2025年12月7日日曜日

2025年11月

11月は文芸作品が14冊、その他が4冊で計18冊となりました。

年計で215冊なので、240冊には届きそうもないですね。

11月は、休日の仕事もあったり、業界のイベントが毎週のようにあったりと、休日はほとんど出ずっぱりで、読書時間もかなり限られました。

そんな中での今月のお薦めです。

小説では、『帰れない探偵』がダントツでよかったです。ミステリ小説のようなタイトルですが、その要素は全くなく、探偵である主人公が世界の各地で遭遇する出来事について、淡々と語られます。あまり経験したことがない調子で書かれていて、妙に魅了されます。とても良いです。お薦めです。

小説以外では、『オーウェルの評論集』が思っていた以上に面白かったです。オーウェルといえば『1984年』が有名ですが、ジャーナリストとして大変多くの評論やエッセイを書かれており、この本はその一部を4巻にまとめたものの一冊で、新聞に連載されたコラムがとてもよかったです。これもお薦めです。

小説では、吉川英梨さんの本が4冊もありました。ちょっと偏りすぎを反省いたしておりまして、それ以外にもシリーズものも多数あり、新たな出会いには程遠いなぁと思った次第です。

ここ数日は、めっきりと冷え込んで、初雪も見られましたが、今月は散歩を含む外出予定が多く、本を読む時間の確保が難しくなりそうです。

『書を捨てよ 町へ出よう』といったのは寺山修司でしたが、私の場合『本を持って街に出よう』がモットーなので、天気の良い日には、そんな休日を楽しみたいと思います。

 

 

 

001/198

新宿特別区警察署Lの捜査官」吉川英梨

女性警察官が活躍する警察ミステリ。新宿二丁目を管轄する新宿特別区警察に赴任した子持ちの女性警部が、管内で起こった殺人事件の指揮を執る。レズビアンの部下。しかも夫は階級が下。これでもかというくらいミソジニーな場面が描かれていて、気持ち悪くなるくらい。(11/2)

 

002/199

野球が好きすぎて」東川篤哉

年に一遍ずつ書き留められた野球に関するミステリがまとめられたもの。語り手は、警視庁捜査一課の親娘燕、熱烈なスワローズファンの父とつばめと名付けられてしまった親子が事件の謎を追うのだが、探偵役は謎の女性。プロ野球ファンが通うホームラン・バーなるスポーツバーで、カープのユニフォームに身を包み、レッドアイを飲む彼女が、二人から事件を概要を聞いただけで、全容を解明する安楽椅子探偵もの。著者も生粋のカープファンなんですね。(11/3)

 

003/200

アゲハ 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨

最近、この作者の作品をやたら読んでますね。こちらは、別のシリーズものの第一作で、鑑識課員の主人公が事件に挑みます。まずは、一人息子が誘拐され、犯人から指定された場所へ向かうと同僚夫妻が同じ場所に。どうやらこちらも一人息子が誘拐されたよう。過去の未解決事件とも絡みつつ、犯人に迫ります。結構面白かったです。こちらのシリーズも読んでいきます。(11/3)

 

004/201

天保新酒番船」秋吉好

この本は、灘でつくられた新酒をいち早く江戸に届けるという競争をテーマにした小説で、実際一番乗りを果たした船の船頭は、江戸では英雄だったそうです。どこで見かけたのか忘れましたが、興味を持って探していたところ、向日市図書館に所蔵されていることがわかり、府立図書館のネットワークで借りることができました。面白かったです。(11/7)

 

005/202

月と6ペンス」モーム

光文社の古典新約文庫の一冊です。主人公である画家はゴーギャンをモデルにして書かれたとなっていますが、もちろんかなりデフォルメされていて、これほどの性格破綻者ではありません。読みやすい訳でとてもよかったです。(11/7)

 

006/203

差別と資本主義 レイシズム・キャンセルカルチャー・ジェンダー不平等」トマ・ピケティ、ロール・ミュラ、セシル・アルデュイ、リュディヴィーヌ・バンティ二

この本は、フランスの新聞に連載されたものを一冊の本としてまとめられてもので、これほど硬派の文章が新聞の特集として成り立つ文化に感服します。そもそも資本主義というシステムそのものが格差を拡大することを当然のこととしており、その経済格差そのものがさらに差別の原因となってくるという、悪循環システムを内包しています。どこかで修正しないと破局を招くことになるのではないかと危惧しています。(11/8)

