暑い暑い8月は計14冊、うち小説が10冊、その他が4冊という結果でした。ひさしぶりに小説の割合が多かったですね。
最近は、暑さもさることながら、この読書感想文よりFBであげている散歩の記録が楽しみとおっしゃる方が多く、若干モティべーションは下がり気味ですが、今月も飽きずに披露させていただきます。
さて、そんな中でのお薦めですが、小説ではローレンス・ブロックの殺し屋シリーズや最近知った原尞さんの作品は変わらず面白かったです。いずれもミステリのお好きな方にはお薦めです。
そのほかでは、新聞広告で知った“天下一の軽口男”も想定以上に面白かったです。歴史上の人物を主人公にした小説ですが、有名な武将や芸術家ではなく、落語の創始者と言うところに意外性が有り、物語のメインストリームは史実の従って書かれているようで、その点でも好感が持てます。下記の本文の中にも書いていますが、 “醒睡笑”という笑話集が小説中に出て参ります。早速注文しましたので、それも楽しみにしています。でもいつ読めるんだろうかと思う今日この頃。
そのほかの本では、東日本大震災での大川小学校の事故の検証をした“止まった刻”がとても興味深かったです。私も公務員の端くれなので、災害時だけでなく平常時の危機管理について強く考えさせられる内容でした。この本にも書かれていますが、私たちは、何か事件事故があると、つい責任論を追求し、最終的な責任者を探し出して、追い込むことに注力しがちです。かつて、それが原因で自ら命を絶ってしまい、本当の“原因”が究明されないままになってしまうということが何度も何度も繰り返されてきました。この事件でも唯一残された教員が精神的な病に倒れ、公的な証言が全く得られないままになっています。最近頻発する児童虐待事件しかり、客観的に原因が究明できる仕組みこそが必要なのにという思いをいっそう強く感じたところです。
9月に入り、少しは涼しくなるのかと思いきや、また暑さがぶり返しています。できれば“読書の秋到来!!”と読書に励みたいところですが、なかなか集中できません。特に月初めに読み始めた本が面白いので、時間を見つけて読み進めたいのですが、どうにも時間がかかっています。また来月には御紹介できると思いますので、ご期待ください。
001/098
「止まった刻 検証・大川小事故」河北新報報道部
2011年3月11日、日本を襲った大地震。あの地震の際、70名以上の児童が津波での犠牲になった石巻市立大川小学校でいったい何があったのか。学校管理下における戦後最悪の犠牲を出したこの事故は、いったいなぜ起こったのか。この事故から生還したのは1名の教師と4名の児童のみ。彼ら及び関係者の証言や周辺の状況を基に、あの50分を解明しようとした地元新聞の記録です。最も頼りになると思われる唯一残った教師の証言が、ほとんど残されていないので、結局のところ真実は見えてきません。遺族が県市を相手取った訴訟では、一審では、現場の教師の過失が認定されましたが、双方が控訴した第二審では、行政側に事前の防災マニュアルの策定を怠った重大な過失があるというさらに厳しい判断が下されました。今も最高裁での審理が続いており、先へはなかなか進めていけていません。その一方で、南海トラフ地震が想定されている地域では、第二審の判断を踏まえたような準備が着々と進んでいるそうです。子どもの命を守るために。それを第一に考えることが大事なんだろう。(8/3)
002/099
「超常現象 科学者たちの挑戦」NHKスペシャル取材班
NHKが、いわゆる“超常現象”について真面目に取り組んだ番組の書籍化です。取り上げられているのは、幽霊、超能力、生まれ変わりなどで、最新の機材を使って、それらの謎を科学的に解明しようという番組です。世界には、そういった謎の解明に取り組んでいる科学者集団があって、その調査に同行する形で取材が進みます。結局のところ、どの謎も解明されたわけではないのですが、今後科学技術が進展することで、必ず解明されていくのではないかと思われます。個人的には、ユリ・ゲラーのインタビューや7万人の集団が引き起こす物理的な力、離れた場所にいる人物の脳波の同調現象などはとても興味深い。(8/5)
