2019年7月15日月曜日

2019年6月


6月は、かなり低調で、計9冊。うち小説が4冊、そのほかが5冊という内訳でした。
これで今年前半が終わって77冊という結果になります。ちなみに、一昨年の同時期は85冊、昨年は82冊でしたから、年を追うごとに順調に減ってきており、若干の寂しさを感じていますいます。
低調なのは、数だけでなく質においてもそのとおりで、なかなか心にヒットする物はありませんでした。

そんな中でもテーマとして面白かったのは次の2冊でした。

まずは、事故の哲学です。本文にも書いていますが、いろんな人のSNSで流れていたことから興味を持っていました。私自身は文系人間で、全くの技術音痴なので、物を作ることができる人たちのことを無条件で尊敬いたします。一方で技術の進歩に伴って惹起される様々な弊害・副作用について、彼ら技術者達はどう考えているのかと言うことが、とても気になります。この本は、そういった問いに答えてくれる物ではないですが、考えさせてくれる本でした。

もう一冊は、無戸籍の日本人です。実は浅学にして、今の日本にこれほど多くの無戸籍日本人がいらっしゃるとは思いもしませんでした。本書でも取り上げられているのですが、日本の民法では、他の国とは違う非常に特殊な制度を設けています。その制度のおかげで、あらゆる制度からこぼれ落ちてしまった子ども達がこれほどたくさん存在するとは。当事者とならなければ、全く想定しない出来事だと思います。文章は、だらだらと書き連ねた感じで、書籍としての完成度は今ひとつかなとは思いますが、まさに当事者が著したと言うことで、迫力あるルポになっています。

6月は、先月予告していた本をずっと読んでいたのですが、半分ほど読み終えたところで、図書館への返却期限が来て、やむを得ず途中で断念し、返却いたしました。その本も、またすぐに借りられそうなので、続きを読みたいと思います。そんなこともあって、わずかな量しか読めなくて、もやもやが残っています。

これからしばらくは、鬱陶しい天気の日が続いて、読書のモチベーションも下がりがちですが、なんとか面白い本を見つけて読んでいきたいと思います。

001/069
ジグソーパズル48」乾くるみ
6月最初の一冊がこの時期になってしまいました。それというのも、実は別のとても興味深い本をずっと読んでいたのですが、これがかなりの大作で半分ほど読んだところで、いったん中断しています。ということでこの本なんですが、中身はとある女子高校を舞台に起きる不思議な事件が題材になったライトミステリ集です。とは言いながら、全編を通して出てくるのは舞台の高校だけ。名前だけ複数回出てくる教師もありますが、全く別の短編小説が続きます。そのうちの一作はどこかで読んだ記憶があって、一瞬同じ本を借りてしまったかと思いましたが、そのほかは知らない物ばかりでホッとしながら読みました。作者は映画にもなったイニシエーション・ラブの作者で、すべての作品がとてもロジカルに展開されていて、それに追いつくのが大変です。ちょっと理屈が先行しすぎており、気楽に読むには向いていないかな。面白いですけどね。(6/9)

002/070
皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。」原武史、三浦しをん
不思議な2人の対談集。鉄道オタクとしても有名な原氏の皇室オタクぶりも最大限発揮され、対談そのものは、2~3年前に行われた物が多く、今日的とはなっていませんが、前天皇の退位や秋篠宮家の皇女の結婚問題などについて面白い議論がされています。中に、新宿から鬼怒川温泉までの車中での対談が挟み込まれており、ここでは鉄オタの本領が爆発しており、これまた面白い。(6/9)

003/071
W県警の悲劇」葉真中顕
図書館で偶々見かけて借りてきましたが、今度テレビドラマになるそうですね。W県警察本部を舞台にした、かなりシニカルな物語です。全体を通した主人公というのは存在せず、いろんなテイストの作品からなる連作の短編集という感じで、最初の話と最後の話のみが繋がっています。なかなかよくできた物語もあって、結構面白かったです。映像化するとどうなのかなとは思いますが、ちょっと気になっています。(6/13)

004/072
まぁ最近ではなかなか見られない性質の書籍ではあります。これだけ女性をこき下ろした本も珍しい。本書の至る所に出てくる男性は、、、女性は、、、という表現には結構うんざりきます。私自身は、肉体的な部分での性差というのはあると思いますが、それ以外の精神的な部分での性差というのは全くないと思っています。女性だから、こう考えるというようなことは全くなく、すべてはその人を取り巻く環境が影響していると考えています。じゃぁなぜこんな本を読んだのか。自分とは相容れない考えを聞くというのも大いに刺激的なことですし、それによって自分の考え方を再認識するということにも繋がります。何事も勉強ですね。(6/16)

005/073
ある技術・製品が開発・供用され、それが何かの事故を起こしたときの技術者の責任とは。著者の専門は、工学の哲学と倫理とされており新しい切り口での技術論でした。SNSでいろんな人がつぶやいていて、とても面白そうだったので、図書館で借りてきました。このテーマで、特に気になるのは福島原発事故の問題です。結果的に、今の科学技術では安全に制御できない技術でありながら、世界中で大量に作ってしまった装置を、今後どうしていくのか。その結果に対して技術者はどう向きあえば良いのか。難しい問題ですね。(6/18)

006/074
掟上今日子の乗車券」西尾維新
このシリーズ久しぶりに読みました。途中の5~6巻をすっ飛ばして読んだのですが、主人公のキャラ設定がかなり変化していて驚きでした。タイトルのとおり、旅の途中で遭遇した事件を一日で解いてしまうと言う構成になっています。(6/18)

007/075
ある男」平野啓一郎
本屋大賞候補作の最後の一作です。事故で亡くなった夫が、戸籍上の人物とは全く別の人物だったというショッキングな出来事から物語が動き出します。実は偶々同時並行で、無戸籍に関する本を読んでいたので、それとオーバーラップしてきて、混乱しながら読んでいたのですが、いくつもの謎が重層的に描かれていて、作家の頭の中がよく整理されているなぁと感心しています。ただ、最後の仕上がりが若干宙ぶらりんで、物足りなさが残ってしまいました。(6/22)

008/076
無戸籍の日本人」井戸まさえ
これも、新聞か雑誌の書評で取り上げられていたのを図書館で借りてきた物です。今の日本の民法には嫡出推定という規定があって、婚姻中あるいは婚姻解消後300日以内に生まれた子どもは婚姻中に懐胎したものと見なされます。たとえばDV夫から逃げていて婚姻関係が事実上破綻していても、その夫の子と見なされるのです。従って、もしこの間に出産し、出生届を出すとDV夫にその存在が知られてしまうことになるため出生届を出すことをためらい、そのまま無戸籍になってしまう子どもが後を絶たないそうです。これが年間数千名に上るというのですから驚きです。この本の中には、その無戸籍児が大人になり、母親になったケースまで紹介されています。当然その子も無戸籍になりますよね。本来ならば、政治の力で簡単に救うことができるはずなのに、いまなお放置されています。日本独特の制度なのです。(6/30)

009/077
火付盗賊改といえば鬼平、長谷川平蔵ですが、実は彼は江戸時代の実在の人物で、かなりの名物役人だったようです。この本の中にはそれ以外に中山勘解由、矢部彦五郎定謙が三大火付盗賊改(?)として紹介されています。この役職は最初は臨時的にもうけられた役であったようで、本来の役職に加役する形で任命されたそうです。著者は歴史小説家で小説の題材を探して江戸時代の判例集などを蒐集する中で、この本を書こうと思われてようです。なかなかの大作でした。(6/30)


途中で断念した本
「悪魔の神話学」