 

007/204

経営者革命」ジェームス・バーナム

原著は1940年に書かれた古典です。社会を分類するとき、生産手段を誰が所有するかという観点を軸にして、資本主義と社会主義に分類されます。前者は資本主義は永続すると謂い、後者は資本主義は社会主義に代替されると謂う。本書の著者は、新たに経営者主義という概念を提示する。当時世界の三極で出現したロシア革命、ナチスドイツ、ニューディールという動きを経営者革命の端緒と位置付けています。いろいろと厳しい評価を受けた著書のようですが、現在のGAFAなどによる世界制覇や国家を超えたEU官僚の暴走などの姿を見ると、まさに経営者革命が進みつつあるとも思われます。300ページにも及ぶ大著でしたが、翻訳も丁寧でとても読みやすかったです。この本も府立図書館を経由して、神戸市立中央図書館蔵書を借りることができました。(11/12)

 

008/205

ガリレオの生涯」ブレヒト

戯曲です。地動説を唱えたガリレオ・ガリレイの後半生を描いた物語です。有名な「英雄を必要とする国が不幸なのだ」というセリフは、この戯曲の中でブレヒトが作ったんですね。初めてりました。面白かったです。(11/12)

 

009/206

帰れない探偵」柴崎友香

世界探偵委員会連盟という団体に所属する探偵が主人公で、『今から十年くらい後の話。』で始まる7編の章からなる物語です。せっかく開いた探偵事務所兼自宅に帰れなくなってしまうところから物語が始まります。そしてその後は、連盟本部からの指示に従って、世界各地で探偵業を営みます。なんとも不思議な物語で、とても面白かったです。(11/13)

 

010/207

人形遣いと絞首台」アラン・ブラッドリー

化学大好き少女フレーヴィア・シリーズの第2弾です。人形劇『ジャックと豆の木』のクライマックス、天から落下してきたのは大男ではなく人形遣い。事故か事件か。科学大好き少女が、再び謎を解きます。 (11/15)

 

011/208

スワン 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨

こちらもシリーズ第二弾ですが、相変わらずミソジニー要素がいっぱいで、読んでいても不快になるレベルです。まぁ、極端さを強調するためと自分を納得はさせていますが。ミステリとしてはよくできていて面白く、次に続く結末はとても恐ろしく、思わず声が出ました。(11/17)

 

012/209

オーウェル評論集1 象を撃つ」ジョージ・オーウェル

ジョージ・オーウェルが書いた評論を集めたもので、パブリックスクール卒業後ビルマで警察官として働いていた時期に起きた出来事をつづった表題作や、プレパラトリー・スクール(予備小学校)時代の抑圧された学校生活の記録やトリビューン紙のコラムとして書かれた数編など、とても面白い一冊でした。結構お薦めかも。(11/18)

 

013/210

パズルと天気」伊坂幸太郎

過去に発表した短編を集めたもの。特にテーマがあるわけではありません。まぁまぁです。(11/22)

 

014/211

宝島」スティーヴンソン

こちらは、冒険小説の古典ですね。これまで読んだことがなかったものを改めて読んでみました。海賊が隠したお宝をめぐっての冒険活劇ですが、こんなお話だったんですね。あえて少年向きに訳されたのでしょうか。とても読みやすかったです。(11/22)

 

015/212

月下蝋人 新東京水上警察」吉川英梨

シリーズの最新作。ひょっとして最終作になるのかな?前作からは数年の年月が経っていて、その間に主人公の二人が、結婚して、離婚してと大きな環境の変化に見舞われます。どうもその離婚にも隠れた理由があるようで。背景にかなり重いテーマが描かれていて、お気楽に読むという感じではありませんでした。(11/24)

 

016/213

イノベーションの競争戦略 優れたイノベーターは01か?横取りか?」内田和成

ボストンコンサルティングの日本法人を率いていた編者による一冊で、イノベーションとは、新たな価値を創造して顧客の行動を変えること言い切り、数々の実例を取り上げて解説されています。ちょこちょこ役立つことも書かれていたので、少しメモにとりました。(11/25)