003/100
「なりたい」畠中恵
著者の出世作“しゃばけ”シリーズの一冊です。シリーズ初期ののんびりした若旦那を取り巻く愉快な仲間達のドタバタ劇から、少しずつトーンが変わってきました。今作では、いろいろなものに“なりたい”人たちがメインキャストとなって登場します。病弱で家族や仲間に心配ばかりを掛けている若旦那が、真面目に自分のなりたいものを語る場面もあり、かなり重い仕上がりになっています。(8/9)
004/101
「天下一の軽口男」木下正輝
上方落語の原型となった“辻咄”の創始者とされる米沢彦八を主人公にした物語。先日の新聞の広告欄で見かけ、面白そうと思いと図書館で借りてきました。“軽口”というのは、彼がしたためた笑話集のタイトルにちなんでおり、実際にその中に納められている話も、書中には登場する。史実か否かは分からないが、生魂神社に初めて置かれた寄席の原型では、看板芸人だったそうです。面白かったです。ちなみに本書には、安楽庵策伝という僧と“醒睡笑”という日本最初の笑話集が登場します。面白そうなので、早速Amazonで注文してしまいました。読めるんだろうか??(8/10)
005/102
「バラカ」桐野夏生
これも最近の新聞広告で見かけ、その宣伝文句に惹かれて借りてきました。著者の得意(?)なダークノベルで、読み進めていくにつれて結構しんどくなってきます。舞台は東日本大震災とそれに続く福島原発事故で放射能に汚染されてしまった日本。“バラカ”というのは主人公の女の子の名前で、彼女が幼い頃に日系人の両親から引き離されて、ドバイの人身売買市場で日本人に売られ、悪意ある人たちの手によって翻弄されていくという物語です。とにかく悪人しか出てこないものすごい小説で、途中で味方のような人物が現れても、どこかで裏切られるのではないかという怖さがついて離れません。600ページを超える超大作で、さすがの筆力。面白かったけど、しんどかったです。(8/12)
006/103
「ノースライト」横山秀夫
彼の小説は決して嫌いではないので、期待して読みました。いちおうミステリなのですが、どうもすっきりしなくて、提示された謎もしっくりきませんでした。自分が設計して建てられた居宅が、代表作として書籍にまで取り上げられたにも関わらず、完成後の誰も住んでいないという事実が判明し、なぜか主人公が、その建築主を探そうとする物語。動機も含めて今ひとつしっくりこない結末でした。作中で大きな鍵となる人物として“ブルーノ・タウト”が出てきます。桂離宮を“発見”した人物として知られていますが、彼への興味がわいてきました。次は、そっちへ行ってみようかな。(8/17)
007/104
「殺し屋ケラーの帰郷」ローレンス・ブロック
最近お気に入りの“殺し屋ケラーシリーズ”の最終作です。一度引退したはずの主人公が仕事復帰してしまうと言う物語。相変わらず洒脱な会話で楽しましてもらえます。とりあえず本作が最終話なのですが、これも前作が本来最終話という触れ込みであったにも関わらず発表されたと言うこともあり、ひょっとすると再びあるのでは、、と期待してしまいます。(8/22)
008/105
「もういちどベートーヴェン」中山七里
著者のデビュー作になった“岬洋介シリーズ”の最新作。司法試験をトップで合格するほどの頭脳を持ちながら、一方では天才的なピアニスト。他の作品では、ピアニストとして活躍する主人公が、事件の謎を解くというシリーズなのだが、本作はその前日譚で、司法修習生として研修を受ける身で有りながら、勝手に操作をして事件の謎を解くという物語なのだが、本筋はそこにはなく、主人公が研修を受ける傍ら、とあるピアノコンクールに応募し、ピアニストとして歩むことを決断するまでの物語が描かれている。外れが多い“このミステリーがすごい!大賞”受賞者の中では、数少ない“当たり作家”だと思っていますので、次回作が楽しみです。(8/24)
