2023年2月23日木曜日

2023年1月

令和5年の幕開けである1月は、小説が15冊とその他の本が5冊、計20冊という結果になりました。

ご存知頂いている方もいらっしゃるとは思うのですが、1月末に義母、その翌週に実父が相次いで亡くなるという出来事があり、しばらくは読書からも遠ざかり、この記録を更新することもできませんでした。

ここ数年は、次の正月を一緒に迎えるのは難しいだろうなと思っていたところですが、よくここまで居てくれたと感謝しております。昨年、娘たちが全て就職して家を出ていき、両親、義両親を送り、肩の荷が降りたような気がしています。

てなことを考えながらお薦めの本を選ぼうと思います。

まず小説では、結構たくさん読んだのですが、最も心を打ったのは、“82年生まれ、キム・ジヨン”です。かなり前の本なので、読まれた方も多いとは思うのですが、現代の韓国社会を投影させたものとして、高く評価もされています。実際にとても面白い一冊でした。翻ってわが国は、どうなのだろうか。彼の国では、女性大統領が誕生しましたが、我が国に女性首相が誕生する気配は全くありません。考えさせられる良い本でした。

小説以外では、“ザ・ナイン ナチスと闘った9人の女たち”が圧巻でした。同様の本はいくつか書かれているようですが、私は初見。実際の体験者の証言を元にしたドキュメンタリーだけに説得力もあります。ナチスドイツの盟友であった我が国も大戦時には周辺国家に多大な被害を与えました。もちろん、我が国の国民に対しても。私たちは、そこをもっとしっかりと検証しなければいけない。強く思いました。

上にも書きましたが、そんな事情で2月はほとんど読めていません。さらに最近は目の調子も悪くなってきて、本を読むことが辛くなってくることも増えてきました。読書嗜好もまた大きく変わってきそうな気がしています。それもこれも含めて、これからもよろしくお願いします。

 

001/001

裂けた明日」佐々木譲

新年はこの一冊で明けました。日本が二つに割れてしまった世界を描いた近未来小説です。テーマは遠大で、設定も想像の斜め上をいく感じで面白かったですが、少し欲張りすぎたかなという印象です。(1/1)

 

002/002

兇人邸の殺人」今村昌弘

映画にもなった“屍人荘の殺人”から続く三作目にあたります。今作もSF要素満載のミステリ小説で面白いのですが、ちょっとやり過ぎ感が拭えません。(1/4)

 

003/003

コモンの再生」内田樹

彼の書く文章は好きで、折に触れ読むようにしています。逆に共感する部分が多すぎて、若干危険かなとも思っています。本を読む時は、それに気をつけないと、ついつい一定の主張に沿った書籍を選びがちになってしまいます。特に、今はAIが勝手に私の読書傾向から、本を薦めてきますので危険です。ですから、できるだけ自分の考えとは正反対と思える本にも手を伸ばすようにしています。それくらい、この本に書かれていることは、私の考えにぴったり来ています。中でも、教育勅語に関して書かれた一文は秀逸です。それだけでもお読みになることをお薦めします。(1/4)

 

004/004

京奉行長谷川平蔵 八坂の天狗」秋月達郎

シリーズ第二作。これまた面白かったです。続いて読みます。(1/7)

 

005/005

せき越えぬ」西條奈加

幕末、箱根の関所を守っていた小田原藩の武士たちの物語です。箱根の関を西に越えるも東に越えるも、厳しい調べが待っていますが、社会科でも習った“入り鉄炮に出女”は、特に厳しく調べられたようです。特に出女ですね。この本は、いくつかのエピソードからなる連作もののようで、当初はお気楽な感じで始まりますが、徐々にきな臭さを帯びてきて、最後は激動の幕末らしいエピソードで締められます。この方はお上手ですね。お薦めです。(1/7)

 

006/006

ゴーストハント2 人形の檻」小野不由美

これまた最近お気に入りのシリーズものの第二作です。今作からは、科学で解明できない怪異現象が満載で、らしさも満開という感じでしょうか。面白かったです。(1/7)

 

007/007

月のない夜に」岸田るり子

初めて読む作家さんです。本格推理小説の部類に入る。途中からは、どうなるんだろう、ちゃんと辻褄は合わせられるのだろうかと心配になりながら読んでいました。最後はかなりの力技だと思います。(1/8)

 

008/008

鴻池の猫合わせ」田中啓文

これまた最近お気に入りのシリーズです。幕末の大坂で活躍する浮世奉行という役職を務める青年が浮世の揉め事を解決していきます。今の社会問題を当時の社会に投影させたような書きっぷりもそれほど抵抗はありません。面白いですよ。(1/8)

 

009/009

Numbers Don’t Lie 世界のリアルは『数字』でつかめ!」バーツラフ・シュミル

食・エネルギー・環境などの分野で、私たちがなんとなく考えていることは、ほんとに正しいのか。客観的な数字・データに基づいて、その“なんとなくそう思っていること”を検証していこうとする本です。ベストセラーになった“Factfulness”の二番煎じのような本です。(1/11)