 

017/214

幽霊はお見通し 家政婦は名探偵」エミリー・ブライトウェル

こちらもシリーズの3作目で、降霊会帰りの女性が自宅で殺害されるという事件をいつもの警部補の自宅の使用人グループが解決します。ちょっと飽きてきた。(11/27)

 

018/215

幻惑密室」西澤保彦

先日訃報に接した作者への追悼の意味を込めて借りてきました。彼独特の超能力の存在を前提にしたミステリで、ちゃんと破綻することなく本格推理として成り立つというスゴ技です。面白本を書かれる作家さんでしたが、とても残念です。ご冥福をお祈りします。(11/30)

 

 

 

2025年11月8日土曜日

2025年10月

読書の秋到来の10月は、小説が15冊、それ以外が4冊で合計19冊という結果でした。

数としては、たくさん読めたほうだと思いますが、お薦めできる本となると、どうでしょうか。ちょいと無理やりひねり出したいと思います。

まず小説では、国内ものでは恩田さんの二冊のアンソロジーのうち、酒場のほうをお薦めします。決して酒好きだからというわけではなく、一つ一つが独立したお話で、短いなりにもシッカリと起承転結があり、物語として成立しています。とてもお上手な作家さんだなと改めて思います。酒好き以外の方にもお薦めです。

あとは、道尾さんの『いけない』もよかったですね。それぞれが短編小説のように書かれた物語が、全体として一つの物語に収束していくという彼のお得意の作品です。とてもよかったです。

続いて海外ものでは、新たに二つのシリーズに出会いました。

まず、『パイは小さな秘密を運ぶ』~科学少女探偵フレーヴィア~のシリーズです。独学で身に着けた科学知識を駆使して事件の謎を解く主人公が魅力的です。

続いては、『パンプルムース氏のおすすめ料理』。こちらはグルメ小説のように、おいしそうな料理が随所に描かれるのですが、主人公とその相棒である愛犬の活躍が物語のメインで、ほかの登場人物とのドタバタが添えられています。こちらもシリーズものなんですが、なかなか魅力的な人たちかと思います。

さて10月が終わり、200をやや下回るというところなので、最終的には240に届くかどうかというところでしょうか。先月来、『光文社古典新訳文庫』のシリーズにはまっています。内外問わず古典といえば岩波文庫だったのですが、この新約シリーズは、言葉使いも現代的に書かれていてとても読みやすく、我々にはありがたいシリーズです。

年末に向けて、いろいろと読んでいきたいと思います。

 

001/179

パイは小さな秘密を運ぶ」アラン・ブラッドリー

舞台は太平洋戦争直後のイギリスの片田舎、そこに住む化学大好き少女が主人公。自分が住むお屋敷で殺人事件が発生し、父親が容疑者として疑われる。少女自らが事件の謎を解き明かすというシリーズものの第一作。結構面白かったです。続編も読もうと思います。(10/2)

 

002/180

続きと始まり」柴崎友香

阪神淡路大震災から東日本大震災、さらに新型コロナ禍という三つの災禍。三人の主人公がそれらに少しずつ関わりながら、年月を送っていきます。しかしながら、主人公の三名の人生がなかなか交りません。いったいどうなっていくのかと思っている間に物語は終了しました。何だったんだろう??(10/3)

 

003/181

戦場のカント 加害の自覚と永遠平和」石川求

カントと言えば『永遠平和のために』という著書で『永遠平和』とは敵意がなくなるときと語っています。しかしながら、現在の中東の情勢を見てもわかるとおり、敵意は連鎖し継承され耐える様子は見えません。そんな中で、第二次大戦後に中国に設けられた「撫順戦犯管理所」という存在は特異なものでした。実は、私もこの管理所の存在は知らなかったのですが、中国が憎悪の連鎖を断ち切ろうとした崇高な取り組みでした。しかしながら、解放され帰国した後の彼らは、中国共産党によって洗脳された存在として差別を受け、決して受け入れられることはありませんでした。差別した側こそが洗脳された存在だったというのは疑いのないところでしょう。とても勉強になった一冊でした。(10/3)

 

