2018年5月1日火曜日

2018年4月


先月は、質も量の低調な月でしたが、4月に入って少し調子も取り戻してきたか、計16冊、今回は小説が10冊、その他が6冊と小説の割合が比較的高いという結果になりました。質的にも結構面白い本もあって、まずまず満足のいく内容だったと思っています。

まず、小説ではお気に入りの作家の本がいくつかあって、道尾秀介さん、中山七里さん、柚月裕子さん、今野敏さんの本はどれも面白かったです。

特に、今野敏さんの隠蔽捜査シリーズは、お気に入りのシリーズで、ひょっとしたら今作がシリーズ完結なのかなと心配しています。映像化もされたので、御存知の方も多いと思いますが、ある意味我々が思う理想的な従来にない新しい警察官僚を主人公に据えたことが成功に繋がったのではないか。もう一度、シリーズ全作を読み返してみたいなと思っています。お薦めです。

道尾さんの本は、ある種の大河ドラマのような長大なお話でした。禍福は糾える縄の如し、いろいろな言葉が頭に浮かびましたが、いろんなことがあって今がある。そして未来のことは誰にも分からない。だから人生は面白い。彼の作品にしては、久しぶりにとても良いお話でした。

中山さんの作品も柚月さんの作品も、いずれも警察官が事件の謎を解いていく物語で、その事件に至った過程が、並行的に描かれています。両者ともに、外れが多いこのミス大賞出身者の中で、数少ない当たりの作家です。どちらも面白いですよ。

次にその他の分野の本では、自伝なので小説に分類しようかと思ったSHOE DOGが面白かったです。分厚い本ですが、長さを感じず、結構短期間で読み切れました。内容はNIKEの創設物語で、アシックスの前身である鬼塚タイガーとの因縁にも触れられています。ベンチャー・中小企業が創業時に金融機関にいじめられるのは万国共通のようで、銀行への恨み節が随所に現れます。そして、それを救ったのが日商岩井。これは全く知りませんでした。一つのベンチャー企業の成長物語としても、とても面白い本でした。お薦めです。

4月は、通勤時間に読んでいる新書がなかなか進まず、小説以外の本があまり伸びませんでした。これも結構当たり外れが激しく、基本的には興味の無い分野の本には手を出さないのですが、相性が合わないと完全に止まってしまいます。5月はどうなるでしょうか。大型連休もありますが、本を読む時間はあるかなぁ。


001/037
警視庁にある架空の部署を扱った物語。もう少し美術史的なトリビアが満載かと思ったが、ややライトミステリに寄せた作品。期待外れ、実験的に書かれた作品なのかな。(4/1)

002/038
先月読んだ同じ著者の作品が頂けなかったので、これはどうかなと思っていたのだが、今作は良かった。テーマは生活保護で、保護申請を却下されたことで餓死してしまったj歩性の敵を討つ形で殺人事件が起こる。途中から筋が読めてしまうのだが、結末にスポットが当たった人物は、ちょっと予想できなかった。どんでん返しの大家と言われ、期待されることは相当なプレッシャーだろうなと思うのだが、今作は上手く裏切ってくれた感じ。(4/7)

003/039
気がつけばこの作品もシリーズ化されて人気もでているようだ。そうなるとすぐにその前日譚を作ってしまうのは世の流れか。警察学校の教官として活躍する本編に対して、今作では現役の刑事でありながら、新人刑事を指導する立場で登場し、本編では語られなかった主人公の最大の特徴を持つに至った理由も明らかになる。一篇一篇は短いものの、良い感じの話が詰まっている。(4/8)

004/040
若狭鉄道うぐいす駅」門井慶喜
鳥取県の第三セクター鉄道である若桜鉄道の架空の駅を舞台にした物語。歴史ある建造物である駅舎を存続させるか撤去して病院にするかで町が二分。そんな中で行われた町長選挙で意外な結末を迎える。気楽に読める楽しい小説であり、結末もちょっと面白い。(4/8)

005/041
伝説」柳田国男
これは、タイトルと作者に惹かれて購入したものであるが、全編旧字旧仮名遣いで復刻された物で、さすがに読めない文字もたくさんあってとても読みづらく、相当に手こずりました。今では普通に語られているような、英雄伝説について、伝説の伝播性とその動力、同心円状に拡がる伝説などについて書かれている。ちゃんと読めたらきっと面白いのだろう。誰か現代仮名遣いに直してくれないかな。(4/12)

006/042
巡査の休日」佐々木譲
北海道警シリーズ。警察組織内部の葛藤を描いた初作とは違って、純粋に主人公達が組織の中で協力しあいながら事件を解決していくという安心して読める小説。これ単品でも読めるのだが、シリーズを順番に読んでいかないと途中でかなり混乱が生じてしまう。気をつけないと。(4/14)

