5月は25冊で、そのうち小説が12冊、その他が13冊。小説には上下2巻物があるので、実質は26冊おうちちょうど半分が小説と相成りました。
実は、5月は数だけはたくさん読んだものの、先月と違って印象に残る本が少ない月となりました。
さて、その中では宮部みゆきさんの新作をまず挙げなくてなりません。当然おもしろいし、決して悪くはないのですが、最近この手の小説が多いので、以前の様な本格社会は小説を書いて欲しい。切に望みます。
それから、これは結構前の本ですが、“いとみち”は想定以上におもしろかった。何が良いって、登場人物のキャラが立っていて、悪い人が出てこない。読みながら気持ちが温かくなる。気持ちが穏やかでないときに読むと、とても良い。
001/087
「アベノミクス批判 四本の矢を折る」伊藤光晴
若干強引な論調は気になるが、おおむね誰も顔感じているとおりのことが書かれている。著者の言うとおり、現在の円安株高に象徴される経済の好循環を招来した(と信じ込まされている)三本の矢に紛れ見え隠れする四本目の矢が気になるところである。(5/2)
002/088
「平林都の接遇道2極意編」平林都
これはまた気持ちの良い書きっぷり。“面従腹背上等”“色白腹黒”。見た目を磨いて、相手を気持ちよくさせよ。そりゃそうだ、気持ちだけでは、絶対相手には伝わらない。(5/2)
003/089
「最後のトリック」深水黎一郎
何が最後のトリック、“真犯人は読者自身である”って、これはアカンわ、カネ返せ。(5/2)
004/090
「永遠平和のために」カント
憲法記念日に相応しく。国家間の永遠平和のための予備条項、①将来の戦争の種を密かに保留して締結された平和条約は決して平和条約と見なされてはならない。②独立しているいかなる国家も、継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できるということがあってはならない。③常備軍は時とともに全廃されなければならない。④国家の対外紛争に関しては、いかなる国債も発行されてはならない。⑤いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力をもって干渉してはならない。⑥いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。国家間の永遠平和の為の確定条項、①各国家における市民的体制は、共和的でなければならない。②国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである。③世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない。(5/3)
005/091
「村 百姓たちの近世 シリーズ日本近世史②」水本邦彦
近世、戦国期から江戸時代における農山村の生活をヴィヴィッドに描く。コンパクトな歴史書だが読み物としてもおもしろく、当時の生活が目に浮かぶようだ。そういえば、私が小さかった頃、田植えが終わったある日は、“大休み”と呼ばれて、村を挙げ、バスを借りて京都や大阪へ遊びに行くのが楽しみだった。こんなところにルーツがあったとは。(5/4)
006/092
「サラバ!(上)、(下)」西加奈子
直木賞受賞作で昨年の本屋大賞第2位。どうも読む人によって、評価が真っ二つに分かれるようで、上下2巻の長い小説の最初から最後まで、ずっと一人称で語られるため、心象描写に制限を受け、登場人物を立体的に捉えることができず損をしている。おそらくそれも作者の狙いの一つなんだろうけどね。また、内容が非常に内省的であるためか、続きを読みたくなると同時に、何か重い物を飲み込んだような気分になってしまう。(5/4)
007/093
最も大事なことは“行動すること”。失敗を恐れてはいけない。(5/5)
008/094
「探偵の探偵Ⅲ」松岡圭祐
主人公がイカしているシリーズの3作目。妹を死に至らしめた“死神”の正体がついに明らかになる。本作の場合、完全に前作の続編となっており、前2作の詳細が、彼方にぼんやりしてきた身で読むと、結構辛い。ここはまもなく刊行されるⅣ巻と合わせ、一気に読み切ることをお薦めする。そういえば、7月から連続ドラマ化されるとか。ちょっと楽しみかも。(5/6)
009/095
「チャイナ・セブン 〈紅い皇帝 習近平〉」遠藤誉
“習近平”前の前作“チャイナ・ナイン”に続き、習近平国家主席・総書記によって導かれる現在の中華人民共和国すなわち共産党の内実を描いた物。彼らがいつまでもこだわり続ける“共産党一党独裁体制”はいつまで継続可能なのだろうか。この先も大丈夫だと信じているのだろうか。(5/9)
010/096
「朽ちないサクラ」柚月裕子
彼女のおそらく初めての警察小説。主人公を引き立たせ、さらに結末をドラマチックにする為に、必要以上に本職の刑事を無能に描きすぎ。さすがにこうは進まんだろ。しかしながら主人公の女性警察事務官は、結構魅力的に描かれていて、好感が持てる。比較的映像化しやす感じする。2時間ドラマの原作にぴったり。(5/9)
011/097
「オーケストラの職人たち」岩城宏之