004/182

野球短歌 さっきまでセ界が全滅したことを私は全然知らなかった」池松舞

阪神ファンの作者が、試合後に綴った短歌を集めたもの。ときは2022年と言いますから、開幕から9連敗という記録的なスタートとなったシーズンで、矢野監督の最終年でもありました。喜怒哀楽が込められた歌が続くのですが、その中で心に残ったものをいくつか。「リハビリを越えてが才木ウィニングボールを1159日ぶりに受け取る」、「大山が『才木のために打った』と言い中野が『才木のために打った』と言う」、「眠りより浅いフライで本塁へ帰ってこれる熊谷が光る」、「原口が放つ二塁打本塁打ねぇ彼は癌を越えてきたんだ」、「大山がファーストにいると何もかもが引き締まるファーストにいてくれ」。優勝おめでとうございます。(10/3)

 

005/183

悪の法哲学 神的暴力と法」仲正昌樹

『主権者とは、例外状態について=を超えて決定する者である』と看破したカール・シュミットというドイツの哲学者について語られた書物で、かなり難解。何度も気が遠くなりました。法の淵源をどこに求めるのかということは法哲学の永遠のテーマであるようです。良く言われるように日本の法律には「人を殺してはいけない」とはどこにも書かれていません。モーゼの十戎に「汝、殺すなかれ」と書かれているように、神の命にその淵源を求めざるを得ないように思えます。とにかく難しい本でした。(10/7)

 

006/184

朽海の城」吉川英梨

ここのところ気に入って読んでいます。豪華客船が舞台なのですが、すでに皆の記憶からは薄れつつある福島原発事故を思い出させようとする著者の意思を感じる作品でした。スケールが大きすぎて、ドラマではどの描かれるのか心配です。(10/7)

 

007/185

白銀の逃亡者」知念実希人

新型の感染症と、感染者に対する隔離政策、さらには壮絶な差別を描いた物語。最後はどのように決着をつけるのかと心配しましたが、収束して良かったです。(10/9)

 

008/186

世界99(上)(下)」村田沙耶香

ミソジニー、異民族差別が蔓延るディストピアを描いた長編。家族、学校、会社、趣味の世界など周りの環境に合わせて『人格を変える』というのはよくある話かと思いますが、作者はそれを『世界』と表現し、主人公の少女が『世界』からいくつかの世界を想定し、その世界の中では、決してはみ出さないように細心の注意を払って生きていきます。最終的には『世界99』が想定されているのですが、私には生きることに疲れてしまった果てのように見受けられます。スピード感のある上巻は簡単に読めましたが、一転して重い展開となった下巻は、結構時間が掛かりました。重かったです。(10/14)

 

009/187

貧乏お嬢さまと毒入りタルト 英国王妃の事件ファイル17」リース・ボウエン

いよいよ主人公が出産間近となったところで、招待された晩さん会で死者が出ます。食べ物に毒を入れたと疑われたのが、新しく雇ったフランス人の料理人。求められて助っ人に送り出したところが事件に巻き込まれ、彼の疑いを晴らすためにその謎に挑みます。(10/16)

 

010/188

合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明」柚月裕子

テレビドラマにもなったシリーズの続編です。助手が有能過ぎて、現実感に乏しい。(10/16)

 

011/189

海底の道化師 新東京水上警察」吉川英梨

シリーズの4作目で新キャラの登場です。東京湾の海底から、行方不明になっていた女性3名の運転免許証が発見されたことから連続誘拐殺人事件の捜査が始まります。今作では、犯人が逮捕されてからの大惨事が注目ポイント。(10/17)

 

012/190

珈琲怪談」恩田陸

2014年から2025にかけて書き溜められた短編を集めたもの。男性4人が京都、横浜、大阪、神戸の喫茶店を巡りながら、怪談話を語り合うという一風変わった物語。実在の喫茶店を舞台に、作者の創作ではなく、知人などから収集した怪談を材料に物語を綴るというなかなかシュールな作品でした。(10/19)

 

013/191

それいけ!平安部」宮島未奈

昨年の本屋大賞でブレイクした作家さんによる一作。平安時代大好き少女が入学した高校で、新たに立ち上げたクラブ活動。無事5名以上の部員を集め、正式なクラブ活動として認められます。果たして平安部とはいったい何をする部なのか??瑞々しい彼女たちが、思わぬ活躍をする姿がよかったです。(10/20)

