを舞台にしたミステリですが、今作から主人公は警察を辞めてホテルの従業員として働いています。ヒトは人生を生きる上でも、人知れず仮面をかぶっている。その仮面が外せるときが来るのが幸せなのか、それとも一生かぶり続けられるほうが幸せなんでしょうか。(2/21)

 

015/033

新・古代史 グローバルヒストリーで迫る邪馬台国、ヤマト政権NHKスペシャル取材班

NHKスペシャルで取り上げられた内容を書籍にまとめたものなんですが、なかなか面白かったです。考古学への科学の応用としては『放射性炭素年代測定』がよく知られていますが、この本では『酸素同位体比年輪年代法』という新しい分析術も紹介されていて、とても興味深かったです。また、木々に覆われて定かではない地形を浮かびあがらせる『航空レーザー測量』なども面白い。卑弥呼から倭の五王の間の『空白の4世紀』の謎を解き明かすカギとなる遺跡の発掘も進んできました。あとは宮内庁が頑なに拒否し続けている御陵比定地の調査が進めばなぁと思うのですが。あと、私は個人的には邪馬台国九州説が正しいと思っていて、その衰退とともに大和地域での権力者の勃興がときを置かずして続き、のちの山と調整の基礎となったと推測しています。まぁ、ド素人のおっさんがこんなことを勝手に口のできるというのも平和な証拠ですかね。(2/22)

 

016/034

凍結事案捜査班 時の残像」麻見和史

猟奇的な殺人事件の捜査をする中で、過去の未解決事件とのかかわりが見つかり、コールドケース専門捜査班が合同捜査に乗り出す。妻の死からなかなか立ち直れない主人公の心の回復と事件捜査が並行する。この作者の警察ミステリ小説は、はずれがなくて気に入っています。本作も面白かったです。(2/25)

 

017/035

ルビイ 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨

ようやくシリーズの完結編です。相変わらずあまり好みではない設定と展開で、何度も投げ出そうかと思いましたが、何とか完走しました。コメントは特にありません。(2/28)

 

2026年2月9日月曜日

2026年1月

2026年最初の月は、小説が7冊、それ以外の書籍が11冊で、計18冊という結果になりました。

立ち上がりとしてはまずますかなと思いますが、小説が少なめです。そんな中でのお薦めの小説を御紹介します。

まずは今年の一冊目の『どら蔵』です。こちらは、個人的に推している朝井さんの小説で、今作は江戸時代の道具屋の物語です。生き生きとした主人公の描き方に引き込まれ、次のページをめくる手が止まりません。ある意味江戸時代の痛快お仕事小説といった趣ですがとても面白かったです。

そして二冊目は子供のころ絵本で読んだ『ガリバー旅行記』です。いまさらと笑われそうですが、数年前に購入したきり何度も読もうとして読めずに放ってありました。今年に入って改めて読んでみたところ、とんでもなく面白かったです。翻訳もよかったせいかもしれませんが、読みづらい箇所はほとんどなく、最後まで面白く読めました。改めて、著者の世界観には脱帽です。もしまだ完読したことがないという方がおられましたら、ぜひともお薦めです。

というところで小説以外の書籍からのお薦めですが、今月も結構豊作で、絞るのが難しいのですが、心を鬼にして次の三冊をお薦めします。

まず『デザインマネジメント論のビジョン』ですが、こちらは20年ほど前に伝統産業の担当をしていたころにお世話になった大学の先生が著者に名を連ねておらる本ということで、とても興味を持って読んだところ、とてもためになる内容で、マネジメントとして働く方たちにこそ読んでほしい本だなと思いました。めちゃ面白いですお薦めです。

二冊目は『少数派の横暴』です。アメリカの政界を舞台に述べられているので、我が国に置き換えることは難しいですが、彼の国で何が起こっているのかを知るうえでとても有用です。アメリカで起こっていることは遠からず我が国に波及することを考えると、いつかそのうちと思ってしまいます。お薦めです。

三冊目は『肥満の科学』でして、わが身の健康のことを考えつつ読んだのですが、納得させられる内容でした。書かれているとおりの生活を送ることは難しいかなとは思いますが、リスクを理解していることが重要だと思います。同じお悩みをお持ちの皆様にもお薦めです。

二月に入り急激な変化に翻弄されながらこの文章を書いています。

先日の総選挙では、ほとんどの政党が消費税減税を公約に挙げるという異常事態で、投票に値する候補者が見当たりませんでした。(投票には行きましたよ、もちろん!)