007/043
昨年出版され、ベストセラーとなったもの。当時店頭で見かけてとても気になっていた物を、ようやく図書館で借りることができた。これは、小説家や作詞家、ブロガーなど様座名メディアで文章を綴っている人になりきってカップ焼きそばについて語らせてみようという企画物である。こういうのを文体模写というらしい。本人が書いた文章に触れたことがないような人も数多く含まれているので、それがどこまで似ているのかさっぱり分からない物もあるが、大方はなんとなく似ているなぁ。という感じ。(4/14)

008/044
風神の手」道尾秀介
これは面白かった。世代を超えた3つのお話が、最後には一つの大きな話となって完結する一篇の大河小説のよう。風が吹いたら桶屋が儲かる。小説のタイトルは、物語の終盤で登場人物がもらした言葉からとられている。小説の中にはいくつかの家族が描かれていて、不幸な出来事がかれらを襲う。しかしながら、それは本当に不幸な出来事だったのだろうか。万事塞翁が馬。いろんな悲しかったことや楽しかったことがあって、結果として今がある。上手く表現できないけれど、とても良い本でした。(4/15)

009/045
これまた講談社ブルーバックスの一冊。こどもの頃に読んだムー大陸、アトランティス大陸の伝説から、実際に存在したかもしれない大陸の可能性やその根拠について、プレートテクトニクスの理論を基に解説されている。もちろん、人類が存在していたとか、ある種の文明が発達していたというような時代ではないのだが、科学や技術の進歩とともに、謎がどんどん解き明かされ、さらに謎が深まっていく。面白いですね。(4/18)

010/046
前作が売れたので、調子に乗って続編として出版されたもの。前作とは別の100人が対象となり、その文体を模倣して作品が載せられている。まぁ、それだけのもの。(4/21)

011/047
盤上の向日葵」柚月裕子
山中で発見された白骨死体を巡って、操作の進む現代と事件が起きた過去の二つの物語が並行して語られる形式。それが違和感なく読めるのは、作者の力量か。作品名からも分かるとおり、今ブームの将棋が作品の中で大きく取り上げられている。残念ながら、将棋はさっぱり分からないので、途中の勝負の場面の面白さが理解できないのだが、それを差し引いてもとても面白く、2018年度の本屋大賞第2位という高評価も十分頷ける作品である。(4/21)

012/048
神様のカルテ0」夏川草介
ひょうっとして前に読んだかなぁ、と思いながらも読み切りました。映画化もされた作品の前日譚となる短編を集めた作品集。まぁ、それだけの物。たぶん前に読んだ。そのときの感想は覚えていません。(4/22)

013/049
棲月 隠蔽捜査7」今野敏
人気シリーズの最新刊。とにかく登場人物も魅力的で、お話も面白い。今作も期待を裏切らない出来です。主人公の立場が変わってしまい、今後がどうなるのか心配です。このまま終わってしまうのか、それとも全く違う立場で、新たな物語が始まるのか。誰か教えて。(4/22)

014/050
ホワイトラビット」伊坂幸太郎
とあるところで起きた立てこもり事件の真相とは。お話としてはちゃんと一つの流れで進んでいるのだが、それをいくつもの視点で並行的に描く。しかしながら、その視点毎の時制が行きつ戻りつするものだから、頭の中が大混乱。こういう描き方があるのかと感心した次第。こんな物語がかけるのは彼だけかもしれないですね。伊坂らしい作品で面白かったです。(4/25)

015/051
たまたま読んだ新聞の見出しが自信をなくし誇りにすがる(日本)。それを地で行くような内容の本でした。世界の大きな流れから取り残され、独り孤高を保ちながら、我こそが、と叫ぶ姿は本当に痛々しい。明治維新、敗戦という断絶期に、その後の道を選んできたのは紛れもなく我らが先達であり、それを美辞麗句で取り繕ったところで、どうなるものでもない。歴史や伝統を敬い尊ぶことは必要だし、美しいことだと思う。しかしながら、国民が自信を持てない国にしてしまったのは、誰なのかと言うこと考えなければいけない。決して人のせいにしてはいけない。(4/25)

016/052
これは面白い本でした。何かの雑誌の書評欄で見かけ、図書館で借りだして読んだものです。スポーツシューズメーカーであるNIKEの創設者である著者が、創設前から上場までの歴史を振り返って描いた物で、前半は日本の鬼塚タイガーとの関係について、彼らからの視点で詳しく記されている。いずれ自伝であるから、書かれたこと全てが正しいかどうかは分からないが、丁々発止のやりとりは、それだけで興味深い。かなり分厚い本ですが、それが気にならないくらい面白かった。お薦めします。(4/29)