 

014/192

酒亭DARKNESS」恩田陸

過日読んだ珈琲にまつわるアンソロジーとほぼ同時並行で書かれていたようです。こちらは酒場に関するホラー・アンソロジーです。どれも習作ぞろいでしたが、『昭和94年の横丁』が一番気に入りました。面白かったです。(10/23)

 

015/193

いけない」道尾秀介

前作も面白かった記憶があり、たまたま図書館で見かけたので借りてきました。期待どおり面白かったです。ミステリ小説なのですが、背中がゾワワとするような展開がたまりません。さすがにお上手ですね。面白かったです。(10/26)

 

016/194

謎の香りはパン屋から」土屋うさぎ

話題の本というので借りてみたのですが、『このミス大賞』の受賞作なんですね。この賞については、結構当たり外れが大きくて、なるべく手を出さないようにしているのですが、誤ってしまいました。この本は、ミステリの中でも日常ミステリと言われる分野で、パン屋でアルバイトする女子大生が、周囲で起こる謎を解いていきます。申し訳ないですが、かなり強引な謎解きという印象でした。(10/26)

 

017/195

パンプルムース氏のおすすめ料理」マイケル・ボンド

主人公のパンプルムース氏は、警視庁を退職し、現在はレストランガイドブックの覆面調査員を務めています。そんな彼が、立ち寄ったホテルのレストランで事件が発生。愛犬とともにその謎を解くという物語です。作者は『くまのパディントン』の作者としても有名で、この本もシリーズ化されています。続編も読んでいこうと思います。(10/28)

 

018/196

入門 行動経済学と公共政策」キャス・サンスティーン

行動経済学がどのように公共政策の中で使われているか、またつかわれるべきか、ということについて書かれた本なのですが、正直、書かれている内容が全く読みこなせませんでした。翻訳もイマイチかなという印象です。訳者あとがきでも触れられていましたが、ほとんどの箇所でwelfare厚生と訳されており、しっくりきませんでした。といってもほかに適切な言葉も見つからず、悶々としながら読み終えました。(10/29)

 

019/197

カフカ短編集」フランツ・カフカ、池内紀編訳

変身で知られるカフカの短編集。解説によると、生前のカフカは、2~3の短編を除いて書籍として発表されておらず、遺稿を託された友人が、整理して出版されたそうです。この短編集に収められた作品も、短編小説というより小説の構想をまとめた断片のようなものも見られ、とても興味深いです。ただ、ほとんどの物語で彼は何を伝えようとしていたのか、読み取ることは叶いませんでした。(10/30)

2025年10月1日水曜日

2025年9月

 残暑厳しい9月が終わったら、急に朝夕が涼しくなり、冷房なしで眠れるようになってきました。そんな9月は、小説が8冊、その他が8冊で計16冊という結果になりました。ちょうど半々のバランスとなりまして、ちょっと驚いています。 

そんな中でのお薦めです。小説ではヘッセやビュルガーといった、古典とも呼ばれる小説がリストアップされており、現代小説は少なかったので、なかなか難しいのですが、賞の候補ともなった『踊りつかれて』が一番良かったかな。SNS全盛の今の社会をかなり極端な姿ではありますが、現実感を失わずに描かれており、とても良かったです。ある種の警鐘かと思うのですが、必要な人たちには届かないですね、きっと。これはお薦めでした。 

あと古典の中では、『シッダールタ』がよかったです。これもお薦めです 

次に小説以外の書籍では、三冊お薦めします 

まずは『サカナとヤクザ』。現地を足で調べてレポートする。ルポルタージュのお手本のような本です。衰退産業として位置づけられながら、生きていくうえで欠くことができない産業である水産業の闇の部分をあからさまにする超大作です。読み物としても面白いですが、日々食卓に上る大事な食材ですし、こんなことでよいのだろうかと考え込んでしまいます。 

次は『可視化される差別』です。統計分析という手法で、我々が自分でも気が付いていない差別意識・行動というものを、これでもかと“視える化”してくれています。改めて自ら襟を正すためにも読んで損はないと思います。お薦めです。 

