2016年4月24日日曜日

2016年3月

いやぁ自分でも驚きました。
3月はたったの8冊。うち小説は5冊、それ以外は3冊とあいなりました。
実は、この3月、4月は久しぶりの人事異動もあって、精神的にもバタバタしていて、ゆっくり本を読もうという気分になれませんでした。
ここにあげた本たちも、なんか遠い昔に読んだ物で、その内容もはっきりとは思い出せません。
それでも改めて、筒井康隆の小説はおもしろい。特にこの時期の、どたばた、ナンセンス小説はすばらしいと思うのでありました。

(001/035)
禁断のパンダ」拓未司
このミステリーがすごい大賞の受賞作なのだが、この賞は当たり外れの差がとても大きい。インパクトを付けたいがために、過度に(ありえないような)衝撃的な展開がみられるなど、途中で鼻白んでしまうようなものが多く見られると思うのは、勝手な感想。実はこの作品は、途中まではグルメ小説とミステリーが融合したような、良い感じで話が進むのだが、途中から嫌な感じが強まってきて、この展開だけは止めてくれと思うような結末を迎える。読んだ後味は苦い。(3/5)

(002/036)
作者の得意な人の死なないミステリーで、文部科学省で働く女性事務官を主人公とするシリーズ二作目。近年世間を騒がした理化学研究所の事件をベースにしているものの、全く違う展開で書かれている。売らんがために、渦中の人となった女性研究者を過度に貶めるような展開になるのは嫌だなぁと思っていたのだが、そうはなっていなかったので安心した。人が死なないだけではなく、人を傷つけないミステリーでもある。(3/8)

(003/037)
『交通まちづくり』という言葉は新しい言葉として耳に入ってくるが、概念としては決して古いものではない。洋の東西を問わず、まちの成り立ちにはいくつかの類型があるものの、多くは宿場町であったり港町であったり、交通の拠点から始まっている。従って、いずれの場合でも本来は人が移動しやすい形に整えられて言ったはずである。ところが、近代になって鉄道やバスなど人を運ぶ機械が出現すると、人の移動ではなく、機械の移動が主役に取って代わってしまい、町作りの形が壊れていく。町の主役は誰なのか、そこにフォーカスすれば、自ずとまちづくりの方向は見えてくる。この本を読みながら、そんなことを考えた。(3/17)

(004/038)
ばかばかしくもとんでもない小説のオンパレード。40年前私が中高生の頃に読んだ短編集に収録されていたものもいくつか見られる。いまならとても活字にできないような表現も、そのままの状態で採録されている。今読み返してみても、当時の彼のエネルギーのほとばしりを痛烈に感じる。最近の穏健な表現になれた今の人たちには、毒が強すぎるかな。(3/19)

(005/039)
ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか」ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ」
隠れた真実という言葉が何度も出てくる。起業家であり投資家でもある著者が、母校で行った講演を文章化したもの。将来の起業家を多少に話しているので、起業に向けての助言が中心に書かれている。何度も同じ話が出てきたりするが、わかりやすく書かれている。ただ、当然のことながらこの話を聞いたり読んだりしただけで、起業家として成功するわけではなく、書かれている内容が実践できる人だけが成功できるのだろう。そのためには、何らかの天性のものが必要だと思うのは、単なるひがみだろうか。(3/19)

(006/040)
なかなか切ないラブストーリー。心の深いところで結び合った二人でありながら、決して結ばれることがないというのは、少し悲しすぎる。結局、この先、彼はいったいどうなってしまうのだろう。(3/20)

(007/041)
作家志望の女性が、その場しのぎのアイデアを駆使して小説家に上り詰めるまでの連作小説。全編に私にふさわしいという枕詞がつく。必ず売れっ子小説家になるという主人公の執念と怨念で貫かれたとても面白い作品になっている。(3/21)

(008/042)
日本戦後史論」内田樹、白井聡

めちゃくちゃおもしろい本です。もちろん思想的に相容れない方とか、理解できない方もたくさんおられるとは思いますが、あえて議論を挑む好戦的な姿勢にも好感が持てます。私自身もすべての内容に同意できるわけではありませんが、それをおいてもおもしろい。特に第4章。“日本人の中にある自滅衝動”には、大いに頷けるところがある。企業や政治家の不祥事が明らかになる度に、途中で止められない気持ちが、こう説明されると腑に落ちるのである。(3/21)