 

010/010

82年生まれ、キム・ジヨン」チョ・ナムジュ

儒教文化が根強く残る韓国社会の闇の部分を描いた小説として高く評価された一冊です。中国で生まれた儒教は、韓国、日本と伝わっていく中で、それぞれの国で独自の発達を遂げ、年功制と男尊女卑思想が現在でも強く残っているのが韓国だと言われます。1982年生まれというと、今40歳くらいの女性ですら、このような激しい差別を受けながら育ってこられたというのは、結構衝撃です。読むべき本だと思いました。(1/12)

 

011/011

三人目の幽霊」大倉崇裕

脚本家としても有名な作者による落語をテーマにしたミステリ短編集です。タイトルから一度読んだかなと思いながら読んだのですが、どうやら読んでいなかったようで、安心して読破しました。(1/14)

 

012/012

人類9割削減計画 飢餓と疫病を惹き起こす世界政府が誕生する」増田悦佐

こういう本を読むことが多分大事なんだろう。よくある陰謀論の本なのですが、おそらく著者は本気でそれを信じているような気がします。こういった本を出す作者の意図がよくわかりません。彼はこれを書くことで、読者にどのような行動を取らせようと意図しているのか。テロを誘発しようとさせているのか。抵抗しようのない巨大な闇の組織が諸悪の根源だと自己の責任を放念させることを意図しているのか。何なんでしょうね。(1/14)

 

013/013

白光」朝井まかて

彼女の描く強い女性はかなり痛快です。この作品は、明治時代に画家を志し、ロシア留学を果たした女性山下りんが主人公で、さまざまな困難を乗り越える姿が描かれています。万事うまく運んだのではなく、何度も挫折を繰り返しながら歩んだ人生は壮絶でもあります。面白かったです。(1/15)

 

014/014

マイクロスパイ・アンサンブル」伊坂幸太郎

彼らしい不思議な小説です。猪苗代湖で年一回開催されているイベントのパンフレットに載せるために書かれた掌編をまとめた物で、本来は一作で終わるはずが、好評につき続けて書かれたもののようです。

(1/15)

 

015/015

泣くな道真 大宰府の詩」澤田瞳子

彼女には少し珍しい、割と軽いタッチの時代小説です。主人公は政争に巻き込まれて大宰府へ左遷された菅原道真。左遷当初は大荒れにあれていたものが、何故か博多の貿易商人の手助けをするようになってから、生まれ変わったように生き生きとしだします。もちろんフィクションですが、そんな風に過ごしていたら怨霊にもならず、北野天満宮もなかったのかなぁと思いながら楽しく読みました。結構好きです。(1/15)

 

016/016

奈落の偶像 警視庁殺人分析班」麻見和史

これも好きなシリーズものです。銀座にあるお店のショーウィンドウに男性の死体が発見されて、それから銀座を舞台に拉致誘拐事件が続きます。まさに“劇場型殺人事件”だったという結末でした。(1/21)

 

017/017

ザ・ナイン ナチスと闘った9人の女たち」グウェン・ストラウス

第二次大戦時、ナチスの侵攻を受けたフランスでレジスタンスとして活動した結果、ナチスに逮捕され、収容所で地獄のような生活を送りながら、末期に脱走に成功した9名の実在した女性の記録です。著者の大叔母が9名のリーダーだったようで、そこを手掛かりに9名の生い立ちからその後までを丁寧に綴ってあります。彼女たちのような存在は結構たくさん実在されたようですが、戦後彼女らの活躍が顕彰されることはなかったようです。ひどい話ですね。これまた私にお気に入りの“スーザン・マクニール”のイギリスの女性スパイシリーズでもこのフランスでの女性レジスタンスが登場します。なかなか長さを感じない興味深い一冊でした。(1/22)

 

018/018

ゴーストハント3 乙女ノ祈リ」小野不由美

シリーズ三作目。今回は超能力が出てきます。とある高校で起こった不思議な出来事。そして物語のヒロインにも何やら不思議な力があるようなないような。(1/23)

 

019/019

少年は探偵を夢見る 森江春策クロニクル」芦辺拓

著者が生み出した探偵森江春策の少年時代に遭遇した不思議な事件から続くいくつかの事件をまとめたもの。他の作品とトリックが被っている。(1/28)

 

020/020

朽ちるインフラ 忍び寄るもうひとつの危機」根本祐二

高度成長期に作られた道路や上下水道といったインフラが、耐用年数を超え更新時期を迎えているというのは、数年前から言われていたことで、大きな事故が起きていないのは幸運なだけとさえ言われている。この本は、東日本大震災直後に書かれたもので、インフラ設備の更新にかかるコスト計算のソフトを開発した研究室を主宰する著者によって書かれたものです。この問題には敢えて目をつむってきたのが従来の日本の政治でした。人口減少社会が本格的に到来する時代に、避けては通れない問題です。(1/29)