最後は『西洋の敗北』です。トッド氏の本はとても興味深く読んでいるのですが、ロシアのウクライナ侵攻について、このような視点からの論説は初めてで、目から鱗が落ちる思いでした。日本のかじ取りをすべき人達にもぜひ読んでほしい一冊です。面白かったです。お薦めです。 

さて、2025年もあと3月となりました。順調にいくと230~240冊くらいにはなりそうなペースですね。先月、古典と呼ばれる海外小説を読み始めてから、若干それにはまってきました。やはり、長く読み継がれている書物はそれだけの理由がありますね。できれば、日本の古典にも手を伸ばしたいのですが、日本語だけに原文で読みたいとは思うものの、やはり現代語訳でないと難しく思えて億劫になります。せめて、明治期から戦前にかけての小説ならどうかなと思案中です。 

いよいよ読書秋本番となるところ、本を片手にゴモ散歩を極めていきたいと思います。 

 

001/163  

板子一枚下は地獄と言われるように、古来漁業は命がけの仕事で、勢い性格が荒っぽくなってしまうとはよく言われるところですが、この本は日本国内のいくつかの港におけるヤクザと密漁について、克明にレポートしている。中でも関東のとある港町の歴史はかなり衝撃的で、ここをアンタッチャブルにしてきたツケが、今の行業の衰退につながっているのではないでしょうか。人が生きるうえで絶対に必要な食糧を採取・生産する人たちが、真っ当に生活していけるような社会でなければ早晩廃れてしまう。(9/4) 

 

002/164 

ねむりねずみ」近藤史恵 

著者の初期のミステリ作品なのですが、本格ミステリを目指されていただけあって、なかなか生硬で没頭しづらい作品でした。今話題の歌舞伎界が舞台で、舞台上演中の客席で殺人事件が発生し、ある人から依頼された探偵が事件を捜査する。という物語でした。(9/4) 

 

003/165 

2014年から2016年にかけてWeb上で公開されたレポートをまとめたものです。時期的には、欧州の各地で“独立” に向けた動きが盛り上がっていた時期で、誰もがまさかと思ったBrexitについて意見が戦わされていた頃です。まさかこの頃には、ほんの数年後に世界が停止してしまうとは誰も思っていなかった。あの感染症は、世界を変えましたね。(9/5) 

 

004/166 

ほら吹き男爵の冒険」ビュルガー 

誰もがきいたことがある物語を改めて読んでみました。皆さんご存じかどうか知りませんが、ほら男爵=ミュンヒハウゼン男爵は実在した人物ですが、その方がほら吹きだったのかどうかは定かではありません。この物語は、断片的には聞いたことがあったのですが、書物として読んだのは初めて。また原書もいくつか版があるようですし、改定されるたび、各地の寓話が取り込まれていったようです。(9/9) 

 

005/167 

樹海警察」大倉崇裕 

富士山のふもとに広がる樹海のみを所管する地元警察署の特別班。この世をはかなんで樹海を訪れた人たちばかりではなく、事件が起きる場所でもある。突拍子もない設定ですが、結構面白かったです。(9/11) 

 

006/168 

“差別は悪”と誰もが知っているはずなのに、ふとした時に差別的な言動をとってしまうことがある。しかしながら、当の本人には全くそんな意識がないというのはよくある話です。この本では、統計分析という手法で、気づかないうちにとっていたそんな気づいていなかった差別を“視える化”してしまおうという興味深い作業をしています。とても面白い一冊でした。(9/12) 

 

007/169 

踊りつかれて」塩田武士 

該当作品なしとなった今夏の直木賞候補作の一冊です。SNSによる誹謗中傷を苦にして命を絶った芸人、捏造記事で芸能生命を絶たれた女性歌手、その誹謗中傷に加担した数十名の“普通の人達”がある日突然、氏名や居住地、勤務先までもがWeb上に晒され大炎上するところから物語が始まります。その容疑者はすぐに特定されるのですが、その動機はいったい何だったのか。弁護を依頼された、芸人の元同級生が事件の裏に隠された真実を探求していきます。なかなか骨太な物語でした。面白かったです。(9/13) 

 