子供たちの未来、地球の未来を本気で考えている候補者も、残念ながら見当たりませんでした。

今の自分が未来に残せることは何か。そんな知恵と知識をつけたくて、これからも読書に励みます。

 

001/001

どら蔵」朝井まかて

2026年の一冊目は、昨年末から読み始めたこの本でした。この方の時代小説は面白くて、いつも楽しみにしています。今作は、江戸時代の道具屋が主人公。上方でしくじって江戸に下り、ようやく商売を軌道に乗せ始めたところで、実家が大変なことに。史実も交えつつの物語は、期待どおり面白かったです。(1/2)

 

002/002

ミルク殺人と憂鬱な夏 中年警部クルフティンガー」フォルカー・クルプフル/ミハイル・コブル

主人公は、ドイツ・バイエルン州の田舎町の中年警部。地元の乳製品製造会社の重役が殺されます。まさかこんな町で殺人事件が起きるとは、というお話なのですが、中途半端にドタバタが入っていて、振り切れていない感じ。原書では7~8冊のシリーズが出ているようですが、邦訳は2作のみ。まぁ、そんな感じなんでしょうね。(1/7)

 

003/003

日本史を支えてきた和紙の話」朽見行雄

著者は元ジャーナリストということで、わかりやすい語り口ですが、それに反比例して内容的にはやや不満足。ただ、安土桃山時代に発明された「紙蝶番」の果たした貢献については、愁眉を開かされた。偉大なる発明です。(1/7)

 

004/004

超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか」松尾豊/NHK『人間ってナンだ?超 AI入門 』制作班

AIの第一人者である松尾さん関連の著書ですが、奥付をみると7年前の出版ということで、内容的には一時代前の状況を反映しているような印象。まさかAIが、人類にこれほどの分断をもたらす方向へ進化していくとは考えられていなかったように思います。(1/8)

 

005/005

デザインマネジメント論のビジョンーデザインマネジメント論をより深く学びたい人のために」佐藤典司、八重樫文、後藤智、安藤拓生

府庁での現役時代に、大変お世話になった先生が著者グループにおられるということで、読んでみたのですが、とにかく面白くためになった。途中からメモを取り出したのですが、そのメモも最終的には8ページにも及ぶ結果となり、とてもこの短い行数で語りつくすことはできません。組織になかで何かしらの問題を抱えており、何とかその組織を改善しなければいけないと考えておられる諸氏にはお薦めの一冊です。(1/8)

 

006/006

恋のスケッチはヴェネツィアで 」リース・ボウエン

ここ一、二年ハマっている作家さんで、シリーズものではない作品は初めて見たので借りてみました。内容的にはミステリ要素は少なく、大叔母と姪孫の世代を超えた物語。第二次大戦直前にベネチアで激動の時期を過ごした大叔母から遺贈されたを21世紀初頭9・11の惨劇で息子と切り離されてしまった姪孫がベネチアを訪れ、その鍵の解き明かしていく長大な物語です。こんな小説も書くんだなと再評価しました。(1/12)

 

007/007

戦争の記憶  コロンビア大学特別講義-学生との対話-」キャロル・グラック

著者は、日本の近現代史を専門とするコロンビア大学歴史学教授なのですが、どこで氏の名前を見たのか記憶が定かではないのですが、日本の近現代史を専門に研究されている海外の専門化ということで、とても興味を持ちました。その最初の一冊ということで、手軽な親書を読んだのですが、内容は大学でのゼミの風景を記録したもので、『歴史と記憶』について、『戦争の記憶』『慰安婦の記憶』といったテーマを手掛かりにした学生たちとの対話が収められています。日本人の第二次世界大戦についての記憶は、真珠湾に始まりヒロシマで終わっており、その前の大陸での戦争がすっかり記憶から消えている。という指摘がありました。私たちが加害者であった記憶が消されているんですね。怖いことです。(1/15)

 

008/008

風俗学 路上の思考」多田道太郎

奥付を見ると1978年初版となっていますから、およそ半世紀前の書籍です。最近読んだ本で紹介されていたので、図書館で探して借りてきました。これが、なかなか面白い。当時、京都大学の教授であった著者などが中心となって結成された『現代風俗研究会』での活動の一環として書かれた文章をまとめられたものです。『風俗』と聞くと、何やら猥褻な響きがありますが、この研究会は全く違い、まじめに『風俗』について研究する団体のようです。興味を持ったので、入会案内を請求してみたのですが、どうなりましょうか。特に気に入ったフレーズをいくつか。『fad⇒fashion⇒style;流行風俗習俗』『この社会には4つの性がある。男が見る男、女が見る男、男が見る女、女が見る女』(1/16)

