3月は少し少なめの14冊、小説は6冊、その他は8冊という結果でした。
今月は、週末にゆっくり読書ができる機会が少なく、かなり不満足な結果となりました。
小説の6冊は、いずれもイマイチで、私とは肌が合わず、自信をもってお薦めできるものがありませんが、それ以外の本は、結構いいものがありました。
まずは、“定本 酒呑童子の誕生”でして、鬼の正体に新たな面からの仮説を立て、それを少ない傍証から明らかにしていきます。その過程がなかなか興味深く、ぐいぐい引き込まれていきます。民俗学に興味をお持ちの方にはお薦めの一冊です。
次は“承久の乱”です。ひょっとしたら、三谷幸喜さんもこの本を基に大河ドラマの脚本を書いているのではないかと思われるくらい、時代的にどんぴしゃりなのですが、それ以上に歴史解釈にも一役買っているのではないかと推測しています。これもお薦めです。
最後は“マネー・ボール”ですかね。映画は観ていないのですが、ノンフィクションでありながら、一つの物語のようでもあるので、映画も面白いかもしれませんね。今のメジャーリーグでは当たり前のように使われているサイバーメトリクスという概念を選手集めに活用した球団の物語ですが、彼我の野球観や慣習の違いも感じられて、なかなかにスリリングでした。野球を知らない人には、なんのこっちゃらという内容ですが、なかなか面白かったです。
上述のように、3月は公私ともに多忙で、ゆっくり本を読む時間がありませんでした。4月に入って少し落ち着いてきたので、ぼちぼちと再開してきていますが、まだゆっくり目でしょうか。
3月から4月、5月と個人的にはかなり激動の日々が続く予定で、この間メンタル的にも少し厳しい時期もありましたが、ようやく回復して参りました。あとは、阪神さえもう少しまともな戦いをしてくれたら言うことないのですが。
001/035
「定本 酒呑童子の誕生 もうひとつの日本文化」髙橋昌明
酒呑童子という物語は、私たち丹後地域出身の者たちにとっては、郷土の物語だと認識されていたのですが、いつの頃だったか、大江山は丹後の大江山ではなく、西京にある大枝山だというのが基の形という説があることを知りました。この本は、そんな酒呑童子伝説の成り立ちについて、様々な資料から読み解くというとても興味深い書籍です。“鬼”の正体を“疫病”と見做すのは、私にとって非常に新しい視点で、千年前の都人にとって、流行病のもたらす恐怖というのは現代とは桁違いなんだと、改めて気づかされました。面白い本でした。(3/3)
002/036
「破壊者の翼 戦力外捜査官」似鳥鶏
お気に入りのシリーズものですが、設定はかなり荒唐無稽。犯人の動機もイマイチ納得のいかないものでした。まぁ、それなりに時間つぶしにはなるのでいいかなと。(3/6)
003/037
「昔話とアニメの中の政治学」梅川正美
アニメについては全く興味が無いので、それで熱く語られてもついて行けない、そんな本でした。も少し期待したんだけどなぁ。(3/8)
004/038
「軍隊マニュアルで読む日本近現代史 日本人はこうして戦場へ行った」一ノ瀬俊也
太平洋戦争前、戦意高揚のため政府が取り組んだ様々なプロパガンタについて解説したもの。戦争に突入し、強権的に国民を押さえ込む時代になると、こういったプロパガンタは、姿を消してしまうようです。どうやら、暗黒期前の黄昏時だったのかもしれませんね。(3/10)
005/039
「腸内細菌博士が教える 免疫力を上げる食事術」藤田紘一郎
新型コロナウイルスの恐怖が広がり始め、免役力という言葉に注目が集まった時期の出版と言うこともあって、評判になりました。腸内細菌博士として過去に同様の本を何度も書かれており、この本も同じような内容を免役力に焦点を当てて書かれています。(3/11)
006/040
「承久の乱 日本史のターニングポイント」本郷和人
今話題の“鎌倉殿の13人”のまさにどんぴしゃの時代を振り返ったものです。鎌倉幕府の正体を“源頼朝とその仲間たち”と定義したのも、この本が最初ではないでしょうか。北条氏と源氏の微妙な関係もとても面白く解説されています。大河フアンには必読の一冊かと思います。面白かったです。(3/13)
007/041
「お客さま、そのクレームにはお応えできません 小説 不動産屋店長・滝山玲子の事件簿」三浦展
不動産屋さんが、客から受ける様々なクレームを小説仕立てで紹介するもの。あまりビックリするような話もなく、想定内のコトが多かったかな。(3/17)
008/042
「厨房のちいさな名探偵」ジュリー・ハイジー
ホワイトハウスの厨房を預かるシェフが主人公のコージーミステリ。この後もシリーズとして続いているようですが、一冊で十分でした。(3/17)
009/043
「深紅の断片 警防課救急チーム」麻見和史
彼の小説は最近のお気に入り。シリーズ化されたものが多い中で、本作は珍しいノンシリーズもの。消防本部に所属する救急隊が主人公で、殺人事件の謎解きに挑みます。こういった小説いおける“あるある”ですが、警察を間抜けに書きすぎ。ちょっと残念です。(3/19)
010/044
「入門老荘思想」湯浅邦弘
規律を説く孔孟思想とは対極に置かれる老荘思想。無為自然、柔軟性、しなやかさが最高の徳とされます。お互い相容れないものとして、排斥し合っているように思われます。中国では、孔子が中華文化のシンボルとして扱われるのに対して、欧米では老子の“道(Tao)”が、高く評価されているような印象があります。私個人的としては、孔子の世界のほうが気質に合っているように思います。無為自然は、自堕落な側に一直線で落ちて行ってしまいそうです。(3/19)
011/045
「桜の園・三人姉妹」チェーホフ
帝政ロシアの時代を描いた名作ですね。実際の舞台は見たことがないですが、子どもの頃、“桜の園”の舞台中継をテレビで見た記憶があります。やっぱり戯曲は、書籍として読むのではなく、舞台で演じられるものを観ないと伝わってきませんよね。そういやぁ、舞台演劇って、長いことみてないなぁ。(3/24)
012/046
「黒薔薇 刑事課強行犯係神木恭子」二上剛
たぶん初めて読んだ作家さん。女性刑事が主人公のポリスミステリなのですが、描かれている警察の暗黒面がちょっと暗すぎ。ヒロインもダーティー・ヒロインと言うより、ブラック・ヒロインてな感じで、読後感はあまり良くない。(3/24)
013/047
「暦物語」ブレヒト
“三文オペラ”でお馴染みの劇作家ブレヒトの短編集。古今東西あらゆるところからテーマを引っ張ってくる、なかなか面白い小説集でした。実はこの著者の作品を読んだのはこれが初めて。他の本も読んでみようかと思います。(3/24)
014/048
「マネー・ボール」マイケル・ルイス
映画にもなりましたね。今でこそ、アメリカのメジャー・リーグではサイバー・メトリクスという新しい評価方法が主流になっていますが、従来とは全く違う視点で選手を評価することで、球界のお荷物球団を常勝軍団に創り変えた敏腕ジェネラルマネージャーの物語。ノンフィクションであるにも関わらず、書かれた当時の球界の中の人たちからは誇大妄想家の戯言と酷評された書籍のようで、後書きには、その恨み言が綴られています。また、この日本語文庫版の解説を、あの丸谷才一さんが書かれているという豪華版です。ちんみに日本のプロ野球界にはサイバー・メトリクスの概念は全く導入されて居らず、彼我の違いを痛感します。(3/31)