11月は文芸作品が14冊、その他が4冊で計18冊となりました。
年計で215冊なので、240冊には届きそうもないですね。
11月は、休日の仕事もあったり、業界のイベントが毎週のようにあったりと、休日はほとんど出ずっぱりで、読書時間もかなり限られました。
そんな中での今月のお薦めです。
小説では、『帰れない探偵』がダントツでよかったです。ミステリ小説のようなタイトルですが、その要素は全くなく、探偵である主人公が世界の各地で遭遇する出来事について、淡々と語られます。あまり経験したことがない調子で書かれていて、妙に魅了されます。とても良いです。お薦めです。
小説以外では、『オーウェルの評論集』が思っていた以上に面白かったです。オーウェルといえば『1984年』が有名ですが、ジャーナリストとして大変多くの評論やエッセイを書かれており、この本はその一部を4巻にまとめたものの一冊で、新聞に連載されたコラムがとてもよかったです。これもお薦めです。
小説では、吉川英梨さんの本が4冊もありました。ちょっと偏りすぎを反省いたしておりまして、それ以外にもシリーズものも多数あり、新たな出会いには程遠いなぁと思った次第です。
ここ数日は、めっきりと冷え込んで、初雪も見られましたが、今月は散歩を含む外出予定が多く、本を読む時間の確保が難しくなりそうです。
『書を捨てよ 町へ出よう』といったのは寺山修司でしたが、私の場合『本を持って街に出よう』がモットーなので、天気の良い日には、そんな休日を楽しみたいと思います。
001/198
「新宿特別区警察署Lの捜査官」吉川英梨
女性警察官が活躍する警察ミステリ。新宿二丁目を管轄する新宿特別区警察に赴任した子持ちの女性警部が、管内で起こった殺人事件の指揮を執る。レズビアンの部下。しかも夫は階級が下。これでもかというくらいミソジニーな場面が描かれていて、気持ち悪くなるくらい。(11/2)
002/199
「野球が好きすぎて」東川篤哉
年に一遍ずつ書き留められた野球に関するミステリがまとめられたもの。語り手は、警視庁捜査一課の親娘燕、熱烈なスワローズファンの父と“つばめ”と名付けられてしまった親子が事件の謎を追うのだが、探偵役は謎の女性。プロ野球ファンが通う“ホームラン・バー”なるスポーツバーで、カープのユニフォームに身を包み、レッドアイを飲む彼女が、二人から事件を概要を聞いただけで、全容を解明する安楽椅子探偵もの。著者も生粋のカープファンなんですね。(11/3)
003/200
「アゲハ 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨
最近、この作者の作品をやたら読んでますね。こちらは、別のシリーズものの第一作で、鑑識課員の主人公が事件に挑みます。まずは、一人息子が誘拐され、犯人から指定された場所へ向かうと同僚夫妻が同じ場所に。どうやらこちらも一人息子が誘拐されたよう。過去の未解決事件とも絡みつつ、犯人に迫ります。結構面白かったです。こちらのシリーズも読んでいきます。(11/3)
004/201
「天保新酒番船」秋吉好
この本は、灘でつくられた新酒をいち早く江戸に届けるという競争をテーマにした小説で、実際一番乗りを果たした船の船頭は、江戸では英雄だったそうです。どこで見かけたのか忘れましたが、興味を持って探していたところ、向日市図書館に所蔵されていることがわかり、府立図書館のネットワークで借りることができました。面白かったです。(11/7)
005/202
「月と6ペンス」モーム
光文社の古典新約文庫の一冊です。主人公である画家はゴーギャンをモデルにして書かれたとなっていますが、もちろんかなりデフォルメされていて、これほどの性格破綻者ではありません。読みやすい訳でとてもよかったです。(11/7)
006/203
「差別と資本主義 レイシズム・キャンセルカルチャー・ジェンダー不平等」トマ・ピケティ、ロール・ミュラ、セシル・アルデュイ、リュディヴィーヌ・バンティ二
この本は、フランスの新聞に連載されたものを一冊の本としてまとめられてもので、これほど硬派の文章が新聞の特集として成り立つ文化に感服します。そもそも資本主義というシステムそのものが格差を拡大することを当然のこととしており、その経済格差そのものがさらに差別の原因となってくるという、悪循環システムを内包しています。どこかで修正しないと破局を招くことになるのではないかと危惧しています。(11/8)
007/204
「経営者革命」ジェームス・バーナム