 

009/009

エリカ 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨

シリーズの4作目です。ずっと追っていたテロ首謀者の死体が発見されるという衝撃的な事件をめぐる物語です。例によって、警察組織がことさら無能に描かれていて、若干むず痒い。(1/17)

 

010/010

スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書」ジョセフ・E.スティグリッツ

かつて自由主義、グローバル主義に疑問を呈し、ノーベル経済学賞を受賞された学者さんということで、一度その著書を読みたいと思っていたのですが、いずれもとんでもない大著ばかりなので、比較的読みやすそうな本を選んで読んでみました。行き過ぎた資本主義とグローバリズムが格差社会、分断社会を生み出しているところまでは納得できるのですが、それを是正する手段として、あまりに空想的なことを述べられていて、やや鼻白む感じ。まぁ、常識的な解決手段はないとは思うのですがね。(1/18)

 

011/011

ガリヴァー旅行記」スウィフト

今年の目標として、月に一冊は手持ちの岩波文庫または古典文学を読もう!という目標に沿い、まず手始めに読んだ一冊です。子供のころに読んだガリバー旅行記は、小人の国リリパット王国への旅があまりにも有名ですが、それ以外に、巨人の国、空飛ぶ島(有名な『ラピュタ』ですね)、馬の国へたどり着き、それらの国について克明な記録を残すという体の物語です。皆さんも読まれたことがおありかと思うのですが、これがまたとても面白い!翻訳もお上手なんだと思いますが、読みやすくてほぼ一気に読めました。こんな面白い本だったとは知りませんでいた。(1/18)

 

012/012

少数派の横暴 民主主義はいかにして奪われるか」スティーブン・レビツキー/ダニエル・ジブラット

2020年のアメリカ大統領選挙で敗れたトランプ大統領が、支持者を焚きつけて、翌年の新大統領就任式が行われる議事堂を襲うという米国史上恥ずべき大事件ののちに書かれた本で、2024年のトランプ復活の前に出版されています。よく知られているように、アメリカの大統領選挙は、世界でも他に類を見ない歪なスタイルをとっていて、選挙での少数派が結果的に勝利するということが当たり前に起こっています。トランプが勝利した2度の大統領選挙も、全国での得票数は対戦相手のほうが上回っていたにもかからずなぜか勝利してしまった。実は2000年代以降のアメリカ大統領、上院、下院の選挙で、共和党の得票総数が民主党のそれを上回ったのは数度だけであるにもかかわらず、その多くに共和党が勝利しているという奇妙な制度なんです。日本のような多党制だと目立ちませんが、二大政党が支配するアメリカではかなり目立ちます。だれも疑問に思わないというのがとても怖い。勉強になる本でした。(1/22)

 

013/013

肥満の科学 ヒトはなぜ太るのか」リチャード・J.ジョンソン

これも面白かった。ヒトはなぜ太るのか。ヒトという生物の生存本能が、イザという時のため体内に脂肪を蓄積させてしまうといわれていますが、この本では膨大な研究の蓄積から、そのスイッチを探すというテーマに絞り込み、考察を加えています。細かな分析は省略しますが、果糖旨味塩分の三つが、そのトリガーになると解明されています。それらの『地雷』を避けつつ、必要な栄養を補給するためのダイエット方法についても提示されていますので、興味にある方はぜひお読みください。とりあえず、コメ、小麦を減らして、ビタミンcのサプリを吞んでいます。(1/22)

 

014/014

18マイルの境界線 法医昆虫学捜査官」川瀬七緒

これもお気に入りのシリーズなんですが、結構久しぶりの新刊ということで、かなり驚いています。また、続きがあるのかなぁ。(1/25)

 

015/015

『黒人』は存在しない アイデンティティの釘付けについて」タニア・ド・モンテーニュ

『黒人女性-クローデット・コルヴィンの知られざる人性』というノンフィクション小説と表題のエッセイが収録された一冊で、昨年新聞の書評で取り上げられていたことから、ぜひ読みたいと図書館で探してきました。この小説は、1960年代、アメリカ・モンゴメリーのバスボイコットに端を発する人権運動を描いたもので、白人に席を譲らなかったため逮捕されたローザ・パークスと運動を主導したマルティン・ルーサー・キング・ジュニアの陰に隠れて、 無き物にされた一人の少女にスポット当てた習作です。(1/27)

