先月11月は計23冊で、うち小説が9冊とその他が14冊という内訳でした。
小説が若干少なめで、しかもこれという本も少なかったです。
そんな中で、“あえて”お薦めを選ぶなら、
まずは安心の宮部みゆきさんでしょうか。新たにシリーズとして描き始められたもので、主人公の背景も未だほとんど描かれていませんので、結構長いシリーズになるのではないかと期待しています。そういえば、最近は女性が主人公の小説って書かれてませんね。なぜなんだろう。
あとは“競争の番人”も面白かったです。とても地味な職業にスポットを当てて書かれているのですが、巨悪を退治するというより、比較的淡々とk主人公たちの日常も描かれていてとても好感が持てます。続編も出ているので、また読もうと思っています。
続いて小説以外では、民主主義や政治に関することがマイブームとなっていたので、かなり多くなっています。いずれも面白かったので、詳しくは本文を読んで頂ければと思います。
この夏、凶弾に倒れた元首相については、賛美される方が多いのは重々承知していますが、私自身は、日本の政治にあった民主主義というものを破壊してしまった、とんでもない人だと認識しています。そういう意味では彼が亡くなってしまったのは本当に痛恨の極みで、本来ならもっとちゃんと真っ当に評価を受けるべきだと思います。それは亡くなられた後でもできることなので、私たちはしっかり取り組まなければいけない。この状態を続けて言ってはいけないと考えています。
さて、これで194冊となって、年間200超えることは確実かなと思います。なんとか月15冊のペースは守ることができました。最近は、図書館で借りてきても、全く読めずに返却するという本が多くて、借りるときにもっと吟味しなければいけないと考えています。本来なら、部屋に積み上がっている本から手をつけなければいけないことも重々承知しています。
今年ももうあとわずか。来年からは、心を入れ替えます。
001/172
「善意という暴力」堀内進之介
この先生の肩書きは、政治社会学者さんなんですね。ちょっと想像と違いました。結構期待しながら読んだんですが、彼は結局何を主張したかったのかよく理解できませんでした。明らかに読み手の力量不足で、手軽な新書と舐めていたようです。(11/2)
002/173
「子宝船」宮部みゆき
宮部さんの新しいシリーズもので、お得意の時代物です。過去の人気シリーズとも少しずつ重なる部分があり、とあるキャラクターも再登場しています。今後はさらに描き続けていかれる予定だそうで、二人の主人公のうちの一人の過去が徐々に明らかにされています。どうも謎はかなり深いようです。今後が楽しみです。(11/3)
003/174
「祈りのカルテ」知念実希人
研修医の物語で、今テレビドラマで放送されているようです。病院内で起きる小さな事件の謎を主人公の研修医が解いて行くのですが、医者である著者の医学知識もしっかりと散りばめられていて、安心して読める作品です。続篇も出ていますので、読んで見ようと思います。(11/3)
004/175
「知らないと後悔する 日本が侵攻される日」佐藤正久
たまにはこういうトンデモ本も良いかなと思って読んでみました。著者は、“ひげの隊長”として有名になった元自衛官で、現在はその知名度を活かして参議院議員の中でも外交と防衛の専門家として活動されています。今から150年以上前に、外国からの力を背景にした外交に屈した日本は、“強力な軍事力が背景にないと外国との交渉力がない”と刷り込まれています。今ウクライナで起きている事象を鑑みると、現実の世界では、全く間違いであるとは言い切れないようにも思えてしまいますが、実際の交渉の最前線に立つ政治家が、そのように考えてしまったらおしまいだと考えています。外交の妙とはその先にあるのではないでしょうか。それにしても我が国の外交力のなさにはがっかりしますね。(11/4)
005/176
「『人権』がわからない政治家たち」小林節
凶弾に倒れた安部元総理が進めようとしていた憲法の改定について、それに反対する立場からその根拠を述べられています。実は、自民党は早くから憲法の改定を党是としており、党としての“改正案”を纏めておられます。私も昔大学時代に読んだ記憶があるのですが、その内容は殆ど覚えていないので、この際もう一度しっかり読んでみようかなと思っているのですが、憲法の本来の役割である“主権者である国民が、国家権力に制限を掛けるもの”という性質のベクトルを真逆にして、“国家権力が、国民に対して権利を与えるもの”という方向に舵を切ったものとなっていた記憶があります。著者は、それを称してこの歩のタイトルを決められたのではないか。主権者である私たちは、もっとしっかり自分たちの幸せ、特に後世の幸せを考えなければいけないと痛切に感じました。後悔先に立たず。(11/5)
006/177
「女副署長 緊急配備」松嶋智左