009/106
「歴史の進歩とはなにか」【岩波新書】市井三郎
“歴史”とは進歩するものなのか?はたして“進歩”っていったい何なのか?折に触れ頭に浮かぶ素朴な疑問です。“進歩する“”発展する”といった単語の意味は、なんとなく理解されているように思いますが、いずれも“ある視点”“ある価値観”に基づいて、相対的に評価されているものと私は考えています。従って、ある変化に対して、“進歩”“発展”と評価する人と、“後退”“退化”と考える人がいるというのが自然な姿ではないかと考えています。“進歩”とは“より良き状態への変化”であると考えても、じゃあ“より良き”って、どういうことって思いますよね。いつもこんな面倒くさいことを考えながら生きてます。(8/24)
010/107
「検証捜査」堂場瞬一
どこかの書評かなんかで見かけて、面白そうだったので図書館で借りてきました。神奈川県警が逮捕摘発した殺人犯が、控訴審で逆転無罪判決を受けます。この際の県警の捜査を検証するために全国から警察庁に捜査員が集められ、最終的に真犯人にたどり着くという物語です。途中でなんとなく結末が見えてくるんですが、ホンマにこんな風になっちゃうかなぁ、と言うのが正直な感想です。面白くないわけではないんだけど、腑に落ちない。派生作品がシリーズ化されているようなので、それも読んでみよう。(8/24)
011/108
「化学探偵 Mr.キュリー」喜多喜久
物理学者の探偵役があるならば、化学者であっても成り立つだろうと言うことで作られた小説だそうです。作者本人も薬学を修められた研究者と言うことで、専門知識がちりばめられたミステリとなっています。他の所でも書きましたが、理系の作家さんの書かれるミステリは、基本的に面白いと思っておりまして、本作もミステリ要素の部分では申し分ない構成だと思いました。ただ人の描き方って難しいよな、と改めて感じる所でもあります。シリーズ化されてもいますので、また続編も読んでいこうと思います。(8/25)
012/109
「堀アンナの事件簿」鯨統一郎
この作者、名前は聞いたことがあるんだけど作品を読んだこともなければ、噂も聞かない不思議な作家なので、調べてみたら、いわゆる覆面作家さんで私生活をほとんど明かされていないんですね。まぁ、それは関係なく興味を持って図書館で借りてきました。主人公は探偵事務所に就職したての新人さん。そんな彼女がひょんなことから探偵事務所の所長になってしまい、事件を解決していきます。とても軽いタッチの小説で、彼の本はすべてこんな感じなのかな。よく解らないけど、まぁ、気が向いたらまた読んでみようかな。(8/25)
013/110
「愚か者死すべし」原尞
先日読んで面白かったので、ひとつ遡る感じで読んでみました。日本には珍しい感じのハードボイルド小説で、読んでいてもリズム感があって、とても読みやすい作家さんです。いっそこのまま、こうやって遡っていきながら読むというのも面白いかも。(8/25)
014/111
「災害復興の日本史」安田政彦
自然災害に何度も襲われた私たちの国ですが、そこから如何にして立ち直ってきたのか。というのがこの本のへの期待だったのですが、かなり不満が残る内容でした。あまりにも資料絶対主義に陥ってしまい、資料で確認できないことはすべて外に追いやられています。古来“治政”というのは、軍事と災害対策だとされてきました。たとえば有名な“信玄堤”や“太閤堤”など、災害復興から次の災害を防ぐための対策というのは数多く執られてきましたが、この本ではそのあたりのことは全く触れられていません。なぜなんだろうかと訝しく思いながら読みました。消化不良だ。(8/31)
途中断念
「古地図からみた古代日本 土地制度と景観」