 

016/016

ネット怪談の民俗学」廣田龍平

ネット上で語られる怪談、都市伝説といったものについて、まじめに考察された研究書です。いかんせん、ネットスラングに疎い身にはかなり難解で、何度も放り出しそうになりました。ネット怪談の黎明期は、いわゆる『掲示板』という特殊なサイトに文字情報として発信されたものが、その後画像を含むようになり、現在は映像も加えて広がっているようです。さらに今では、本物と見分けがつかないほどにつくられた映像が幅を利かせるようになり、何がなんやらわからなくなってきました。そのうち、そんなフェイク動画が重犯罪や戦争を巻き起こすようになれば、『怪談』などとふざけている場合ではないかもしれません。(1/28)

 

017/017

科学的根拠で子育て 教育経済学の最前線」中室牧子

教育経済学の第一人者による近著です。様々なデータを駆使して、効率的な子育てについて描かれています。残念ながら、日本ではこの方面の研究がほとんど進んでいなくて、海外のデータばかりであるのがとても残念です。いずれにせよ、家庭での親子の会話や習慣づけが、経済的には最も有用であるそうです。(1/30)

.

018/018

公爵さま、いい質問です 行き遅れ令嬢の事件簿2」リン・メッシーナ

こちらも最近読み始めたコージーミステリのシリーズです。主人公の女性が、どんどん人が変わったように成長していく様がとても好感持てます。続きを読みます。(1/31)

2026年1月3日土曜日

2025年12月

2025年最後の月は、文芸作品11冊、その他が6冊で、計17冊。年間では232冊と240冊には届かずという結果になりました。

この月は、読書以外のことに時間を取られることが多くて、不完全燃焼な部分もありましたが、数としてはそんなに悪くないですが、質の面ではどうでしょうか。

小説、特に国内小説ではではこれぞと思うような本には出会えなかったかなという印象です。

ということで国内小説にはお薦めがなく、唯一翻訳もので『そしてミランダを殺す』を強く推したいと思います。翻訳もよかったんだと思いますが、あまり出会ったことのないスタイルの小説で、読み手を飽きさせない展開はとても良かったです。この作家さんの本は2冊目だと思うのですが、いずれも外れなしでした。別の本も読みたいと思いますが、とりあえずこの一冊はお薦めです。

続いて小説以外の本では、面白い本がたくさんありました。

まずは骨太のテーマで書かれた『核燃料サイクルという迷宮』は、特にお薦めです。政府が強引に原子力発電の再稼働を進めようとしている理由や過去の隠ぺいの歴史、今さえよければよいというエゴむき出しの我々の醜さなどがこれでもかと描き出されています。めちゃくちゃ面白かったです。ぜひともお薦めします。

次いで、世界的な企業の強さの秘密を描いた『レゴ』も面白かったです。組み立てブロックの製造業から始まり、特許が切れて迷走し、多角化に失敗し、瀕死の状態になりながらも本業で復活し、成長を続ける企業のレポートです。とても参考になるところも多く、大小問わずものづくりをされている企業には参考になる部分も多いのではないでしょうか。お薦めです。

最後は、日本の庶民における洋装の歴史を描いた『Tシャツの日本史』です。仁保の洋装の歴史は明治維新に始まるのですが、そこから和装を排除し洋装に切り替えられていくまでの歴史が特に面白かったです。知らないことばかりでとても興味深い内容でした。

21世紀の最初の四半世紀が終わり、たぶん次の四半世紀を全う出るとは思えない年になってきました。それでも、本を読むことによって、知らなかった世界、新しい世界への扉が開く瞬間の興奮はないものにも代えがたいものです。

新しい2026年にどのような出会いがあるのか、ワクワクしながら楽しみたいと思います。今年もよろしくお願いします。

 

001/216

核燃料サイクルという迷宮 各ナショナリズムがもたらしたもの」山本義隆

とても面白い本でした。2011年の東日本大震災を受け原子力発電というシステムそのものの脆弱性が明らかになったにもかかわらず、今また老朽化しているにもかかわらず、廃止する技術を持たないことから全国の原発再稼働が始まっています。何度も言いますが、世界に誇る高速鉄道新幹線のスピードが、これだけ上げられるのは、高速運転する列車を安全に停止させる技術があるからこそです。そういった術を持たない技は、使ってはいけない。この本には、原発を巡る黒い闇も赤裸々に明かされており、とても興味深く全国民にお薦めしたいです。(12/4)