原著は1940年に書かれた古典です。社会を分類するとき、“生産手段を誰が所有するか”という観点を軸にして、資本主義と社会主義に分類されます。前者は資本主義は永続すると謂い、後者は資本主義は社会主義に代替されると謂う。本書の著者は、新たに“経営者主義”という概念を提示する。当時世界の三極で出現したロシア革命、ナチスドイツ、ニューディールという動きを経営者革命の端緒と位置付けています。いろいろと厳しい評価を受けた著書のようですが、現在のGAFAなどによる世界制覇や国家を超えたEU官僚の暴走などの姿を見ると、まさに経営者革命が進みつつあるとも思われます。300ページにも及ぶ大著でしたが、翻訳も丁寧でとても読みやすかったです。この本も府立図書館を経由して、神戸市立中央図書館蔵書を借りることができました。(11/12)
008/205
「ガリレオの生涯」ブレヒト
戯曲です。地動説を唱えたガリレオ・ガリレイの後半生を描いた物語です。有名な「英雄を必要とする国が不幸なのだ」というセリフは、この戯曲の中でブレヒトが作ったんですね。初めてりました。面白かったです。(11/12)
009/206
「帰れない探偵」柴崎友香
“世界探偵委員会連盟”という団体に所属する探偵が主人公で、『今から十年くらい後の話。』で始まる7編の章からなる物語です。せっかく開いた探偵事務所兼自宅に帰れなくなってしまうところから物語が始まります。そしてその後は、連盟本部からの指示に従って、世界各地で探偵業を営みます。なんとも不思議な物語で、とても面白かったです。(11/13)
010/207
「人形遣いと絞首台」アラン・ブラッドリー
化学大好き少女フレーヴィア・シリーズの第2弾です。人形劇『ジャックと豆の木』のクライマックス、天から落下してきたのは大男ではなく人形遣い。事故か事件か。科学大好き少女が、再び謎を解きます。 (11/15)
011/208
「スワン 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨
こちらもシリーズ第二弾ですが、相変わらずミソジニー要素がいっぱいで、読んでいても不快になるレベルです。まぁ、極端さを強調するためと自分を納得はさせていますが。ミステリとしてはよくできていて面白く、次に続く結末はとても恐ろしく、思わず声が出ました。(11/17)
012/209
「オーウェル評論集1 象を撃つ」ジョージ・オーウェル
ジョージ・オーウェルが書いた評論を集めたもので、パブリックスクール卒業後ビルマで警察官として働いていた時期に起きた出来事をつづった表題作や、プレパラトリー・スクール(予備小学校)時代の抑圧された学校生活の記録や“トリビューン紙”のコラムとして書かれた数編など、とても面白い一冊でした。結構お薦めかも。(11/18)
013/210
「パズルと天気」伊坂幸太郎
過去に発表した短編を集めたもの。特にテーマがあるわけではありません。まぁまぁです。(11/22)
014/211
「宝島」スティーヴンソン
こちらは、冒険小説の古典ですね。これまで読んだことがなかったものを改めて読んでみました。海賊が隠したお宝をめぐっての冒険活劇ですが、こんなお話だったんですね。あえて少年向きに訳されたのでしょうか。とても読みやすかったです。(11/22)
015/212
「月下蝋人 新東京水上警察」吉川英梨
シリーズの最新作。ひょっとして最終作になるのかな?前作からは数年の年月が経っていて、その間に主人公の二人が、結婚して、離婚してと大きな環境の変化に見舞われます。どうもその離婚にも隠れた理由があるようで。背景にかなり重いテーマが描かれていて、お気楽に読むという感じではありませんでした。(11/24)
016/213
「イノベーションの競争戦略 優れたイノベーターは0→1か?横取りか?」内田和成
ボストンコンサルティングの日本法人を率いていた編者による一冊で、イノベーションとは、新たな価値を創造して顧客の行動を変えること言い切り、数々の実例を取り上げて解説されています。ちょこちょこ役立つことも書かれていたので、少しメモにとりました。(11/25)
017/214
「幽霊はお見通し 家政婦は名探偵」エミリー・ブライトウェル
こちらもシリーズの3作目で、降霊会帰りの女性が自宅で殺害されるという事件をいつもの警部補の自宅の使用人グループが解決します。ちょっと飽きてきた。(11/27)
018/215
「幻惑密室」西澤保彦
先日訃報に接した作者への追悼の意味を込めて借りてきました。彼独特の超能力の存在を前提にしたミステリで、ちゃんと破綻することなく本格推理として成り立つというスゴ技です。面白本を書かれる作家さんでしたが、とても残念です。ご冥福をお祈りします。(11/30)