シリーズの二作目です。地方警察署の内部を描いた前作が面白かったので、続けて読んでみました。今作でも、主人公の女性副署長が赴任した地方の警察署で、赴任早々に殺人事件が発生します。いろんな事件が輻輳して発生するなど、前作同様若干の“やり過ぎ感”は漂うのですが、まぁ許せる範囲かな。(11/5)
007/178
「誰のための排除アート?不寛容と自己責任論」五十嵐太郎
“排除アート”というのは耳慣れない言葉で、私もこの本で初めて知りました。ていうか、私はどこでこの本のことを知って予約したのでしょうか?全く記憶にない。この本では、公共の場所に設置されている椅子やベンチなどが、“横になれないように”作られているその背景などについて紹介されています。これは、いわゆる“ホームレス対策”で行われているらしく、横長のベンチに肘掛けや一人分の区切りが付加された物が紹介されています。さらに、アート性が高いデザインで作られた物どは、通常でも使いにくく作られている物まで出てきていますが、これを単に“不寛容”とひとくくりにしているのも気になるところです。(11/7)
008/179
「死ぬまでにしたい10のこと 初めて人生を愛することを知って女性の感動の物語」ナンシー・キンケイド
元々は、短編集に収められたうち一作だった物を、映画化を機に、一冊の本として出版されました。私は映画を見ていないのですが、たしか最近日本版もリメイクされたのではなかったでしょうか。皆さんなら、何をしたいと思われますか?私なら、①もう一度ドイツを訪ねたい。②バンジージャンプという物を体験したい。③自分の入る墓を作っておく。④田舎の田畑山林を整理しておく。。10個も浮かばないですね。(11/7)
009/180
「新失敗学 正解をつくる技術」畑村洋太郎
“失敗学”の権威として知られる著者による集大成なのですが、従前から言われていることを改めて収載したような感じです。新型コロナ対策への失敗も取り上げられていますが、現状はまだしっかり検証できる段階にないというのが実態かなと思います。著者は、正解を見つけだす時代から正解がない、正解を作り出す時代へのフェーズが変化しており、そんな時代にはたくさん失敗して検証するという一連の流れが重要だと説いています。しかしながら、そんな時代にあっても、失敗からは立ち直れない社会、失敗者の再挑戦を認めない社会であることに変化はなく、むしろ増強されている感すらします。どうしたらいいんでしょうね。突破口は一体全体どこにあるんでしょうか。(11/9)
010/181
「名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必須講義」葉石かおり
皆さんご存じのとおり、お酒が大好きでして、今では毎夜の晩酌が欠かせない体になってしまっております。“酒は百薬の長”という呑兵衛には大変都合の良いことわざを錦の御旗にし、飲み続けているのですが、少量のお酒は体に良いという都市伝説に信頼できる根拠がないことなどが、しっかりと書かれています。どうしても止められないなら、少しずつ減らしていきましょうという警告に従い、平素はできるだけ減らしていこうと心に決めました。そのために飲酒記録用のアプリもインストールしました。頑張ります。(11/11)
011/182
「吾妻鏡の謎」奥富敬之
大河ドラマで話題の吾妻鏡という書物には、たくさんの謎があると言われていますが、その最たる物が、“誰が何のために”書いたのかということです。おそらくは、源氏政権を滅ぼし、執権制を確立した北条氏がその正当性を主張するために書かれた物と水生されているのですが、では誰に向けて書かれたのでしょうか。謎は提示されただけで、いまだ解決編が見つかっていません。吾妻鏡研究の第一人者であった著者は、原稿作成後、時をおかずに亡くなり、絶筆となりました。十分い校正がされなかったせいか、文章として中途半端と感じられる箇所も散見されますが、読みやすく興味深い本でした。(11/12)
012/183
「凪の司祭」石持浅海
一人の若い女性が、アルバイト先の喫茶店の常連客たちの支援を受けて史上最大規模のテロを実行するという物語。スピード感があって面白かったのですが、彼女がその大量殺人を決意した理由、動機というのが、あり得ない。(11/13)
013/184
「神のいない世界の歩き方 『科学的思考』入門」リチャード・ドーキンス
歴史的な名著“利己的な遺伝子”の著者が表した科学的思考の入門書です。まずは、この夜に神は存在しないという至極当たり前ではあるが、ついつい忘れがちなことを改めて論じています。その上で、現在の科学では解明できない事柄を全て“神の御技”や他の“大いなる力”のたまものと考えるのではなく、いずれは科学的に解明することができると信じることが重要と説きます。“一見あり得ないだろうと思えるようなことを真剣に検討し証明する勇気”こそが科学的思考に求められる唯一のもの。面白かったです。
(11/14)
015/185
「大分断 教育がもたらす新たな階級化社会」エマニュエル・トッド