オーケストラの裏方で働く人たちについて描かれた物。中でも楽器運搬の専門業者の話には、胸を打たれる。当然のことながら、日本にはそんな専門家はいなかったところ、ある出来事をきっかけとして、専門に扱う業者が発生し、全国各地の交響楽団にも、それぞれの地域で、その楽団を支えるための仕組みができあがっていることに感動する。その仕組みが、少しずつ崩壊してきていることが、とても残念である。(5/11)
012/098
「裸でも生きる」山口絵理子
前に読んだ遠藤氏の著書で紹介されていた山口氏の最初の著書。バングラデシュでの企業に至るまでの波瀾万丈の日々が綴られている。なかなか衝撃的な内容で、“よくもここまで”と感服する。いろいろと失敗や試行錯誤を重ねつつも、常に自分が決めていることに、並々ならぬリーダーシップを感じる。(5/16)
013/099
「自覚 隠蔽捜査5,5」今野敏
テレビドラマにもなった人気シリーズのスピンアウト短編集。主人公を取り巻く関係者達を各編の主役に据え、主人公の“一貫してぶれない態度”を改めて浮き彫りにする。こんな上司になれたらいいな。(5/16)
014/100
この平和な日本に“言論弾圧”なんて存在するんだろうか?などというノー天気な感想は脇へ置いときましょう。自分自身のことを省みてもその通りなのですが、“議論”をすることが本当に苦手で、さらに“意見”と“人格”をはっきりと分けて考えることも得意ではありません。つまりは、その後の衝突や非難を恐れ、自分の意見を表明しないことは多々あります。特質と言えばそれまでなんだけど、損か得かでいうと、得をしているとは思えない。(5/17)
015/101
「101歳の人生をきく」中川牧三、河合隼雄
決して尊敬しないわけではないのだが、どうしてどんな立派な人が書いても、過去を振り返ると、過去の自慢話や、過去礼賛の罠に陥ってしまうのだろうか。もちろん、自分以外誰もそれを知る人が居なくなれば、自分から口にするしかないのだろうけど、どうしてもバイアスが掛かってしまうだろうし、あんまり好きじゃないなぁ。以て他山の石とする。(5/22)
016/102
「いとみち」越谷オサム
かねて気に掛かっていたので、図書館で借りて読んでみる。いやぁ、はまった。青森市内にある本州最北端(?)のメイド喫茶が舞台で、主人公はそこで働く、津軽弁丸出しの女子高校生。しかも至って内向的であるため、お客を出迎える挨拶すらまともにできない。そんな彼女が、三味線を持つと、人が変わったようなパフォーマンスを見せる。登場人物それぞれにキャラが立っていて、読み手を飽きさせない。おもしろかった。(5/23)
017/103
「過ぎ去りし王国の城」宮部みゆき
読むのを楽しみにしていた一冊。本作もSFチックな設定で、ストーリーが展開する。いじめや児童虐待など陰惨な社会問題が同時描かれ、気持ちは重くなるが、主人公の女性が最後に取った行動が、物語をハッピーエンドに変えてくれる。
とはいえ、そういった問題に解決策を与えてくれるわけではないので、あしからず。様々なパターンの小説を書く彼女ではあるが、最近は時代設定は様々なれど、この手の空想小説が多い。また、昔のように本格的社会は小説を書いてくれないだろうか。(5/24)
018/104
「マックス・ウェーバーを読む」仲正昌樹
これは長く掛かった。ここで紹介されたウェーバーの著書のうち、三冊は読んだことがあるけど、さすがに超難解。いわゆる“プロ倫”などは、この解説書を読んでもさっぱり訳判らん。またそのうち再挑戦するかな。(5/25)
019/105
「がんばると迷惑な人」太田肇
そんな奴、たくさん居る。ひょっとすると自分もそうだったりして。恐ろしい話である。きっと自覚症状はないに違いない。(5/25)
020/106
「いとみち 二の糸」越谷オサム
シリーズ第2弾。主人公は高校二年生に。世界が少しずつ変化を遂げていき、主人公も成長していく。ううん、青春だなぁ。(5/26)
021/107
「ふむふむ ―おしえて、お仕事!―」三浦しをん
三浦しをんが、様々な分野で働く女性を対象に行ったインタビュー集。みんな輝いている。こういった人たちを探してくる出版社の人たちって凄いよね。著者の文才もさることながら、このチームワークでできあがったおもしろい本。さすがエッセイ本の大家。(5/26)
022/108
「製造迷夢」若竹七海
人が触った物に残った残留思念を“読む”ことができる特殊能力を持った女性が主人公である刑事に協力して事件解決に助力する物語。彼女もこんな設定の小説を書くんだね、ビックリした。若干無理して書いてる感がしたんだけど気のせい?やや物足りなさが残る。(5/30)
023/109
「いとみち 三の糸」越谷オサム
主人公は高校三年生。無事死のうする大学に合格することができるのか!というシリーズ最終話。メイド喫茶では後輩もでき、仲良し4人組との別れも迫る。そんな激動の一年間をしっかり走りきった主人公。実は、このシリーズでは主人公の祖母がとても魅力的な女性なのである。(5/30)
024/110
「手のひらの幻獣」三崎亜記
著者の創る独特の世界を舞台にした空想小説。他のシリーズは結構素直に読めるのだけれど、このシリーズだけはちょっと相性が悪い。(5/31)
025/111
「あおい」西加奈子
話題の著者のデビュー作。どんなもんかと思って読んでは見たが、ついて行くのがやっと。ぼくにはちょっと合わんかなぁ。(5/31)