008/170 

初めて手に取った作家さん。警察官というのは、ある種の権力を持っているため、他人から恨まれやすく、訴訟のリスクも抱えている。そんな時、代理人として訴訟対応をするのか訴訟係らしい。そんな係が実在するのかどうかも定かではないが、訴訟に勝つためなら手段を選ばないというのも、あまりしっくりこない。しっくりこないまま読み終わりました。(9/14) 

 

009/171 

最近、改めて“法哲学”という分野に興味を持つようになり、法哲学と言えばヘーゲルでしょうとは思いつつも、超難解と聞いていたので、その前に導入の助けとして読んでみました。結論から言うと、やっぱり難しい。わからないなりにですが、“国家”というものの正体とはいったい何なのかということでしょうか。個人的には、国家の正体とは権力だと思うのですが、その源泉を法に求めるのが近代国家というところでしょうか。そこからさらに法とは何かというところに私の想像は遊離していくのですが、力は法によって与えられるのか、法は力によってつくられるのか。考え出すと面白いですね。(9/16) 

 

010/172 

ガーデン」近藤史恵 

先に読んだ小説のシリーズ二作目です。ただ、時期的には前作より前に置かれているようで、前作に登場した人物の“正体”が明らかにされます。物語としては、かなりハードボイルド寄りなのですが、あちこちに破綻しかけているところもあり、もしシリーズになっているとしても読み続けるのは難しいかな。(9/17) 

 

011/173 

西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか」エマニュエル・トッド 

トッド氏による注目の書です。ロシア=ウクライナ戦争について、世の論調はかなり違った視点から考察を加えており、とても参考になります。ここ数年来の西洋の弱体化という概念には全く気が付いておらず、そのプロセスを読むと、この戦争もなかなか決着がつかないのではないかと思い、気が重くなります。日本は、経済力が低下し、モノづくり技術も絶滅の危機に瀕しています。政治は元々無能の集団ですし、官僚もその無能な政治に骨抜きにされました。そしてその無能集団が下品な罵り合いに総力を挙げている。哀しい。(9/18) 

 

012/174 

デミアン」ヘッセ 

先に読んだヘッセの断片集に何度か出てきたので、どんな小説なのか読んでみました。一言で言うと一人の少年の成長物語なのですが、その心の中の葛藤が細かく描写されています。時代が遠く離れているので、簡単には理解できない部分もありますが、“自分自身を探し、自己の腹を固め、どこに達しようと意に介さず、自己の道を探ってすすむ”ことが最も大事なことであったとの覚醒には、同感です。(9/19) 

 

013/175 

霞ヶ関のリアルNHK取材班 

NHK取材班によるレポートで、時期的にはコロナ禍前夜の状況がまとめられています。霞が関で働く官僚の皆さん方の働き方が尋常ではないとはよく言われます。皆さんも良くお聞きになったことがあると思いますが、私がいた地方公共団体でもかつてはそれに近い状況にあったので、十分に想像できる世界です。詳細は省きますが、そのような状況で働いている人たちに、“働き方改革”の旗振りなんてとても無理な話で、全くリアリティを感じられない。滅私奉公なんて美辞麗句は忘れてしまわなければ。(9/20) 

 

014/176 

“人新世の資本論”の著者によるレポートで、月一で新聞に連載されたものをまとめたものです。机上の空論となりがちな学者さんのお話にリアリティを持たせるためにいろなところで、実際に人と関わりそこで感じられたことを纏めておられます。例の新型感染症のため、自宅に缶詰めとなったときもその状態でできることをレポートされるなどなかなかユニークな内容でした。面白かったですよ。(9/22) 

 

015/177 

興味を持って読んでみたのですが、残念ながら何を伝えようとされているのかよくわからない本でした。文法を無視した文章や誤字脱字。苦痛でした。(9/26) 

 

016/178 

シッダールタ」ヘッセ 

バラモンの子、シッダールタが家を出て沙門となり、諸国を遍歴し悟りを得て亡くなるまでの物語。てっきり仏陀=ゴータマ・シッダールタの物語かと思っていたのですが、彼はひとりの覚者として、主人公の人生とかかわりを持ちます。主人公は、覚者となることを志すも、欲に溺れ、当初の志を忘れたかのように見受けられます。短いけど読み応えのある物語でした。(9/28)