フランスの歴史人類学者である著者が様々な媒体で語った内容を纏めたものです。なぜだか彼は日本に対して非常に好意的で、大国である隣国に対抗するためにも核武装することを進めていることから、日本のある層には受けが良いように思われます。一方で、フランス人らしく隣国のドイツには非常に懐疑的で、日本に対する態度とは正反対です。そういう意味では、かなりバイアスが掛かっていると思いますが、それ以外の国、英米中露に対する分析は当を得ているようです。(11/16)
016/186
「邪教の子」澤村伊智
この夏に起こった大事件を契機に、『宗教と政治』に注目が集まっていますが、同時に『宗教2世』という存在がクローズアップされています。その文脈の中で、推薦図書として上がっていたものと記憶していますが、なかなか手がつけられず、借りては読まずに返却という件を3度ほど繰り返していました。内容的には、期待したほどではなかったのですが、その存在にフォーカスを当てた小説としては出色だと思います。(11/19)
017/188
「この国の危機管理の失敗の本質 ドキュメンタリー・ケーススタディ」柳田邦男
この作者の書くノンフィクションは大好きで、高校生の頃から就職したての頃まで、何冊か文庫を買って読んでいました。もとNHKの記者さんで、特に航空機事故や医療に関する作品を数多く書かれています。この本は、東日本大震災から1〜2年後に雑誌に書かれたものをまとめられてものですが、震災とその後の原発事故について、私たちは“いかに間違えたのか”という視点で書き綴られており、とても興味いです。“マッハの恐怖”、“空白の天気図”、“マリコ”は特にお薦めです。また久しぶりに読もうかな。(11/20)
018/189
「新装版 長い家の殺人」歌野晶午
著者のデビュー作です。同世代の本格推理小説作家さんですが、物語そのものは、ご本人も触れておられるように必ずしも素晴らしい出来とはいえませんが、彼を見出した島田荘司さんの解説が興味深い。ぜひ文庫版で読んでみてください。(11/20)
019/190
「日本を寿ぐ 九つの講演」ドナルド・キーン
著者が過去に日本文化に関して行った講演を再録した物です。京都国際センターで行った京都に関する講演も収録されています。彼自身は、日本に対して非常に好意的でもあったので、ちょっと言いすぎではないかと思われるところもありますので、若干割り引いて読んだ方が良いのかもしれませんね。(11/22)
020/191
「殺し屋、続けています」石持浅海
最近読み始めた作家さんの本で、珍しいシリーズものです。といっても2作目なのですが、ビジネスライクに仕事をこなす殺し屋が主人公、今作から同業他社が参入してきます。まだお互いの存在を意識するところまで行っていないのですが、恐らく今後両者が相見える場面が出てくるのではないかと想像しています。(11/24)
021/192
「競争の番人」新川帆立
最近テレビドラマにもなった公正取引委員会の職員を主人公にしたお仕事小説です。派手な事件が起きるわけではないのですが、地方のホテルを舞台に繰り広げられる談合や下請けいじめとそれに対抗する委員会のやりとりが描かれています。なかなか面白かったです。(11/26)
022/193
「民主主義って本当に最良のルールなのか、世界をまわって考えた」朝日新聞『カオスの深淵』取材班
以前にも書いたことがありますが、“民主主義”というもの、制度について、とても興味を持って考えています。この本は、約10年前に朝日新聞で長期に渡って連載されていた特集記事をまとめたもので、当時の問題意識が垣間見えます。まだ、安倍政権もトランプ政権も誕生していなかった頃でしたが、結果的に“民主”主義が全く機能しなくなり、崩壊していったのはご存知のとおりです。一個人が世界に向けて考えを述べる手段を持つことができるようになりました。20年前には考えられなかったことです。価値観は多様化せずいくつかの極に集約されてきました。ナショナリズムなどといったイデオロギーではなく、単なるラベルの違いによって他者を排斥することが当然と見做されるようになってきました。今後世界はどうなっていくのでしょうか。恐ろしく不安です。(11/29)
023/194
「日本をダメにした新B層の研究」適菜収
郵政民営化キャンペーンの際に話題になった“B層”と呼ばれるカテゴリーに分類されている人たち。彼らをうまく方向づけすることによって今の混沌を生み出した人たちを気持ち良いくらい糾弾しています。ですからタイトルには新B層が悪者のようにされていますが、正しくは彼らを利用した者達に関する本ですね。中でもこの夏凶弾に倒れた元首相に関しては特に手厳しく、私もこれで全ての悪業に蓋をすることなく、もっと正しく評価すべきだと考えています。あれほど、国会の場で嘘を吐き続け、主権者を馬鹿にした首相を私は知りません。読んでいて気持ちがよかったので、彼の本を遡って読んでみようと思います。(11/30)