 

002/217

そしてミランダを殺す」ピーター・スワンソン

三部構成のミステリ小説で、一人の女性が各部ごとに違うもう一人と交互に語り継ぐという面白い構成になっています。空港のラウンジで偶然に出会った女性に、妻の不貞を打ち明けたところ、共謀してその妻を殺すことを持ちかけられるという衝撃的な滑り出し。各部ごとに、驚くような展開を見せ、あっと驚く結末が用意されています。これまた面白かったです。(12/5)

 

003/218

クロエとオオエ」有川ひろ

著者お得意の激甘お仕事ラブコメで、今作の舞台はジュエリー業界。とある宝飾店の御曹司とジュエリー職人。相変わらず面白く、安心して読めます。(12/7)

 

004/219

貧乏お嬢さまと消えた女王 英国王妃の事件ファイル18 」リース・ボウエン

こちらはシリーズ最新刊。ようやく借りることができました。王冠を懸けた恋として知られるエドワード8世の在位中という時代設定で、その世紀の恋の相手方が、例によって騒ぎを巻き起こす。そして殺人事件が起こり、主人公夫妻が事件を解決に導く。時代はこのまま第二次世界大戦へ突入するのだが、続きが楽しみです。(12/9)

 

005/220

<みる/みられる>のメディア論 理論・技術・表象・社会から考える視覚関係」高馬京子、松本健太郎編

これはなかなか評価の難しい本でした。十数人の学者が、『みる、みられる』という関係を切り口に様々なテーマについて取り上げており、『観る・観られる』という点では『観光』、『看る・看られる』という点では『監視社会』などとても興味深い論点もあったあのですが、いかんせん一遍ずつの紙幅が限られていて、なかなか深い考察に入っていけません。切り口が興味深かっただけに、やや残念でした。(12/9)

 

006/221

レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一のブランドの育て方」蛯谷敏

デンマークにある世界的な玩具メーカーである『レゴ』の歴史やその成長の秘密について詳細に記録した書籍で、とても興味深くて読みやすく、一気に読むことができました。いっとき経営危機に陥ったところ、奇跡的な回復を遂げ、今では超優良企業として君臨しています。そこには、『玩具用ブロック』の製作という一点に集中するという卓抜した経営判断がありました。その物語はとても面白かったです。書籍で紹介されていた『LEGOのイノベーション・マトリックス』は、見た目にもわかりやすく、他社の参考になると思います。また、巻末の解説もとても示唆に富む内容で、いつかどこかで紹介できたらいいなと思います。お薦めです。(12/11)

 

007/222

栄光のバックホーム 横田慎太郎、永遠の背番号24」中井由梨子

話題の映画の原作となった書籍です。休日に読み始めて、本を片手に宛てなく街に出かけたのですが、本に触発され、映画も見てきました。劇場も半分以上の入りでしたから、結構の人気作品になっているようですね。主人公のお話は、阪神ファンの間では有名なお話で、将来を嘱望されたプロ野球選手でした。私も彗星のように現れた彼には大きな期待を寄せていたところが、ほどなく試合に出なくなり、心配していたところで大病を患ったと知らされました。その後、病気を押して講演活動をされたりしていましたが、病には勝てず2023年阪神の18年ぶりの優勝を見ること叶わず、亡くなりました。本当に素晴らしい選手でした。合掌(12/14)

 

008/223

白薔薇殺人事件」クリスティン・ペリン

今春の本屋大賞翻訳部門で第二位になった本だそうです。フーダニット(Who done it?)ものの習作との触れ込みでした。60年の時を超えてつながる二つの事件。とても面白かったですが、登場人物が複雑で、一覧表が手放せない本でした。(12/15)

 

009/224

Tシャツの日本史」高畑鍬名

最近朝日新聞のスクラップを整理していたら書評欄で取り上げられていて面白そうだったので借りてきたのですが、予想以上に面白かったです。日本における洋装の歴史の中でも『Tシャツ』にフォーカスして、その流行を概観したものです。まず、その前史として明治維新で和装が洋装に駆逐されることになった契機をピックアップされているのですが、これが目からうろこ。続いて初めて知った『レーヴァーの法則』(流行は繰り返すということを看破しました)。最後は、『タックイン』と『タックアウト』のせめぎあい。2022年コミケ会場風景をオタク文化と絡めて書かれた次の文が秀逸です。『そこには「おたく」と「オタク」と「ヲタク」と「オタク」が同居していた。』『一番若い「オタク」は、シャツをインで着ている。古い「オタク」と「ヲタク」は、今なおタックインにトラウマを抱えている。彼らの始祖である「おたく」は徹頭徹尾、インである。』引用が長くなりましたが、『シャツアウト』に関しては、枕草子にも同様の風景が出てくるそうで、まぁ面白い。日用品に関わる皆さんには、めっちゃお薦めです。(12/16)

 

010/225

藍を継ぐ海」伊予原新

直木賞受賞作なんですね。多分この作家さんの本を読んだのは、この本で2冊目くらいではなかったでしょうか。いわゆる理科系の題材を扱っておられることが多く、この本も地質学や生物学などにかかわる5つの短編が収められています。直木賞受賞作と聞くと若干「?」がついてしまうのですが、個人的にはニホンオオカミを題材にした一編が良かったです。(12/18)

 

011/226

パンプルムース氏の秘密任務 」マイケル・ボンド

これは最近読み始めたお気に入りのシリーズ物の2作目で、相変わらずのドタバタ劇。肩の力も抜けて、息抜きにはぴったりです。(12/19)

 

012/227

アルツハイマー病研究、失敗の構造」カール・へラップ / 梶山あゆみ訳

ちょっと毛色の変わった書籍で驚かれたかもしれませんが、最近読んだ本(どの本だっかた覚えていません)で紹介されていて、興味を抱いて検索したら、府内では八幡市図書館に蔵書があり、ネットワークから借り出してきました。内容は、アルツハイマー病の原因として考えられているアミロイド・カスケード仮説について、この仮説のみを信奉することの誤りを徹底的に検証した書籍で、300ページに及んで医学用語が飛び交う書籍なのですが、これは翻訳が良かったせいか、とても読みやすく結構一気に読めた感じです。書かれていた文章で気に入った一節をご紹介します。『急いで何かしなければという姿勢に頼りすぎてきたからこそ、今のような状況-治療薬もなく、手掛かりもわずかしかない-に陥ったのではないか』 私には、今の伝統産業界にも当てはまるとしか思えない。めちゃくちゃ難しかったけど、面白かったです。失敗学の教科書としてもお薦めです。(12/19)

 

013/228

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」井上真偽

この作家さんは結構好きなんですが、同シリーズの前作を読んだ時、どう感じたのか全く思い出せない。続きがあっても多分読まないだろうなと思う一冊でした。(12/21)

 

014/229

マリア  女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨

最近いはまってる作家さんで、なんとなく中毒性があり読んでいるんですが、このシリーズは特に警察組織が無能に描かれていて、若干鼻白むところがあります。もう少し有能に描いてあげても罰は当たらんと思うんだが。仕方なく続編は予約しました。(12/23)

 

015/230

公爵さまが、あやしいです 行き遅れ令嬢の事件簿1」リン・メッシーナ

最近見つけた19世紀のイギリスを舞台にしたコージーミステリシリーズです。超身分社会の中で、最下級貴族の端っこに置かれた主人公が、覚醒し殺人事件の謎を解くというお約束のストーリーですが、これが結構面白い。また続編を読もうと思います。(12/26)

 

016/231

あいにく あんたの ためじゃない」柚木麻子

直木賞の候補作にもなった短編集らしいのですが、この作家さんの本との相性にはかなり波があるようで、この本はあまり相性が良くなかったようです。未時間短編集にもかかわらず結構日数がかかりました。しばらく距離を置こうかなと思います。(12/28)

 

017/232

高宮麻綾の引継書」城戸川りょう

初めて読む作家さんで、デビュー作のようですね。結構売れていると聞いたので図書館で予約し、読んでみました。いわゆるお仕事小説で、逆境にめげずのし上がっていく女性が主人公なんですが、かなり癖強めな主人公で、現実感には乏しく逃避型の空想小説として読むにはよいが、これで現実の仕事への意欲がわくかどうかは微妙なところ。お仕事小説はそこが大事だと思うのですがいかが?続編も出ているようですが、読むかどうかは思案中です。(12/30)